TVアニメ「蟲師 続章」第11話「草の茵」(くさのしとね)。ヒトとは在り方の違う「命の別の形」それが蟲。「蟲師」は、蟲が人に影響したときに現れる奇妙な現象を集めた奇譚集。案内役のギンコと共に「蟲師」の世界の詳細あらすじを追う。感想・考察も加え、作品を深掘り!
第11話/「この世に居てはならない場所など、誰にもない」。不安定なギンコ少年を救った蟲師の一言。
出展/TVアニメ「蟲師 続章」
第十一話
草の茵
kusa no shitone
今作「草の茵」(しとね)は、少年期のギンコを描いた秀作だ。ギンコの過去は、これまで2度描かれている。「蟲師」(第1期)第12話「眇の魚」は、ちょうどギンコ10歳くらいの物語。緑の片目に白髪という現在に至るギンコの風貌が出来上がったエピソードが描かれている。
2度目は「蟲師」(第1期)の最終話・第26話「草を踏む音」に、その後のギンコが脇役として登場する。光脈筋を移動しながら、蟲師に情報提供する仕事を生業としている「ワタリ」と呼ばれる集団にギンコが拾われ、蟲師に託されるまでのエピソードが含まれている。
今作「草の茵」は、何人かの蟲師に拾われては捨てられてを繰り返していた頃のギンコだ。おそらくだが、これをきっかけに「蟲師」になる決意を固めたエピソードだろうと思う。
今作の内容をきちんと理解するには、「眇の魚」「草を踏む音」を先に視聴しておいた方がよい。
ちなみに「茵」(しとね)とは、座ったり眠ったりする際に体の下に敷くものの古い言い方。現代風に言えば「座布団」や「敷布団」にあたる。百人一首に描かれる歌人の座具や、お雛様の座具も「茵」という。眠るときに敷くものには「褥」(しとね)の字が使われる。
今作での「茵」は、「居場所」という意味合いで使われている。
行き倒れたギンコは、常識的な蟲師「スグロ」に拾われる
▲「俺はスグロ。この山で蟲師をやってる」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
とある山で行き倒れていたギンコ少年は蟲師の男に拾われる。この頃のギンコは、13~14歳くらいと思われる。既に白髪に緑の片目だが、まだ着物姿だ。
スグロの家で目を覚ますまで、ギンコはずっと何者かに見張られているのを感じていた。
ギンコ(何だ、おまえは。俺を喰う気なのか。恐れているのか。・・・いや、ただ見ている。俺が何なのか、探ってる)
やがて目覚めたギンコは、布団の横に置いてあったご飯を手づかみで食べ始めた。よほどお腹が空いていたのだろう。室内は壁一面の書物に細かく仕切られた薬棚。張り渡した紐に植物が乾かしてある。いかにも蟲師の家だ。
スグロ「どうやらヒトの子ではあるようだな」
入り口の戸を開けて、男が入ってきた。年齢は40歳代といったところか。短髪で無精ひげを生やしている。名は「スグロ」だ。
スグロ「緑の目玉に白い髪。おまえの噂は聞いてるぞ。”蟲を寄せる体質を持ち、歩く地に災いをもたらす異形の子”。何度か蟲師に拾われたと聞くが、また厄介払いでもされたか。──なぜ、蟲を寄せるままにしておく。ひとつ所に留まらなければ災いは防げるだろうに」
ギンコ「食ってくためだ。俺が蟲を寄せて、蟲師が治す。それが時々、手に負えねぇ事になる」
スグロ「おまえを拾ったのは、そういう輩(やから)ばかりってわけか。俺はスグロ。この山で蟲師をやってる。──どら」
スグロはギンコの左目を親指と人差し指で開く。
スグロ「ほぉ、この窩(あな)にトコヤミがとらわれてる。おまえ、トコヤミにのまれた事があるな。それで体質が変わっちまったのか」
ギンコ「トコヤミ?」
スグロ「他の蟲師は言わなかったか。闇の姿をした蟲だ。ある時期から昔の記憶がないだろう。あれは、記憶も喰う」
ギンコ「じゃあ、それを取り出せば、この体質もなくなるのか」
スグロ「そいつはおまえにとらわれてるだけだ。トコヤミが蟲を寄せるわけじゃない。蟲を寄せるのは、あくまでおまえだ。そういう者は稀にいるが、それを治す術は誰ももたない。気の毒だが、受け入れる他ない」
それだけ言うと、スグロはまた入り口の戸を引きどこかに出かけようとした。
