2019年1月~放送のアニメ「どろろ」。第18話「無常岬の巻」の詳細なあらすじと見どころを紹介します。「悲喜こもごも!人間模様が濃くて考えさせられる!」あわせて感想もどうぞ!【注意】完全ネタバレです!



第18話/百鬼丸:「迎えに来た」。どろろ涙ぶわっからの「ならもっと早く来てくれよ!」が、もうかわいくて!

 

無常岬の巻

mujyoumisaki no maki

 

片腕の男・しらぬいの罠にはまり、半数の手下をサメに食われたイタチは、どろろの機転のおかげで見張りの三郎丸を倒し、ようやくお宝の眠る白骨岬に到着。どろろの背中の地図も入手して、意気揚々とお宝探しに出かけます。

 

木に縄で縛り着けられ置いてけぼりを食ったどろろの近くには、サメの三郎丸の死骸が転がり、あざだらけのしらぬいが伸びています。手下をサメに食われた腹いせに、イタチたちが瀕死の重傷を負わせたのです。海から必死に呼ぶ二郎丸の声に、しらぬいは目を覚まします。

 

しらぬい「苦しかったろう。あいつら、皆殺しにしてやる──二郎丸ー! ヤツらを食い殺せー!

 

三郎丸の顔をなでながら、涙を流すしらぬい。声を張り上げ命じるしらぬいの声に反応した二郎丸の目がどす黒く変色しました。

 

一方、百鬼丸はどろろを追い、船で白骨岬を目指します。きっと、どろろが熱を出したときのように、手あたり次第に人に声をかけ、どろろを探し回ったのでしょう。片足で歩きにくいのに、意外と早く追いつきましたね。

 

テーマは「仲直り」。サブテーマは「人間というもの」と、しました。

 

しかし今回は面白かったですね! ハラハラの連続で、百鬼丸大丈夫かとずいぶん心配もさせられました。けれど最終的には、百鬼丸とどろろが仲直りして、だいたい丸く収まりました。もちろん丸く収まってない人たちもたくさんいるわけですが・・・。

 

今回のテーマは、もちろん「百鬼丸とどろろの仲直り」です! 百鬼丸のド直球の仲直りの仕方に、たじろぐどろろが見ものです! そしてサブテーマは、いろいろ考えたあげく「人間というもの」と、しました。

 

誰もが食うや食わずの戦乱の世に、人はあまりの辛さから簡単に人の道を踏み外してしまう。けれどその結末に待っているのはいつも最悪の事態で。対岸の火事のように遠いところから見物しているわたしたちからすれば、「あぁ、また同じことを繰り返している」「なんて愚かなんだろう」と思えてしまうかも知れない。けれど、そんな人の行動を、轍を濃くしていくように何度も何度もくり返し見せるのが手塚治虫の手法です。

 

どうすればより良い結果になるのか」「自分だったらどうするのか」「あぁまたこの人も間違った」「なんてもどかしい!」そんな思いをくり返し読者に抱かせることで、読者自身の中から答えを引き出そうとしていました。だから手塚の漫画には、起きた事柄と登場人物がどう考えどう行動したか、そこまでしか描いてないことが多い。大人向けのものほど、とくにそう。作者(手塚)の考えを極力交えず、ただ淡々と人間を描く。答えはそれぞれの読者の中にある。

 

だから年齢により読んだときの印象や考えが変わり、何度読んでも新しい発見がある。それが手塚漫画の魅力でありだいご味です。

 

今回の「無常岬の巻」も、ストーリーとしてきれいにまとめてはいるけれど、「人間を描く」ことを大切にしてきた手塚の息吹が感じられるような回だったと思います。たくさんの生き様が交錯した、中身の濃いものでした。手塚が大事にしてきた「人間とは何か」という主題は、「どろろ」という作品全体のテーマでもあると思います。この先、最終回まできっとイヤというほど見せてくるのが他ならない「人間」だろうと思います。今回だけでなく、これから先も、人間の描き方、見せ方に注目していきたいと思います!

