「貴重な情報がこれでもかと集められた重要回!」。TVアニメ「進撃の巨人」シーズン3、第2クール第57話「あの日」の感想と考察を、詳細あらすじとともにお届けします。圧倒的な力をもつ巨人と人類の果てしない戦いを描いた人気アニメ「進撃の巨人」。【注意】完全ネタバレです!



第57話/エルディアの過去の歴史、マーレとの確執、エルディア王家と3重の壁の謎、さまざまな謎が一気に解明!

▲エレンの父・グリシャが残した悲しい記憶 出展/TVアニメ進撃の巨人公式

 

#57

あの日

 

整備された石だたみの道を車が走る。アーチ型の飾りがついた、どこかフランス風の建物が立ち並ぶ街並みにスーツと帽子を着用しネクタイを締めた男たちが歩いている。腕章をつけ通りに立ち尽くすグリシャ少年と妹のフェイは、どこか青ざめている。自分たちが暮らす古びたレンガの街との、あまりの違いに驚いているようだった。

 

あの幼き日、私はこの世の真実と向かい合った」という、成人したグリシャの言葉から物語は始まる。彼の幼い日に起きた、ある衝撃的な出来事が語られる──。

 

「どけよ、ドブネズミ。なんだ悪魔の血か。エルディア人め、こんなところをウロチョロと」

 

往来を行く男はすれ違いざま、手に持つアタッシュケースをグリシャにぶつけてそう言った。「兄さん」と、フェイは怯えてグリシャの背中に隠れる。「大丈夫だよ、もう慣れっこだろう。ホラ、あの土手の向こうだ」とグリシャは答えて、フェイと一緒に土手に向かった。

 

 

土手を上がると、川向こうに真っ白な飛行船が止まっていた。「おっきいなー」と嬉しそうな声を上げるフェイを見て、グリシャの頬がゆるむ。と──「おまえたちも飛行船を観にきたのか」。突然、声をかけられ傍らをみると、土手に座る男が二人。少し若い男とやや年配のヒゲの男だった。ヒゲの男はタバコをふかしている。若い男がグリシャに話しかけてきた。

 

マーレ治安局の男A「レベリオ収容区の者だな。外出許可証を見せろ」

 

グリシャ「・・・もってません」

 

マーレ治安局の男A「無許可で市内に入ったんだな。どうなるか分かっているな?」

 

グリシャ「──はい」

 

マーレ治安局の男A「労働か、制裁か?」

 

グリシャ「制裁を」

 

マーレ治安局の男A「ほう、親に迷惑はかけたくないか」

 

グリシャ「はい──ボクが妹を無理やり連れだしました。妹の分もボクに制裁をください」

 

「分かった」と答えると若い男はグリシャの胸倉をつかみ、膝蹴りをくらわした。「もう一発だ」と、さらに男はグリシャを蹴り続ける。

 

マーレ治安局の男B「まったく容赦ねぇなぁクルーガー。ほら、嬢ちゃんは先に帰ろうね」

 

ヒゲの男(マーレ治安局の男B)はべそをかいているフェイを連れて行った。

 

マーレ治安局の男A「腕章を外さなかったことは賢い。たとえガキでも腕章を外したエルディア人は楽園送りだからな」

 

ようやく制裁の手を止めた男は草の上に腰を下ろし、タバコを吸い始めた。土手にうずくまり呻いているグリシャは辛そうに体を起こすと「もう、帰ります」と告げ立ち上がろうとする。

 

マーレ治安局の男A「待て。飛行船を観にきたんだろ。せっかくだから観ていけよ」

 

そう言われてグリシャは草の上に座り直す。川向うの飛行船は相変わらず真っ白に光っていた──。

 

グリシャの妹は翌日、川で発見された。河原に横たわるフェイの遺体は血まみれで、あちこちかじられたような痕があった──。グリシャの家にきたヒゲの男・マーレ治安局の男Bは、さも迷惑そうに当日のことを説明した。

 

マーレ治安局の男B「私があの子を送ったのは、レベリオの手前までだ。仕事が忙しくてな。そもそもエルディア人の子どもが、許可もなく街をうろつくのが悪い。おまえの息子は、一族の立場をよく理解していないようだが──おまえらの先祖がおかした過ちはしっかり教育しているんだろうな?」

 

