大人気アニメ「BANANA FISH」の世界を、各話のあらすじと見どころをアッシュと英二の関係を軸に紹介します。今回は第1話~10話です。バナナフィッシュを深く理解するために外せない名場面を残さず楽しんでください!【注意】完全ネタバレです。



第1話/アッシュと英二の出会い

 

「バナナ・フィッシュにうってつけの日」

A Perfect Day for Bananafish

 

知り合いのジャーナリスト伊部のカメラ助手としてニューヨークを訪れた大学生の英二は、ストリート・ギャングを弱冠17歳で束ねるリーダー、アッシュに出会います。自分より2歳年下なのに、体つきも大きく、眼光の鋭いアッシュに迫力負けしてしていた英二ですが、その腰に差し込んだ使い込まれているらしい銃を見て、思わず声をかけます。

 

英二「その銃、本物だよね?」

不審そうに英二を睨むアッシュ。

アッシュ「え、どういう意味?」

自分の間抜けな質問に気がついた英二は、あわてて弁解します。

英二「日本じゃモデルガン以外持てないんだ。ちょっと持たせてくれないかな?」

その言葉に周りにいた連中は顔色を変えざわつきます。

アッシュ「──いいよ」

英二「わぁ、すごいや、ズッシリ重い。ありがとう、大事なものを」

銃の重さを確かめた英二は、アッシュに銃を返しながら質問します。

英二「あの──ひとつ訊いてもいいかな。人を殺したことある?」

アッシュ「あるよ」

顔色ひとつ変えずに答えるアッシュの言葉に焦りながらも「やっぱり」と英二は納得します。

アッシュ「ガキだな、あんた」

 

二人が初めて会話を交わしたこのシーンは重要です。アッシュは英二を子ども扱いしているけれど、最初から英二を信用しています英二もまた、アッシュが「人を殺したことがある」と分かっても、変に恐れたりしません。もしここで英二がアッシュを恐れる表情を見せたら、決してアッシュは英二に心を開かなかったに違いありません。

 

第1話でもうひとつ見逃せないシーンがあります。それは、上のやりとりを受けて、スキップが英二に話しかけたときの会話です。

 

みんなから一目置かれるアッシュはスキップにとって憧れの存在。そのアッシュが心を許したのを見て、スキップはすっかり英二を気に入ってしまい、アッシュがどんなにすごいか自慢げに話します。

 

スキップ「スミスアンドウエッソンの357マグナム。しかも重心を短く切ってあるんだ。それで25ヤード先の的を外したことないんだから!」

英二「へぇ、アッシュ・リンクスかぁ」

スキップ「リンクスは通り名だよ。ヤマネコって意味さ。だれにも飼われず、どこまでも自由なんだ。ボスにぴったりの名前だよ!」

 

アッシュの本質を的確に伝える言葉です。

 

アッシュはこの頃、路上に倒れる瀕死の男から「バナナフィッシュ」という謎の言葉とともにカリフォルニアの住所と小さなペンダントを渡されたところでした。どうやらコルシカ・マフィアのボス、ディノ・ゴルツィネが絡んだ事件だというところまでつきとめ、「バナナフィッシュ」は、ゴルツィネにとって重要なものらしいと勘づきます。

 

あいびー

殺伐とした無法地帯に足を踏み入れた、平和ボケした日本人・英二。第1話は、ほぼ観光客な英二の目をとおして描かれています。いかにダウンタウンが物騒か、いかにアッシュが特別か。英二をとおして体感しましょう♪

第2話/英二、空を飛ぶ!

