TVアニメ「蟲師 続章」第9話「潮わく谷」(うしおわくたに)。ヒトとは在り方の違う「命の別の形」それが蟲。「蟲師」は、蟲が人に影響したときに現れる奇妙な現象を集めた奇譚集。案内役のギンコと共に「蟲師」の世界の詳細あらすじを追う。感想・考察も加え、作品を深掘り!
第9話/「この力を手放す事はできんよ。俺ももう守られてるだけの赤子じゃない。守らなきゃならないものがあるんだよ」
TVアニメ「蟲師 続章」
第九話
潮わく谷
ushio waku tani
雪降る冬山の洞穴で、ギンコは焚火を焚いて居眠りをしている。そこに通りかかった男がギンコを担いで自宅に連れ帰った。
ギンコ、雪山で拾われる
▲「ありがてぇ。まるで桃源郷にでも来た気分だ」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
ギンコは布団の上で目を醒ます。ギンコを覗きこんでいた子どもたちが大はしゃぎで母親に報告した。
子ども「母ちゃーーん、生き返ったよぉ」
母親「何言ってんだ。しんじゃいないよ」
赤子をおぶった女がやってきた。隣の部屋には囲炉裏があり、そこには年老いた男が一人座っている。
ギンコ「ここは?」
母親「あんた、足の怪我でずいぶん弱ってたみたいでね。昨日の晩、うちの人に担ぎ込まれたのさ」
「そういやぁ」と右足を見ると、包帯が巻いてあった。
ギンコ「ご亭主は? おかげで助かった」
母親「山の開墾の手伝いに行ったから、明日まで戻んないよ」
母親がお茶を入れていると、盛大にギンコの腹が鳴った。「そう急かすでないよ。すぐに力のつくもん、出してやっから」と、彼女が出してくれたのは、冬とは思えないほどの豪勢な料理の数々。煮物に豆に魚に漬物につやつやの白飯まで。
ギンコ「ありがてぇ。まるで桃源郷にでも来た気分だ」
母親「ふふ。遠慮せずたくさん食べとくれ」
ギンコ「じゃ、遠慮なく」
ギンコはちょっと老人の方に会釈した。老人の方も手をあげ会釈を返した。「どうぞ、どうぞ」という感じに。その後ろで、子どもが入り口の戸を引いた。その向こうにまるで夏のような緑の景色が見えた・・・。
ギンコ(今、青い稲が見えたような・・・。まさかな。こんな冬のさなかに)
夜、外からクワの音が聞こえてきた。
ギンコ(クワの音? こんな夜更けまで働いているのか?)
月明りの夜に、クワの音はずっと響いていた。
冬のさなかに、この谷の田んぼは青々としていた
▲男から甘い匂いが・・・ 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
翌朝、亭主が裏の畑にいるというので、ギンコは外に出た。一歩外に出ると、そこには息を飲むばかりに青々とした田んぼが広がっていた。稲穂すら実っている。
ギンコ(見間違いじゃなかった。どういう事だ。知らないうちに春が来てたってのか? まさか、凍死しかけた俺の見てる夢って事はないだろうな)
混乱したギンコはおかしいのは自分の方か、とすら疑っている。
男「やあ、あんた。もう、いいのか? まだ無理せんほうがいいぞ」
ギンコ「ああ。おかげさんで助かったよ。礼を言う」
男はクワを担いでいる。この家の主人で、夜にクワを振るっていた当人だ。
ギンコ「・・・しかし、見事な田だな。こんな季節に一体どうやって育てた?」
男「どうって事はないさ。ひたすら手をかけてきただけだ」
男は棚田の上の方から降りてきて、ギンコの隣に立つ。甘い匂いが漂ってきた・・・。
ギンコ「特別な事をしたわけじゃないと?」
男「ああ。俺は並外れて体が丈夫でな。昼夜働いても苦にならんのだ。これは、その賜物だと思ってるよ」
ギンコ(この匂い。光酒絡みか? いや、違う。これは何だったか・・・)
