「命の選択を迫られるリヴァイ。彼が下した判断は──」。TVアニメ「進撃の巨人」シーズン3、第2クール第55話「白夜」の感想と考察を、詳細あらすじとともにお届けします。圧倒的な力をもつ巨人と人類の果てしない戦いを描いた人気アニメ「進撃の巨人」。【注意】完全ネタバレです!



第55話/盟友エルヴィン、エレンの幼馴染アルミン。瀕死の重傷者は2人。注射薬はひとつ・・・リヴァイはどちらを選ぶのか!?

▲アルミンの焼け焦げた体を前に涙を浮かべるエレン 出展/TVアニメ「進撃の巨人」公式

 

#55

白夜

 

風の音──。巨人化の痕がくっきりと頬に残るエレンは、屋根の頂に両ひざをつき呟く。

 

エレン「こうなることは、分かってたはずなのに──。でも、おまえの力に頼るしかなくて。アルミン、おまえはどうして逃げないんだよ」

 

目の前に横たわるのは、ふっくらした頬の面影を残す黒焦げた死体──「超大型巨人」を倒すため、操縦者のベルトルトをあぶり出すため、巨人の放つ熱風に耐え続けたアルミンの、変わり果てた姿だった。

 

ガラガラと瓦礫の崩れる音に振り向くと、そこに「4足歩行の巨人」がいた。

 

エレン「きょ・・・巨人」

 

4足歩行の巨人は瓦を鳴らしながらエレンに近づいてくる。

 

エレン「くそ。それ以上近づいてみろ! こいつを奪われるくらいなら、殺すからよ!」

 

とっさにエレンは傍らに置いておいたベルトルトの頭をつかみ、その首に刃をかけた。「超大型巨人」からあぶり出したベルトルトは、両手足を切断され気を失っている。「4足歩行の巨人」の背中に載せた箱には、金色の髪とひげをたくわえた男が括り付けられている。その顔にはくっきりと、エレンと同じ巨人化の痕跡が刻まれていた。

 

エレン(何だ・・・こいつ、目の周りに巨人化の痕が・・・獣の巨人か!?)

 

リヴァイが殺すのをためらった一瞬の隙をついて「4足歩行の巨人」がくわえてさらった「獣の巨人」の操縦者ジークだ。エレンはまだジークを知らない。ジークの方も大きく目を見開いてエレンを観ている。やがて、口を開いたジークは震えるような声を絞り出した。

 

ジーク「おまえが、エレン・イェーガーか? ぜんぜん親父と似てないな」

 

エレン「──なに?」

 

ジーク「信じてほしい。オレはおまえの理解者だ。オレたちは、あの父親の被害者。おまえは、父親に洗脳されている」

 

ジークは、いつもどこか軽薄なもの言いをする彼には珍しく、抑えた声で注意深くエレンに話した。嘘を言っているようにも見えない──ということは、ジークはエレンの身内ということになる。エレン自身も、ジークに父の面影を見つける。

 

視線を感じたジークが振り仰ぐと、壁の上に返り血で顔を真っ赤に染めたリヴァイが立っていた。とてもエレンと長話をさせてくれる気配はなさそうだった。壁を滑り降りてくるリヴァイを観て、ジークはため息交じりに言った。

 

ジーク「分かったよリヴァイ。痛み分けで手を打とう。ベルトルト、悪いがおまえはここまでらしい。エレン、いつかおまえを救い出してやるからな!」

 

エレン「──逃げた」

 

4足歩行の巨人は、ジークを背に載せたまま、屋根づたいに逃げていった。

 

エレン「兵長!」

 

リヴァイ「今のでガスが完全に切れた。ヤツを追う。ガスと刃すべてよこせ。急げ!」

 

エレン「はい!」

 

エレンの前にたどりつくや、リヴァイはガスと刃の補給を求めた。ジークは痛み分けで手を打とうと言っているが、リヴァイにそんな気はない。この好機を逃さず、あくまで討ち取るつもりだ。