IMG_6764
IMG_6764 / latvian

「異国にて」

In Another Country

 

オーサーに連れ去られた英二とスキップを追ってきたアッシュは、けっきょく銃を捨てオーサーとオーサーを雇っているディノ・ゴルツィネの部下たちにつかまってしまいます。3人はアッシュの機転で逃げ出しますが、高い塀に囲まれた袋小路に入ってしまい観念しかけます。

 

英二「どうせ死ぬんなら、なんだってやってやらぁ!」

 

腹をくくった英二は、古い排水管を壁からはがして、それを支えに棒高跳びの要領で髙い壁を飛び越えます。鮮やかな跳躍で有刺鉄線のついた壁を飛び越えた英二を、アッシュは緑色の瞳に焼きつけます。言葉はないけれど、このときの英二の姿はアッシュにとって、それこそ鳥のように自由の象徴に見えたに違いありません。アッシュにとって英二が「通りすがりの観光客」から「特別な存在」になる、印象的なシーンです。

 

その後、ゴルツィネの罠にかかって殺人罪の嫌疑をかけられたアッシュは、病院を経て州刑務所に収監されます。刑務所に入る前、病室でアッシュと英二がつかの間穏やかに話します。ここは、二人の微妙な心の揺れが描かれた秀逸な場面です。

 

アッシュ「おまえはいいな、あんなふうに跳べて」

 

窓の外に群れなして羽ばたく白い鳥──。

 

倒せない相手と分かっていても、アッシュはゴルツィネに立ち向かう決心を固めていると英二は悟り、涙を流します。何もできない自分のふがいなさに涙していたんでしょう。

 

ここは、希望のない自分の行く末を知りながら淡々と話すアッシュの表情と声、命の恩人であるアッシュに何もしてやれない英二の無力感と憤り。二人の微妙な心の揺れが見どころです。しっかり堪能してください!

 

第3話/アッシュが英二にキス!?

 

「河を渡って木立ちの中へ」

Across the River and Into the Trees

 

刑務所には伊部の友人マックスが、警官を殴って収監されていました。マックスから「バナナフィッシュ」についての情報を得たアッシュは、「バナナフィッシュ」が相当危ないものだと知ります。いずれ「バナナフィッシュ」を預けたドクターメレディスのところにゴルツィネが押し入ると見越して策を考えます。

 

アッシュは英二を面会に呼び出します。たわいない会話を交わした後、別れ際にアッシュが英二に迫ります。

 

なんとアッシュと英二が熱烈なキスを!

 

キスの後、妙な顔でにらみ合う二人。アッシュが去った後、英二は口をおさえてトイレに駆け込み、口移しに渡されたカプセルを吐きだします。そこにはアッシュからの手紙が入っていました。

 

英二、危険を承知でおまえに頼む。チャイナタウン、ドイヤーズストリートにあるチャンタイに行って、ショーターウォンという男に会ってほしい。オレの名前を出せば会えるはずだ。ドクターメレディスからオレがあずけたものを受け取って、安全な場所に隠してほしいと伝えてくれ。くれぐれも気をつけろ。このことは絶対に誰にも知られるな。

 

あいびー

刑務所という特殊な空間でアッシュが受ける目をそむけたくなる現実が、じつはアッシュが生きてきたこれまでの日常です。ゲイ描写が多いのがこの作品の特徴で、この回でアッシュと英二のキスシーンまであるので、これは腐女子向け作品と決めつけてドロップアウトしないでください! ゲイ描写はアッシュを苦しめる日常の一つにすぎないんです。人を力で征服しようとする象徴として描かれています。

第4話/「ボク帰りません!」日本への帰国を英二は拒否する

 

「楽園のこちら側」

This Side of Paradise

 

英二を監視していたゴルツィネの手下は、ドクターメレディスのところに先回りしていました。彼らはアッシュがドクターに預けたものを奪い、さらにアッシュの兄グリフィンを撃って逃走します。事態が緊迫してきたのを心配した伊部は、英二に帰国を促しますが、英二は首を縦に振りません。

 

伊部さんの言うことはよく分かります。ここへ連れてきてもらったことも、とても感謝しています。あのとき、ボク落ち込んでたから。でもボク帰りません。帰れないんです!

