大人気アニメ「BANANA FISH」の世界を、各話のあらすじと見どころを、キャラクターたちの気持ちを軸に紹介します。今回は第18話~24話(最終話)。バナナフィッシュを深く理解するために外せない名場面をピックアップして紹介します! 【注意】完全ネタバレです。



第18話/「あいつを殺さないでくれ。お願いだ、あいつを傷つけないでくれ」最強スナイパー・ブランカに英二の命乞いをするアッシュ・・・。

 

「海流の中の島々」

Islands in the Stream

これまでオーサーを退け、コルシカ財団からゴルツィネを失脚させ、バナナフィッシュの情報を集めて、その被験者としてドースン博士を連れ去ったアッシュ。さらにアッシュは、ゴルツィネの背後にいる者を特定するため、キッパード上院議員と接触します。

 

小競り合いをくり返しながらも、バナナフィッシュとゴルツィネの喉元に迫ろうかというアッシュの形勢が、この回で一気に逆転します。

 

少し前から妙な気配を感じとりピリピリしていたアッシュは、それがアッシュ自身に戦い方を教えたプロのスナイパー「ブランカ」だと知り、さらに標的が英二だと知り絶望します。ブランカの絶対的な存在は、アッシュにすべてを諦めさせるに十分でした。

 

アッシュ「かなわない、アイツにだけは。とても歯の立つ相手じゃない」

 

ブランカに肩を撃たれてベッドに横たわっている英二は、アッシュに「すべてが終わったら日本に行こう、自分の育った国を見せたい」と言います。意外そうな表情をするアッシュですが、最後には「日本か、行ってみたいな」と、穏やかな表情で相槌を打ちます。英二の眠るベッドに顔を伏せ拳を固めて、アッシュは自らの決意を新たにします。

 

アッシュ「許さない。おまえを傷つけるやつは絶対。たとえ誰だろうと。誰にもおまえを傷つけさせたりしない」

 

すべてを犠牲にしても英二を守るという強い決意です。電話で呼び出された場所に行くと、ユエルンとブランカ、さらにゴルツィネが待っていました。ここでユエルンは、銃を手にアッシュを試します。

 

ユエルン「君が撃つんだ。君自身の頭をね。そうしたらもう二度と英二に手を出さないと誓うよ──できる?」

 

手渡された銃をアッシュは自らのこめかみに当て、ためらうことなく引き金を引きます。その行動にユエルンは驚き、ブランカは少し悲しそうに表情を曇らせます。さらにアッシュは「弾が入っていない、よこせ」と要求するのです。

 

ユエルン「あんなヤツのためになんで──。なんでそんな簡単なんだ」

アッシュ「何言ってんだ。死んでみせろと言ったのはおまえだろう」

 

第15話で英二を試したときにユエルンは、英二がアッシュのために人を殺せない根性のないヤツだと見くびっています。それなのにアッシュは、いとも簡単に英二のために死のうとするのが不思議で仕方がありません。さらにユエルンは、英二の安全を保障する代わりに、これまで集めたバナナフィッシュの情報すべてと、ドースン博士を引き渡すよう要求します。その引き渡しの後、アッシュがゴルツィネの元に戻ることも約束させます。

 

ユエルン「君は何もかも失うんだ。探し求めた真実も、兄の復讐も、仲間の信頼も、自由も」

アッシュ「──わかったよ」

ユエルン「君はほんとうにそれでいいの? 何もかも失って、地獄に落ちても、それでも・・・」

アッシュ「ごちゃごちゃうるせぇ。言うとおりにするっつってんだろ、このヘビやろう!」

 

ユエルンには分からないのです。なぜアッシュがこれほど英二に心酔しているのか。アッシュにとって英二はもう家族同然で、英二を失う以上に辛いことはないという彼の覚悟が、ユエルンにはどうしても理解できないのです。ユエルンは、とても孤独な人ですね──。

 

この後のアッシュとブランカ二人だけで交わす会話も重要です。ブランカに手加減された上に急所を殴られたアッシュは、だらしなく床にのびています。やはりブランカとアッシュでは格が違うようです。

 

ブランカ「わたしがおまえに忠告めいたことをするのも、これが最後だ。おまえがムッシューに背いたと聞いて、とても驚いた。おまえは過去の確執はもう乗り越えたと思っていたからね。しかし、あの日本人の少年を見て、理由がわかった。だが、それは不可能なことだ。兎と山猫はしょせん友だちにはなれないんだよ」

 

ブランカは、短時間でアッシュと英二の関係を見抜いたようです。ユエルンが人を愛することを知らないのと違い、ブランカは人を愛することを知っているからでしょう。

 

ブランカ「ムッシューはあんなことを言っていたが本心ではない。最初におまえの才能を見出し、後継者として育てようとしたのは、あの人なのだから。

おまえを教育するよう頼まれたとき、わたしは断るつもりだった。だが、おまえに初めて会ったとき、この子はこの世界でしか生きられない子だと思った。だから生き延びるための、その術を教えてやろうと思った。