グリシャはこのマーレ治安局の男がウソをついているこを知っていた。彼らは仕事をさぼって河原に座っていたのだから、忙しかったわけがない。グリシャの母親は悲しみにくれ、父親はこの男たちにへりくだった。

 

グリシャの父「ご指導いただき、ありがとうございます。我が愚息の方には、私から教育しなおしておきますので、どうかご安心ください」

 

グリシャは父親とこのマーレ治安局の男に、激しい憎しみを覚えた。そしてそれ以上に、自分の愚かさを呪っていた。

 

今回の物語は、エルヴィンが知りたいと願い続けた「この世の真実」について詳しく語られます。これまで謎に満ちていた壁の外の世界に何があるのか、そもそも巨人とは何なのか? 「獣の巨人」を操るジークは何者なのか、エレンの父・グリシャは何者なのか、どういう考えをもった人物なのか、その辺りの謎が一気に解明されます。

 

とても重要で、しっかり把握すべき事柄ばかりが語られるのですが、その分ものすごく情報量が多く、漫画のように読み返すことができないアニメで、これだけの情報量を詰め込まれても頭がついていけそうにありません。ひとつひとつ書き起こし、整理しながら進んでいきたいと思います。

 

整理1、「エルディア人」は「マーレ人」から差別的な扱いを受けている

 

まず前回の終盤と今回の冒頭では、グリシャ少年と妹のフェイが飛行船を観に行くという微笑ましいエピソードが語られます。グリシャは10歳くらいでしょうか? 妹のフェイは後に8歳だったと語られます。 二人が家から出るためには、必ず腕章をつけなければならないようです。

 

彼らの住む地域は「レベリオ収容区」と呼ばれる場所で、古びたレンガ造りの建物が並ぶ、なかなかシックな街並みです。──シックというか、薄汚れたというか──。あまり明るい雰囲気ではありません。

 

レベリオ収容区と丈高い壁で仕切られた向う側には明るくきれいなフランス風の建物が並ぶ街並みが広がっています。収容区の人間がそちら側に行くには、「通行証」が必要なようです。壁の切れ目には検問所があり、役人が厳しく通行証をチェックしています。

 

通行証なしで検問を突破したグリシャ少年とフェイは、マーレ治安局の男につかまりました。こういう場合の罰として「制裁」か「労働」が課せられるようです。「制裁」は、暴行のようです。グリシャは腕章をしていたのでこれで済みましたが、もし腕章を外していたら「楽園送り」になったようです。まぁ、この流れで「楽園送り」というなら、それは「死」を意味しそうです。

 

グリシャは、妹の分も制裁を受けたというのに、かわいそうな妹のフェイは、翌日、血まみれの死体で発見されました。それなのにグリシャの父親は文句ひとつ言わず、マーレ治安局の男に「ご指導ありがとうございます」とへつらっていて──。

 

この出来事が、グリシャ少年に父親とマーレ人への強烈な憎しみを植えつけました。

 

グリシャを含む「収容所」に住むのは「エルディア人」で、その外の明るい街に住むのは「マーレ人」。マーレ人は、当たり前のようにエルディア人を人種差別しているようです。それは、エルディア人の先祖が犯した過ちのせいです。

 

グリシャたち「エルディア人」の過去の過ち

 

マーレ当局の男に「おまえらの先祖がおかした過ちはしっかり教育しているんだろうな?」と言われて、その夜、グリシャの父は息子に「先祖の過ち」について読み聞かせている。

 

グリシャの父今から1820年前、我々の祖先ユミル・フリッツは、大地の悪魔と契約し巨人の力を手に入れる。ユミルは死後も9つの巨人に魂を分け、エルディア帝国を築いた。そして、大国マーレを滅ぼし、この大陸の支配者となる──そこからは暗黒の時代だ」

 

テーブルを挟んで差し向いに座り、本を手に、1820年も昔に遡る昔話を話して訊かせる父親と、両手を膝に黙って聞いているグリシャ少年。おそらく、これまで何度も言い聞かされてきた物語なのだろう、グリシャはあまり熱心に訊いているようにはみえない。

 

