2019年1月~放送のアニメ「どろろ」。第3話「寿海の巻」の詳細なあらすじと見どころを紹介します。あわせて感想もどうぞ!【注意】完全ネタバレです!


第3話/「生まれもった運命に負けず、強く生きてほしい」百鬼丸の育ての親、寿海の回想

寿海の巻

jyukai no maki

 

自らの領地の繁栄と天下取りという醍醐景光の野望を叶える代償に、身体じゅうの11カ所を鬼神に奪われた百鬼丸。目も見えず、口もきけない、耳も聞こえない百鬼丸がどうしてこれまで生きのびてこられたのか? 第3話では、川に流されてからこれまでの過去が語られます。

 

今回のテーマは「感覚」です

今回のテーマは「感覚」です。前回の第2話で、百鬼丸は万代を倒したかわりに、じつは「感覚」を取り戻していました。感覚があるのとないのとでは、どういう違いがあるのか、そこに注目しながら見ていきましょう。

 

とある場所で医者の寿海は、村人の失った手足に義手・義足をつけてあげる仕事をしています。しかもお代はもらいません。寿海の家の前にはいつも長い行列ができていて、人々に喜ばれています。寿海の弟子となり一緒に働いているカナメは、そんな師匠を誇らしく思っています。

 

ところがある日カナメは、寿海がかつて斯波(しば)氏に仕えていたという噂を耳にして衝撃を受けます。カナメの父親は斯波氏との戦で命を落とし、磔(はりつけ)にされたという過去があるのです。

 

敵の戦意をそぐため見せしめとして敵兵を磔にする──それが、斯波氏のもとで寿海が携わってきた仕事でした。命を落とした者だけでなく、まだ生きている者も、場合によっては兵でもない一般人まで、言われるまま数限りない人数を磔にしてきました。ついに寿海は精神的苦痛に耐えられず海に身を投げました。

 

寿海「海に落ちたワシを拾ったのは大陸の船だった。そのまま大陸に渡ったワシは、手足を失った者たちに作りものの手足を補う技と出合った。罪ほろぼしなどというつもりはない。ただ何もせず死んで楽になるというのだけは許されぬと思ったのだ。一度死んだはずのワシは生かされた。ワシにはまだ、すべきことがあると」

 

寿海は自らの使命を悟ったのですね。今は命のかぎり、弱者のために生きるという覚悟をもって日々暮らしています。寿海に救われた人はたくさんいます。けれどカナメの心を救うことはできませんでした。一度は寿海にノミを突き立てようとしたカナメですが、結局、寿海にもらった義足を脱ぎ捨て「あなたはオレを救えない」と言い残して出て行きました。

 

この時代、為政者の視点で描かれる物語はいくらもあります。魅力的な武将たちの活躍はスケールが大きく見ごたえがあるのですが、じつは現実はこうなんだと思い知らされますね。「戦」という一言で、殺人が手柄になってしまう恐ろしさ。人の命が虫けらのように軽んじられ、主君のいいなりに、理不尽なことにも残酷なことにも手を染めなければいけない時代。

 

今からすれば異常なのですが、戦国の世ではそれが当たり前でした。いえ、そこまで時代を遡らなくても、戦争が起きれば今でもそうなってしまうのでしょう。厳しいけれど、それが現実です。それを隠さず描くことで、この「どろろ」というアニメは視聴者に強烈なメッセージを伝えています。

 

簡単に命が奪われてしまう戦国の世で、最弱者に近い百鬼丸がどう生きたのか、「人として生きる」とはどういうことなのか、「どろろ」の魅力的なストーリーに乗せた手塚治虫のテーマは、このあたりにあるように思います。

 

すっかり意気消沈した寿海の前に、舟に乗せられた赤ん坊が流されてきます。目も鼻も顔の皮膚すらもない赤ん坊は、小さな口で寿海の指に吸い付きます。赤ん坊の「生きたい」という強い力に励まされ、寿海はその子を引き取り育てることに。

 

寿海「ワシは再び生かされた。体のあちこちを欠き、こちらの言うことも、どこまで伝わっているのかも分からない。だが、この子には不思議な力がある。生き抜くための強い力が」

 

寿海は、6歳になったこの子に名前を与えます。「百鬼丸」と。それまで何と呼んでいたのか分かりません。ただ”わらし”と呼んでいたのか、もしくは幼名があったのかも知れませんね。6歳まで育って初めて「この子がこれからも生き抜くために、これくらい強い名前でなければ」と、寿海は思ったのでしょう。

 

寿海「この世には何百の鬼より恐ろしいものがいくらでもある。だが負けるな百鬼丸。おまえなら必ず超えていける」

 

”鬼に打ち勝つ強い子になれ”という願いが込められているのですね。寿海は、地面にこの文字を書くことを根気よく教えたのでしょう。そのうち百鬼丸の方も、これが自分の名前だと気がついたのでしょうね。第2話の終わりに、地面に「百鬼丸」と書いた文字を琵琶丸が読んで、ようやくどろろが百鬼丸の名前を知るというエピソードがありました。