ギンコには思いだせない匂いのはずだ。なにしろギンコは10歳までの記憶をなくしている。その匂いの正体に、次の瞬間、ギンコは思い当たる。
「お茶が入ったよ」とやってきた女房が背におぶっている赤子から同じ匂いが漂っていたからだ。それは、母親の乳の匂いだった。
「これ以上、この谷の事に首突っ込まないでくれ」
▲「恩を仇で返すつもりなら出てってくれ」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
家の裏手で老人が薪割りをしていた。ギンコは「手伝いましょうか」と老人に近づく。「ケガ人はじっとしときな」と言われたので、ギンコは傍らに腰を下ろした。
ギンコ「あなたは、あの夫婦の父方で?」
老人「ああ」
ギンコ「では、息子さんの母御はもう」
老人「そうだな。ずいぶん昔に先に逝ってしもうた」
ギンコ「息子さんを産んで、およそ一年後・・・ですな」
老人「何で知ってる?」
驚いた老人は薪割りの手を止め、ギンコの方を向く。さらにギンコは続ける。
ギンコ「ずいぶんと、まともではない亡くなり方をしたのでは?──私の生業は蟲師でしてね。申し上げにくい事ですが・・・息子さんの様子、おそらく蟲の影響を受けている。心当たりはありませんか」
老人「わしは何も知らんよ」
老人は目をそらし薪を拾い集める。思わずギンコは立ち上がる。
ギンコ「もしそうなら、息子さんはもとより、嫁御(よめご)の命まで危ない」
老人「蟲師だか何だか知らんが、息子に妙な事言うと許さんぞ。恩を仇で返すつもりなら出てってくれ」
それだけ言うと老人は、背負子に薪を載せて歩き去った。
▲「少しは休んだ方がいい」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
翌日、ギンコはこの家の主人──名前は「豊一」という──に、直接話すことにした。
豊一「へぇ、あんた蟲師ってやつだったのか。で、俺の何が見過ごせないって?」
ギンコ「少しは休んだ方がいい。あんたの体はとうに限界を超えているはずだ」
豊一「心配してくれるのはありがたいが大丈夫だよ。俺はずっとガキの頃からこんな調子なんだ」
ギンコ「ろくにゆっくり眠れんのだろ?」
豊一「ああ。眠ってると体がうずうずしてな。気が付いたら畑に出てる」
ギンコ「自覚はないかもしれんが、蟲がそうさせてるんだ」
豊一「違う。俺の意思だ。ここは、昔は本当に何もない谷だった。俺は物心ついた頃から働いた。昼も夜も、来る日も来る日も。俺が、この谷をここまでにしてきたんだ。もっと豊かになりたかった。家族に苦労させたくなかった。すべて俺が望んだ事だ」
二人の言い合いに、通りかかった豊一の父親が気づいた。
ギンコ「それが、母親の命の上に成り立ってるとしてもか」
豊一「・・・何?」
父親「やめろ! 余計な事を言うなと言ったはずだ」
ギンコ「言ったほうが本人のためだ」
父親「それは、あんたの決める事じゃない。これ以上、この谷の事に首突っ込まないでくれ」
貧しい谷を豊かにしたのは、並外れた豊一の力だ。どうやらそれは蟲絡みで、このままでは豊一もその妻の命も危ないとギンコは言う。豊一の父親は、これ以上の介入を執拗に拒む。
しかし──。だからといって、このまま見過ごしていいのだろうか? ギンコは悩む。
▲「昼間は出過ぎた真似をしまして」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
夜になり、豊一はまた山へ出かけて行った。囲炉裏に座る豊一の父親に、ギンコは薬を差し出した。
ギンコ「昼間は出過ぎたマネをしまして」
父親「・・・いや」
ギンコ「これを。蟲下しです。必要だとお思いになれば使ってください。たしかに、俺にこの谷の豊かさを奪う権利はない。・・・明朝、ここを発ちます。大変、世話になりました」