 

そのとき──エレンの背後で息をつく音が聞こえた──。

 

オープニングからこっち、ほとんど音がありません。BGMも、主題歌もありません。聞こえるのは、風の音、「4足歩行の巨人」が瓦を鳴らす音、リヴァイに早くガスと刃を渡そうと、自分の立体軌道装置を外そうとするエレンの手元の音。そして──ほおっと息をつく誰かの音──。はっと目を見開き、おそるおそる振り返るエレン・・・。

 

幕を開けるのは歓喜に満ちた奇跡の物語か、それとも──。

 

リヴァイに託された命の選択。「白夜」──終わらない夜。

 

今回の第55話は、とても秀逸なシナリオです。もちろん「進撃の巨人」は、いつでもシナリオが素晴らしいのですが、今回はとくに心をえぐるほどに! 視聴者にとって観るのがつらい、そしてギリギリの緊迫感に迫られる人間ドラマです。「進撃の巨人」は、巨人同士のダイナミックな戦いとともに、こういう人を引き込む心理の駆け引きが本当によく描けていますよね。

 

では、ストーリーを追いながら順にみていきましょう。

 

捕えたライナーをどうするか? ハンジの判断

 

同じシガンシナ区のエレンたちと離れた場所では、ハンジが手足を切断され目隠しをされたライナーに話しかけていた。ハンジは手に、金属製の薄い箱を持っている。ハンジの後ろでは、ジャンとミカサがその様子を見守っている。

 

ハンジ「君が手足を切り落とされる前。最後の力で取り出そうとしたものだぞ。──自決用の薬? それとも爆弾か」

 

ライナーは、しわがれた声で苦しそうに「手紙」と。

 

ハンジ「手紙? 何の手紙だ?」

 

ライナー「ユミルの手紙だ。クリスタに、必ず渡してほしい」

 

「中身を改めてからね」とハンジは言うと、立ち上がり刃を抜いた。

 

ハンジ「さて。訊きたいことは山ほどあるんだけど。君の口も鎧のようにかたそうにみえる。君は、わたしたちが知りたいことを教えてくれるかな?」

 

ライナー「いいや」

 

ハンジ「ありがとう。覚悟ができてて助かるよ」

 

こう言うやハンジは、ライナーの首に刃を食い込ませた。

 

それをみていたジャンがハンジに待ったをかける。

 

ジャン「いいんですか、その力、奪えるかも知れないのに」

 

ウォールマリア奪還作戦が行われる前、エルヴィンは兵士たちの前にリヴァイが手に入れた巨人化の注射を見せ、説明していた。「この注射を打ち、エレンのように巨人化能力をもつ者を捕食することで、巨人化能力を奪うことができる。そうすれば、一旦は知性のない巨人となった者が人間にもどり、知性をもった巨人になることができるようになる。しかも、瀕死の人間をよみがえらせることもできる」、と。

 

もちろん、そのためには身の安全が確保されていなければならないし、リヴァイを呼ばなければならない。ジャンの言うことはもっともだが、今は身の安全が確保されていると言えるほどのんきな状況ではないし、壁の向こうにいるリヴァイがどうなっているのかも知れない。だからハンジは、ここでライナーの命を絶とうとしているのだ。

 

ジャン「ハンジさんらしく──ないですね。分からないものは分からないと蓋をして、この先どうやったらオレたちは巨人に勝てるんですか? オレたちが敵を計り知れるようになるのは、いつですか」

 

ジャンの言葉にハンジがゆらいだ。

 

ハンジ「ミカサ、ガスはあとどれくらいある」

 

ミカサ「もうほとんど残ってません。ですが──エレンとアルミンの元への片道分はあります」

 