おまえはじつに優秀な生徒だったよ。わたしもおまえが惜しいんだよアッシュ。わたしはおまえが破滅するのを見たくないんだ。

ムッシューの手に戻りなさい。そうすれば、富も権力も、すべてを手に入れることができる。ただ一つのことを望みさえしなければ」

 

この世界でしか生きられない子」。14才の子どもだったアッシュは、その当時でもすばらしく美少年でした。それを見て、どうしたって力をつけなければ生き延びられないと思ったのでしょう。本人が望まなくても、周りがほうっておかないと。「ただ一つのことを望みさえしなければ」は、友情や愛情。ここでは英二をさしますね。

 

アッシュ「あんたがそれを言うのか。あのジジイのところで手に入れられるものなんか、そんなのはニセモノだ。その上で、オレに与えられた役を演じろって、気がつかないフリをしろって言うのか!

~中略~

余計なお世話だぜ。オレは今、幸福なんだ。この世に少なくとも、ただ一人だけは、何の見返りもなくオレを気にかけてくれる人間がいるんだ。もうこれ以上ないくらい、オレは幸福でたまらないんだ」

ブランカ「だが、それではおまえは破滅するしかない」

アッシュ「ニセモノに囲まれて生きるより、ずっといい」

 

ブランカは、英二を諦めて、ゴルツィネの後継者になりなさいと言います。けれどアッシュは、身はゴルツィネの元に戻っても、英二を想うことはやめないと言い張ります。それでは心が壊れてしまうとブランカは見透かしているのですが、アッシュの気持ちは動きません。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]英二の安全のために自分を殺す覚悟をしたアッシュ──。第18話は、辛い回になりました。ブランカは、この後、物語のキーパーソンとして絡んできます。[/char]

第19話/英二、アッシュ奪還を決意する!

 

「氷の宮殿」

Ice Palace

 

2日間もどってこないアッシュを心配した英二は、ユエルンが情報をもっているとにらみ、シンと一緒にユエルン邸を訪ねます。ここでもまた、ユエルンと英二が激突です。

 

ユエルン「彼は君のために何もかも失ったんだ。君の命を助けるために、ぼくらと取引したのさ。あと2ヵ月もすれば、国家を巻き込んだスキャンダルがスクープされるはずだった。そのすべての情報を、彼は引き渡したんだ。

しかも、それだけじゃない。なぜ彼が君の元に帰ってこないと思う? 彼はゴルツィネの手に落ちた。おまえのせいで地獄に落ちた。ぜんぶおまえのせいだ! それでも、おまえはどうせ何もしやしないんだろ?」

英二「何を言われてもいいさ。でももう、ボクは自分のせいだと思うのはやめた。ボクがアッシュを大切に想うように、彼もそう思ってくれていた。そういうことなんだ。

ボクは必ずアッシュを助ける。そのためには人を殺しても構わない。勝手に言ってろ、バカ!」

 

言うだけ言うとさっさと部屋をでていく英二に、すっかりムカついた表情のユエルン。それを見ていたシンが「あんたの負け」と言うとユエルンはヒステリックにティーカップを投げつけます。

 

シン「若様、オレはあんたのこと嫌いじゃない。だが、今度ばかりはいけねぇな。あんたがゴルツィネと組んで、汚ぇ真似するってんなら、オレは英二の肩をもつかもしれねぇぜ」

 

金と力にモノを言わせてプロの殺し屋の手を借りてアッシュを英二から引き離し、ゴルツィネの元に落としたユエルン。まっすぐにアッシュを想い、自力でアッシュを助け出そうと決意する英二。二人のやりとりを聞いていて、同じ中国人のシンまでユエルンの元を去りました。ユエルンはさらに孤立を深めていきます。

 

ショーターの後釜として登場したシンですが、シンもまた、後半のキーパーソンです。

 

一方ゴルツィネ邸のアッシュは、ゴルツィネの言うとおりにバナナフィッシュを使った国際的な陰謀を計画し、軍の高官らにそれを披露します。ゴルツィネはアッシュの手腕に満足し、養子縁組を進めます。

 

ゴルツィネ「いつかおまえにこの街をやろう。混乱と混沌の海。魔王の降臨する場所としては、どこよりもふさわしい」

 

ゴルツィネの指示通りに動きながらも、アッシュは次第に衰弱していきます。食べても吐き戻してしまうので、点滴だけで過ごしているのです。アッシュの状態を見たブランカは、これは精神疾患だとゴルツィネに伝えます。

 

ブランカ「野生の獣が死んでいくのを見るようです。人間の保護を受け入れずに」

ゴルツィネ「だが死なせはせん。最先端の治療をほどこしている。それでも、どうしても手に入らぬというなら、ワシの手で葬ってやる」

 

結局ブランカの予言通り、アッシュの心は壊れてしまいました。アッシュを取り戻して嬉しそうなゴルツィネですが、形だけは指示通りに動いているのに、どうしても気持ちまではつかめないアッシュに困惑しています。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]ゴルツィネはいつも恐ろしい言葉を吐くのですが、じつはアッシュがかわいくて仕方がありません。人の愛し方を知らないだけなのです。ゴルツィネもユエルンと同じ。孤独でかわいそうな人です。[/char]

第20話/ユエルン+ブランカVSストリート・ギャング全面戦争勃発!