グリシャの父ユミルの民は他の民族を下等民族と決めつけ、弾圧を始めた。土地や財産を奪い、他民族に無理やり子を産ませ、ユミルの民を増やした。その民族浄化が約1700年続いた。だがかつての大国マーレは、増長を極めたエルディアに内部工作を挑み、さらには9つの巨人のうち7つを手ごまに従え、80年前の巨人大戦に勝利したのだ。当時のエルディアの王は、このパラディ島に3重の壁を築き、国民と共にそこへ逃げ込んだ。我々の祖先は見捨てられ、この大陸に逃げ込んだが、寛大なマーレは、我々を殺さずに・・・」

 

「娘を失った直後の父親にしては、饒舌だった。ご主人さまの言いつけを守り、嬉々として己の祖先を卑下する姿は、犬さながらであった」と、成人したグリシャはその日の父親を振り返る。

 

グリシャ「あの男はウソをついてた。何か都合の悪いことがあるからウソをついた」

 

「言うな。この建物は壁が薄い」

 

グリシャ「きっと、あの男がフェイを・・・」

 

「黙れ! 言っただろう、我々の祖先は大罪人だ。優生思想に走り民族浄化を──」

 

グリシャ「オレもフェイもそんなことしてない! 街を歩いただけだ!」

 

思わず激昂し、両方の握りこぶしをテーブルに叩きつけるグリシャ。言葉を失った父親は、情けないものを見るような目つきでグリシャに言った。

 

「おまえは何だ。そんなに父さんと母さんと楽園に行きたいのか。いいかグリシャ、我々が直接の加害者でなくても関係ないことだ。我々にできることは、この収容区でただつつましく生きることだ。頼むから父さんと母さんをフェイと同じ目に遭わせないでくれ」

 

見開いた目に涙をためながら、グリシャ少年はただ懇願する父親の顔を見るばかりだった。最後にグリシャは「分かった」と、かすれ声を絞り出した。自分の行動がフェイだけでなく両親も「楽園」に、つまり「死」に追いやってしまうと知り、何も言えなくなったのだ。

 

間違っているのはどちらだろうか。私かこの世界か。おそらくは両方だろう。私は無知で愚かで、世界は理不尽で狂っている」。グリシャは、この事件を決して忘れることはなかった。このことが、グリシャのその後の行動原理となっていく。

 

整理2、「エルディア人」と「マーレ人」の過去に起きたこと

▲グリシャが幼い日を過ごした大陸と、エレンたちが住むパラディ島

 

始まりは、グリシャの父親いわく「1820年前」という、とてつもない昔に起きた出来事です。今の世界で言えば、紀元後200年くらいの年代なわけで、これはほぼ神話ですね。父親の話を箇条書きに整理します。

 

1、1820年前/ユミル・フリッツと悪魔が契約。ユミルの死後、彼女の魂は9つの巨人に分けられる。

 

2、9つの巨人の力を使いエルディア人は「エルディア帝国」を築き「大国マーレ」を滅ぼす。エルディア人(=ユミルの民)、大陸の覇者に。

 

3、エルディア人は、他の民族を下等と決めつけ1700年間に及ぶ迫害を続ける。

 

4、マーレ人はエルディア帝国から7つの巨人の力を奪い、80年前の「巨人大戦」で勝利する。

 

5、当時のエルディア王は、国民とともにパラディ島に移り、3重の壁を築いてそこに逃げ込んだ。

 

6、大陸に取り残されたエルディア人は、「収容区」に居住地を制限され、細々と暮らしている。

 

まずこの世界には「大陸」と「パラディ島」があります。人種としては「エルディア人」と「マーレ人」がいます。1820年以前は「マーレ人」が大国を築いていました。が、「ユミル・フリッツ」という女性が巨人の力を手に入れたことから力関係が変わり「エルディア人」が優勢になり他の民族を迫害し始めます。その後また「マーレ人」が優勢になり、今度は「エルディア人」を迫害。当時の国王がパラディ島に国民とともに逃げ込んだ。それで今に至る、ということですね。

 

このパラディ島が、エレンたちが住んでいる3重の壁に囲まれた国のある場所のようです。

 

つまりエレンたちは、ほぼ全員が「エルディア人」です。

 

パラディ島に逃げ込んだ国王の末裔が、レイス家。ヒストリアに繋がる家系ですね。

 

パラディ島に行かなかった「エルディア人」もいて、それがグリシャたちです。

 

物語と関係ありませんが、じつは上の地図はアフリカ大陸の南の方を逆さにしたものです。

 

 

作中でパラディ島と名づけられている島は、アフリカ大陸の東に浮かぶマダガスカル島が地形上のモデルになっているようです。

 

妹の事件の真相を知り、グリシャはエルディア復権派のメンバーに!