ハンジ「わたしよりはあるな。ミカサ、すぐにエレンたちの状況を見てきてくれ。そしてガスを補給し、リヴァイから注射薬をもらってこい。何らかの理由でそれが叶わない場合には、信煙弾を打て。それを合図にライナーを絶つ」

 

ミカサ「了解です」

 

冷静に答えると、ミカサはエレンの元に飛び去った。しばらくして、ミカサから赤の信煙弾が打ち上げられた。作戦中止の合図だ。

 

信煙弾を確認したジャンは、近づく足音に気がついた。ジークを乗せた「4本足の巨人」が、ハンジに襲い掛かろうとしている。「ハンジさん!」ジャンはすんでのところで巨人の口からハンジを救ったものの、ライナーを奪われてしまった。

 

「オレは、人類を救える方を生かす」エルヴィンとアルミン。リヴァイはどちらの命を救うか?

 

エレンの元に到着したミカサは、涙を浮かべて驚いていた。もうダメだと諦めていたアルミンが息を吹き返したのだ。すぐそこに注射薬をもつリヴァイがいて、手足を切断されたベルトルトも一緒だ。この状況なら、アルミンが助けられる!

 

今ここにいるベルトルトを捨て、ハンジの元にいるライナーを食べさせる意味はない──そう判断したミカサはハンジに向け、赤の信煙弾を打ち上げたのだった。

 

エレン「兵長、注射を早く!」

 

カチャカチャと敵を追う身支度を整えるリヴァイに、エレンが重ねて言う。

 

エレン「アルミンを巨人にして、ベルトルトを食わせるんですよ。早く注射をください!」

 

リヴァイ「──あぁ」

 

低く答えて、ややゆっくりとリヴァイが注射薬の箱を取り出した、そのとき。「獣の巨人」に向け特攻を仕掛けた新兵のたった一人の生き残りフロックが、身体にエルヴィンを括り付けて到着した。

 

フロック「リヴァイ・・・兵長。やっと追いついた。エルヴィン団長が重傷です。腹がえぐれて、内臓まで損傷しているため、血が止まりません。例の注射が役に立てばと思ったんですが。どうでしょうか?」

 

それを聞いたリヴァイは、エレンに差し出していた注射薬の箱を引っ込めた。リヴァイはエルヴィンの息がまだあることを確認すると、言った。

 

リヴァイ「この注射は、エルヴィンに打つ」

 

思わず詰め寄るエレン。

 

エレン「さっき、アルミンに使うって!」

 

リヴァイ「オレは、人類を救える方を生かす」

 

リヴァイの背後で、ミカサが刃を抜いた。

 

現在公開可能な情報

注射薬の使用条件

注射薬を用いれば、巨人の力と情報を奪えるだけでなく、瀕死となった者をよみがえらせることもできる。ゆえに注射を打たれる者は、無力化した巨人の力を持つ者の近くにいる重傷者がふさわしい。

 

あああああああ。この状況は──。瀕死の重傷者が2人、注射薬は1本。無力化した巨人化能力をもつ者が1人。リヴァイの盟友「エルヴィン」か、エレンとミカサの幼馴染「アルミン」か。できるなら、どちらも助けたい。決定権はリヴァイにある。命の選択──こんな状況、あまりに不幸・・・。

 

リヴァイ「おまえら、自分が何をやっているのか、分かっているのか。エルヴィンを、調査兵団団長を、見殺しにしろと言ってるんだぞ。時間がない、邪魔をするな」

 

思わずエレンはリヴァイの持つ駐車薬の箱に手をかける。

 

リヴァイ「エレン、私情を捨てろ」

 

エレン「私情を捨てろ? さっき、注射をすぐに渡さなかったのはなんでですか」

 

リヴァイ「エルヴィンが生きている。その可能性が頭にあったからだ」

 

エレン「フロックが瀕死の団長を運んでくるなんて、まったくの予想外だったはずです」

 

リヴァイ「その通りだが。ここにエルヴィンが現れた以上、エルヴィンに使う」

 

