2019年1月~放送のアニメ「どろろ」。第23話「鬼神の巻」の詳細なあらすじと見どころを紹介します。「ほぼ鬼神の百鬼丸vs鬼神化した多宝丸’sの戦いが熱い!」あわせて感想もどうぞ!【注意】完全ネタバレです!



第23話/「守りたいもんがあるなら、欲しいもんがあるなら、アニキみたいに自分の手で、地べた這いつくばったって掴まなきゃいけねぇんだ」──どろろが何かをつかんだ!

▲戦う鬼神憑き多宝丸と百鬼丸 出展/TVアニメ「どろろ」公式

 

鬼神の巻

kisin no maki

 

キタ! 「脚本 小林靖子」。待ってました! 今回、かなーりシナリオが良かったです。どのセリフも隙なく、冗長にならない程度に分かりやすく、次回の最終回に期待と希望をもたせる展開でした! もちろん、動画も美しく、見ごたえがありました!

 

今回、良いセリフが多かったので、しっかり書き起こしながらストーリーを追っていきましょう。

 

燃える白馬にまたがった百鬼丸が、出城の二本松の丘から醍醐の城を目指している途中、陸奥と兵庫を従えた多宝丸に出会うところから今回のストーリーは始まります。

 

それはオレのものだーーーーー!」と叫ぶ百鬼丸。対する陸奥と兵庫は、なぜか斬り落とされたはずの片腕が戻っています。無くしたはずの多宝丸の目も戻っています。しかも3つめの目まで額について・・・。多宝丸と陸奥と兵庫は地獄堂にて、百鬼丸の頭を奪い損なったために実体化できなかった12番目の鬼神から、それぞれ百鬼丸の身体の一部を譲り受け鬼神の力を宿してしまっているのです。

 

百鬼丸「返せ」

 

多宝丸「返せ、だと? 笑止!」

 

兵庫「これは、おまえのものではない!」

 

陸奥「取り戻しに来たは我らの方だ!」

 

百鬼丸「なに?」

 

激しく刀を打ち鳴らす百鬼丸と多宝丸’s。3人とも鬼神の力を宿しているので、今回の多宝丸’sは手ごわい! 燃える馬から落ちた百鬼丸は、すぐに体勢を整え仕込み刀を構えます。

 

百鬼丸「それはオレのだー!」

 

多宝丸「違う。今やこれは醍醐の目、そして醍醐の手足。もがれては国は立ち行かぬ。いや、既に揺らいでいる。きさまが鬼神との約定を破ったせいで。もはや猶予はない。民のため、きさまのすべてを今、醍醐の血肉といたす!

 

百鬼丸勝手を言うなーーーーー!

 

その通りですよ百鬼丸。景光も多宝丸’sも、自分勝手この上ない! 自分の望みをかなえるために、誰かを犠牲にするなんて! 現代では幼稚園の頃から教えますよ。「されて嫌なことを人にしちゃダメ!」って。まぁ、この時代じゃ仕方がないのかも・・・。

 

いや、それで済ましちゃいけないですよね。「この時代じゃ仕方がない」って言い続けている内は、この問題は堂々巡りしかしない。第1話からもうずーーっと悩んできたのに、結局答えが見いだせていないし。もう百鬼丸が勝つのでも、景光や多宝丸が勝つのでもない、第3の選択をしなきゃどうしようもない!

 

一方、どろろたちが身を寄せていた難民村では、ミドロの子馬に落ち着きがありません。激しくいな鳴いて、どこかに行こうと暴れています。次平太が必死に子馬をなだめていますが──。

 

次平太「コラ、大人しくしろ! 大丈夫だ。今みんなで逃げる相談すっから。まったく。こんなに暴れるなんて、やっぱり──」

 

老人「鬼神か?」

 

弥彦「いや、そいつぁ分かんねぇ。けど大事を取って、女子どもだけは少し国境から離れた方がいい。戦があるのは間違いねぇからな」

 

乳飲み子を抱えた女「もう、やだよ。あっちやこっちへ行かされて! どこ行ったって同じさ」

 

次平太がちょっと女の言葉に気を取られている間に、子馬はその手を離れて一目散にどこかに逃げていきました。

 

次平太「様子を確かめてくる。逃げるのはその後だ」

 

道秀「わたしも行こう!」

 