 

胸を撃たれたグリフィンはやがて、手当ての甲斐なく亡くなります。「スキップに続いて兄さんまで・・・」。アッシュの気持ちを思いやり英二は呆然とし、伊部は一人悔しさを募らせます。

 

あいびー

ここでは英二の真っ直ぐな善良さと同時に、頑固さも見え隠れしていますね。血なまぐさい世界だと分かっていながらアッシュの属する世界に関わる決意をするのは──自分ならできるかなぁ? って、多くの人が自問するところじゃないでしょうか?

第5話/「アレはワシのものだ!」ゴルツィネのアッシュへの異常なほどの執着ぶりが見もの!

 

「死より朝へ」

From Death to Morning

 

刑務所を釈放されたアッシュは、すぐにゴルツィネへの反撃に出ます。アッシュの兄グリフィンの死に責任を感じている英二、自分の部下を何人も殺されているショーターも共に戦うことに。

 

ゴルツィネが定期的に訪れている店があることを知っているアッシュは、そこに暴走トラックを突っ込ませます。トラックの荷台の上からゴルツィネを撃つアッシュ。(ここ、なかなかかっこいいです!)ゴルツィネの肩を撃つものの自分もオーサーの手下に撃たれ怪我を。トラックを運転していたショーターも撃たれて額に怪我を負います。アッシュと英二、ショーターの3人にマックスと伊部も加わった5人は、運河に飛び込み命からがら追手を振り切り逃げおおせます。

 

またしてもアッシュに逃げられたという報告を受けると、ゴルツィネはオーサーに激しい怒りをぶつけます。

 

ゴルツィネ「また逃げよったか。だが今度こそ逃がすわけにいかん。どんな手段を使ってもいい。必ずあれを生け捕りにしろ。手足を引きちぎろうが、目をくりぬこうが構わん。必ず生きたまま、ワシの前に引き連れてくるのだ。アレはワシのものだ!」

 

撃たれたことでアッシュへの激しい怒りをぶつけながら、同時に異常なほどの執着を見せるゴルツィネのセリフは背筋が寒くなるほど迫力があります!

 

第6話/つかの間の平和。アッシュと英二の楽しげな銃の練習

COAST GUARD BEACH EASTHAM, Credit: Margo Tabb
COAST GUARD BEACH EASTHAM, Credit: Margo Tabb / Massachusetts Office of Travel & Tourism

「マイ・ロスト・シティー」

My Lost City

アッシュの兄のグリフィンが「バナナフィッシュ」についての情報を残しているかも知れないというマックスの提案により、一行はアッシュの故郷・ケープコッドに向かいます。

 

ケープ・コッドは海沿いの別荘地ですが、アッシュにとってはあまりいい思い出のない故郷。仲たがいしたままの父親は、アッシュに冷たく当たります。ここで一泊した翌朝、英二は遠い銃声で目を覚まします。外に出てみると、アッシュが銃の練習をしているところでした。

 

アッシュ「撃ってみるか? 撃たしてやるよ、撃ちたけりゃ」

英二「いいの!?」

 

アッシュは英二に撃ちかたをレクチャーし、英二はへっぴり腰ながらも撃ってみます。

 

この回では語られませんが、少し離れたところから二人を見ていた伊部は、後にこのときの様子を思い返します。「持っているのが銃でさえなければ、同じ年代の少年が楽しそうにじゃれあっているとしか見えなかった」と。そして、そんな伊部の心の内をアッシュは一瞬で見抜いて、少年の顔からいつもの達観したような大人びた表情に戻った、と。

 

あいびー

アクションシーンが少なく、やや大人しい印象の第6話には、壮絶な過去と、父親との確執と和解などが語られる、アッシュの心を理解するためには欠かせない重要なエピソードが詰まっています。アッシュの微妙な心の揺れが感じられる表情や演技の表現がとても上手いです!