それを聞いてエレンは力づくで注射薬を奪おうとしてリヴァイに跳ね飛ばされる。うぁぁぁぁぁぁぁ! 叫び声をあげリヴァイに襲い掛かったのはミカサだ。

 

リヴァイ「おまえらも分かっているはずだ。エルヴィンの力なしに、人類は巨人に勝てないと!」

 

フロック「そうだよミカサ、もうやめろ。こんなバカな真似」

 

エレン「アルミンがいなくたってムリだ。だってそうだったでしょう。トロスト区を岩で塞いで守ることができたのも、アニの正体を見抜いたのも、夜間に進行することを思いついたのもアルミンだ。潜んでいたライナーを暴き出したのも、ベルトルトを倒すことができたのも、ぜんぶアルミンの力だ。人類を救うのは、オレでも団長でもない、アルミンだ。そうだろミカサ!

 

力づくで注射薬を奪おうとするミカサにフロックが反論した。

 

フロック「人類を救うのは、エルヴィン団長だ」

 

ミカサ「黙ってて!」

 

フロック「黙ってられるかよ。おまえらばっかが辛いと思うなよな。まだ知らないだろうけど、あの壁の向こう側に、生きてる兵士はもう誰もいねぇ。獣の巨人の投石でみんな殺されたんだ。誰も、助からないと思った。でも、エルヴィン団長だけは違った。あの状況で、獣の喉笛に食らいつく算段を立て、実行した。みんな作戦通りバラバラに砕けたよ。最期に感じたことは、きっと恐怖だけだ。まだ息のある団長を見つけたときは、止めを差そうと思った。けど、それじゃ生ぬるいと思った。この人にはまだ地獄が必要なんじゃないかって。そして、分かったんだ。巨人を滅ぼすことができるのは、悪魔だ。悪魔を蘇らせる、それがオレの使命だったんだ。それが、おめおめと生き残っちまったオレの意味なんだよ。だから邪魔するなよー!」

 

それを聞いてミカサは反射的にフロックに刃を向けようとして、ちょうど到着したハンジに止められた。

 

ハンジ「なん・・・て、ことだ」

 

ハンジも、同時に到着したジャンも、負傷したサシャをおぶっているコニーも、言葉を失い呆然と立ち尽くす。3人は、一瞬にして状況を把握した。ハンジがミカサを羽交い絞めにしている内に、と、リヴァイは箱から注射器を取り出す。

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! 泣き叫ぶミカサの腕を捕えたまま、ハンジはミカサに言い聞かせる。

 

ハンジ「ミカサ、わたしたちには、エルヴィンがまだ必要なんだ。あの壁の中で、希望の灯を絶やしてはならないんだよ」

 

ミカサ「それは、アルミンにだって、できる!」

 

ハンジ「たしかにアルミンは逸材だ。まだエルヴィンの経験と統率力が──わたしにも生き返らせたい人がいる。何百人も。調査兵団に入ったときから、別れの日々だ。でも、分かっているだろう? 誰にだっていつかは、別れる日がくるって。とてもじゃないけど、受け入れられないよ。正気を保つことさえままならない。辛い、辛いよ、分かってよ。それでも・・・前に進まなくてはいけない

 

「超大型巨人」が巨人化する際の爆風をまともに受ける場所にいながら、ハンジが今ここにいるのは、あの時、とっさに仲間のモブリットがハンジを井戸に突き落としたからだった。モブリットだけではない。ハンジにも、今まで語られてこなかった数々の別れがあったことは容易に想像できる。

 

ミカサだってそうだ。同期入隊の104期生は、もう数えるほどしか残っていない。だから「辛い、辛いよ、分かってよ。それでも・・・前に進まなくてはいけない」と、声を詰まらせ訴えるハンジの言葉に、声を失ってしまったのだ。

 

