2019年1月~放送のアニメ「どろろ」。第9話「無残帳の巻」の詳細なあらすじと見どころを紹介します。ついに! どろろの秘密が暴露されます! あわせて感想もどうぞ!【注意】完全ネタバレです!



第9話/百鬼丸、アニキの自覚に目覚める?



「無残帳の巻」

muzantyou no maki

 

前回の「残され雲の巻」で嗅覚を取り戻した百鬼丸は、いろんなものの匂いを嗅ぎまわっています。田んぼのあぜ道を歩きながら道端のツユクサを手に取りクンクン、「よく飽きねぇな」と言うどろろの頬に手を当てクンクン。嫌がって押しのけた拍子に、どろろは道にへたり込んでしまいます。

 

ツユクサは強い匂いはないはずだけど、きっと花粉の匂いが少しするでしょう。どろろは──たしか原作の設定によるとどろろは5歳で4年間お風呂に入っていないはず。あまりいい匂いはしてないでしょうね・・・。どろろがニオイを嗅がれるのを嫌がったのは、自分が臭いのを気にしてなんでしょう。

 

道にへたり込んだどろろは、立ち上がろうとしてふらつき、バタリと倒れてしまいます。顔が真っ赤で、どうやら熱がありそうです。大変だー!

 

百鬼丸は、慣れない言葉で「どろろ、からだ、あつい」と手あたり次第にそこらの人に訴えるも、だれも助けてくれず困ってしまいます。そこに、たまたま通りかかったらしい尼僧が声をかけてくれました。あぁ、良かった^^

 

寺で横になっているどろろは朦朧とした頭で、花瓶に挿した赤い花を見ています。曼殊沙華(まんじゅしゃげ)です。この花が咲いていて蝉がまだ鳴いているということは、9月中旬ごろでしょう。曼殊沙華を見ながら「おっかちゃん」とつぶやいて、ハッと我に返ったどろろは「アニキ!」と百鬼丸を探します。

 

どろろ「アニキ! また、また置いてかれちまう!

 

尼僧「安心なさい、水を汲みに行ってもらっているだけです。だれもあなたを置いていったりしません」

 

どろろ「曼殊沙華は好きじゃねぇ、おとうちゃんとおっかちゃん、思いだしちまう」

 

尼僧「そんなにひどい親御さんだったのですか」

 

どろろ「そうじゃねぇ、そうじゃねぇ。おとうちゃんもおっかちゃんも強ぇし、優しいし、あったけぇんだ

 

これまで百鬼丸がどろろを置いて行ってしまったことなんてありませんよね。「また置いてかれちまう」の「また」は、どろろのおとうちゃんと、おっかちゃんのことを差しているのです。なにしろ、どろろは両親と死に別れているから・・・。やっと見つけた家族みたいな百鬼丸と離れるのはもう嫌なんですね。

 

今回のテーマは「どろろの秘密」です

 

どろろの父親は「火袋」(ひぶくろ)、母親は「お自夜」(おじや)といいました。火袋は「野伏せり」と呼ばれる野盗集団の頭(かしら)をしています。「野伏せり」は生きるために弱者を襲う野盗なのですが、火袋たちは貧しい百姓が集ってできた集団で、弱者ではなく侍を襲うという信念をもった野盗です

 

大長巻(柄の長い刀で、薙刀や槍に似ている)使いの火袋は強く仲間も多くて、かなり規模の大きな野伏せりを形成しています。

 

どろろ「ねぇ、おとうちゃん。おとうちゃんたちはどうして侍をやっつけてるの?」

 

火袋「そうやってヤツらに教えてやってんのよ。オレたちも生きてる人間なんだってな」

 

どろろ「生きてる? 侍はそんなことも分かんないの?」

 

戦争は人を狂わせるから。他の人も生きてるってことを忘れてしまうんですね。当時はみんなが貧しい中での戦争で、誰もが殺気立って、ほんのちょっとしたことで人を斬ってしまっていました。人間性をなくしている侍が大勢いて、蛮行を繰り返していた。火袋たちはそれに抵抗していたんですね。

 