じつはここでのアッシュの父親の言動は、かなり疑問視されています。幼い我が子が暴行に遭ったら・・・相手が土地の名士で警察もまともに取り合ってくれないとしたら・・・。これが現代でまともな感性の親なら、まず考えるのが「引っ越し」ですよね。なんとしてもアッシュを守ろうと動くはずです。ところがアッシュの父親は、子どもに我慢するよう言いました。そしてお金をもらうことで、命までは取られないよう最低限の配慮だけを見せました。

 

もしこの父親がもっと違った対応をしていれば、アッシュの人生がここまで狂うことはなかったはずです。

 

1956年生まれの原作者の吉田秋生さんの親世代というと、現在では80歳代後半~90歳代ですよね。この時代の日本の親の感覚がアッシュの親に反映されているように、わたしは思うのです。権力者に弱く、何でも我慢してしのごうとする気質や、土地に縛られているので引っ越しなどあり得ないという感覚や、子どもを「個」として認識していなくて自分の意のままにできる道具とどこかで思っている──そんな年代だと思うのです。そう思えば十分、納得できるのですが、アニメ化にあたり時代を現代にしたことで、ただの横暴なバカ親になってしまいました。

 

だから、父親が最後にアッシュに見せる優しさにアッシュが心のわだかまりを軽くするという演出は、わたしには取って付けたように見えました。この父親は現代の常識とかけ離れた古い常識に生きていて、自分には一分の落ち度もないと信じています。現代の常識で分かり合うことは無理な人のはずです。アメリカでの世代間ギャップがどうなのか分かりませんが、この父親像は古い時代の日本の父親像だと思います。個人的見解ですが──。

 

第7話/姉を盾にアッシュを裏切れと脅されるショーター・・・辛いね・・・。

 

「リッチ・ボーイ」

The Rich Boy

 

東海岸から西海岸のロスアンジェルスまで車でやってきた一行は、マックスの元妻のジェシカと息子のマイケルが住む家を経て、死ぬ間際に「バナナフィッシュ」という言葉とともに男が残した住所を訪ねます。そこには「ユーシス」と名乗る中国系の美少年がいました。

 

ユーシスにどこか怪しい気配を感じたアッシュは、ユーシスを探るようショーターに頼みます。ユーシスは、自分がじつはゴルツィネ側に寝返った李家の末弟・ユエルンだと打ち明けます。アッシュを捕えるために送り込まれた刺客だと。さらにショーターにアッシュを探るスパイになれと命じます。さもなければ姉がどうなってもいいのかと──。

 

身内を盾にとられたショーター。辛いですね。ゴルツィネは、アッシュたち一行の行く先々に執拗に手をのばしてきます。

 

この回で注目したいのは、マックスとジェシカの息子マイケルへのアッシュの気持ちです。自分たちの都合で勝手に離婚した親どうしの喧嘩を見せられたマイケルを、アッシュらしい皮肉でめいっぱい養護しています。

 

アッシュ「親なんてなロクなヤツがいねぇな。子どもってのは親を選んで生まれてくるわけじゃねぇってこと、わかってんのかよ。ハズレだからって、取り替えてくれってわけにはいかねぇんだぜ」

 

両親に愛情を注がれた覚えのないアッシュの怒りですね。とくにアッシュには、生まれてすぐに家を出た母親の記憶すらありません。マイケルの母親であるジェシカにはひどく辛辣です。

 

もう一つ、この回で押さえておきたいポイントがあります。アッシュがPCの暗号化されたドライブの解読作業に没頭しているときの小さなエピソードです。

 

お茶を差し入れにきたユーシス(ユエルンの偽名)が、後ろから静かに近づいた気配にアッシュは反射的に振り向きます。

 

ユーシス「ごめんなさい、ビックリさせましたか?」

アッシュ「後ろから近づかれるのって、好きじゃないのさ。育ちが悪いもんでね」

 

そこに少し遅れて英二がトコトコ入ってきます。英二はアッシュのすぐ後ろに立ちPC画面をのぞき込むのですが、アッシュはなんの反応もみせません。ついに解析に成功したアッシュは、英二とハイタッチしてその成果を喜びます。

 

その様子を隣で見ていたユエルンは、自分と英二への反応の違いから、アッシュが英二に絶対の信頼を置いているのを確信します。ユエルンの、アッシュと英二へのジェラシーが芽生えた瞬間です。

 

第8話/政治家や軍まで絡んできて、物語はさらに大きく複雑に!

