「思わず両腕をさすりあげたくなる雪の描写と、意思の強そうなトールズの男前が際立つ第1回!」シーズン1、第1話ここではないどこか」のあらすじ感想考察。2019年7月~放送の「ヴィンランド・サガ」は、1000年前の北欧を舞台にヴァイキングの生き様を描いた骨太な物語



第1話/かつて戦鬼(トロル)と恐れられたトールズの願い

▲トルフィン6歳 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

#01

ここではないどこか

Somewhere not here

 

西暦987年 ヒョルンガバーグ。今にも降り出しそうな暗い空の下。鎖帷子を着込んだトールズは、船の上で戦っていた。敵も味方も海の上。ヴァイキングの戦いだ。

 

トールズ「陣形が広がりすぎるな。このまま敵の2波目は受けてやる。トルケル、おまえはフローキが詰めてきたところで、一気に戦線を押し上げろ」

 

トルケル「あのサイコロ頭なぁ。まぁいいけどよ。で、おまえは?」

 

トールズ「敵の足を止める」

 

そう言うやトールズは、軽々と敵の船に飛び移り、剣と弓矢で表情一つ変えずに敵を倒してゆく。襲い掛かってきた金髪の男とともに海に落ちたトールズは、男を仕留めると剣を捨て、潜水したまま戦場を離れた。

 

鎖帷子を着こんだまま海に落ちれば、ふつうはその重さでもう浮かび上がることすら難しい。ところがトールズは潜ったまま遠くの陸地まで泳ぎ着いた。息を切らして砂を歩き振り返ると、海の彼方では、敵の軍船も味方の軍船も、どちらも 赤い炎に包まれ盛大な黒煙をあげていた。

 

幸村誠原作の重厚歴史大河「ヴィンランド・サガ」。いよいよオンエア!

 

緻密な画風とていねいに調べ上げた重厚なストーリーが持ち味の幸村誠の漫画「ヴィンランド・サガ」が、いよいよアニメ化しました。制作は「進撃の巨人」のWITスタジオ。放送も「進撃の巨人」と同じNHKです。「進撃の巨人」同様に、じっくり腰をすえた作品になりそうです。

 

2019年度、期待の大型作品です!

 

ヴィンランド・サガは、今から1000年前の北欧を舞台にしたヴァイキングの物語。北極圏アイスランドの小さな村に住む6歳の少年トルフィンが主人公です。トルフィンは、父親トールズ、母親ヘルガ。姉ユルヴァとともに、厳しい生活ながらも優しい大人と遊び仲間の子どもたちと穏やかに暮らしています。プロローグともいえる第1話からしばらくは、トルフィンの父・トールズをメインに物語は進みます。

 

▲トルフィンたちが住むアイスランド 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式twitter

 

西暦1002年 アイスランド。つまり冒頭のヴァイキングの戦闘から15年後のこと。6歳の少年トルフィンは水を汲み、牛の世話をするなど、家の仕事を手伝っている。あたりは雪に覆われ、夜ともなれば吹雪に閉ざされる極寒の地だ。

 

レイフ「そしてワシは見つけたのだ。新大陸を! 果物が実り、草原波打つ新天地。ワシはその地に名をつけた。かの地の名はヴィンランド。──どうだチビども。少しは見直したか? このレイフ・エリクソンさまを!」

 

トルフィン「すげぇや、レイフのおっちゃん!」

 

ある吹雪の夜、トルフィンの家に船乗りのレイフがやってきて、子どもたちを前に冒険の話を聞かせている。子どもたちは目を輝かせ、身を乗り出してレイフの話に夢中だ。「それでそれで?」「人はいたの?」「あったかかった?」「アイスランドよりも広かった?」と、口々にレイフに疑問を投げかける。

 

レイフ「おうよ。ここよりもずーっと暖かくてな、草が一面に茂っとった。原住民にも出会った。言葉は通じなかったが、すぐに友だちになったよ。この羽飾りとパイプは、彼らからの贈り物さ。いいか、こいつはな、真の戦士だけが身につけられるものなんだ」

 

そこにトールズが帰ってきた。トールズは部屋の中央にくべてある囲炉裏に薪を足しながら、レイフの話に耳を傾けている。一人の子が言う。

 

子ども「でも、変だよレイフさん。だってじいちゃんが言ってたもん。西には*ヨルムンガンドがいて、近づく船をみんな食べちゃうんだ。そんでその先はなーんにもないんだ」

 

レイフ「だーかーらー! そうだこそ、ワシの偉さが分かるだろう? ほらほら、これ証拠。真の戦士の!」

 

子ども「だいたいレイフさん、戦士じゃないじゃん」

 

レイフ「分かっとらんなぁ。戦働きだけが戦士じゃないぞ。船乗りは海と戦っとる。すごいんだぞ!