この頃のどろろはいくつでしょう。3歳くらいかな? 母親のお自夜にひょいと抱えあげられています。そこに仲間の一人「イタチ」がやってきます。

 

イタチ「いや、ヤツらも十分思い知ったんじゃないですかねぇ。見てくださいよ。随分と腕のいい子分たちが集まった。お頭も、そろそろ先を見たらどうなんでぇ。上手く領主に取り入りさえすりゃぁ、いいご身分が手に入りやすぜ

 

お自夜「イタチあんた、あたしらが受けた仕打ちを忘れたのかい? 領主たちが勝手に始めた戦のせいで、親も兄弟も虫みたいに殺されて、みんなでつくった村も焼かれちまったんじゃないか」

 

イタチ「はっ。オレぁ忘れちまいましたねぇ。過ぎたことにいつまでもこだわってちゃイケネェ。むしろ、これからは侍どもと手を組んで、出世しなきゃ」

 

ここでイタチの顔に火袋の拳が飛んできます。火袋、強くて熱い男なんです。

 

火袋「この恥知らずが!」

 

イタチ「オレぁ間違っちゃいねぇと思いますがね」

 

火袋「もう一度言ってみろ、その口にこいつをぶち込んでやる」

 

倒れ込んだイタチの顔に大長巻を突き付けて、火袋は威嚇します。火袋、男気がありますね! でも。でも、イタチの言うことも一理あります。時勢を読んで上手く立ち回るのも、賢い生き方です。どちらが正解でどちらが間違っているとは言い切れない。

 

裏切り者イタチ

 

ここでは引き下がったものの、イタチは火袋に反感を覚えています。その後、柳本の陣を襲おうと集まった火袋たちは待ち構えていた侍たちに逆襲され、あえなく壊滅してしまいます。イタチが寝返ったのです!

 

イタチ「これからの世の中、あんたみたいに融通がきかねぇんじゃ食っていけねぇんだよ。残った子分はオレがいただいてくぜ」

 

火袋「この卑怯もんが! 八つ裂きにしてやる!」

 

そう啖呵(たんか)を切ったものの、両足に何本もの矢を受けた火袋はまともに歩くことすらできません。イタチは火袋の命だけは取らずにその場を去りました。大長巻を杖代わりにやっと歩く火袋は、お自夜とどろろの3人で流浪の旅に出ることになります。

 

火袋「食い物を探す」

 

どろろ「おっかちゃん、地獄ってこんなとこかい?」

 

お自夜「さぁ、でも。ここよりはマシかも知れないよ」

 

ときに3人は、死体だらけの戦場跡で死んだ侍の持ち物をあさります。火袋もお自夜もやつれ果てています。ところが小さなどろろは丸い顔をしていて──どろろにだけは食べ物をあげていたのでしょう。そこでどろろが見たのは、何かをむさぼるように食べている餓鬼の姿でした・・・。現実は厳しいですね。

 

どろろ「曼殊沙華ってどうして血みたいな色をしているんだろう?」

 

火袋「戦で死んだヤツらの血を吸ったのかも知れねぇな」

 

お自夜「いい加減なこと言って、怖がらせないでおくれ」

 

ある日3人は、戦場になるからと村を焼き払いにきた侍たちと農民が小競り合いをしているところを目撃します。何年もかけてやっとつくった村です。やめてくれと農民はすがりますが、侍は聞く耳持たず。すがった農民の顔に手にした松明を押しつけ、家に火を放ちます。相変わらずの侍の蛮行に火袋もどろろも身体を震わせます。

 

どろろ「ひでぇよ、こんなの」

 

お自夜「領主も侍も、戦を名目にすりゃ何をしてもいいと思ってるんだ。でも、あんたはもうやめとくれ

 

でも、歩くことすらままならない今の火袋に何ができるでしょう。お自夜は火袋を止めます。一旦は踵を返した火袋ですが、それを一人の侍が見咎めました。それは以前、火袋たちが襲った侍の生き残りでした。その侍は、火袋のもつ変わった武器(大長巻)を見て、それが火袋だと知ったのです。

 

襲い掛かってきた侍に反撃した火袋ですが、動けない脚で多勢に無勢。侍たちを倒した代わりに、どろろとお自夜の目の前で壮絶な最期を遂げます。火袋、最期までかっこよかったですね!