結局、ギンコは判断をこの父親に任せることにした。
豊一の気持ちはわかる。しかし、豊一の父親は・・・自分の息子が心配じゃないのだろうか? ギンコの話を訊きたくはないのだろうか? そこは少し疑問に思えた。──どうやら、亡くなった妻の遺言で、豊一に妻の異変を報せたくないようだが。だとしても、自分が知っておくのは重要だと思うのだが。
豊一の母
▲池の水は甘かった 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
豊一がなかなか戻らないので妻が捜しに出ると、豊一は崖の下に倒れていた。家に連れ帰り、しばらくして豊一は目を醒ました。
父親「大丈夫か、どこか痛むか」
豊一「いや」
父親「そうか。なら、しばらくはゆっくり休め」
豊一「なぁに、少し気を抜いただけだ。大げさだな」
そう言ってまたすぐに働きに行こうとする。「豊一」。父親が改まった声で呼び止める。
父親「そこへ座れ。話がある」
父親は家族に外してくれるよう言うと、「この話を、よく肝に銘じてくれ──」と、母親・千代の話を始めた。
赤子の豊一は、よくお腹を空かせて泣いていた。
千代「はいはい豊一。また腹が減ったのね」
父親「千代。乳が出んのか」
千代「ええ」
父親「おまえにも、ろくな物食わせてやれてないからな・・・」
豊一が生まれた当時、この谷は移住してきた者ばかりで、貧しかった。乳を分けてくれる者もなく、二人は途方に暮れていた。山の畑からの帰り道、木立ちの中を歩いていると、どこからか甘い匂いが漂ってきた。
千代「何かしら、これ」
父親「見ろ! 白い池だ」
千代が池の水をすくって舐めてみると甘かった。千代の背中の豊一がその匂いに反応して泣き出した。布に染み込ませ飲ませると、豊一は夢中で吸っていた。
その翌日、千代から乳が出るようになった。その後、白い池は姿を消した。
豊一は乳を飲み、丸々と育っていった。それに反するように、千代は体調を崩していった。そんなある日、千代が草刈りをしていて、草で指を切った。その傷口から白い液体が流れ出る。千代がそれを舐め──。
千代「こりゃ、乳だ。こんな事があるもんかね?」
そして1年が過ぎ、豊一が乳離れを迎える頃、縁側で遊ぶ豊一を見ながら千代はこう言った。
千代「あんた。私の病の事は、決してこの子には言わないでおくれね。この子には、何も知らずずっと笑っててほしいんだよ」
父親「千代」
千代「その姿をずっと見ていたかったけど・・・。この子はもう大丈夫。よかった・・・よかった・・・」
千代は涙をこぼし、そのまま障子戸にもたれて眠るように亡くなった。千代の涙は白い乳だった。
▲千代は乳の涙を流して息を引き取った 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
千代に口止めされていたこともあり、母親の最期を豊一に話したのはこれが初めてだった。
父親「むごい事だったが。母さんは最期まで、おまえの幸福を願っておったよ」
豊一は父の話を、ただただ驚いた顔で聞いていた。
──じつは最初、この千代の最期がどういう意味か分からず、かなり混乱した。なぜ千代は亡くなったのか、父親はそれをなぜ「むごい事」と言ったのか、さらになぜ豊一はこんなにも驚愕の表情を浮かべているのか・・・。物語はあと少しで終わるので、これについては後に述べる。
「乳潮」(ちしお)という蟲
▲「この力を手放す事はできんよ」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
翌日、豊一は母の墓を訪れ、しげしげ自分の手を見つめていた。そこにギンコがやってくる。