 

*ヨルムンガンドは、北欧神話に登場する毒蛇の怪物

 

子ども相手に自慢をするレイフを、子どもたちは「みんな言ってるよ、おっちゃんはヒゲ生えた子どもだって!」と、くすくす笑いだした。

 

トルフィンぼくの父上が戦士っていうなら本当だけど・・・」

 

と、トルフィンまで言い出し、怒ったレイフはその矛先をトールズに向けた。

 

レイフ「トールズ! こいつらバカにするんじゃ。びしっと言ってやってくれ」

 

トールズはパンパンと2度手を叩くと「今日はお開きだ」と告げた。

 

子どもたちが帰った後、囲炉裏を挟んでトールズとレイフは話しこんでいる。

 

トールズ「そうか。グリーンランドで凍死者が・・・」

 

レイフ「今年の寒波も厳しくなる。家畜もだいぶ死ぬだろう。だが問題なのは、年をおうことに寒さが厳しくなることだ」

 

そこにユルヴァが弱った羊を2頭連れて家に入ってきた。少しでも凍死させないためだ。

 

レイフいずれ、誰も越せぬような冬がくるかも知れん。ワシの国では、今、弟が移住の計画を立てている

 

トールズ「遠いのだろう?」

 

レイフ「なぁに、ワシは往復してきたさ」

感想&考察1、レイフが見つけた大陸は、もしやアメリカ!

 

冒頭、船上で戦うトールズ(上記ツイッター画像の右上がトールズ)は剣で敵を薙ぎ払い、弓で頭を射抜き、眉ひとつ動かさずに次々と敵を仕留めていました。身軽で的確な戦い方。トールズはかなりの強者です。ところが戦闘中に海に落ちたのをきっかけに、トールズは一人戦線を離れました。

 

それから15年。トールズは雪に閉ざされた極寒の地アイスランドの寒村で妻と二人の子どもたちと一緒に細々と暮らしています。もうすっかり戦うことはないようです。どうやらあのとき、トールズは戦うことが嫌になり逃げだしてしまったのです。

 

トールズの家で子どもたちを相手に冒険譚を披露していたレイフ(上記ツイッター画像の右下がレイフ)は、トールズの古い友人。彼の言葉の中に作品タイトルにもなっている「ヴィンランド」という言葉が出てきました。「ヴィンランド」は、レイフが見つけた新大陸です。アイスランドより暖かく、草原が広がる地。

 

村の子どもが「西にはヨルムンガンドがいて~」と言っていることから、レイフは西に航海したようです。さらに原住民からもらったという羽の冠──どうやらレイフが見つけたのは現在のアメリカ大陸のようです。

 

北の地に住む人々は、雪に閉ざされない大地、凍らない海を求めてやみません。トルフィンの住む村の厳しい暮らしを見れば、彼らがどれだけ暖かい土地に憧れているかが分かります。しかし、絵がすばらしくきれいですね! 思わず寒さを覚えてぶるっと身震いしたほどです!

 

ちなみに、レイフは、実在の人物をモデルにしています。レイフ・エリクソンヨーロッパ大陸から海を渡って初めてアメリカに到達したヴァイキングの船乗りと、wikiに書かれています。「幸運なるレイフ」と呼ばれているそうです。レイフが名づけた「ヴィンランド」は「ぶどうの国」という意味と説明されていますが、「vin」はノルウェー語で「ワイン」なので、「ワインが作れるほど豊かな土地」といった意味合いかな? と思います。ちなみに「vin」は、アイスランド語で「友人」の意味があるそうです。豊かな土地という意味合いに、友人のような親しみを込めた名称だったのかも知れませんね。

 

「ヴィンランド・サガ」という物語は、実在の人物や史実を元にした歴史漫画なのです。

 

「じゃぁ、ここからも逃げたい人はどこに行くの?」

 

吹雪の翌日は、よく晴れた日だった。村の者は総出で道や屋根の雪をどかしている。浜辺では、レイフが逆さに置いた自分の船の底に油のようなものを塗っている。トルフィンはその上に乗り船に乗せてくれと頼んでいるところだ。冒険に出たくて仕方がないのだ。

 

レイフここらの海はなぁトルフィン、怖いぞ。ワシは若い頃、流氷に閉じ込められたことがある。グリーンランドへ移り住んだばかりだったからな。不覚を取った。食糧はすぐになくなって、氷を食ってひもじさを紛らわせた。ついには船が氷につぶされ、ワシらはどうしようもなく、海の上を歩いた。気づいたときにはワシしかいなかった。6人の仲間は皆死んだ」