 

もちろん火袋の気持ちは分かりますが、仲間を火袋たちにやられた侍の怒りも分かります。火袋が悪い、侍が悪いではなくて、悪いのは戦ですよね。領主の言いなりに村を焼きにきた侍だって、その多くは農民出身。ただ戦で通り道になるからと村を焼かれたのでは、たまったものじゃないのは、理解できるはずです。でも、そうしなければ自分の命が危ない。

 

不幸な時代です。とあるリアクターさんが「戦争クソやわ~!」と言っていたのを思いだします。本当に・・・。

 

「いつか戦は終わる。それまで絶対に負けちゃダメだよ、どろろ」

 

お自夜とどろろは、木の実をかじり、むしろで雪の寒さを耐え、民家の床下で眠りながらなんとか冬を凌いで春を迎えます。翌年の夏。

 

どろろ「おっかちゃん、おいらお腹すいたよ」

 

お自夜「いつか戦は終わる。それまで絶対に負けちゃダメだよ、どろろ

 

どろろ「うん」

 

炊き出しをしている侍がいるというので行った寺で、お自夜とどろろはイタチを見つけます。あの裏切り者のイタチです。集まってきた村人に、自分の子分にならないかと声をかけるために炊き出しをしているのです。

 

器を持っていなかったお自夜は、炊き出しのお粥を両手に受けてどろろに食べさせます。煮えたぎるお粥を受けた手は真っ赤に染まっていました。

 

イタチ「あんたのそんな姿は見たくなかったぜ。落ちぶれちまいやがって。これからの世の中は力だけじゃ生き残れねぇ。ココだよココ。賢くねぇヤツは死ぬぞ

 

どろろ「バカやろう~!」

 

どろろの侍嫌いは決定的になりましたね。火袋が逝って1年。また曼殊沙華が咲く季節が巡ってきました。

 

お自夜「いつ、か、戦は終わる。それまで、まけ、ちゃ、ダ・・・」

 

一面に曼殊沙華の咲く野に倒れ込んだお自夜は、そう言って息を引き取りました。丸い顔をしているどろろと対照的に、お自夜はやつれ果てています。餓死だったのでしょう

 

それからどろろはたった一人で冬を越え、泥棒をくり返しながら生きてきました。百鬼丸と会うまでの半年、もしかしたら1年半を、一人で生き延びてきたはずです。(原作では5~6歳ですが、本アニメの設定は11歳ということで、5年以上こうして一人で生きてきたのでしょう)

 

火袋もお自夜も、とても真っ直ぐで自尊心の高い人でした。火袋は侍だけをターゲットにしていたし、ミオの回でどろろが言っていたように、お自夜はいくら飢えても身体を売るようなマネをしなかった。たぶん盗みもしなかったでしょう。そんな両親をどろろは誇りに思っています。それでも、寂しいですよね。たった4歳で両親を失ったのですから。

 

壮絶な過去をもちながらも、どろろが真っ直ぐで明るく強いのは、火袋とお自夜にしっかり愛情を注いでもらって育ったからでしょう。本当にすごい両親でしたね!

 

やばい! アニキにばれたっ???

 

どろろは熱に浮かされながらも、これまでのことをかいつまんで尼僧に話したのでしょう。

 

どろろ「──だからオイラ、絶対、負けねぇ。戦、なんかに・・・」

 

どろろがそう言うと、尼僧は涙を袖で拭います。水汲みからもどってきた百鬼丸も、水桶を降ろすのも忘れて話を聞いていました。

 

尼僧「どのようなご関係かは存じませんが、年端のいかぬ女の子を連れての旅はさぞかし難儀でしょう。どうかあなた方の旅路に仏のご慈悲がありますように」

 

3日間、寺で休んで回復したどろろと百鬼丸はまた旅に出ます。尼僧が着物を洗ってくれたから、もう臭くないだろう? と百鬼丸に言ってから、どろろはハッと気がつきます。尼僧に女の子だとバレタ! と。

