2019年1月~放送のアニメ「どろろ」。第5話「守り子唄の巻・上」の詳細なあらすじと見どころを紹介します。あわせて感想もどうぞ!【注意】完全ネタバレです!



第5話/「ねぇちゃんの唄で穴から引っ張り出してくれよ!」百鬼丸はミオの唄声をきっかけに、少しずつ音に慣れてゆく

 

守り子唄の巻・上

morikouta no maki/jyou

 

妖刀・似蛭を倒したことで耳を取り戻した百鬼丸ですが、これまで静寂の世界に生きてきた彼にとって、音の洪水は耐えがたいものでした。なるべく静かなところを選んで、どろろは森のなかに百鬼丸を連れてきました。それでも雨粒の音、遠い滝の音、カエルの鳴き声、鳥の鳴き声、動物の足音・・・あらゆる音が百鬼丸に襲い掛かります。

 

百鬼丸には音の取捨選択ができないので、必要な音も不要な音もすべてを聴いてしまい、うるさくて仕方がないのです。ただ両耳を押さえてうずくまってしまいます。「大丈夫かい?」と、話しかけるどろろの声も不快なようです。

 

上巻でのテーマは「音の克服」です

 

そこに大型の鳥のあやかしが襲ってきて、百鬼丸は応戦します。でもあやかしの羽音や鳴き声に惑わされ位置が分からず、百鬼丸はいつになく苦戦することに。なんとか琵琶丸に助けられてあやかしを倒しましたが、百鬼丸は怪我をしてすっかり呆けてしまっています。

 

琵琶丸「まったく、穴倉にこもった手負いの獣ってとこだね。いいかい、これは人の声だ。周りにあるのは森に生きてるモンや、火や風の音さ。おまえさんは慣れなきゃいけないよ。穴倉からこの世に出るためにはね」

 

自分の耳を塞いでいる百鬼丸の手を耳からはがして琵琶丸は諭しますが、琵琶丸のしゃがれ声はそうとう耳障りだったのでしょう。百鬼丸はまた耳を塞いで、子どものように丸まってしまいました。

 

ここでは、百鬼丸の寝かたに注目です。第2話の万代戦の頃まで百鬼丸は座ったまま寝ていたのですが、それ以降は身体を横たえて寝ています。万代戦で神経が戻ったので、身体に疲れを感じるようになったのですね。でも目はまだ義眼なので、目を閉じて眠ることはしません。細かい描写の積み重ねがリアルさを生みますから、こういうこだわりは、すごくいいですね!

 

神経が戻っただけでも、これまでと随分、勝手が違うのに、音まで克服しなければいけないなんて、百鬼丸も大変ですよね。普通ならあやかし退治どころじゃないはずなんですが、生きていくためにはそうも言っていられない時代です。「生きる」って、じつはとても大変なことなんですよね。それが、この作品の大きなテーマの一つだと思います。

 

翌朝、百鬼丸は初めて聞く音に引かれて小川にやってきます。音が聞こえすぎないようにと、どろろが百鬼丸の頭に巻いた白い布がリボンのように見えて、なんだか可愛らしいです!

 

「赤い花摘んで~♪」小川では赤い着物を着た少女が歌いながらなにかを洗っていました。その柔らかな歌声に引かれたのですね。少女の名は「ミオ」といいました。ミオは荒れ寺で、8人ほどの戦災孤児たちと暮らしています。鳥のあやかしから傷を受け、熱まで出してしまった百鬼丸とどろろは、しばらくこの寺に滞在させてもらうことにします。琵琶丸も一緒です。

 

「わたくしどもは、国ごと小さな礎ひとつの上に載っていることをお忘れなきように」縫の方は、百鬼丸の生存を確信しています

 

荒れ寺の近くには国境があり、二つの陣営がにらみ合い膠着状態になっていました。一つはこの辺りを治める酒井陣営、もう一つは隣国の醍醐陣営です。醍醐陣営は、百鬼丸の父親の側の陣営です。にらみ合いを続ける両軍は、一触即発。いつ合戦が起きてもおかしくありません。

 

自分の身体を取り戻すため鬼神を追いながら、いつしか百鬼丸は故郷の近くまで来ていたのですね。

 

醍醐景光の石川領では、もう1ヵ月も雨が降っていません。膠着状態の陣営に兵糧を送ろうにも、このままでは今年は凶作になりそうで、たくわえを兵糧に出すのは不安だと家臣は景光に進言しますが、領主の景光は取り合いません。そこに景光の妻・縫の方が口を挟みます。

 

景光「我が領地において、凶作などあり得ん!」

 

縫の方「そうでしょうか。酒井殿のことに、こたびの日照り続き。それに、今年は山崩れもございました。まるで、かつてのこの国に戻ったような」

 

景光「何が言いたい?」

 

縫の方「わたくしどもは、国ごと小さな礎ひとつの上に載っていることをお忘れなきようにと。いつ崩れてもおかしくはありませぬ」

 

悪魔堂に雷が落ち鬼神像が割れるとともに、領内に天災が起きることを景光は知っていました。そのことから、どうやら鬼神たちとの取引材料として身体じゅうの部位を奪われた長男が生きているのだと、そして鬼神たちを倒しているのだと気がついていました。景光は、長男と、赤ん坊を川に流しに行った産婆の行方を捜させていますが、いまだに足取りはつかめていないようです。

 

生まれてすぐの長男がなぜ身体じゅうのあちこちを欠いた姿になったのか、その理由を縫の方も知っているようですね。領地に災害が起きるのは「あの子が生きている証」と思えば、縫の方はどんな気持ちでしょう。口には出せないけれど、どれだけ嬉しく思っていることでしょうか!