 

しらぬいの心をサメに向かわせたもの

 

しらぬいは孤児でした。幼い頃は母親と一緒に暮らしていたようですが、おそらくどろろと同じくらいの年頃で母親を亡くしました。母親は餓死だったようです。洞窟で暮らしていたので、村で暮らすことができなかったようです。

 

これは推測ですが、しらぬいにも父親がいたはずです。海沿いに住んでいたなら、父親は漁師だったのでしょう。あるとき、父親は漁から帰ってこなかった。幼いしらぬいと母親を援助してやれるような余裕はどこの家にもなく、次第に村から追われてしまったのではないでしょうか。

 

しらぬいおまえたちさえいれば、他には何もいらない。おまえたちは何も恐れない。何にも縛られない。強くて美しい。それに比べて本当につまらない。人間なんて・・・

 

しらぬいは、人間を軽蔑しています。強くて美しいサメに憧れをもっています。でも、それはきっと本心ではなくて。自分と母親を見捨てた村人たちに対する怒りや、母親を亡くした絶望感から、村人への強い憎しみが生まれてしまったから。自分がもっと強ければ母親を死なせることはなかったのに、という後悔の念もあり、村人に恐れられ村人を丸のみにするほどの強さがあるサメに憧れるようになっていったのではないか。

 

そして、この年齢(おそらく14歳くらい?)まで生き延びたしらぬいは村人に復讐したのでしょう。漁に出た船を転覆させ、村に残った女子どもを襲い、二郎丸と三郎丸に与えた。その結果、村には誰もいなくなってしまった、と。だいたいこんなことだったように思います。

 

どす黒い目に変わった二郎丸は、波打ち際に横たわる三郎丸の身体に食らいつきます。みるみる内に二郎丸の身体は白く変色し、身体のあちらこちらに大きなトゲすら生えてきます。陸をはい回れる4本のヒレも生えました。もう普通のサメではありません。完全に妖です。

 

しらぬい「二郎丸ーーー! やっぱり完璧だぜ。おまえたちはさ。おまえたちの前じゃ、人間なんてただのエサだ! 思い知らせてやれ!」

 

赤紫色に腫れあがった目をほころばせてしらぬいは二郎丸をけしかけ、二郎丸はすぐ側の木に縛り付けられているどろろに襲いかかります。もうダメかと首をすくめてギュッと目をつぶったどろろの前に、1本の竹が立ちふさがります。

 

百鬼丸「どろろ!」

 

竹は、百鬼丸の粗末な義足でした。不自由な足で、間一髪このピンチに間に合ったのです!

 

どろろ「アニ・・・キ・・・」

 

嬉しさに思わず涙を浮かべるどろろ。いやいや、再会を喜んでいる場合じゃありませんよね!

 

百鬼丸の義足は二郎丸の歯で食いちぎられ、その義足を百鬼丸は二郎丸の目に突き立てます。その後も義足をうまく使いこなし、ついに百鬼丸は二郎丸を倒します。百鬼丸の2本の義手を両手に抱き、かけよるどろろ。この光景もちょっと懐かしいですね!

 

百鬼丸とどろろの仲直りが、かわいすぎる!

 

「アニキー!」と、駆け寄るどろろの頬をぎゅむっと掴んでブニブニする百鬼丸。それは決してつねっているという感じではなくて、義手なりにどろろの感触を確かめているような雰囲気です。それからどろろの頬を両手で包み、額と額をコツンと合わせて左右にこすります。どろろはキスでもされると思ったのか、真っ赤な顔で驚いてぎゅっと目を閉じています。

 

どろろアニキってば、何だよいきなり

 

照れまくるどろろです。百鬼丸のこの行動は、前回の寿海との再会でやったのと同じですね^^ とっても強い親愛の情の印です。まさか寿海は、自分がやったのと同じことを百鬼丸が真似てやっているなんて、思いもよらないでしょうね!

 

百鬼丸「迎えにきた」

 

そう言われて、ぶわっと涙が溢れ出すどろろです。すごく嬉しいのに、口をとがらせちょっと横を向きどろろは──

 

どろろ「ならもっと早く来てくれよ。おいら一人で、すっごく大変だったんだからなー!」

 

そういうと百鬼丸に抱きつくどろろですよかった、やっと仲直りできましたね^^

 

どうやら二郎丸は鬼神だったらしく、砂に倒れ込んで呻く百鬼丸に生身の左足が生えてきましたこれで両足が戻りましたね!