ミドロの子馬は、母馬が近くにいるのを察して、百鬼丸たちのところに走っていったのです。どろろと縫の方も百鬼丸のいる方向を目指しています。映像には映っていませんが、琵琶丸も少し離れてついていっているようです。次平太と道秀、弥彦も子馬を追って同じ方向にむかいます。

 

今回のテーマは「第3の道の模索」。サブテーマは「エンディングへの道筋」と、しました。

 

今回、百鬼丸と多宝丸は最初から最後までずーっと戦っています。百鬼丸は身体を「返せ」と言う。多宝丸は身体を「もっとよこせ」と言う。もう、どちらかが死ななければ収まらない状態です。景光は何をやっているかというと、朝倉との合戦の最中なので、とりあえず蚊帳の外。

 

今回、最も重要なのは、当事者ではない者たちの会話です。どろろ、縫の方、琵琶丸、そして難民村の若者たち。彼らの言葉によ~く耳を傾けながら観て行きましょう。

 

百鬼丸の命と醍醐の国と、どちらを優先させるべきか。ついにこの難問を解くヒントをどろろが得ます!

 

「むごたらしい陣取り合戦さね。百鬼丸と、その12体目の鬼神との」

▲すべてが始まった地獄堂 出展/TVアニメ「どろろ」公式

 

どろろと縫の方は、百鬼丸と多宝丸’sが戦っているところから少し離れたところまでたどり着きました。凄まじい勢いで戦う百鬼丸をみて、どろろは止めに行こうとします。が、「およし!」と、声がかかりどろろは振り向きます。後ろからやってきたのは琵琶丸でした。

 

琵琶丸「今の百鬼丸におまえさんだってことが分かるかどうか。後の3人だって、尋常じゃない。覚えがあるよ、あの気配には。間違いない、あの地獄堂にあったもんだ」

 

縫の方「地獄堂・・・」

 

どろろ「なんだよそれ」

 

縫の方「百鬼丸の身体を食らった鬼神の像がある御堂です。ただ、12ある内の一つだけ、百鬼丸を食らい損なって」

 

琵琶丸「なぁるほどねぇ。それで合点がいったよ。だから百鬼丸は死なずに生まれ、鬼神につけ狙われたってわけだ。食らい損なった身体を取るためにね」

 

フムフムなるほど。百鬼丸を妖が執拗に狙ってくるのは、皆、あの12体目の鬼神の差し金ってわけですね。食べ損なった頭を、つまり百鬼丸の命を奪おうとしてるというわけですか。

 

どろろ「じゃぁ、この間っから鬼神を倒しても身体が戻らないのは──」

 

琵琶丸「戻ってないのはどこだね?」

 

どろろ「両手と、あと目だよ」

 

琵琶丸「うーん。そいつぁ、あの3人の様子と重なってやしないか?」

 

琵琶丸の指さす先には、相変わらず戦っている百鬼丸と多宝丸’s。百鬼丸は馬上の多宝丸と同じ速さで地面を走ります。百鬼丸を加勢に向かおうとする燃える白馬の前に、陸奥と兵庫が立ちはだかります。

 

琵琶丸「むごたらしい陣取り合戦さね。百鬼丸と、その12体目の鬼神との」

 

縫の方「すべては、我が夫、醍醐景光が鬼神と交わした約定ゆえ。この国の繁栄は、百鬼丸の犠牲なくしてあり得ませぬ。だから多宝丸は・・・」

 

どろろ「そんな──」

 

そのとき、ヒヒンといななき白い子馬が駆け抜けました。ミドロの子馬です。子馬を追って、難民村の3人の若者(弥彦、次平太、道秀)もやってきました。

 

今ミドロは、険しい表情で兵庫の胸を踏みつけています。そこで子馬のいななきに気付いてミドロはついそちらに視線を向け──その瞬間、踏みつけている兵庫の刀が下からミドロの胸を突き刺し、「兵庫!」と叫んでかけつけた陸奥もミドロの横腹に刀を突きたてました。

 

怒ったミドロは兵庫の頭を噛みちぎり、駆け寄ろうとする陸奥を後ろ脚で蹴り倒します。頭を失ってもなお妙な動きで兵庫の左手は刀を抜き、蹴られた陸奥も不自然な旋回をして右手の刀をミドロに突き立てます──そして、二人とも、その場にパタリと落ちて動かなくなりました。彼らの意思ではなく、鬼神から譲り受けた百鬼丸の身体が勝手に二人を操っているような、そんな動きでした。