ミカサは、まだ平和だったころのアルミンの姿を思い浮かべ、ちらりと天を仰いでから諦めたように目を閉じた。ミカサが大人しくなったのを見計らい、リヴァイは注射器を手に取る。

 

アルミンの夢、エルヴィンの夢。それぞれの夢の在り処

 

今度はエレンが食い下がる。エレンはまだアルミンを諦めていない。

 

エレン「兵長。海って、知ってますか? いくら見渡しても、地平線の果てまで続く、巨大な湖だってアルミンが・・・」

 

エレンはリヴァイの足首に手をかけて、エルヴィンに注射するのを阻止しようとする。

 

エレン「この壁の向こうにある海を、いつか見に行こうって。でも、そんなガキの頃の夢をオレはとっくに忘れてて。母さんのカタキと、巨人を殺すことと、何かを憎むことしか頭になくて。でも、こいつは違うんです。アルミンは戦うだけじゃない。夢を見ている!

 

リヴァイ全員ここから離れろ! ここで確実に、ベルトルトをエルヴィンに食わせる!

 

ハンジに促されてミカサが。くそっ、くそっと呟きながらジャンが。「アルミン、またな」と涙を流しながらコニーが。そしてフロックに抱きかかえられるようにして、エレンがその場を離れた。

 

エレンが言う「アルミンの夢」を、リヴァイは知っていた。第49話「奪還作戦の夜」で、久しぶりに肉を振る舞われ羽目を外し気味に楽しんだ夕食の後、エレンとアルミン、そしてミカサは街を見下ろす階段に座り、話しているのを物陰から訊いていたのだ。

 

一方、エルヴィンにも夢があった。

 

エルヴィンは幼い頃、教師をしていた父親から「この世の真実についての仮説」を訊かされた。それは、壁の中の人類が、壁以前の記憶をなに一つ引き継いでいないことに対する仮説だった。父親は「レイス王により記憶を消去された」という仮説を立てていた。その答え合わせをするのがエルヴィンの夢だった。

 

エレンの実家の地下室に行けば、仮説の答え合わせができる──それが、エルヴィンをここに導いてきた夢だった。

 

屋根に取り残されたリヴァイは、片手でベルトルトを引きずりながら二人の夢を思い返していた。

 

アルミン「だから、まずは海を観に行こうよ。見てろよ、ぜったいあるんだから!」

 

アルミンは、目を輝かせてまだ観ぬ未来に夢を馳せていた。

 

リヴァイ「おまえの夢ってのが叶ったら、その後はどうする?」

 

エルヴィン「分からない。叶えてみないことにはな」

 

この作戦が成功すれば、エルヴィンの夢は叶えられる。その先は、分からないとかつてエルヴィンは言った。エルヴィンの夢について、リヴァイはつい数時間前にも聞かされていた。「オレは──このまま地下室に行きたい」と、エルヴィンは話していたのだ。

 

ついでにリヴァイは、ケニーが死に際に言った言葉も思いだしていた。

 

ケニー「みんな何かに酔っぱらってねぇと、やってられなかったんだなぁ」

 

ケニーが言う「酔っぱらうもの」、それは「酒」ではなく「夢」だった。ケニーは最強の男を目指して、レイス卿の持っていた巨人の注射薬を手に入れた。しかし巨人の力を正確に受け継ぐには、「レイス家の血筋」でなければならないと知ってしまった。彼の夢は実現しない。いくら努力しても、血筋はどうしようもできない。酔っぱらう夢を無くしてしまったケニーは、牙を失い死んでいった・・・。

 

エルヴィンの左腕に注射針を近づけながら、まだ逡巡しているリヴァイの手を、エルヴィンが跳ねのけた。

 

エルヴィン「先生・・・壁の外に人類がいないって、どうやって調べたんですか?」

 