 

イタチなりの生き方

 

かつて火袋の下で野伏せりとして侍を襲いその金品を奪っていたイタチは、侍に取り入り立身出世を目論んで火袋を裏切りました。直接、元のお頭(かしら)・火袋に手をかけることはありませんでしたが、イタチの裏切りのために負った脚の傷のせいもあり、火袋は小さなどろろの目の前で壮絶な死を遂げます。

 

侍になり、なんとか戦で手柄を立てようと頑張っていたイタチですが、下っ端侍など捨て駒にされるだけだと悟ったイタチは立身出世を諦め、結局、野伏せり(野盗)になってしまいます。火袋たちのように侍だけを襲うのではなく、きっと金を奪えるなら誰でも襲ってきたことでしょう。

 

やがてイタチは火袋がお宝を隠しているかも知れないと思いつきます。お自夜の墓をあばき、その背中の地図を写し取り、どろろを拉致してその背中の地図も写し取り。サメに半数の手下を食われ、気づけば手下はたったの7人にまで減っています。

 

地図に描かれた洞窟を探し当てたイタチとその手下は、そこに仕掛けられた爆薬に吹き飛ばされ2人減り、ついに生き残ったのはイタチを含めて6人に。

 

イタチ「いくじのねぇヤツはとっとと帰れ。宝を手に入れるか、罠にかかっておっちぬか、二つに一つだ!

 

もちろん、ここまできてノコノコ引き返せるはずがありません!

 

多宝丸に服従するしかない兵庫と陸奥の生き方

 

兵庫は醍醐の国に生まれ、幼い頃に弟(妹?)の陸奥とともに敵方の捕虜となり、醍醐軍に助け出されたという過去があります。幼い頃から多宝丸の側仕えとして一緒に成長してきました。実直な性格で、情に厚く、力自慢。手杵を武器として愛用しています。

 

大恩ある醍醐景光にも、息子の多宝丸にも絶対服従の家来として、長く仕えてきた兵庫ですが、百鬼丸に対する景光や多宝丸の敵意にはあまり賛成できないでいます。多宝丸とともに百鬼丸討伐に向かうことが決まったときにも、複雑な心境をうかがわせる言葉をつぶやいています。

 

兵庫百鬼丸討伐に若を向かわせるのか、殿は!

 

それに対して弟の陸奥は自分の気持ちを抑え、決まったことを受け入れられる性格のよう。陸奥は弓の名手です。

 

陸奥「兵庫、繰り言ならば」

 

兵庫「いや、オレも腹を決めた。若と同じ、情は持ち込まぬ」

 

元々優しいところのある多宝丸が情を捨てる覚悟でいるのだから、と、兵庫もまた腹をくくります。こうして多宝丸を筆頭に約60名の醍醐兵が百鬼丸を追い白骨岬にやってきました。

 

醍醐兵に矢を射かけられさらに手下を減らしたイタチと合流した百鬼丸とどろろが、浜に降りようと山道を下っているところに、兵庫と陸奥が現れます。崖下から陸奥が弓で狙っていて、兵庫は崖の上に手杵を持ち挟み撃ちの格好です。前方には、多宝丸を先頭にした多数の醍醐兵がじりじりと向かってきます。

 

多宝丸「わが醍醐の国にあだなす鬼神、百鬼丸!」

 

百鬼丸「た・・ほぅ・・・まる!」

 

完全に自分を敵扱いして刀を向けてくる多宝丸を、百鬼丸は実の弟だと知っています。ひらひらと陸奥の弓矢をよけ右の仕込み刀で斬り落としながら兵庫の手杵攻撃をかわします。

 

百鬼丸「違う。この前とは──なぜ?」

 

ばんもんの巻(下)で対決したとき、多宝丸は一人で決闘を申し込んできました。他の者に手出しをするなと命じて。ところが今度は醍醐兵をあげて討伐に乗り出してきたので、百鬼丸はそのことを言っているのですね。

 

陸奥「若は醍醐の国の後継。民の命と国の行く末、そのすべてを背負っておられる。覚悟が違うのだ」

 

百鬼丸「なぜオレを殺す?」

 

陸奥「きさまが生きているだけで、醍醐の国は厄災に見舞われ続ける。きさまは、我ら醍醐の敵だ!」

 

陸奥の放った矢は、百鬼丸が身体を隠している細い木を貫き、百鬼丸の背中を傷つけます。痛みにのたうつ百鬼丸に襲い掛かる多宝丸、そこに手杵を振り下ろす兵庫。ついに、百鬼丸の右の仕込み刀が折れてしまいました!

 

兵庫「ここで終わらせる!」

 

陸奥討ち果たす。きさまも、きさまに与(くみ)する者もすべて!

 

百鬼丸は左の義手を抜くものの、次々と繰り出してくる兵庫の手杵についに崖に追い詰められてしまいます。

 

兵庫「若! 止めを!」

 

百鬼丸敵! おまえたちは、オレの! やらせない!