 

兵庫と陸奥、そしてミドロの最期

▲百鬼丸の腕をつけた兵庫と陸奥 出展/TVアニメ「どろろ」公式

 

ミドロは近づいてきた子馬に顔を寄せ、数回こすり合わせてから倒れ込みました。身体から立ち上っていた黄色い炎は消え、目も普通の目に戻っていきます。

 

多宝丸「兵庫! 陸奥~!」

 

二人が倒されたのをみるや、多宝丸は駆け寄り呼びかけます。

 

陸奥「若、必ずや戦なき世を・・・」

 

多宝丸「待て! 逝ってはならぬ、ならぬ~! 陸奥、兵庫!」

 

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

悲痛の叫びを上げる多宝丸。

 

直後に百鬼丸に生身の両手が戻りました。やったー! と言わんばかりに両手を上げた百鬼丸に、多宝丸が猛然と向かってきます。義手の仕込み刀の刃を両手で握って応戦する百鬼丸。もどったばかりの両手から血が流れて──すごく痛そうです。

 

縫の方「百鬼丸!」

 

縫の方の声に反応した百鬼丸は、思わず両手の刀を背中に隠します。どこか悪戯を見つかった子どものような仕草です。さらに百鬼丸に話しかけようとする縫の方を多宝丸が止めます。

 

多宝丸「母上、お下がりを。この後に及んで、またあれに心を寄せらるるか。あれは我が国の災い!」

 

縫の方の前で戦うのはばつが悪いのか、百鬼丸はくるりと踵を返して走り去り、多宝丸はそれを追って行きます。

 

ずっとミドロを舐めていた子馬は、やがてミドロが死ぬと、天に向かって哀しそうに一声いな鳴きました。

 

琵琶丸「畜生とはいえ、親子の情とは厚いもんだね」

 

「力をつけたからって、人でなくなるわけじゃねぇ」どろろが気づいた大事なこと。

 

難民村の3人は陸奥と兵庫に合掌して、般若心経で弔います。

 

次平太「あのよぉ、さっきから訊いてる話じゃ、その百鬼丸ってのが鬼神から身体を取り返したってんで、この国がおかしくなっちまったんだよなぁ」

 

どろろ「だからなんだよ」

 

次平太「いや、まぁ。つまりまた、身体を鬼神に渡せば──」

 

どろろ「なんだと、このやろ! おまえら、今度はおまえらがアニキを食いもんにする気かよ。アニキがどんなに苦労して身体を取り戻したと思ってんだ。おまえらだって、さんざんひどい目に遭ってきたじゃねぇか。なのに他の人間をひどい目に遭わせても平気なのか? おまえらも、武士や鬼神と同じになるのかよバカヤロウ」

 

次平太に馬乗りになり、涙ながらにポカポカと殴るどろろを弥彦が抱えあげます。

 

弥彦「よせ。オレたちだって、それがいいとは思ってねぇ。ただよ、もし、おまえのアニキ一人と国一つを比べたら──」

 

どろろ「おまえー!」

 

どろろは今度は弥彦に殴りかかります。「およしよ」と琵琶丸に言われて、さらにどろろは涙声で抗議します。

 

どろろ「けど、こいつらアニキより国の方が大事だって!」

 

縫の方「それはそうなのでしょう。──でも、そんな方法は、何者かに頼って築く平安はもろい。それが骨身に染みて分かりました。この十数年続いた我が国の繁栄、それは百鬼丸ただ一人の犠牲でもたらされたもの。わたくしたちは、親にエサをもらうひな鳥のようなもの。ただ口を開け、食らっていただけにすぎませぬ。自らの手で掴まなかった物は守ることもまたできぬ。わたくしにはもう、我が子を止めることさえできませぬ」

 

そう言って縫の方は自分の両手に視線を落とします。どろろも同じように両手をじっと見つめて言います。

 

どろろ「自分の手で・・・か。おいらたちはいつも、武士や戦にいろんなもん持ってかれちまってた。でも、それで戦や侍に文句言ってたって、ダメなんだ。結局、武士になんとかしてもらうしかねぇってことだもんな。守りたいもんがあるなら、欲しいもんがあるなら、アニキみたいに自分の手で、地べた這いつくばったって掴まなきゃいけねぇんだ。そのためには強くなんなきゃ。力をつけるんだ、自分が」

 