 

「征服されざる人々」

The Unvanquished

 

ゴルツィネがパーティを催すと聞きつけた英二は、そこに乗り込みアッシュを奪還する作戦を練ります。アレックスたちアッシュの仲間に、シン率いるチャイニーズの連中も加わっています。さらにアップタウンに詳しいケインの仲間も集結。アッシュの人望の厚さがうかがえると同時に、英二も皆に慕われているのが分かりますね。

 

アッシュ奪還作戦から始まる第20話は、攻守入り乱れての緊張感あふれる激戦です!

 

パーティ会場に英二がボーイとして紛れ込んでいるのを見つけたブランカは、アッシュにこうささやきます。

 

ブランカ「アッシュ、爪と牙はまだしっかりしてるな? わたしはユエルン氏と契約した」

 

ブランカがもうゴルツィネと契約していないことを知り、アッシュの瞳に光が宿ります。それならもうゴルツィネに囚われている必要はないと思ったのでしょう。銃を手にパーティ会場になだれ込むシンたち。薬で一時的に視力を奪われているアッシュをなんとか奪還して、地下水路を通り、アッシュの体力が戻るまで廃線の地下鉄駅で休憩を取ります。英二が温めた缶詰のスープを飲み「うまいや」と表情をほころばせるアッシュ。なんと1ヵ月ぶりの食事です。

 

アッシュ奪還に加勢したことで、シンたちチャイニーズのストリート・ギャングは、チャイナタウンを仕切る李一族のユエルンを裏切る形になってしまいました。シンは、兄のラオにそれを謝ります。

 

シン「悪いなラオ。とうとう後戻りできねぇことに引きずり込んじまった」

ラオ「いいさ。皆、上のやり方には頭にきてたんだ。それより分からねぇのは、おまえの気持ちだよシン。なんでそこまでアッシュ・リンクスに肩入れする」

シン「ダウンタウンを仕切れるのはヤツしかいないからだ」

ラオ「なんだと! ヤツはショーターを殺してダウンタウンを手に入れたんだぞ。なぜヤツなんだ? おまえはどうなんだよシン」

シン「いいかラオ、ダウンタウンをまとめられるのはヤツしかいねぇ。ヤツがいなくなったら第2、第3のオーサーがでる。また無差別の殺し合いだぞ。これはオレの決めたことだ。イヤなら抜けろ」

ラオ「分かったよ、ボス」

 

シンはアッシュから、ショーター事件の真相を口留めされています。もし真相を話せば、チャイニーズのストリート・ギャングたちはショーターの敵(かたき)を討つために、ゴルツィネを敵に回すことになるから、というのがアッシュの理屈です。「仲間を皆殺しにされたいのか?」とアッシュに言われて、黙ってきたのです。

 

かつてラオは、ショーターの親友でした。ラオはどうしてもアッシュが許せません。この小さなほころびが後にとんでもない事態を生みます。

 

わずかな眠りから覚めたアッシュに、ガスマスクを装着した敵が銃や催涙弾を手に迫ります。アッシュが衰弱していることを知った英二は、敵をアッシュから遠ざけるため自分がおとりになって地下水路を走り出します。一方ケインはアッシュを気絶させて自分のアジトに運び入れます。ケインにとっては、英二よりもアッシュの方が大事だからです。

 

アジトで目覚めたアッシュはケインを振り切り、今度は英二のいる地下水路から敵の目をそらすため、わざと目立つように地上を走り自然史博物館に逃げ込みます。アッシュの現在地を知ったユエルンは現場に急行。ブランカの忠告もきかずに「一斉に突入だ!」と、部下を博物館に送り込みます。

 

自然史博物館でのアッシュは、仕事人のようにユエルンの部下たちに襲い掛かります。暗闇からふっと現れてはナイフで喉を切るアッシュは、恐ろしくも美しい! ケインのグループも地上から加勢しはじめ、博物館前はストリート・ギャングとチャイニーズの銃撃戦に。そこに、地下で捕えられた英二たちが車で運ばれてきて、形勢は逆転に次ぐ逆転。

 

ついにアッシュはユエルンを人質にとり、ブランカと交渉の末、ユエルンと英二ら捕虜4人との交換に成功。こうして、ようやくアッシュはダウンタウンに復帰します。

 

第21話/元フランス軍傭兵部隊VSストリート・ギャング全面戦争勃発!