 

多宝丸「その左腕の刀もへし折ってやる百鬼丸!」

 

多宝丸も兵庫も陸奥も、百鬼丸の剣の腕を正確に理解していません。殺すつもりなら、最初から百鬼丸は両腕の義手を抜いていたでしょう。右の刀が折れても左があるし、たとえ左の刀が折れてもなお、義手をつけさえすれば腰にさした刀を振るうことができます。百鬼丸はずっと手加減していましたよね。

 

しかし陸奥が言った「討ち果たす。きさまに与(くみ)する者もすべて!」という言葉は禁句でしたね。これはつまり、どろろも狙うって意味ですから。さすがにこの言葉を聞いては、百鬼丸は手加減できなくなりますよ? 

 

「敵! おまえたちは、オレの!」って、すっかり敵認識しちゃいました。うーん、またどろろに止められる事態になるのかなぁ?

 

「どろろ頼む、オレに一度だけ金を拝ませてくれ」

 

百鬼丸が醍醐兵に襲われている隙に、どろろの着物をつかんで逃げ出したイタチは、山の中を逃げ回ります。しかし、ついに手下はみんな醍醐兵の弓に倒れ、イタチとどろろの二人きりに。そこでイタチは、地蔵が並んで立っている場所にさしかかります。どろろの背中の地図に描かれていたあの地蔵です。

 

イタチ「こいつも罠かもしんねぇが、弓手(左手)から5番目に何か手掛かりが──」

 

どろろ「イタチ、もう諦めなよ!」

 

イタチこれがあれば、オレたちはもっとマシなところに行けるんだ

 

そうですよね。イタチは火袋が嫌いだったわけでも、裏切りたかったわけでも、なんでもなくて。ただただ、この生きづらい世の中で、少しでもマシな暮らしがしたかっただけなんですよね。

 

5番目の地蔵に手をかけたイタチに一斉に矢が射掛けられます。それを見たどろろは地蔵の影に身を隠し、「どうすりゃいいんだよアニキー!」と、百鬼丸を呼びます。けれども百鬼丸は醍醐兵を相手に必死の攻防戦の真っ最中です。妖の二郎丸に食われそうになったときと同じようにはいきません。

 

ところが、どろろが寄りかかった地蔵が順に倒れて崖下に雪崩れていき、それが崖下の醍醐兵をまとめて海へと突き落としました。ラッキー!

 

醍醐兵がいなくなった隙に、どろろはイタチに駆け寄ります。身体じゅうに矢をうけ瀕死のイタチは一言。

 

イタチどろろ頼む、オレに一度だけ金を拝ませてくれ

 

イタチらしいと言いますか。最後の最後、ここまできた目的のモノを一目見たいんでしょうね。いわゆる「死んでも死にきれない!」ってところでしょう。どろろがイタチの身体を担ごうとすると、またしても崖下の道を醍醐兵が走ってくるのが見えました。まぁ、60人くらいいたしねぇ・・・。醍醐兵、しつこい!

 

しらぬいの最期

 

二郎丸も三郎丸も失ったしらぬいは、人に対する復讐心に憑りつかれています。瀕死のイタチを担ぎ上げようとするどろろが、崖下の道を走る醍醐兵に気がついた、ちょうどそのとき頭上から笑い声が聞こえてきました。見上げると、崖の頂に松明を手にしたしらぬいが立っています。

 

しらぬい「おまえたち、二郎丸と三郎丸のところへ逝け!」

 

しらぬいの足元にはいくつもの爆弾が転がっています。これはヤバイ! とっさにイタチは体を張ってどろろをかばいます。

 

爆弾が炸裂した衝撃で大岩がなだれ落ち、崖道を登ろうとしていた醍醐兵も、そのさらに下で戦いを繰り広げていた百鬼丸と多宝丸、兵庫、陸奥にも襲い掛かります。

 

陸奥「若!」

 

多宝丸「陸奥、兵庫、引け!」

 

さすがの多宝丸も身の危険を感じたようです。百鬼丸はとっさに松の木に跳びあがり逃げました。大岩雪崩が収まると、百鬼丸はすぐにどろろを探しに向かいます。

 

爆弾で大岩雪崩を起こしたしらぬいは、ほとんどすべての醍醐兵を倒し、自分もまた巻き添えをくって波打ち際まで落ちていました。鬼神の二郎丸の側で息絶えたようです。

 

醍醐軍の撤退。多宝丸の思うところは──?