スグロ「まぁ、蟲は散らしておいた。数日はもつだろう。また行き倒れんよう、体力つけていけ」
いやいや。「ワタリ」たちから離れたギンコは、なかなかハードな毎日を過ごしてきたようで。ギンコの蟲を寄せる体質を利用して商売する蟲師とは・・・。たしかにそういう手もあるが──そして手に負えなくなると放り出すとはね。自分が食べていくために利用して、利用価値がなくなれば捨てるとは何と身勝手な。・・・まぁ、当時の浮浪児の扱いはそんなものかも知れないが。
ギンコは一言だけスグロに訊く。
ギンコ「ここは光脈筋?」
スグロ「ああ、そうだ」
ギンコ(じゃあ、あれはヌシか。そんなに見張らずとも、ここに居座ったりはしねぇよ)
目覚める前にギンコを見張っていた二つの目は、ヌシだったのかとギンコは思う。しかし「ここに居座ったりはしねぇよ」とは・・・。どうやらギンコ少年、すっかりヒネている。身勝手な大人たちに利用され捨てられてきたんだ。仕方がないか。
寿命を迎えたヌシの住む山
▲「美しいところだろう、ここは」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
しばらくしてスグロはまたやってきて、ギンコを外に連れ出した。
スグロ「基本的な薬草ぐらいは覚えたのか」
ギンコ「・・・多少は」
スグロ「この山の草は薬効が高い。いくらか持ってけ。蟲除けの煙草の作り方も覚えて行け。周囲への影響を弱めるだけじゃない。おまえ自身を虫患いから守ってもくれる」
スグロは山の高いところまで登っていく。辺りが一望できる場所に立ち、「美しいところだろう、ここは」と、少し自慢そうに言う。ギンコは霞を抱いた山並みの美しさに息を飲む。
スグロ「長居はさせてやれんが、たまに訊ねるぐらいなら、ヌシ殿も文句は言うまいよ」
山の中で二人連れの男に出合った。背中に猟銃を背負っている。猟師だ。スグロは猟師に「少しの間面倒見る事になった。まぁ弟子みたいなもんだ」とギンコを紹介した。
猟師「ところでどうだ。新しいヌシのほうは」
スグロ「いや、まだだ」
猟師「もう生まれてもいいんじゃないのか」
スグロ「なぁに心配いらねえよ。我々が心配せずとも毎年花は咲くし実をつける。それが理(ことわり)というものだ」
猟師と別れると、あたりはすっかり夕方の気配になっていた。スグロの後を歩きながらギンコが訊く。
ギンコ「新しいヌシってどういう事?」
スグロ「ヌシにも寿命ってもんはある。この山のヌシはもう、かなりの老齢でな。だが、まだ次のヌシらしきモノが見当たらない。ヌシの座に空白ができれば山はすさむ。それを皆心配してるのさ」
ギンコ「現れなかったら、どうなる?」
スグロ「やがて世は滅ぶ。言ったろう。それは春になっても花が一輪も咲かないのと同じ事。ヌシというのは理(ことわり)の表れだ。山と理が深く結ばれている事の証だ」
その夜、ヌシの監視がないのに気づいたギンコは起き上がり、外に出た。「おそらく、ヌシがしんだ」と、外で様子をうかがっていたスグロが言った。
ギンコ「・・・俺が来たから?」
スグロ「寿命だと言ったろう? だが、まだ次のヌシが現れていない。山が不安定な間は、おまえはここを動くな。いいな」
そう言いおいて、スグロは提灯を手に夜の山に入っていった。
ギンコを拾った直後、スグロはこう言っていた。「おまえの噂は聞いてるぞ。”蟲を寄せる体質を持ち、歩く地に災いをもたらす異形の子”」これをギンコは知っていて、自分が来たからこの地に災いを──ヌシの死を──もたらしたと思ってしまったのだろう。不憫なことだ・・・。
ギンコの過ち
▲割れたヌシの卵から光が薄らいでゆく 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
木に登り、あたりを見まわしていたギンコは、遠くに金色に光る点を見つける。「もしかして・・・」と、その場所に行ってみると、鳥の巣に金色の輝きを放つ卵を見つけた。
ギンコ「ヌシの卵? すごい。ちゃんと生まれたんだ」
ギンコはその卵を手に取り思う。
ギンコ(あのヌシの力が、この中にあるのか・・・。俺とは正反対の、選ばれたモノ・・・。今なら、その力を自分のものにできるんじゃないのか?)