 

時は移り、グリシャ18歳。グリシャの父親は医者で、グリシャもそのまま父親の診療所を継ごうとしていた。ある日、患者の右肩に十字の切り傷があるのを見つけたグリシャは「この切り傷はどうしました?」とたずねる。

 

患者「これは同胞の証です」

 

グリシャ「同胞?」

 

患者「あなたの妹は、マーレ当局の男に殺された。我々にはマーレ政府の内通者がいます。詳しい話をおきかせしましょう」

 

グリシャ「──ウソだ。そんなことが・・・」

 

患者は、エルディア復権を狙う地下組織の男だった。彼らのアジトでグリシャは、妹の事件の真相を知らされる。妹のフェイは、マーレ当局の男に獰猛な犬をけしかけられ、犬に食い殺されたのだった──。

 

妹の事件の真相を知ったグリシャは、「本当の悪魔はどちらか教えてやる。我々の祖先がやったことは、正しかったのだ。再び世界を正すためには、エルディアを復活させなければならない」と、心に誓った。

 

グリシャは自らの胸にも十字の切り傷を入れ、エルディア復権派の地下組織のメンバーとなった。患者だった男が言ったマーレ政府に潜入しているスパイは通称「フクロウ」と呼ばれ、姿を見せることなく復権派を導いていた。

 

ある日、アジトのテーブルに古い文書を広げてグリシャは同胞の皆に言った。

 

グリシャ「見ろ、これが真実だ。我々の始祖ユミルは、巨人の力に目覚め、荒れ地を耕し、道をつくり、峠には橋をかけた。人々を豊かにし、この大陸を発展させたんだ」

 

復権派の人々「オレたちの教わった歴史はすべて、マーレの都合のいいように──」

 

復権派の男「しかしグリシャ、よくこの古語が読めたな」

 

グリシャ「いや、まだほとんど解読できてないんだ」

 

復権派の男「ではなぜ真実が分かった?」

 

グリシャ「そんなことすぐに分かるだろう? なぜならオレは始祖ユミルを信じている。オレたちは選ばれし神の子。ユミルの民だ!

 

グリシャの言葉にアジトに集う同胞たちは歓声をあげる。そこに、男が一人の女性を連れてきた。フクロウが遣わした人物だという。

 

ダイナ「皆さん初めまして。わたしはダイナ・フリッツと申します。王家の血を引く者です」

 

金髪の女性は、そう自己紹介した。ダイナは大陸に存在する王家の末裔の最後の一人だった。ダイナは王家だけがもつ巨人の情報を復権派にもたらした。

 

グリシャ「間違いない! 王が壁の中に持ち去った始祖の巨人、これさえ手にすれば他の巨人すべてを支配し、マーレを討ち滅ぼすことができる!」

 

同胞の男「しかし、そのような絶対的な力を持っておきながら、なぜ島まで退くことに・・・」

 

ダイナ「それは、戦うことを否定したからです。当時の王は巨人大戦時、大陸内の力の均衡を保つという役目を放棄し、辺境の島に都を移したのです。私たちのこのみじめな日々は、王が争いから目を背けたことから始まったのです」

 

グリシャ「戦おう。我々エルディアの民のために大陸に踏みとどまった真の王家に始祖の巨人をお納めするのだ! 同士諸君よ、マーレを打倒し、エルディアの誇りを取り戻すのだー!」

 

力強く叫ぶグリシャの言葉に賛同し、同胞たちは一斉に立ち上がり雄たけびと共に拳をつきあげた。グリシャとダイナは翌年、結婚し、男子を授かった。彼らはその子を「ジーク」と名づけた。

 

グリシャ「王家の血を引く子だ。きっとこの子は、私たちを勝利に導いてくれるぞ」

 

母親のダイナ譲りの金髪をもつ赤ん坊ジークの誕生を喜ぶグリシャ。それから数年後に撮影された家族写真が、あの地下室でエレンたちが見つけた写真だった。

 

整理3、ジークはエルディア王家の末裔で、エレンの腹違いの兄だった!