 

長男(百鬼丸)が生まれたときに雷に打たれてはじけ飛んだ、首のない菩薩像を縫の方は今でも部屋に飾っていて、ことあるごとに手を合わせてきました。きっと無事を祈っているのでしょう。その姿を見ながら育った次男の「多宝丸」(たほうまる)も複雑です。多宝丸は、自分が母親に愛されている実感をもてていません。自分に兄がいることも知りませんが、両親ともになにか隠し事をしていることには気づいています。

 

ミオの唄に優しい表情になる百鬼丸──可愛い!

 

百鬼丸は石段に座ってミオが仕事から戻ってくるのを待っています。ミオが帰ってくると彼女の口元を指さし、自分の口をパクパクさせます。

 

ミオ「なに?」

 

どろろ「もしかして、ねぇちゃんの唄が聴きたいんじゃ?」

 

ミオ「うた?」

 

どろろ「アニキ、ねぇちゃんの声はうるさくないみたいなんだよなぁ。あ、そうだ! ねぇちゃんの唄聴いてれば、音に慣れるかも。今のままじゃ穴倉にこもった獣みたいなもんだからなぁ。ねぇちゃんの唄で穴から引っ張り出してくれよ」

 

ミオ「あたしの唄、そんなたいそうなもんじゃないと思うけど──じゃぁ──赤い花摘んで~♪」

 

聴いている百鬼丸の表情がうっとりと和らぎます。これまで見せたことのない穏やかな顔です。口もとがほころんで、とても可愛いのです!

 

そこに、抜け道を探しに出ていた琵琶丸が帰ってきます。「いい話」と「悪い話」をもってきたようです。「いい話」は、安全な山の中に豊かな水が流れる、肥えた土地を見つけたこと。小さな小屋もあります。「悪い話」は、その小屋の前に大穴が開いていて、そこに鬼神が潜んでいるらしいこと。

 

話を聞いた百鬼丸は、まだ怪我も治りきっていないのに、さっそく鬼神退治に出かけます。その様子を見ていたミオは「わたしも頑張ってみよう」とさらに仕事を増やす決心をします。引っ越しに備えて、いろいろ準備をしようと考えたのです。その夜からミオは、酒井の陣だけでなく敵陣の醍醐の陣でも働くことにして寺を出ます

 

ミオがあまり大変そうなら仕事をやめさせようと後をつけてきたどろろが見たのは──。この時代の身寄りのない少女が8人もの孤児を養うためにできる夜の仕事といえば──どろろは思わず草むらに身を隠し口を押えます。

 

一方、百鬼丸と琵琶丸は鬼神退治に挑みます。鬼神は蟻地獄を巨大化したような化け物です。砂穴の中に隠れていて、長いハサミを振り回します。なんとか喉に刀を突き立てたものの、蟻地獄の化け物は百鬼丸の足を食いちぎって砂の中にもぐってしまいました。

 

ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

激しい痛みに顔をゆがめ、苦痛の叫びをあげる百鬼丸。ふくらはぎから下を食いちぎられたのは──生身の右足の方だったのです! 鬼神は取り逃がしましたが、なんと、百鬼丸に声が戻ってきました!

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]想像はしていたけれど、やはりミオの仕事は汚れ仕事でした。百鬼丸と最初に会ったとき小川で洗っていたのは、自分の下腹部だったのですね・・・。現場を見てしまったどろろはどうする? 百鬼丸の方も大変です! 大事な生身の右足が食いちぎられてしまいました! でも、悪いことばかりじゃありません。なんと声が戻りました! やっと百鬼丸の声が聞けました♪(絶叫ですけど) 怒涛の展開で下巻に続きます![/char]

第5話で気になったこと。「百鬼丸、言葉の理解が早すぎない!?」

 

2019年版の「どろろ」、ほんとうに気合の入った作りこみで、どの回も素晴らしいの一言なのですが、第5話の今回、すごく気になる描写がありました。おそらく多くの方が違和感を覚えたところだと思うので、ここで取り上げたいと思います。

 

段落タイトルの通り、「百鬼丸、言葉の理解が早すぎない!?」ってことです。

 

かの有名な「ヘレン・ケラー」の逸話はだれでも知っていますよね。ヘレン・ケラーは視覚と聴覚の両方に障害があるため、モノには一つひとつ「名前」があるということから理解しなければいけませんでした。その克服には根気強く教えつづける愛情と、長い時間が必要でした。

 

もちろん「どろろ」は、障害を克服することがテーマの作品じゃありません。だから、「ヘレン・ケラー」のように言葉を獲得していく過程を丁寧に描く必要はないと思います。でも・・・でも「丁寧に描く必要はない」けれど、だからといって「まったく描かない」のは、あまりに違和感があります。

 

たとえば今回でいえば、琵琶丸が「いい話」と「悪い話」をもってきたときの描写です。本篇では、琵琶丸の話を聞いた百鬼丸はすっくと立ちあがり、すぐに鬼神退治に出かけます。琵琶丸の話をぜんぶ理解しているようなのです。これをたとえばなんですが──こんな風に描けばどうでしょう。

 

まずあらかじめ、どろろが「右はこっち。で、こっちが左だよ」なんて言いながら、百鬼丸に言葉を教えているところを描いておきます。そこに琵琶丸が帰ってきて「良い話」と「悪い話」を伝えます。「鬼神」という言葉に反応した百鬼丸は立ち上がり、琵琶丸の腕を引いて案内を求めます。どろろが「アニキ、鬼神て言葉だけは最初からよく分かっているんだよなぁ」とかなんとか説明し、琵琶丸が「すぐに連れていけって? せっかちだねぇ~」と本篇通りのセリフを続ければどうでしょうか。

 

ほんの少しの描写を加えるだけで、ずいぶん違和感は減ると思うのですが・・・。(生意気言ってすみません)

 

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