 

「陳腐なストーリー」

Banal Story

 

アッシュを出し抜き英二を捕えたユエルンは、ショーターと共にニューヨークの李家の長兄、ワンルンの元に。

 

一方アッシュたちは「バナナフィッシュ」を作り出したドースン博士から、「バナナフィッシュ」が100%命じたとおりに相手を動かすことができる薬だと知らされます。どうやら国家ぐるみの事件だと知ったアッシュとマックス、伊部の3人は、わずかな気のゆるみをつかれて、ついに李家に捕えられてしまいます。

 

「BANANA FISH」には、大きく3つの勢力が登場します。まずアッシュやショーターをはじめとしたストリート・ギャングコルシカ・マフィアのゴルツィネチャイナ・タウンを仕切る李一族。これらが入り乱れる形で物語が進行していきます。しかも、それぞれに不満分子や寝返りがあり、とても複雑です。しかもここからは、政治家や軍まで絡んできます。

 

さらっと観ただけでは頭がこんがらがってしまいそうですが、それぞれがそれぞれの思惑で動いていて、すべての行動に必然性があるので、とても納得できる展開なのが見事です。ストーリー作りに作者のご都合主義が感じられないので説得力があり、大人も十分楽しめ、何度観ても新たな発見がある重厚さが魅力です。

 

ユエルン「逃げることができないのなら、ともに滅びるまでさ。忘れはしない。母を殺したおまえたちを。必ず破滅させてやる。おまえたちがさげすみ、いやしんできたこのボクが」

 

李家の末弟ユエルンは李家の刺客として登場したけれど、その心の内に李家への強い復讐心を秘めていました。これが後の火種としてくすぶり始めます。

 

第9話/「オレはもうダメだ。解放してくれ、苦しい」正気を失ったショーターの胸をアッシュは・・・。

 

「ワルツは私と」

Save Me the Waltz

 

第9話は、前半最大の山場です。

 

李家に捕えられた一行は、皆ゴルツィネ邸に集められています。アッシュはゴルツィネの処刑室の壁に吊るされていて、伊部とマックスはまとめて柱に縛られています。そこに連れて来られたのはショーター。喜ぶアッシュにショーターは告げます。

 

ショーター「すまねぇ、オレはもうダメだ」

 

ショーターはバナナフィッシュを打たれ、英二を殺すよう暗示をかけられているのです。続いて連れてこられた英二を見てショーターが豹変します。ナイフで英二に襲い掛かるショーター。防戦一方の英二。

 

アッシュ「やめろ、やめてくれ!」

 

ついに英二を追い詰めたショーターは、とどめを刺そうとナイフを振りかぶります。そのとき、アッシュが大声で自分を呼ぶ声に一瞬、ショーターは正気を取り戻します。

 

ショーター「オレはもうダメだ。解放してくれ、苦しい」

 

その瞬間、アッシュの足元に投げられた銃。オーサーがアッシュをつり下げていた鎖を降ろすと、アッシュは銃でショーターの心臓を撃ち──。

 

目を見開いたまま滂沱(ぼうだ)の涙をこぼすアッシュ。その様子を傍らで楽しそうに見物していたオーサーは高らかな笑い声をあげるのでした。

 

なにもここまでアッシュを痛めつけなくても・・・。あまりに悪趣味な展開に胸が辛くなります──。

 

あいびー

ショーターは、自分の裏切りのせいで拉致された英二に責任を感じています。もしゴルツィネが英二になにかするなら自分のナイフで英二を刺して、英二の尊厳を守ろうと思っています。それがショーターなりの責任の取り方です。これ、考え方はアッシュと同じですね。アッシュはショーターを撃つことで物理的に英二を救っただけでなく、ショーターの尊厳も守ったのです。

第10話/ゴルツィネ邸を逃げ出すアッシュ。ゴルツィネとシンとユエルン。アッシュを評する三者三様の表現が見どころ!