意識が混濁したまま、エルヴィンは切れ切れにそう言った。彼はまだ、夢の中にいるのだ。「獣の巨人」に特攻をかける直前に、リヴァイは「夢を諦め死んでくれ」とエルヴィンに言った。それをエルヴィンも受け入れたはずだった。なのに、彼はまだ自分の夢の中にいる。ケニーの言葉が蘇る。「何かに酔っぱらってねぇと、やってられなかったんだなぁ」。

 

リヴァイ「獣の巨人はオレが仕留める」

 

エルヴィン「リヴァイ・・・ありがとう」

 

特攻をしかける前に、エルヴィンはまっすぐリヴァイを見返し静かな顔でそう言っていた。──ついにリヴァイは息を飲み、命の選択をした。

 

ベルトルトの最期

 

手足を切り取られ、胴と頭だけになったベルトルトは、屋根の上で薄っすらと目を開けた。そこに迫ってくる巨人の手。それは、肩に届きそうな長さの金髪をもつ巨人だった。巨人化したのはアルミンだった。「アルミン巨人」はベルトルトを捕食し、地面に倒れて人間に戻った。

 

エレン「兵長。どうして・・・ですか?」

 

リヴァイ「こいつを許してやってくれないか。こいつは悪魔になるしかなかった。それを望んだのはオレ達だ。その上、一度は地獄から解放されたこいつを、再び地獄に呼び戻そうとした。だがもう、休ませてやらねぇと。エルヴィン──獣を仕留める約束だが、まだ先になりそうだ」

 

ハンジ「もう──死んだよ」

 

エルヴィンの目を開き、瞳孔を確かめたハンジが言うと、

 

リヴァイ「そうか」

 

一瞬息を飲み、掠れた声でリヴァイは返事した。

 

リヴァイがアルミンを選んだ理由

 

辛いストーリーでしたね。特にリヴァイには。結局リヴァイはアルミンを生かすことを選びました。寸前までエルヴィンに注射薬を使うと決めていたのに、なぜリヴァイはアルミンを選んだのでしょう?

 

その決め手は夢の在り処でしょう。

 

アルミンの夢の在り処は、まだ見ぬ遠い外の世界でした。海を観たいという、はるか彼方に夢がありました。

 

エルヴィンの夢の在り処は、エレンの実家の地下室です。そこに行けば、エルヴィンの夢は実現します。

 

夢が実現した後どうするか? 以前そうエルヴィンに訊いたとき、彼は「分からない」と言いました。

 

夢を失ったとき人がどうなるか、リヴァイはケニーから学んでいました。あの、憎たらしいほど強かったケニーが、夢を失ったとき、すっかり光を失っていました。身体じゅうボロボロになったケニーは、巨人化する注射を持っているのに、それを使えば巨人化して生きながらえることができると分かっているのに、使うことなく死んでいきました。あのケニーですらそうなのだから──。

 

私情を挟めば、リヴァイは盟友エルヴィンを生かしたい。けれど「人類を救える方を生かす」と言った自らの言葉に従えば、夢を見続ける時間が長いアルミンの方が、この地獄のような現実を乗り越える力がある。だからリヴァイはアルミンを選びました。

 

エルヴィンが最後にリヴァイの腕を払ったのも、まるで意思をもって払ったようにも見えましたね。

 

エルヴィン団長を失ったのは、もちろんエレンにとっても大きな損失です。リヴァイがアルミンではなくエルヴィンを選んだとしても仕方がないと諦めていました。でも、たとえそうだとしても、アルミンを生かしてくれたのはとても嬉しかったことでしょう。この恩に、全霊で報いたいと、きっとエレンは思うでしょうね。さすがにそこまでリヴァイが計算していたとは思わないけれど、結果的に、エレンの強力な忠誠心の源になったように思います。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]次回は、いよいよエレンの実家の地下室に行くようです。そこに何があるのか? どこまでのことが明かされるのか? ジークが言った「オレたちは、あの父親の被害者。おまえは、父親に洗脳されている」の意味がつかめるのでしょうか? 次回「地下室」![/char]
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