豊一「俺の体は、母さんの血まで吸ってできていたんだな」
ギンコ「そうさせたのは乳潮(ちしお)という蟲だ。産後間もないけものに寄生し、自らの栄養のため、母親の体液を乳へと変える。そして宿主が成長すれば、周囲の植物の発育を促す匂いを出す。その間、宿主に眠る間も与えず養分を摂らせ、自らの力を強めていく・・・。そうして宿主が疲れて力尽きれば、また体を出て別の赤子をおびき寄せる」
豊一「この田も、みな蟲のおかげだったというわけか」
ギンコ「むろん、実際に築き上げたのはあんただよ。蟲下しを飲む気になったら、親父さんに言うといい」
棚田の下で遊ぶ子どもたちの姿が見えた。豊一は目を上げて立ち上がる。
豊一「この力を手放す事はできんよ。俺ももう守られてるだけの赤子じゃない。守らなきゃならないものがあるんだよ。たとえ、母さんをころしたものの力を借りても。母さん、どこまでも不幸な息子でごめん」
二人の会話を小高い棚田から、父親が見おろし聞いていた。
父親「千代、あいつももう、うんと立派な人の親だ」
蟲下しを父親に託してギンコはこの地を離れた。
乳は血となり血を造り、地へと還る。
そののちに、やがてその地に血潮が宿る。
ここの語りを、アニメで理解するのは難しい。「ち」という音で「乳」「血」「地」の3つの意味を表現し、さらに「乳潮」という蟲と同じ音の「血潮」という単語を韻を踏んで使っている。
意味としては「母親の血は乳となり、子どもを育て、しんでいく。しかしその後に、その地に人の情熱が宿る」というところだろうか。今作のストーリーを凝縮した語りだ。
数年後、その谷には、厳しい冬が訪れるようになったという。
けど今も、その谷にはにぎやかな声がこだましているという。
子どもたちは成長し、今では豊一と一緒に畑にクワを入れる。
▲家族総出で畑の手伝い TVアニメ「蟲師 続章」
女の子は祖父の手伝いをしたり母親と一緒にお昼を運んできたりする。しかもどうやら、母親はまた新たな子どもを宿している。もう豊一は、蟲の助けを必要としていないようだ。
混乱ポイントがいくつかあった──
▲赤子が母乳を飲むのは当たり前のことだが・・・ 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
じつはこの作品、最初は何とも意味不明だった。途中でも書いたが、なぜ母親が亡くなったのか、父親はそれをなぜ「むごい事」と言ったのか、さらになぜ豊一はこんなにも驚愕の表情を浮かべているのか・・・。物語の核であるはずのココが理解できず、ただ首をかしげるばかりだった。
じつは、母乳というのは成分的に血液とほぼ同じだ。
わたしの中では、これは常識だった。よく母乳のでる人なら、乳離れまでしっかり母乳だけで子どもを育てられる。だから赤子が血液と同じ成分の母乳を飲んで、どうして母親がしんでしまうのか理解できなかった。父親が「むごい事」というのも──母親が母乳を与えるのがどうして「むごい」んだろう??? と。
しかし、ここで理解しなければいけないのは、千代はもともと栄養状態が悪く、そのため母乳が出なかった。それが「乳潮」が豊一に寄生したことで千代の血液はすべて乳となってしまった。千代が母乳だと思い豊一に飲ませていたのは、自分の体を維持するための血液だったのだ。それで1年後、千代はひどい貧血で亡くなってしまったというわけだ。
わたしのように、母乳と血液が同じものだとあらかじめ知っていると、ここの理解でつまずいてしまう可能性は高い。
さらに。
ギンコ「もしそうなら、息子さんはもとより、嫁御(よめご)の命まで危ない」
当初、ここも分からなかった。ギンコは父親に向かいこう言っているが、豊一が働きすぎで早死にする危険があるのはわかる。しかし「嫁御」の命まで危ないとは──?