 

どろろ「アニキ、あの尼さん、オイラのこと何か言ってた?」

 

百鬼丸は「うーん」と、イエスともノーともつかない返事です。が、しっかり訊いてしまいましたよね。

 

第9話で百鬼丸が得たのは、たぶん「自立心」

 

どろろは年齢の割にしっかりしていて、身体のほとんどが作り物だったころからずっと百鬼丸を支えてくれています。どろろが化け物退治で報酬をもらってくれるから、百鬼丸もちゃんとご飯が食べられています。百鬼丸も、どろろを頼りにしてきたはずです。

 

そんなどろろが病気になって、上手く話せない百鬼丸は人に頼ることもできず、看病のしかたもわからず、けっきょくどろろを木陰で寝かせてやることしかできませんでした。たまたま尼僧が通りかかったから良かったものの、それまで百鬼丸は途方に暮れてしまっていました

 

しかもどろろが女の子だと知ったことで、百鬼丸にアニキとしての自覚が芽生えたのでしょうね。これまで頼ってばかりだったどろろを、これからは守らなければいけないと。これまでよりもっと話す練習に身を入れ、自立しようと努力するでしょうね^^

 

両親ゆずりで自尊心の強いどろろです。憐れまれたり、弱いもの扱いされるのが大嫌いな、向う気の強さがあります。百鬼丸がどろろの秘密を知ってしまったことは、もうしばらく内緒にしたほうが良さそうです。

 

2019年版の「どろろ」では、原作や以前のアニメとところどころ設定が変わっているので、はたして「どろろが実は女の子」という設定が生かされるかどうかと思いながら観てきましたが、早い段階で女の子とばらしましたね。身体を取り戻すたびに、さまざまなことを覚えていく百鬼丸ですが、今回は百鬼丸の「自立心」を芽生えさせる物語だったように思えます。

 

ただの「どろろの過去」のお話しでもなく、「じつは女の子」という秘密暴露のお話しでもなく、そこに百鬼丸の成長を重ねたところが秀逸なシナリオでしたね。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]人を愛する、大切に想う心は育っていても、親子の情を知らない百鬼丸。どろろの過去の話から、親子の絆について思いをはせたかも知れません。寿海のことを少し思いだしたりしてるかも? 次回はついに「多宝丸の巻」。実の弟、多宝丸と出会うのですね。百鬼丸のせいで自分が母親から愛情を注いでもらえないのだと多宝丸が知ったら・・・さて、どうなるのでしょう!?[/char]

強調された「赤」の表現

 

「どろろ」の美術表現は、これまでにない方法が大胆に取り入れられています。その世界観を醸し出すために、美術背景をまず墨で描き、その上から色を重ねるという手法が用いられています

 

たとえば第1話の冒頭、土砂降りに降りこめられた地獄堂から始まる醍醐景光の回想シーンや、第3話の「寿海の巻」に顕著ですが、モノクロやセピア基調で、百鬼丸とどろろの「今」の話ではないということを色数を抑えた表現であらわしています。今回もそうですね。この色数を抑えた表現で、とくに墨のもつ厳しくも柔らかい雰囲気が生かされていると思います。

 

お寺に飾られた1輪の曼殊沙華から始まるどろろの過去。今回の第9話は、墨表現のモノクロを基調にしながら、差し色の「赤」を強調して描かれています。それは「火」の色だったり、「血」の色だったり、「夕陽」の色だったり、「曼殊沙華」の花の色だったり、母親の「火傷した手の色」だったり・・・。

 

どろろは自分の過去を思いだすとき、曼殊沙華のような「赤」とともに思いだすようです。辛い記憶を呼び起こす曼殊沙華の赤。けれどそんな中にあってもどろろは、他の色も覚えていました。モノクロと赤だけで描かれているどろろの過去にも、あけびの紫や菜の花の黄色がありました。あけびは甘くて美味しかっただろうし、菜の花もきれいでワクワクしていたのでしょう。

 

母親との二人旅は辛いことの連続だけど、それだけでない幸せも感じていたのでしょうね。

 

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