そう思った自分の考えをギンコは振り払う。
ギンコ(バカな。何を考えて──)
邪(よこしま)な考えを捨て、ギンコは卵を巣に戻そうとする。その時──親鳥が大声を上げながら襲ってきた。
驚いたギンコの手から卵が落ちて──────割れた。
その途端、木の葉が一斉にざわめき立った。
ギンコはよろよろと近づき、割れた卵を拾い上げる。
ギンコ「どうしよう、どうしたら・・・。スグロ、スグロー!」
ヌシの卵を両手に持ち、ギンコは走る。卵の光はじょじょに弱くなっていく・・・。木立ちの向うにヌシの気配があった。ヌシはこちらを見ている。
ギンコ「ヌシ? 生きてたのか。なあ、教えてくれ。どうしたら・・・」
ギンコは去ろうとするヌシを追う。
ギンコ「待ってくれよ。なあ。ヌシは何でも知ってるんだろ。何だってするから。全部もとに戻るなら、俺はどうなったっていいから!」
ふと足下の地面が消え、ギンコは地中深くに落ちて行った。
蟲の宴
▲ギンコがたどり着いたのは光脈のほとり 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
卵を抱えたまま落ちたところは暗闇で、目の前をゆったり金色の河が流れていた。
ギンコ「光脈・・・」
鹿か・・・動きからしてキツネだろうか? 背中に草を生やしたこの山のヌシだった動物が光脈に入っていく。河の向うには白い火が輪になっていて、その輪の中にヌシだった光も加わった。
ギンコ「・・・たぶん、あそこは行ったら戻れない所だ。でも、かまわない。もともと俺に、居ていい場所なんてないんだ」
ギンコは光脈の河を渡ろうと一歩踏み出す。──と、左目がズキンと痛み出した。
ギンコ「うあっ! トコヤミが暴れてる。何でおまえは俺の邪魔ばかりするんだ。・・・そうか、おまえ、生きていたいのか──」
河の手前でギンコが左目の痛みにうずくまっていると、目の前に白い手が現れた。誰か現れたのかと視線を上げる。──と、それは手首から先だけしかなく、その切れ目に小さな蟲がうごめきぽろぽろ落ちていた。
▲ギンコの前に白い手が現れた 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
言葉を失い目を見張るばかりのギンコに、何かをすくうように真ん中をくぼませた白い両手はさらに近づいてくる。ギンコはその手に割れたヌシの卵を載せた。白い手は卵を受け取り、片手をすっと動かした。「どうぞお帰りください」と言うように。
白い手は光となり、河向うの輪の中に戻っていった。
ギンコ(戻れと言ったのか? 俺は戻ってもいいのか?)