 

手足を補えても、心は補えない、救えない・・・寿海が感じる医師としての無力感

百鬼丸に宿る不思議な力に引かれて、さまざまなあやかしが寄ってきます。それを知った寿海は、百鬼丸に剣術を教えます。成長とともに百鬼丸はどんどん強くなり上手くあやかしを倒すことができるようになりますが、寿海には心配なことがありました。全身作りものの百鬼丸には感覚がありません。「自分の痛み」を感じないので、「他者の痛み」を知ることもできません。それでは「人」として、正常な感情が育たないのではないかと──。

 

寿海「痛みを知らねば恐れも感じぬ。切り刻み、殺し、命を奪い取ることに、何のためらいもしょうじはしない。願いはただ一つ。生まれもった運命に負けず、強く生きてほしい。ただ、それだけのはずだった。ワシはまた、間違ったのか?」

 

手足は補えても心までは補えないことに、寿海は無力感を覚えます。カナメの心が救えなかったように、百鬼丸の心も救えないのかと、自分のしてきたことの是非を問うています。

 

ある日、襲ってくるあやかしを倒した百鬼丸に異変が起こります。小刻みに震え始め、やがて本物の右足が生えてきたのです。ここに至り、寿海は百鬼丸の因果を理解します。そして、百鬼丸がこれからなすべきことも。

 

寿海「あやかしとは、人を食らうだけのものではない。ときに彼らは人の心を惑わし、その力を貸し与えもする。人知を超えた力でもって、人に恩恵を与え、代償として、人から何かを奪っていく。おまえも、そういう因果のなかでヤツに身体を奪われたのやも知れん」

 

こうして、百鬼丸は自分の身体を取り戻す旅に出ることになります。寿海に育てられた16年間、百鬼丸はさまざまなことを学んでいました。たとえ言葉は聞こえなくても、寿海との別れも、これから自分がなすべきことも理解しています。そして、寿海への感謝と愛情も。

 

 

別れ際、百鬼丸はぼんやり見える白い炎の寿海の顔をなぞります。義手に感覚はありませんが、なんとか寿海の姿を覚えておきたいと思う親愛の情からくる仕草だったのでしょう。

 

第2話の最初に、どろろが百鬼丸に名前をたずねるシーンがありました。自分の頬に百鬼丸の手を当てて「どろろ」と言い、今度は百鬼丸の頬に触れて名前を訊いたのです。きっと百鬼丸は、どろろがどうしてそんなことをしたのか、その意味をずっと考えていたはずです。

 

そして2話の終わりの方で、寿海との別れのときのことを思いだしたのでしょう。頬に触れるのは、愛情表現だと気がついたのです。そこで百鬼丸はどろろの頬を両手で触り愛情を示し、自分の名前を知ってほしいと思い地面に文字を書いたのでしょうね。

 

ここで寿海の回想が終わり、舞台は現在にもどります。

 

どろろ「──つまり、化け物をぶっ殺してまわると、取られた身体がもどってくるってわけか」

 

琵琶丸「そういうことなんだろうねぇ。昔、だれかが化け物どもと取引でもしたんだろう。あの子の身体と引き換えにね」

 

どろろ「ひでぇじゃねぇか。何もらったか知らねぇけど、目も鼻も口も、まるごと全部やっちまうなんてよ!」

 

琵琶丸「あぁ、地獄に落ちる覚悟でもなきゃできないことさね」

 

たき火にあたりながら、どろろと琵琶丸は話しています。ここでは「だれかが」と言っていますが、琵琶丸はそれが百鬼丸の身内だと勘づいていますね。だから「地獄に落ちる覚悟」と言っているのでしょう。この時代、他人の子どもなら、そんな覚悟いりませんから──。

 

そこに百鬼丸が起きてきて、たき火に生身の右足を入れかけ、その熱さに不思議そうな顔をします。感覚が戻ったので、火が熱いと初めて知ったのですね。一旦、足を引いた百鬼丸ですが、その正体を見極めようとするかのように、今度は思いっきりたき火に足を突っ込みます。

 

「火傷しちまう!」とあわてて止めるどろろと、分けが分からないと言った顔で火の熱さに驚く百鬼丸。感覚が戻ったことで百鬼丸は、寿海が知ってほしいと願った「痛み」を知りました。

 

寿海が言う通り、自分の痛みを知れば、確かに人の痛みも知ることができます。そこから人間らしい優しさを覚えることもできます。でも、それは戦いにおいては弱点になってしまいます。相手をかわいそうに思ったり、手加減する内に、自分がやられかねません。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]生身の身体が戻るのは視聴者としては嬉しいけれど、どんどん戦いにくくなる百鬼丸。人間として成長すればするほど弱点が増えるというのは、彼にとって喜ばしいことなのか、なげくべきことなのか──。この時代においては、答えの出ない問いですね。[/char]

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