妹・フェイが亡くなった事件の真相を知ったグリシャはマーレへの憎しみを募らせ「エルディア復権派」の一員になります。幼い頃から引きずるグリシャの怒りを考えれば当然の流れですね。グリシャは「マーレ人こそが悪魔だ!」と、マーレへの復讐を誓います。

 

ここでカギになる3人の登場人物が現れます。

 

「フクロウ」

通称「フクロウ」は、エルディア復権派の一員でありながらマーレ政府に入り込んでいるスパイです。フェイの事件の真相も、この「フクロウ」により知らされました。さらに「フクロウ」は、「ダイナ・フリッツ」という名の女性をエルディア復権派のアジトに送りこんできます。

 

「ダイナ・フリッツ」

エルディア王家には、パラディ島に逃げ込んだ一派とは別に大陸に残った一派もいて、「ダイナ・フリッツ」は大陸に残ったエルディア王家の末裔です。パラディ島に逃げ込んだ王家が戦いを放棄したからエルディア人が迫害されることになったのだとダイナは言います。大陸に残った王家の一派は、ずっとマーレと戦おうと頑張ってきたけれど、ついにその子孫はダイナただ一人になってしまったようです。

 

やがてダイナ・フリッツはグリシャと結婚し、男の子を出産します。

 

「ジーク」

ダイナ・フリッツとグリシャの間に生まれた子ども、それが「ジーク」でした。「獣の巨人」の操縦者です。つまり彼は大陸に残されたエルディア王家の末裔であり、エレンの腹違いの兄ということですね。

 

「エルディア復権」を胸に、グリシャは息子を「マーレの戦士」になるよう洗脳しようとするが・・・

 

やがて時代は移り、軍事技術は急速に進化していた。大陸の覇者として君臨するマーレ政府の軍事力は、かつてエルディア王家から奪った7つの巨人の力による。しかし飛行機や造船技術が発達し、いずれ燃料を背景とする軍事力がモノを言う時代がすぐそこに迫っている。

 

ここにきて、化石燃料を豊富に埋蔵するパラディ島の重要性が増してきた。しかしパラディ島には、かつてのエルディア王が築いた3重の壁からなる国があり、80年前パラディ島に渡ったエルディアの王が残した言葉があった。

 

「今後われわれに干渉するなら壁に潜む幾千万の巨人が、地上のすべてを平らにならすだろう」

 

3重の壁は巨人を核に作られているので、それがマーレ政府の脅威となっていたのだ。そこでマーレ政府が考え出した策が、エルディア人から「マーレの戦士」を募ることだった。

 

「マーレの戦士」とはマーレが継承する7つの巨人の能力を継承するエルディア人で、彼ら「マーレの戦士」の任務はパラディ島の壁内に潜入し、「始祖の巨人」を持ち帰ることだった。「始祖の巨人」を持ち帰る──それは、グリシャたち復権派の目的と同じだった。

 

マーレ政府に先を越されては、エルディアは永久に復権できないと焦る復権派のメンバーたちに向かいグリシャは言った。

 

グリシャ「いや、手段は残されている。我々の息子ジークを、マーレの戦士にするのだ」

 

グリシャとダイナは、まだ幼いジークをマーレの戦士に育てるべく、自分たちの考えを教え始めた。

 

グリシャ「いいかジーク、マーレの人間が言っていることはすべて間違っている。だがおまえは誰よりもマーレの教えに従順に従わねばならない」

 

ダイナ「エルディアの屈辱は、あなたが晴らすのよ」

 

ジーク「──うん、分かった」

 

それはまるで、かつてグリシャの父親がグリシャに、マーレ政府に都合よくつくられた歴史を教え込んでいた姿によく似ていた。

 

王家の血を引く子でも、エルディア復権の希望でもなく、ジーク自身と向き合ったことが一度でもあっただろうか」。後にグリシャはそう後悔した。ジークは自らと祖父・祖母の安全を選び、グリシャとダイナがエルディア復権派だとマーレ政府に密告した。

 

整理4、「マーレの戦士」つまりジークたちの狙いは「始祖の巨人」

 

ここ、ややこしいですね。まずパラディ島に移り住んだエルディア王家は戦いを好まず、幾多の巨人を潜ませた3重の壁をつくり、何かあればこれらの巨人を動かすぞ! と脅しをかけているのでマーレ政府は手を出せない。