 

大岩雪崩から逃げ遅れた兵庫は、けがを負い気を失ってしまいます。いや逃げ遅れたのではなくて、実直な兵庫は、もしかしたら多宝丸を庇って岩の下敷きになったのかも知れませんね

 

夕陽の中を、醍醐軍は3艘の帆船に分かれて陸に引き上げていきます。気を失ったままの兵庫の傷の手当てをする陸奥と、黙って白骨岬を眺める多宝丸。他に何人の兵が残ったのでしょう。おそらく数えるほどでしょう。

 

今回の出兵は、多宝丸にとって苦い経験となりました。

 

おそらく、これが多宝丸の初陣。彼はこの経験をどう振り返るのでしょう。次こそ必ず! と、さらに闘志を燃やすのでしょうか? 引き上げる船での多宝丸の表情にトゲはありませんでした。もしかしたら実際の戦いを経て、いかに争いが無意味で人間性を欠いたものか、再認識したのかも知れません。その表情からは、迷いが見えたように思えました。

 

イタチの最期

 

どろろと、どろろをかばったイタチはぽっかり開いた洞穴に倒れています。なんと目の前には山ほどの小判が!

 

イタチ「あった、あったぜ、オレの金──」

 

それがイタチの最期の言葉でした。どろろはイタチの瞼を閉じ、両手を合わせます。

 

どろろ「あっちでおとうちゃんと会っても、今度は喧嘩しないでおくれよ」

 

最期までどこかコケティッシュで、憎めないイタチでした。ひどいことも散々されたイタチですが、どろろはイタチをきちんと見取り、手を合わせて弔いました。生と死が隣り合わせの時代。どろろはこの年齢で、いったい何人を見送ってきたことやら・・・。

 

暗い月夜の小舟に揺られる二人

 

イタチを弔い立ち上がったどろろは、迎えに来た百鬼丸に向かって言います。

 

どろろ「おいらには、こいつの使い方が分かんないからさぁ、今はまだ」

 

百鬼丸「うん」

 

どろろ「おとうちゃん、おっかちゃん、もうちょっとだけ待っていておくんな」

 

そう言ってどろろは、当座の軍資金にと、いくつかの小判を持って百鬼丸の後を追います。

 

暗い月の夜を進む小さな舟に乗る百鬼丸とどろろ。それは二人の行く末を暗示しているようでした。暗く確かなものが何一つ見えない海に揺れる心もとないほど小さな舟。頼れる者はお互いの二人だけ。小さな仲たがいから始まった別行動は、お互いの絆を深めたようです。とくに百鬼丸にとって意味深いものでしたね。

 

寿海との問答から、いかにどろろが大切な存在か再認識することができたし、多宝丸たちがどろろも狙うのなら側にいてちゃんと守らなければいけないと強く思ったことでしょう。実際に火袋が残した莫大な財宝を前にして(見えてないけどね!)、どろろが何を言いたがっていたのか実感できたでしょうしね!

 

是か非か。決めるのはいつも他人!

 

サメだけが自分の良き理解者と信じ、人を憎み続けて死んでいったしらぬい。とかく生きにくいこの世を、何とか上手く渡っていこうと、火袋を裏切り、侍の道を捨て、命の尽きる間際に財宝を見て死んでいったイタチ

 

仕える主君の考えに合わせて自分の情すら殺してしまおうと考える兵庫と陸奥。幼い頃から一緒に育った兵庫と陸奥を危険にさらしてまで、外道に落ちた父親の考えを支持する多宝丸多宝丸の指示一つで命を落としていった数多くの兵士たち。

 

自分の身体を取り戻すたびに父親が治める国の民を苦しめると分かっていても(実際は、景光と鬼神の約定は破られたらしいですけど!)、鬼神退治をやめない百鬼丸。目の前に莫大な財宝があるというのに、ほとんど手をつけずにまた旅にでるどろろ。

 

醍醐景光の行動が是か非か、そして百鬼丸の行動が是か非かというのが、「どろろ」作品の大きなテーマではあるけれど、こう見てみると、誰も彼もが是とも非とも割り切れない生き方をしていますよね。

 

愚かかもしれないし、滑稽かもしれないけれど。みんな上手く行かないなりに悩みながら、少しでも良くしたいと思って行動しているんですよね。是か非かなんて、死んだ後に誰かが決めるもの。最期を迎えるそのときまで、自分の信じる道を進むのが、幸せなのかも知れない。なんて、哲学してしまうのも、手塚作品ならではの感想かもしれないです!

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]百鬼丸の折れた右の刀。これ、どうにかしないといけませんよね。でも、寿海を訪れても、もう直してくれなさそうだし──。しばらくは、腰に差した刀を使うのかな? それとも、次に戻るのが右手という前振りかも知れませんよね![/char]

おまけ。浅田弘幸さんの胸キュンイラスト

あのシーンを浅田弘幸さんが描くと──かっ・・・カワイイっ!!! マジで!

 

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