 

レイフの話にそれまでの威勢のよさを引っ込めたトルフィンは訊く。

 

トルフィン「どうして? どうしてそうまでしてボクらは、こんな北の島に住んでるの?」

 

レイフ逃げてきたんだよ。ワシらの先祖はもっと東の地に住んどった。ノルウェーという名の土地だ。ここらより暖かく、海も凍らん。たくさんの入り江に守られた、いい土地だ。だがある日、ハラルドという強い男が現れた。ハラルドの軍勢は火の勢いで村々を制圧し、彼は最初のノルウェー王を名乗り、支配者になった。そして人々に迫った。王に服従するか、さもなくばノルウェーの地を去るか。多くの者がハラルドの圧政を嫌い、支配の及ばない遠い地へ移り住んだ。それがここ、アイスランドだ

 

トルフィン「──ウソだ。おっちゃんはやっぱりウソつきだ。父上やボクのご先祖さまが逃げたりするもんか! おっちゃんのバーカ!」

 

そう言い捨ててトルフィンは雪道を走って家に帰った。

 

一方、トルフィンの家の屋根では父親のトールズと姉のユルヴァが雪下ろしをしているところだった。

 

ユルヴァ「あぁもう。ねぇ父上、どうしてウチは奴隷を買わないの? 母上は身体弱いんだし、わたしが手伝わないと!」

 

トールズ「よそはよそだ。毎年、訊くな」

 

「変わり者なんだから」と、ユルヴァはため息交じりに言う。そのとき、彼女は足を滑らせ屋根から落ちた。幸いユルヴァは大丈夫だったものの、落ちた下に違和感を覚えて雪を掘ってみると、そこに首に鎖をつけられた男が埋まっていた。──奴隷だ。

 

▲トルフィンとユルヴァの父・トールズ 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

トールズは奴隷を抱き上げて家の中に入れた。服を脱がせてみると、奴隷の手足はもう真っ黒に変色している。「ねぇ、父上、もう死んでんじゃない? 手足腐ってるし」と、ユルヴァ。娘の言葉に耳を貸さずトールズは奴隷の心臓を押し蘇生を試みる。

 

ユルヴァ「逃げた奴隷だよ、かくまったらもめごとになるよ」

 

ついに奴隷は息を吹き返した。

 

奴隷「オレは・・・連れ戻されるのか。ハーフダンさんのお屋敷に・・・あすこは嫌だ、嫌だ。でも、どこにも行くあてなんか・・・」

 

奴隷の黒く変色した手を取り、トールズは静かに言う。

 

トールズはるかな西、海の向こうにヴィンランドという土地がある。そこは暖かく、豊かで、奴隷商人も戦の炎も届かぬ遠い地だ。どうだ、いつかオレたちと一緒にその地で暮らさないか

 

奴隷「そうか。ここは、ヴィンランドというのか──」

 

混濁した頭で奴隷は両親たち家族を夢見て、安心したように呟いた。そこに、奴隷の持ち主ハーフダンの一行が入ってきた。逃げた奴隷を探しに来たのだ。

 

ハーフダン「オレはその奴隷の正当な所有者だ。返してもらおう」

 

トールズ「ハーフダン、この男、いくらで買った?」

 

結局トールズは羊8頭でハーフダンから奴隷を買った。もともとハーフダンは羊2頭で買った奴隷だったので、その4倍出したことになる。けれど奴隷はその後すぐに死んでしまった。羊8頭をなくして悔しがるユルヴァと違い、トルフィンは黙って奴隷を見送ってから遠慮がちに父に問う。

 

トルフィン「父上、ボクらも逃げてきたの? レイフのおっちゃんが、ご先祖さまは東から逃げてきたって。逃げて、ここに来たって──」

 

トールズ「あぁ。そう伝えられている」

 

トルフィン「じゃぁ。じゃぁ、ここからも逃げたい人はどこに行くの?」

 

トールズはそれには答えなかった。父子の頭上には緑色のオーロラがたなびいていた。

 

感想&考察2、口に出さなかったトールズの答え。それがタイトル「ここではないどこか」。

 

冒険を夢見る6歳のトルフィンに、レイフは現実の厳しさを教えます。かつて流氷に囲まれ船をつぶされた経験をレイフは語ります。氷をつたいほうほうのていで逃げたレイフたち乗組員ですが、ついに助かったのはレイフただ一人でした。

 

さらにレイフは、トルフィンたちがなぜこんなに寒い辺境の島で暮らしているかも教えます。ノルウェー王の支配を逃れて移り住んだのだと。

 

トルフィン父上やボクのご先祖さまが逃げたりするもんか!