 

「バビロンに帰る」

Babylon Revisited

 

壁に吊るされたまま、すっかり意気消沈しているアッシュにユエルンが近づきます。

 

ユエルン「君は自分自身への攻撃には信じられないほど強いのに、愛する者に対する攻撃にはほんとうに弱い人だね。いつか必ず、それが君の命取りになるよ。それでも君は仲間を見捨てることができないんだろうね」

 

そう言ってユエルンは、アッシュにかけられた手錠のカギを渡していきます。ユエルンは、冷静に人を判断できる優れた観察眼をもつようです。

 

一方ゴルツィネは、バナナフィッシュの効果を政府高官らに披露するためオーサーを伴って屋敷を離れています。次期大統領候補を暗殺させたのです。その成果に満足そうな大統領首席補佐官や軍人。オーサーはゴルツィネのやり口にすっかり感心しています。ここから読み取れるのは、どうやらゴルツィネと組んでいるのは現職大統領らしいということ──話がとんでもないことになってきました。

 

ゴルツィネ「やはりおまえとアッシュは炎と氷だな。野生の獣には野心も恩もない。しいて求めるものがあるとすれば自由だけというところだ。あやつを檻に入れようとしたことが、そもそも誤りだったかもしれんな」

 

目をかけてやれば思い通りに動くオーサーと、いくら目をかけても己の感情のままにするりと逃げ出すアッシュを比較するゴルツィネの言葉です。思い通りに動かないアッシュにイラつくというよりは、やんちゃ坊主にため息をついているという雰囲気で、ゴルツィネのアッシュへの素直でない親心が垣間見られます

 

ユエルンから渡されたカギを使って処刑室を出たアッシュは、武器庫からマシンガンを調達して英二の救出に向かいます。同じ頃、アッシュとショーター救出のため、アッシュの仲間たちとシン率いるチャイニーズの一味がゴルツィネ邸に潜入しています。

 

合流した仲間たちに英二を任せて、アッシュはショーターの遺体を探しに戻ります。手術台に載せられたショーターを見つけ、これ以上利用されないようにと、実験室に火をつける。──と、そこに様子を見にもどって来たシンは、「あんたがショーターを殺したのか」と詰め寄ります。「失せろ!」と、超不機嫌なアッシュの気迫に押されてシンはその場を去り、ユエルンの手助けでヘリコプターでゴルツィネ邸を後に。

 

ユエルン「それで、どうだったヤマネコは?」

シン「あれは人食い虎だ。きれいなツラしてる分すごみがあってさ。まるっきり鼻であしらわれちまった。悔しいが格が違う」

ユエルン「敗北を受け入れることができるなら、おまえも捨てたものじゃないさ。今は負けても恥ではない。手負いの虎ほど恐ろしいものはないからね」

 

この後、シンはショーターの跡を継いで正式にチャイニーズのストリート・ギャングのボスになるわけですが、自分の立ち位置をしっかり把握しているところがシンの強さです。ユエルンはこの段階ではアッシュにとって敵とも味方ともつきません。ただし、その優れた観察眼からアッシュのカリスマ性も、自分の弱さを自覚できるシンも認めているようです。

 

▼続きの第11~17話は、こちらをご覧ください。


▼「バナナフィッシュ」関連の記事一覧はこちらです

 

スポンサーリンク