 

「敗れざる者」

The Undefeated

チャイニーズのストリート・ギャングは、裏切り者としてユエルンに捕らえられています。シンには逃げられましたが、残った捕虜にラオがいるのを見たユエルンは、ラオに話しかけます。どうやら、また何か企んでいるようです。

 

ユエルン「捕虜のなかにおまえがいたとは運がいい。ラオ・イエンタイ、亡きショーター・ウォンの親友にして片腕、そして今はシン・スーリンのもっとも信頼する腹心。

おまえはショーター・ウォンを見殺しにしたアッシュに反感をもっているね。だからシンがアッシュに傾倒していくことを快く思っていない。──弟を助けたくはないか? ラオ」

 

一方、英二救出のためアッシュにバナナフィッシュの資料を渡してしまったマックスは、別の事件を追うことを決めていました。以前アッシュから聞かされていた、大物政治家による少年をターゲットにした性犯罪をスクープしようというのです。ゴルツィネの手下から写真資料を入手したマックスは、アッシュの目の前で、かつてのアッシュの資料が入った封筒を燃やします。

 

マックス「もう忘れろ。いや、忘れられるもんなら、とっくにそうしてるよな。だったらもう思い出すな。こういうものに、もうおまえは支配される必要はないんだ」

 

自分の家族のことになるとカラキシだらしないマックスですが、ここは最高にかっこよかったです。「忘れられないなら思いだすな」。そういう身の守り方もあるんですね! マックス、ナイスガイです!

 

せっかく捕えたアッシュに逃げられたゴルツィネは怒り心頭です。ブランカはユエルンと契約しているので、また新たな刺客を呼び寄せます。今度は元フランス軍外人部隊フォックス大佐率いる傭兵です。戦争のプロの装備と百戦錬磨の作戦でアッシュたちストリート・ギャングを追い詰めます。

 

これまでと異なる大掛かりな戦闘に備え、アッシュも頭脳フル回転で策を練ります。主力部隊であるアッシュたちが陽動している間に、英二を含む別部隊のシンたちは安全な場所に逃げる作戦で応戦。しかしついに主力部隊のマックスたち数人が捕えられ、フォックス大佐はアッシュに投降を呼びかけます。

 

戦いの規模が大掛かりに、どんどん膨らんでいきます!

 

第22話/英二が腹を撃たれ、アッシュの狂気が爆発!

 

「死の床に横たわりて」

As I Lay Dying

 

銃を捨て、投降したアッシュを捕えたフォックス大佐は、アッシュに取引を持ち掛けます。

 

フォックス大佐「わたしと組む気はないかねアッシュ。君が財団のトップになれば、やがて世界が君にひざまづく。君が自ら手を汚すことがないように、わたしが闇の部分を引き受けようじゃないか。わたしと手を組めば世界は我々のものだ」

 

こんな取引に応じるアッシュではありませんね。バカらしそうに笑い出します。

 

アッシュ「おまえたちはいつもそうだ。力で人を踏みにじり支配しようとする。好きにすればいい。オレは誰にも支配されない。おまえたちに負けない。オレの魂をかけて、逆らってやる!」

 

その後フォックス大佐が席を外したすきにアッシュは逃げ出し、ストリート・ギャングの仲間と合流します。ほっとしたのもつかの間、こんどはチャイニーズのラオの発言をきっかけに仲間割れが始まります

 

アッシュ「暇そうだな。好きにしろ、ただしこれ以上邪魔をするな」

 

呟くように言ったアッシュの一言で、皆は「そうだ、仲間割れしてる場合じゃない」と我に返ります。みかねてシンは、ラオに詰め寄ります。

 

シン「おまえには、何度も説明したろ。何でイチイチ、アッシュにつっかかるんだ」

ラオ「オレたちのボスはおまえだ。ヤツじゃねぇ」

シン「格が違うんだよ。ヤツとオレとじゃ。オレには一言であいつらの頭を冷やさせるなんてマネはできねぇ。力のあるヤツが仕切るのは当然のことだ」

~略~

ラオ「オレは、おまえにダウンタウンのキングになってもらいたいんだよ」

シン「やめてくれ。誰がボスかなんてこと、意味がねぇだろ。しょせん李家やゴルツィネに、いいようにされるだけじゃねぇか。今、戦わなきゃ、オレたちは一生使い捨ての道具なんだぜ」

ラオ「そうか、よく分かった。だがオレはアッシュ・リンクスの風下に立つ気はねぇ。おまえが何と言おうと、ぜったいにヤツを認めねぇ」

 

第20話でもあったシンとラオの言い争いが再燃です。じつはラオは、英二を殺すようユエルンから言い含められています。それと引き換えにシンの命は助けてやると。

 

ずっとユエルンのやり方を見ていたブランカは、ついにユエルンの元を去る決意をします。ブランカのなかにも微妙な変化がありました。住む世界が違う英二とアッシュが友だちになるのはムリだと信じてきたのですが、もしかしたら可能なのかも知れないと思うようになったのです。