 

と、トルフィンは反発します。トルフィンは、かつて勇猛な戦士だったときかされている父・トールズを尊敬しているのです。けれどトールズが、ハーフダンの屋敷から逃げ出した奴隷に羊8頭を出して助けたのをみて、疑問に思います。「どうして父上はこの奴隷に、そんなに優しくするんだろう?」ってところでしょうね。「もしや、同じ逃亡者という境遇だから?」と、その辺りまで考えたのかも知れません。

 

トールズは誰にも優しく接するようですが、とくにこの奴隷にこだわったのは、やはり「逃亡者」という境遇を憐れんだのでしょう。人が人を支配することに、強い疑問を持っているのだと思います。

 

当時は奴隷を使うのが当たり前の時代でした。だからユルヴァは「どうしてウチは奴隷を買わないの?」と、何の疑問ももたずにきくし、どうしても奴隷を使おうとしない父親を「変わり者」と呼ぶのです。

 

厳しいながらも自分たちだけで生活しているアイスランドの暮らしは、レイフの言うように、今後さらに厳しくなりそうです。だからレイフは「ヴィンランド」に一緒に行こうとトールズを誘いに来たのでしょう。「ヴィンランド」は遠く、移住するには辛い道のりになるのを考えてトールズは二の足を踏んでいます。妻のヘルガが病弱なのも、その原因の一つでしょう。

 

現実を見据え、どう生きていくかを模索するトールズと、「逃げる」ことに強い抵抗を覚える少年トルフィン。この二人の関係性が、この物語の核となりそうです。

 

ところでレイフ役の上田 燿司さん、すごくいい演技ですね。レイフは子どもたちにもバカにされるほど子どもっぽいところがありながらも、じつは本当にすごい船乗りです。親しみを持たせつつ、きちんと大人を演じているところが、レイフの役柄にぴったりだと思いました。

 

OPにサバプロ、EDにAimerを起用!

オープニング曲はSurvive Said The Prophetの「MUKANJYO」。


▲ツインエンジン ver.

 


▲Survive Said The Prophet Official ver.

サバプロといえば、「BANANA FISH」のOP1を担当したバンドです。「BANANA FISH」のOPはとても作品に合っていてすごくいい曲だったので、今回も期待していました! タイトルは「MUKANJYO」。んん──? 歌詞にも何度か「なにも感じなかった」と聞こえてきます。

 

おそらくですが、成長したトルフィンをテーマにしたものでは? と思われます。確かに成長したトルフィンに、幼い頃のかわいらしい面影ないんですよね。吊り上がった目の、きつい顔立ちです。無感情な表情の内に秘めたものを吐露するような激しいラストの咆哮がハードロックしています。ほぼトールズが主人公の第1話時点では、ちょっとこの楽曲では若すぎる気がしますが──でもその内、トルフィンが主人公になればなじんでくるんでしょうね^^

エンディング曲はAimerの「Torches」。

▲ツインエンジン ver.

 

▲Aimer official ver.

 

「Torches」は、火を灯す松明「トーチ」の意味。エンディング曲の重要な役割は、本編の名残を汲み上げながらエンディング曲につなげるところだと思うのです。つまり、楽曲の頭がすごく重要。今回の「Torches」の入りは、Aimerのすぅっと息を吸い込む音から。これ、すごくいいです。聴いてすぐに好きになりました。

 

トールズ視点の曲なので、第1話からぴったりきます。温かさと強さと包み込むような優しさと、どこか懐かしさも感じさせてくれます。Aimer  official var. はさらにすごい! これは神曲の予感です。フルバージョンのリリースがすごく楽しみになってきました!

 

Aimerは、TVアニメ「NO.6」のエンディング曲「六等星の夜」が大好きで、当時よく歌ったもんです。ハスキーな甘さに力強さも感じさせる独特の声が素敵なシンガーです。またここで会えて嬉しい♪ 「夏目友人帳」のエンディング「茜さす」も素敵でした!

 

第1話の個人的評価

とりあえず、滑り出しの第1話時点での評価を数値化してみます。

 

脚本/9

CV/9

キャラクターデザイン/9

作画/9

アニメーション/9

美術背景/9

音楽/8(現時点ではOPがシナリオになじんでないので、少し減点しています)

総合評価 62/70≒89/100 約89点

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]細部までていねいにつくられた絵と戦闘シーンの滑らかなアニメーション、キャラクターに頼りすぎない良質シナリオ、質の高い声優陣にOP、ED楽曲と、どれをとっても素晴らしい! 原作もとても評価の高い作品なので、このクオリティーを維持して最後まで走り切ってほしいです![/char]

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