これは後にギンコが語る「乳潮」の説明をしっかり記憶し、物語を遡れば納得できる。
ギンコ「産後間もないけものに寄生し、自らの栄養のため、母親の体液を乳へと変える。そして宿主が成長すれば、周囲の植物の発育を促す匂いを出す。その間、宿主に眠る間も与えず養分を摂らせ、自らの力を強めていく・・・。そうして宿主が疲れて力尽きれば、また体を出て別の赤子をおびき寄せる」
つまり豊一が亡くなれば、「乳潮」は次の宿主を求めて赤子をおびき寄せる。近くにいる赤子は豊一の赤子の可能性が高い。だとすれば、次に体じゅうの血液を乳に変えられてしまうのは「嫁御」だ。豊一の母親と同じ道をたどり命を落とすかも知れないと、ギンコは警告しているわけだ。
立ち止まり、遡って読み返すことができる漫画ならともかく、アニメでここまで頭を巡らせるのは、結構しんどい・・・。
また、ギンコの説明の最初。「産後間もないけものに寄生し」も、混乱する言い方だ。「産後間もない」といえば普通、母親だと思う。ところがこれは、赤子をさす。「生まれて間もない」であれば、混乱しなくて済むのだが。
▲この谷だけ雪が積もらないのはなぜ? 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
また、なぜ冬のさなかに稲が青々としていたか──。これはギンコの説明にある「そして宿主が成長すれば、周囲の植物の発育を促す匂いを出す」ここに該当するのだろう。稲が青々としているのはいいが、なぜそれで豊一の住む谷だけ雪すら積もらないのか・・・植物の発育を促す匂いは、雪すら降らなくしてしまうのだろうか? ここは未だによくわからない。
最後に、なぜこの谷に厳しい冬が訪れるようになったのか? これはつまり、豊一が蟲下しを飲んだことを示唆している。子どもたちが成長して手伝ってくれるようになったから、豊一はもう一人で頑張らなくてもよくなった。そういう事だ。何とも温かいエンディングだ。
聖母マリアは親だから神々しい
▲「あいつももう、うんと立派な人の親だ」 出展/TVアニメ「蟲師 続章」
今作は「母乳と血液が同じもの」という事実と、「聖母マリアの奇跡」から着想されているのだろう。世界中の聖母マリア像が、ときに涙を流すという奇跡が報告されている。それは涙ではなく血のこともある。日本でも秋田に落涙したマリア像がある。
聖母マリアは母性を象徴する。今作の千代も、母親の献身的な愛情を示す者として象徴的に描かれている。
今作のキモは、千代の豊一への愛情と、豊一のこの台詞だろう。
豊一「この力を手放す事はできんよ。俺ももう守られてるだけの赤子じゃない。守らなきゃならないものがあるんだよ。たとえ、母さんをころしたものの力を借りても。母さん、どこまでも不幸な息子でごめん」
ギンコが「乳潮」について説明した後に言った言葉だ。「乳潮」に寄生されたままでは、いずれ早死にするかもしれないことは分かっていても、しかも自分の母親を死に至らしめた蟲だとしても、家族を守るためこの力を手放せないと豊一は言った。
この台詞は、親だからこそ出る言葉だ。千代が身を挺して育てた豊一が、こんな事が言えるほど立派に成長したことを、父親は喜んでいる。豊一もまた、聖母マリアのように神々しい。
──が。まぁ、ぶっちゃけ親なら当たり前。
わたしも人の親なので、そう思ってしまったが・・・。このため、どうも今一つ感動できなかったのも、残念ポイントではある。親でない方なら、きっと素直に感動できるのだろう。
ところで、ドイツに「リープフラウミルヒ マドンナ」という白ワインがある。日本にも輸入されていて、値段も手ごろなので、以前はよく飲んでいた。甘くて軽い、ジュース感覚でガブガブいける飲み過ぎ注意なワインだ。
「リープフラウミルヒ」を日本語に訳すと「聖母の乳」。これも原作者の着想の源なのかもしれない。
人との共生を描いた3部作
▲「ヴィンランド・サガ」のトールズ 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式
日照る雨」「風巻立つ」そして今作の「潮わく谷」。この3作品は、蟲とヒトの幸福な共生を描いたものだ。蟲も人も、それぞれが得をするwin-winの関係を築くことができた3人の物語だった。
もし、わたしのように理解につまずいてしまった方は、いろいろ理解した上でもう一度、今作を視聴してみてほしい。蟲といい形で共生し、厳しい環境で豊かな生活を築いた男の物語として、楽しんで観ることができると思う。
ちなみに──この豊一という男が、「ヴィンランド・サガ」のトールズとだぶって見えてしかたがなかった。トールズも、ただ家族と仲間のために命を賭した男の中の男だった。髪型といい雰囲気といい、そっくりだと思うのだが──どうだろう?
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