 

その頃、アッシュは英二と話しています。

 

アッシュ「オレの手は血で汚れている。オレが殺した数えきれないほどの人の血で」

英二「でも、そうしなきゃ君は殺されてた」

アッシュ「オヤジによく言われたよ。おまえはトラブルメーカーだって。必ずおまえにも災いが降りかかる。どこへ行っても。今だってそうだろ?」

英二「アッシュ、ボクが迷惑だと思うって言うのか。そんなことあり得ないって。君が誰よりもよく分かっているはずじゃないか。君を失いたくないんだ。君のためなら何でもする。一緒に日本に行こう、アッシュ。日本なら、銃を持たずに暮らせる。君は生まれ変わって、きっと自由になれる。もう戦わせたくないんだ。これ以上、君を危険な目に遭わせたくない」

アッシュ「ありがとう。オレもおまえのようになりたかった。もうちょっとマシな生き方ができたらと、ずっと思っていた」

英二「できるよ。今からだって遅くない! 君なら何だってできる」

アッシュ「じゃ、日本語教えてもらわなくちゃな」

英二「もちろんさ!」

 

父親の言葉の呪縛に囚われ自分を「トラブルメーカー」だと言うアッシュは、英二の「君は生まれ変わって自由になれる」という言葉に希望を見出します。そしていつか英二と一緒に日本に行くために、二人で日本語の挨拶を練習し始めます。

 

英二「じゃ次は別れの挨拶ね。さ・よ・う・な・ら」

アッシュ「サ・ヨ・ナ・ラ」

 

英二の言葉にすっかり心溶かされ、安心しきって日本語の練習をするアッシュは、背後から近づく2つの影に気がつきません。アッシュに銃を向ける男に気がついたのは英二でした。とっさに英二はアッシュをかばって自分の腹を撃たれます。

 

英二が撃たれたのを見て、狂ったように怒りを爆発させるアッシュ。いくら撃っても収まらないとばかりに、何十発もの弾をとうに死んでいる犯人に打ち込みつづけます──。それは、ラオと同じくユエルンに内通していたシンの仲間たちでした。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]ここで「サヨナラ」という日本語を教えたことを、後に英二は後悔します。戦いは激化し、アッシュへの不満分子や敵への内通者が現れ、心のよりどころの英二が撃たれ──アッシュはもうボロボロです・・・。[/char]

第23話/「サヨナラ」。英二が教えた日本語で、アッシュは別れを告げる。

 

「誰がために鐘は鳴る」

For Whom the Bell Tolls

 

次回24話は最終話。その前段階となる今回は、これまでさまざまに交差してきた人間関係が収束していくための準備です。感情的に暴走しがちなアッシュの上を行くブランカが、物語全体をぎゅっとまとめてけん引します。名シーンだらけの第23話を紹介します。

 

救急車に乗せられる英二についていこうとするアッシュをブランカが引きとめます。かわりにジェシカ(マックスの元妻)が付き添って救急車は出発。

 

ブランカ「行ってどうなる。おまえは犯罪者だ。おまえとの関わりを追求されたら、彼は共犯者にされかねない。いつかこうなると分かっていて、なぜ彼を側に置いた。守り通すこともできんくせに、ただ自分の孤独を埋めたくて側に置いたんだろう」

アッシュ「黙れ!」

ブランカ「彼はおまえが救われるために存在しているわけじゃない!」

 

ブランカ容赦ありません。確かにその通りなのですが、気持ちの整理がつかなくて、ブランカに向け銃を撃ちまくるアッシュ──ぜんぶ外れてますけれど。

 

自分の仲間から裏切り者を出してしまったシンは複雑です。残った仲間の潔白を示すため、シンはボスとしてアッシュに謝罪します。

 

シン「オレの仲間から裏切り者を出してしまった。そのことをまず詫びたい。これで済ますつもりはない。オレは制裁を受けるつもりだ。だがオレにもボスとしての責任がある。つかまったヤツらを無事、助け出した後のことだ。その上でもし、情けをかけてくれる気があるなら、アッシュ、あんたとサシで勝負したい」

 

これを聞いてラオは激昂し、「オレは抜ける」と、その場を後にします。

 

チャイニーズのボスとして、シンは筋を通そうとしたのです。もちろん自分がアッシュにかなうわけがないことは承知しての申し出です。仲間を救うため必死なシンの眼差しに、アッシュは申し入れを承諾します。

 

ユエルン邸にもどったブランカは、正式にユエルンとの契約を終了すると告げ荷物をまとめます。「行かせないと言ったら?」。ブランカがアッシュに加担すると見越したユエルンはまだ妨害しようと口を開きます。ブランカはユエルンを諭すように静かに話し始めます。

 