 

3重の壁が巨人でできているのは、こういう理由があったのですね! 壁自体が、壁内に住むエルディア人をマーレ政府から守る兵器の役割を担っていたのです。つまり壁を崇めるウォール教の神父たちはこのことを知っているのでしょう。

 

エルディア復権を目指すグリシャたちは、戦うことを放棄したパラディ島の王家から「始祖の巨人」を取り戻そうと考えています。これがあれば、再びマーレを滅ぼすことができると考えています。マーレ政府も「始祖の巨人」がほしい。「始祖の巨人」の力を奪えば、パラディ島に渡ったエルディア人たちを滅ぼすことができ、自由に化石燃料を採れるようになると考えています。

 

そのための秘策として、マーレ政府はエルディア人から「マーレの戦士」を募ります。「マーレの戦士」はエルディア人でありながらマーレに忠誠を誓う者で、かつてマーレが奪った7つの巨人の力を与えられ、壁内から「始祖の巨人」を奪還する任務をもちます。

 

ジークやライナーが口にする「戦士」=「マーレの戦士」なのでしょうね。彼らがもつ「巨人の力」は、マーレ政府が保有してきた7つの巨人の力でしょう。巨人の力を整理します。

 

1、獣の巨人

2、超大型巨人

3、鎧の巨人

4、4足歩行の巨人

5、アニの巨人

6、ユミルの巨人

7、グリシャがエレンに伝えたクルーガーの巨人(次の項目でもう一度説明します)

 

──これだけかな? ユミルの巨人の力は出どころがはっきりしないので、違うのかも知れませんが・・・。対する壁の中に持ち去られた巨人の力は2つ。

 

1、グリシャがレイス家から奪いエレンに伝えた巨人(=始祖の巨人?)

2、?

 

「始祖の巨人」の力はアレかな? エレンが叫んで自分の思い通りに巨人を動かせる力じゃないかなぁと思います。

 

「楽園送り」のその末に

 

グリシャは息子のジークに、エルディア復権を目指しながら「マーレの戦士」になるよう洗脳を開始する。しかし父親の洗脳に反発したジークは結局、両親のグリシャとダイナを裏切りマーレ政府に彼らがエルディア復権派だと密告する。その結果、エルディア復権派のメンバーは全員が「楽園送り」となる──。

 

両手を後ろ手に縛られたグリシャは、丈高い壁の上に連れてこられている。隣にも、その隣にも、ズラリとエルディア復権派の仲間が同じようにマーレ治安局の男に捕えられ並んでいる。

 

グリシャ「ここが・・・楽園」

 

マーレ治安局の男「そうだ。エルディア人反逆者の流刑地、パラディ島。おまえたちはここで終身刑となる。無垢の巨人となってな」

 

後ろに立つマーレ治安局の男を振り返り、グリシャは驚きの表情を浮かべる。

 

グリシャ「あんたに会ったことがある。子どもの頃に」

 

マーレ治安局の男「覚えていたか」

 

グリシャ「あの日のことを、忘れるものか!」

 

グリシャを捕えている男は、かつて妹のフェイと一緒に見に行った飛行船の見える川岸で、グリシャに制裁を加えた男だった。確か、仲間から「クルーガー」と呼ばれていた。グリシャの後ろをまた別の復権派メンバーが目隠しをされ連行されてくる。

 

グライス「頼む、殺してくれ。嫌だ。巨人は嫌だ・・・」

 

その声に聴きおぼえがあった。

 

グリシャ「グライス!」

 

グライス「グリシャか? どうなってる。なんでジークがオレたちを密告するんだ。おまえの息子だろう? おまえにすべてを託したのが間違いだったんだ。復権派も、ダイナも! 何とか言えよー!」

 

グリシャ「──すまない」

 

グリシャには、詫びることしかできなかった。グライスの後ろに恰幅のいい男が歩み寄り「イキのいいのがいるな、おまえは自由だ」そう言ってグライスを壁から蹴り落とした。その男はグロス総長と呼ばれていた。

 

グロス総長「こうしておくと、これから生み出す巨人どもが、あいつにひかれてサッサといなくなる。まぁ、すぐに食われるがな。そうだろ? クルーガー」

 

グロス総長と呼ばれる男の顔。その顔は、あの日、妹を連れていったあのヒゲの男だった。

 

グリシャ(こいつ間違いない。妹を殺した当局の男!)