気づくとギンコは、元の夜の木立ちに立っていた。そこへスグロがギンコを捜しにやってきた。
スグロ「ギンコ、おまえ無事か。おい、どうした?」
ギンコの右目からポロポロ涙が溢れていた。
輪になった蟲たちは、「蟲師」第1話「緑の座」に登場した「蟲の宴」だろう。いわば蟲の長老のような者たちが、そろって何か重要な取り決めを交わしたり特別な事をするときに現れる現象と思われる。今回は、この山のヌシをどうするか話し合うのだろう。
ギンコの居場所は「ココ」ではない。この世のすべてがギンコの居場所。
▲「もう二度と、おまえには会わん」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
スグロの家に戻り、ギンコはあったことをすべて話した。
スグロ「そうか。この山はとうぶん閉じねばならんな」
ギンコ「理は消えてしまったの? この山は、どうなるの?」
責任を感じているギンコは伏し目がちに訊ねる。
スグロ「おまえが会ったモノこそが理だよ。地表に現れる花がヌシなら、彼らは根。彼らがヌシの命を受け取ったのなら、いつかまたヌシは現れるだろう」
「さぁ、もう旅の支度をしろ」と、スグロは立ち上がった。
スグロ「俺はおまえを許すわけにはいかない。もう二度と、おまえには会わん」
──厳しい一言だ。
脚絆に菅笠。背負い箱ももらって、きちんと旅支度を整えたギンコは一人旅立つ。
▲草の茵に寝そべるギンコ 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
夜の野を歩きながら、ギンコはため息を吐いて地面に腰を下ろした。
ギンコ「今日はここらで休むか」
菅笠を脱ぎ寝転ぶと、満点の星空が見えた。辺りでは秋の虫たちの声がする。スグロが最後に言った言葉が蘇る。
スグロ「もう二度とおまえには会わん。だが忘れるな。この世に居てはならない場所など誰にもない。おまえもだ。理に戻る事を許されたんだ。この世のすべてがおまえの居るべき場所なんだ」
ギンコは夜空に片手を伸ばし、それをトコヤミがとらわれている左目にあてた。やがて安らいだ顔でギンコは寝息を立て始める。草を褥(しとね)に。
「ここに居ていいよ」と思える安心感
▲草の上、ギンコは安らいで眠りにつく 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
人は弱いものだから、基本的に集団で暮らす、帰属意識の強い動物だ。誰でもどこかの集団に属している。学校だったり、バイト先だったり、家族だったり。どこかに属していなければ、生きることすらできない。
ときに帰属先からはみ出してしまうと、途端に不安になる。自分が拒まれていると感じるのは、ひどく辛いことだ。
今作のギンコはまさに、そんな状態だった。”蟲を寄せる体質を持ち、歩く地に災いをもたらす異形の子”と噂されるほど、世間からはみ出していた。悪い蟲師たちに利用され続け、自分の居場所が見つけられず、ボロボロになりながら彷徨っていた。
今作でやっとまともな蟲師「スグロ」に出会えたのに、自分の犯した罪でまた旅に出なければいけなくなった。ここでギンコが偉かったと思うのは、ちゃんとすべてスグロに話せたことだ。スグロは厳しかった。
スグロ「俺はおまえを許すわけにはいかない。もう二度と、おまえには会わん」
しかし、続けてこうも言った。
スグロ「この世に居てはならない場所など誰にもない。おまえもだ。理に戻る事を許されたんだ。この世のすべてがおまえの居るべき場所なんだ」
これがギンコには、大きな救いになった。ギンコは草の上に眠る。どこの草の上も、そこがギンコの「茵」(しとね)、つまり「居場所」だ。スグロだけでない、理にそれを許されたんだと知ったとき、ギンコはどれだけ癒されたろう。
この言葉はきっとギンコだけではない。集団からはみ出し帰属すべき場所を失い不安定になってしまっている、すべての人に向けたものだ。「この世に居てはならない場所など、誰にもない」。その通りだと思う。
テーマ性もはっきりしていて、幻想的かつ「蟲師」らしい秀作だ。
「理」(ことわり)とは?
▲「理」に割れたヌシの卵を載せる 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
「理」(ことわり)について、スグロはこう説明している。
スグロ「我々が心配せずとも毎年花は咲くし実をつける。それが理(ことわり)というものだ」
スグロ「おまえが会ったモノこそが理だよ。地表に現れる花がヌシなら、彼らは根」
──と、言われてもよく分からないのではないだろうか? じつはわたしも、よく分からなかった。そこで「理」を調べてみた。
辞書的に言うと「理」とは、「物事の筋道」「道理」。使い方の例文として「彼の言葉は理にかなっている」「盛者必衰の理」というのが載っていた。「理科」「料理」の「理」も、同じ意味あいで使われている。
もう少し分かりやすいものはないかと調べて、中国哲学に行きついた。非常に観念的で難解なのだが、宋代の朱子の考えを取り入れると、かなり分かりやすいと思う。以下に、北海道大学専任講師の種村先生のサイトから説明文を引用する。
朱子は程伊川の哲学を継ぎ、理の概念をさらに明瞭にしようとした。存在論的な立場から「所以然之故」といい、法則的、倫理的立場から「所当然之則」といっている。しかも理はつねに気とともに存在し、理だけについていえば、非感覚的存在であり、運動もしなければ、作用ももたない。ただ観念的に把握されるだけである。しかし、理は宇宙の原則なのであるから、この理が失われれば、気の存在は維持されない。人も宇宙の一物である以上、つねにこの理に従っていかなければならない。その法則性は人の自然的存在のみならず、倫理的存在にまで考えられ、仁・義・礼・智のごとき徳も換言すれば理にほかならぬのである。
わたしが引いた太線のところを分かりやすく翻訳すると「理は宇宙の原則であり、人も宇宙に含まれる以上、理に従わなければならない」となる。
なるほど、蟲師の原点はここにあるのかと納得できた。
この先のギンコの物語も観てみたい!