ブランカ「ユエルンさま。あなたは人を憎むことだけ覚えて、愛することを学ぶことができなかったのですね。かつてのわたしもそうでした。わたしの場合は、憎むこともなかった。およそ感情というものを持つことがなかったので」

 

ここでブランカは、自分のかつての妻ナタリアとの思い出を持ち出します。「彼女と出会って、わたしは初めて人間らしい感情をもつことができたのです」。しかしブランカが家を留守にしている間にナタリアは殺されてしまったと。

 

ブランカ「ユエルンさま。奥村英二をアッシュから奪うことは、もう一人わたしたちをつくってしまうということなのですよ。愛さず愛されもせず。憎悪と虚無だけが生きる糧の、哀れな生を。あいつは憎んで覇者となるよりも、愛して滅びる道を選んだんです。愛さなければ、愛してもらうこともまたできません。アッシュは、あいつは少なくとも愛することを知っています」

 

これがブランカの答えでした。かつてアッシュに「ムッシューの元に戻りなさい」と忠告したブランカですが、もはやアッシュの選んだ道を肯定し、見届けてやろうという気持ちに動いたのです。英二が救急車で搬送された後、

 

ブランカ「いつかこうなると分かっていて、なぜ彼を側に置いた。守り通すこともできんくせに、ただ自分の孤独を埋めたくて側に置いたんだろう」

 

とアッシュに言ったブランカの言葉は、ブランカ自身にとっても痛かったはずです。ブランカには、今のアッシュが、かつての自分のように見えているのでしょう。ブランカには、アッシュの気持ちがよく分かっています。だからいつも少し眉を寄せ、哀しげな表情をするのでしょう。

 

ユエルン「行けよ、行っちまえ!」

ブランカ「あなたを気にかけ、愛してくれる者がきっといます」

ユエルン「いるか、そんなの!」

ブランカ「あなたが気づかないだけですよ」

 

ここでユエルンに語ったブランカの言葉は、そのまま「BANANA FISH」という物語のテーマですね。ある意味、現実でも覇者というのは、皆、愛情に欠けたところがあるような気がします。そうでなければ、務められないような気もします。

 

アッシュは「愛して滅びる道を選んだ」。

ユエルンに「あなたを気にかけ、愛してくれる者がきっといます」。

 

これはもう予言ですかね・・・。

 

5000万ドル(約55億円)から500ドル(約5万5000円)に値下げして、ブランカはアッシュと契約します。人質を解放するため国立精神衛生センターに殴りこみに向かう前、ブランカはアッシュを英二が入院している病院につれていきます。

 

夜12時少し前、白衣姿で病院に潜り込んだアッシュは、ベッドで眠っている英二を見下ろし、声を殺して泣いています。

 

アッシュ「オレは、オレはなんてことを・・・。ヤツの言う通りだ。分かってたはずなのに──サヨナラ」

 

眠っている英二は、アッシュの気配に気づいていました。「サヨナラ」と呟き部屋を出るアッシュを求めて、英二はふらつきながら廊下に出ます。「アッ・・・シュ・・・」。力なく呼ぶ英二の声にアッシュが振り向きます。

 

アッシュ「だめだ英二、動くな!」

 

廊下に倒れ込んだ英二に駆け寄るアッシュ。英二とアッシュの伸ばした手がもう少しで繋がるところで、英二の背後から誰かが走り寄ってきます。伊部とチャーリー警部補です。

 

英二「行ってアッシュ、捕まる・・・行けぇ~!」

 

英二の涙の絶叫に、アッシュも目を潤ませながらその場を後にします。もう、涙なしでは見られません──。

 

第24話/「My soul is always with you」

 

「ライ麦畑でつかまえて」

The Catcher in the Rye

 

いよいよ最終話です! 仲間の解放のため国立精神衛生センターに集結したアッシュたちストリート・ギャングは、マスコミ報道を気にして車で出てきたゴルツィネたちを襲います。ゴルツィネ自身を人質に取り、仲間を解放させようという大胆な計画です。今回は、かなり詳細なストーリー紹介になります。

 

ところがゴルツィネは、裏切り者フォックスにより銃で撃たれてしまいます。ここからは再び、フォックス大佐率いる傭兵部隊VSストリート・ギャングの戦いです。今回は、頼もしいブランカも味方です。

 

フォックス「あなたはすっかりこの美しい魔物に骨抜きにされてしまったようだが、わたしは違う。必ず飼いならし、意のままにしてみせる」

 

フォックスは、どうあってもアッシュを生け捕りにして次期コルシカ財団のトップに祭り上げ、自分の傀儡にしようと企んでいるのです。瀕死の重傷を負いながらゴルツィネはフォックスをあざけります。

 

ゴルツィネ「身の程知らずが。自分の器も見極められんとは。きさまは哀れなファウストだ」

 

これまでさんざん手こずらされてきたアッシュをそう簡単に飼いならされてたまるもんか、というゴルツィネの意地ですね。「ファウスト」は、オペラ鑑賞が趣味のゴルツィネらしい比喩ですが、「愚か者」という意味合いでしょう。

 

アッシュは捕えられ、麻酔を打たれて屋上のヘリポートに連れていかれます。

 

一方、ストリート・ギャング+ブランカたちは人質の解放に向かいます。苦戦しているところに武装したジェシカが現れ、ロックを破壊して見事、人質たちを解放します。つかまっていたマックスはジェシカと抱き合い一言。

 

マックス「生きて会えたら言おうと思ってた。もう一度、結婚してくれ」

 

元さやですね。おめでとうマックス!