 

グロス総長はパンパンと2度手を叩き、捕えた復権派メンバーたちに巨人化の注射を打つよう促した。「さぁ、今回は数が多いぞ、どんどんやっていこう!」

 

うなじに注射された者たちはすぐに壁の下に蹴落とされる。そしてそろって巨人化し、最初に蹴落とされたグライスめがけて走っていく。「やめろ、みんな、やめろー」と力なく言うグリシャの言葉など届かない。

 

グロス総長「クルーガー、うるさくてかなわんぞ」

 

クルーガー「こいつにはまだ尋問したいことがある。先に進めてくれ」

 

次に連行されてきたのはダイナだった。

 

ダイナ「グリシャ、わたしはどんな姿になっても、あなたを探し出すから」

 

そう言い残し、壁から蹴落とされたダイナは巨人化した。それは──エレンの母・カルラを捕食したあの巨人だった。

 

グリシャ「15年前、8歳の妹を犬に食わせたのは、おまえだろう!」

 

グリシャがそう言うと、グロスはチッと歯をむいた。さらにグロスは、震えながら前に座っている男の肩に手を置きこう言った。

 

グロス総長「思いだしたよ少年。おまえは巨人にしないでやる。3~4mくらいの巨人に調整するから、こいつと戦ってくれ」

 

グリシャ「なんで、こんなことするんだ。人が巨人に食われるのが見たいとでも言うのか?」

 

グロス総長「なんでってそりゃ、面白いからだろ? どうかしてると思うか? でも、人は残酷なのが見たいんだよ。平和ってのはたいへん結構なことだが、何かモノたりんのだよなぁ。生の実感ってやつか? 自分が死ぬのは今日かもしれんと感じて生きる。それが生き物の正常な思考なのだよ。オレはその日を受け入れる心構えがある。なぜならこうやって残酷な世界と向き合い、理解を深めているからだ。あぁ、おまえの妹を息子たちの犬に食わせたのも教育だ」

 

グロスは平然と、震える男のうなじに注射し壁から蹴落とした。

 

グリシャ「心は、痛まないのか?」

 

グロス総長「まぁ、痛いことは分かる。もし息子が同じ目に遭ったらと思うと、胸が締め付けられる。可哀想に。エルディア人でさえなければなぁ」

 

壁から落とされた男は巨人になり、壁の上を見上げている。

 

グロス総長「見ろ、あれがおまえらの正体なんだぞ。巨人の脊髄液を体内に吸収しただけで巨大なバケモノになる。おまえらエルディア人をこの世から一匹残らず駆逐する。これは全人類の願いなんだよ。心が痛むわけないだろう。人殺しはそっちだろ。おまえら復権派は、オレたちマーレに何をしようとした。心は痛まなかったのか?」

 

グリシャ「ウソだ。オレは真実を知っている。始祖ユミルは大陸の人々を豊かに・・・」

 

グロス総長「あぁ分かったよ、偉大な歴史があったんだろ? 下にいる友だちと語り合うといい。どうだ、妹が呼んでるぞー」

 

聞く耳もたんとばかりにグロスはグリシャを壁の下に突き落とそうとする。

 

クルーガー「ふぅ。どうだ、これが面白いと思うか?」

 

グリシャが突き落とされるすんでのところで、後ろに立っていたクルーガーはグリシャを助け、代わりにグロスを壁の下に落とした。グロスは、ついさっき自分が注射した巨人に食べられている。

 

「あんた・・・?」と不思議そうにクルーガーを見上げるグリシャに、彼はこう言った。

 

クルーガー「オレがフクロウだ。覚えておけよグリシャ。巨人の力はこうやって使う!」

 

クルーガーはナイフを取り出し自分の手を傷つけた。そのとたん、強烈な爆風とともに閃光が光り、巨人が現れた。「クルーガー巨人」は壁のすぐ側に停泊しているマーレの船を担ぎ上げ、真っ二つに折った。「クルーガー巨人」の姿は、「エレン巨人」によく似ていた・・・。

 

整理5、「フクロウ」の正体はクルーガーだった!