▲スグロに教えてもらった蟲煙草をくわえるギンコ 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
おそらく今作のこのエピソードが、ギンコが蟲師を目指すきっかけとなった。わたしはそう思う。蟲師の定番装備の背負い箱ももらったわけだし。
「理」に存在を許されたことが、そしてそう教えてくれたスグロの存在が蟲師への道を決定的にしたのだろう。ギンコが蟲を否定せず可能な限り共存を願うのは、ある意味、自分を救ってくれた「理」への恩返しの気持ちもあるのかもしれない。
しかし、独学で蟲師修行をするのも難しいだろう。当時「蟲師入門」なんて本があるとは思えないし、ある程度まで師匠について教えてもらったのだろう。
そんな、独り立ちするまでの修行中のギンコの物語も観てみたいと思った。たとえば、やはり蟲を寄せる体質の旅の蟲師と出会い、一緒に旅をしながら学んで行ったとか。そんな旅の途中で化野に出会ったとか──。これ以降のギンコの物語はまだ描かれていないが、いつかぜひ観てみたい。
季節はいつ?
▲「ムシカリ」の花。もうちょい花も葉も円い方がらしいと思う 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
以前も書いたが、わたしは植物オタクで──作中の植物がナニかと気になる。今回は山の花がいくつか描かれていたので、そこから季節をひもときたい。
まずスグロがギンコを山の高台に連れ出すところ。ここでは赤い花と赤い木の実が描かれている。この赤い花は見覚えがあるが、何かは分からなかった。赤い実の方はガマズミの仲間に見える。もしくはサネカズラか? いずれにせよ、実が成るのは秋だ。
その後、猟師と立ち話をするあたりに描かれている白い花は「ムシカリ」だ。特徴的な葉から特定できる。ムシカリの花期は4~6月。
▲夜に咲くツキミソウ 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
最後にギンコが野に寝転ぶあたりで登場するのが「ツキミソウ」。ツキミソウの花期は6~9月。
ムシカリとツキミソウの花期から考えると、両方が重なる6月頃が、今作の季節と思われる。セミが鳴いていないので、梅雨前の6月初旬がぴったりくる。6月頃にはジューンベリーなどが赤く実るし、おそらく原作者は6月初旬と想定しているのではないか。
──しかし最後のシーン。明らかに秋の虫が鳴いている・・・。まぁ、季節はあまりキッチリ決まっていないのかも知れない。
少年時代のギンコ役は沢城みゆきさん
▲沢城みゆきさん 出展/wiki
少年時代のギンコ役は沢城みゆきさんが務める。「蟲師」では、子どもの声優は子役が務めるとどこかで読んだが、さすがにギンコ役は実力者が選ばれている。
沢城みゆきさんは、「ルパンⅢ世」の「峰不二子」役、「ゲゲゲの鬼太郎」の「鬼太郎」役など、毛色の違う役柄も難なくこなすベテラン声優。他にも「ソードアートオンラインⅡ」の主役「シノン」、「ローゼンメイデン」の「真紅」など主役級キャラを多数担当している。
声優アワードで主演女優賞、助演女優賞、海外ファン賞など受賞歴も多い。
今作は抑えた演技と絶妙の間で、少年ギンコの不安な心情をリアルに表現した。
▼「蟲師」(第1期)の、すべてのページ一覧はこちらから。
▼「蟲師 続章」(第2期)の、すべてのページ一覧はこちらから。