 

ブランカは、陽動役として一人で別行動をとっているアッシュの救出に向かいますが、そこにシンがついていきます。

 

その頃、屋上のアッシュは麻酔を打たれながらも逃げ出し、フォックスと死闘を繰り広げていました。フォックスはヘリコプターを呼び寄せます。ヘリコプターからアッシュに向かってバルカン砲(?)が打ち込まれます。フォックスはもう、コルシカ財団の御曹司アッシュを生かしておく気は吹き飛んでしまっているのでしょうか?

 

ようやく屋上にたどり着いたブランカとシン。ヘリコプターを見たブランカはシンを座らせ、ライフルを構えます。

 

ブランカ「ちょっと肩を借りるよ」

シン「ムリだよ、この距離と風じゃ!」

ブランカ「耳を塞いで」

 

ハイいっちょ上がり! ブランカは1発でヘリコプターのパイロットを仕留めました。さらに下から援護に向かおうとするフォックスの部下をシンがかく乱し、ブランカが狙撃。いい連携です。

 

銃声の鳴り響くなか、弾のつきたアッシュはフォックスの銃も手から落として肉弾戦を繰り広げます。ついにフォックスに組み敷かれアッシュが劣勢になったところで、30分後に施設を爆破するよう命じられていたフォックスの部下が起爆スイッチを押し、大爆発が起こります。その揺れでフォックスの手を逃れたものの、今度はフォックスは肩にナイフを突き立ててきます。アッシュは手近にあった電動ドリルでフォックスの腹を刺し・・・もう渾身の死闘です。

 

シンは、バナナフィッシュの資料が入ったアタッシュケースを持ち去ろうとしますが、先の爆発でビルの端から辛くも片手だけでぶら下がっています。シンに気がついたアッシュはその手をつかみ「それを捨てろ」と叫びます。そこに、息を吹き返したフォックスが銃を向け──さすがにもうアッシュを生け捕りにする気はなさそうです。

 

アッシュの背後で銃声が響き、フォックスは倒れます。フォックスを撃ったのは、なんとゴルツィネでした。まだ生きていたのです。ゴルツィネはフォックスを撃った格好のまま、無言で火の海に落下していきました。最後の最後にアッシュを救えて、どこか満足そうな顔でした。それを眉根を寄せて見送るアッシュ──常に憎み、倒したいと願い続けてきたゴルツィネの意外な行動の真意が、測りかねているというところでしょうか。

 

人質を解放し、フォックスの企みを退け、ゴルツィネが逝き──長かった戦いは、ここにようやく終結しました。

 

シンは、ラオや仲間を裏切らせた張本人のユエルンを訪れます。ここでの二人のやりとりは見ものです。罪の意識からか、昼間から酒を飲んでうじうじしているユエルンに、シンは言います。

 

シン「あんたはアッシュが英二に心を許すのが許せないんだ。自分の得ることができないものをアッシュが得たから。あんたはただ嫉妬してるだけだ!」

 

図星をさされてユエルンはシンを平手打ちしますが、すぐにシンも叩き返します。

 

シン「いい加減、後ろばっか見るのはやめろよ。どんなに呪っても李一族の血が流れてるのは事実なんだ。あんたのしたことは許せねぇ。だけど、オレたちのいざこざで、チャイナタウンは真昼間でも歩けねぇほどすさんじまった。あんたには生きて罪をつぐなってもらう。チャイナタウンを取り戻すために」

ユエルン「ボクにはそんな力は──」

シン「オレが手助けすると言ってるだろう。もう自分を憎むのはやめろよ」

~略~

シン「オレ、どうしてもあんたを憎むことができない。あんたは怪我人だ。あんたの心は血を流してる。今でも──そういうところはアッシュと同じだ」

 

シンは賢いですね。未来を見据えて、一緒に良い街を取り戻そうとユエルンに手を差し伸べているのです。ユエルンは、いいパートナーを見つけましたね。

 

マックスとジェシカ、アッシュとゴルツィネ、さらにシンとユエルン。それぞれの関係性が少しずつ良い形で前に向かいました。次はアッシュとブランカです。

 

公園のベンチで本を読んでいるブランカを探してアッシュがやってきます。ここでの会話に、アッシュが英二のことをどう思ってきたのかが集約されています。

 