▲「楽園送り」とは、パラディ島で巨人化されること 出展/TVアニメ進撃の巨人公式

 

ここもまた濃い・・・。重要なことや、さほど重要でないこと入り乱れて、さまざまな情報が詰め込まれているので、いくつかに分けて整理します。

 

「楽園送り」とは、パラディ島で巨人にされること

エルディア人に課せられた極刑「楽園送り」は、パラディ島につくられた壁の上で、巨人化の注射を打たれて壁から落とされることでした。自我をなくした巨人は、ただひたすら人間を捕食するためさまよいます。エルディア復権派の仲間たちが巨人になった姿は、超大型巨人が蹴破った外門からシガンシナ区に入ってきた巨人たちでした。

 

ダイナ巨人はエレンの母・カルラを捕食した巨人だった

ジークの密告によりグリシャだけでなくダイナも「楽園送り」になっていて、グロスの手で巨人化の注射を打たれます。巨人化した「ダイナ巨人」は、あのエレンの母親を捕食した巨人でした。

 

「フクロウ」の正体はクルーガーだった

エルディア復権派のスパイとしてマーレ政府に潜入している「フクロウ」は、じつはクルーガーでした。クルーガーは、かつて飛行船を観に収容区を抜けだしたグリシャに制裁を加えたあの男です。さらにフェイに犬をけしかけ食い殺させたヒゲの男はグロスと言い、今では総長の職についていました。

 

巨人化できるのはエルディア人のみ

グロスの言葉によると、巨人化する注射液の中身は巨人の髄液。それを体内に取り入れると巨人化するのですが、巨人化できるのはエルディア人のみのようです。しかも、注射液の量を調整するのか、巨人のサイズをある程度調節できるようです。

 

クルーガーは巨人化できる人物だった

なんとクルーガーはグリシャの目の前で巨人化しました。スパイをしていることから分かるように、クルーガーはエルディア人だったようです。さらにクルーガーは「覚えておけよグリシャ。巨人の力はこうやって使う!」と、巨人化する方法を教えています。「クルーガー巨人」が「エレン巨人」にそっくりなことから、クルーガーの巨人化能力がエレンに受け継がれたと考えられます。

 

つまり、人間にもどったクルーガーはグリシャを巨人化して自分を捕食させた。さらにグリシャがエレンを巨人化して自分を食べさせた──という流れが推測できます。

 

「夢じゃねぇ、記憶だ」

 

大声で叫びながらエレンは目を覚ました。滂沱の涙を流し、肩で息をつきながら、不思議そうな顔で周りを見回す。

 

エレン「ここは・・・私はなぜ・・・」

 

アルミン「エレン落ち着いて。ここは懲罰室で、エレンとミカサは兵規違反のおつとめちゅうだよ」

 

鉄格子の向こうから、心配そうにアルミンが顔を覗かせている。

 

ミカサ「怖い夢でも見たの? エレン」

 

隣の懲罰室から顔をのぞかせたミカサの髪は──寝ぐせでひどく逆立っている。

 

アルミン「今さ、”私は”って言った?」

 

ミカサ「言ってた。泣いてるの? エレン」

 

エレン「なんか、すっげぇ長い夢を見ていた気がするんだけど・・・いや夢じゃねぇ、記憶だ。今、おやじの記憶と繋がった。あの巨人、おまえだったんだなダイナ」

 

整理6、エレンはグリシャの記憶を継承している

ここは、ごく短く挿入されたパートなので、そんなに難しい内容ではありません。それよりも、ミカサの寝ぐせがお宝映像だと人気のようですが──。

 

これまで語られてきたグリシャの記憶。マーレ人に迫害される日々、フェイの無残な死、父親の情けない態度、無力感、エルディア復権派の活動、ダイナのこと、そしてジークのこと。これらをエレンは「記憶」として受け継いでいます。

 

だれに教えられるわけでもなく、エレンはこの世界の真実を知っているのです。これまでこんなことはなかったのに、ここにきて記憶が呼び覚まされたのは、やはり地下室でグリシャが残した書物に触れたからでしょうか?

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]今回の情報量はすさまじかったですねー! しかも、どれもこれも重要なことだらけで! 簡単に流せない情報ばかりだったので、それぞれきっちり整理してみました。今後、物語で迷ったときの指標となってくれそうに思います。しかし、ちょっと疲れました・・・。次回タイトルは「進撃の巨人」! まんま作品タイトルじゃないですか! これまた重要な回になりそうです![/char]

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