ブランカ「英二は明日、帰国するそうだ」

アッシュ「あんたの言う通りだよ。オレはあいつにとっては、疫病神だ。オレはあいつの人生に関わっちゃいけない人間なんだ。それがよく分かった。いや、前から分かってたんだ。それを認めたくなかったんだろうな。我ながら情けねぇよ。

初めて会ったとき、あいつはオレがどういうヤツか知ってて、それでもオレを恐れたり、警戒したりすることが全然なくて。よく分からない下手くそな英語で話しかけてきた。変なヤツだと思って、最初は外国人だから言葉がよく通じないせいかと思ったけど。やがて、そうじゃないって気がついた。

あいつが側にいてくれると、あいつの優しさや誠実さ、温かさがどんどん体に流れ込んできて、オレを満たしてくれるのが分かった。でもオレは、オレの体はまるで機械みたいに反応して人を殺し傷つける。何も考えず、何も感じず。これほど自分を恐ろしいと、恥ずかしいと思ったことはない。もう二度と会わない。でも、あいつはオレの友だちだ。たとえ一生会えなくても、想うことくらいは許されるだろう?」

ブランカ「これからどうするんだ」

アッシュ「別に。今まで通り、街のダニさ」

ブランカ「わたしと一緒にカリブへ来ないか」

アッシュ「自分の孤独を埋めるために、オレを連れていくのか? らしくないぜセルゲイ」

ブランカ「そうだな。今のは忘れてくれ」

 

セルゲイは、ブランカの本名ですね。「自分の孤独を埋めるために~」は、前回の23話で、アッシュ自身がブランカから言われた言葉を引用しています。こうして二人は握手して別れます。ブランカは、かつての教え子アッシュの心が満たされたことに満足したようですが、その鋭さから一抹の不安も抱えています──

 

最後がアッシュと英二の関係の収束です。

 

英二は車椅子に乗せられたまま、病院から空港に向かいます。アッシュが見送りに来ないことをシンはひどく心配していますが、英二はそんな気がしていたようです。アッシュに手紙を書いてもっていました。それをシンが、図書館にいるアッシュに届けます。

 

アッシュ。君の無事な姿が見られないから、ボクは不安でたまらない。

君は言ったね。オレたちは住む世界が違うと。でも本当にそうなのかな? ボクたちは肌の色も目の色も、生まれた国もすべて違う。でもボクたちは友だちだ。それで十分なんじゃないかな?

ボクはアメリカに来てほんとうに良かったと思ってる。色んな人に会えた。そして何より、君という人に会えた。

君は何度もボクにきいたね。おれが恐ろしいかと。でもボクは、君のことを恐ろしいと思ったことは一度もないんだ。それどころか、君はボクよりずっと傷ついてる。そんな気がして仕方がなかった。

おかしいだろ。君のほうがボクよりずっと頭もいいし、身体も大きく力も強い。それなのにボクは、君を守らなければ──と、ずっと思っていた。ボクは、何から君を守りたかったんだろう。

 

英二の手紙には、「アスラン・カーレンリース」名義の羽田行きの航空券も同封されていました。この名義では実際には使えない航空券ですが、ストリート・ギャングの「アッシュ」ではなく、ただの「アスラン」として救いたいという英二の願いでしょうか。

 

たまらず走り出すアッシュ。そこに飛び出してきたラオがアッシュの腹にナイフを突き立て──。アッシュとシンがサシの勝負をすれば、必ずシンが負けてしまうから、ラオはそうさせたくなかったのです。あの国立精神衛生センターの屋上で、アッシュとシンは和解していました。ムダな勝負などやめようと。でも、そんなことを途中で抜けたラオは知りません。

 

NY公立図書館閲覧室 出展/wiki

 

ラオを銃で撃ってからアッシュは震える手で手紙を拾い集め、のろのろと図書館の閲覧室に戻ります。

 

ボクは、運命から君を守りたかった。君を連れ去り、押し流す運命から。

君は小説に出てくるヒョウの話をしてくれたね。そのヒョウは、自分が戻れないことを知っていたに違いないと。ボクは答えた。君はヒョウじゃない。運命は変えることができるんだ。

君は一人じゃない。ボクが側にいる。ボクの魂はいつも君とともにある。

 

英二の飛行機が離陸するころアッシュはふと天井に近い窓から空を見上げ、英二の手紙に頭を載せて目を閉じます。まるでいい夢でも見ているように、微笑みながら──。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]ピアノのBGMが流れるなか、眠るアッシュの姿を遠くから俯瞰する画面。辛く、常に社会と戦ってきたアッシュの魂がやっと救われたのだという余韻を残すことなく、プツリと物語は閉じます。驚きと、アッシュを失った悲しみと、アッシュの魂が救われた少しの救いに温かみも感じたり、でもやっぱりこんなラストを認めたくなかったり──。複雑な感情をどうしていいのか、唐突に物語から置き去りにされた視聴者は、気持ちのやり場に困ってしまうラストです。[/char]

 

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