琵琶丸「なるほどねぇ。だがお気をおつけよ。さっきの戦いを見たろう。力を求めて行きつく先は、修羅、鬼神かも知れないよ。と言って、力を持たず、争わず、仏の道、情けの道を行けば、どちらに振り切れても人じゃなくなっちまうのさ」

 

縫の方「人は結局、そのはざまでもがいて行くしかないのかも知れません」

 

琵琶丸「逆に言やぁ、だからこそ人でいられるってことで」

 

どろろ「そんなの、やってみなきゃ分からねぇよ。力をつけたからって人でなくなるわけじゃねぇ。おいら、アニキとさんざん見て来たから分かる。力じゃねぇ、心持ちさ。そいつがしっかりしてりゃぁ、鬼になんかならねぇ

 

どろろの言葉に琵琶丸も道秀も「うん──」と口元をほころばせます。

 

弥彦「どうだ。もう武士にも戦にも、オロオロするのはこりごりだ。自分たちのことは、自分たちで守るしかねぇ」

 

道秀「しかし、その力をどうやって手にいれるかだな」

 

どろろそんなのは、これから考えりゃいい。とにかく始めるんだ!

「もう目ん玉でも手でも足でも鬼神にくれてやれ。欲しけりゃおいらが目になってやる。手足になってやる」。どろろが自分が成すべき使命に目覚めた!

 

百鬼丸は刀の柄に入る部分を両手にしっかり縛り付けて戦います。その切っ先が頬をかすったのを見て、多宝丸は気がつきました。

 

多宝丸「そうか、腕が戻って間合いが変わったか!」

 

多宝丸は何か思いついたらしく、葦原を駆け、百鬼丸を醍醐城に誘い込みます。

 

多宝丸「もう、話すことはないな」

 

多宝丸を追い醍醐城にやってきた百鬼丸は、それには答えず斬りかかります。ここでも激しく戦う二人ですが、刀が鴨居にかかったりして百鬼丸は少し戦いにくそうです。

 

多宝丸「百鬼丸。生まれたこの城で、死ね!」

 

百鬼丸「返せ。オレの最後の──!」

 

灯明皿が倒れて油に火がつき、そこから城に火が回ります。戦う二人はそれすら気にかける余裕がありません。

 

遠くから城の火事に気がついたどろろは「アニキなんだな」と言って駆けだします。続いて縫の方も城に向かって歩き出します。

 

縫の方「行かねばなりませぬ。あそこで戦っているのが、わたくしの息子たちならば。何もできずとも、ただ二人の母として」

 

百鬼丸のもう一人の母(おっかちゃん)の寿海も、炎の上がる醍醐城の前にいます。その手には、木彫りの観音像が握られています。

 

寿海「百鬼丸。ワシの成すべきことを・・・」

 

どろろは、城に向かって走りながら思います。

 

どろろ(アニキ、おいら、ちょっとだけ何か見えたかも知れねぇ。これからのこと、何をするかってこと。でも、おいら一人じゃねぇ。アニキも一緒だ。アニキもいなきゃ! もう目ん玉でも手でも足でも鬼神にくれてやれ。欲しけりゃおいらが目になってやる。手足になってやる。だから! 鬼になっちゃダメだ。死んじゃダメだ。アニキー!)

欲しいものは、自分の手で掴み取れ!

 

ふぅ~。百鬼丸と多宝丸’sの戦い、壮絶ですね。今回、いろいろなことが語られていて、どこから手をつけていいのか迷いますが──。

 

まず重要なのは、問題を多くの人と共有できたということでしょう。とくにカギとなるのが弥彦、次平太、道秀という3人の難民村の青年たちです。醍醐領は朝倉との戦に備え、農村から動ける者は皆、徴兵されているはずです。だから本来なら、こんな働き盛りの健康そうな若者が3人も残っているはずはないのです。そんな矛盾を犯してまでこの3人を登場させたのは、しかも名前つきで登場させたのは、彼らに重要な役割があるからでしょう。

 

3人は少しずつ異なった考えをしています。

 

次平太は「いや、まぁ。つまりまた、身体を鬼神に渡せば──」と、景光や多宝丸’sと同じ考えです。弥彦は「オレたちだって、それがいいとは思ってねぇ。ただよ、もし、おまえのアニキ一人と国一つを比べたら──」と、多くの醍醐の領民や視聴者が抱く複雑な思いを代弁しています。道秀は、どちらの言い分も理解できる人間のようです。

 

彼らの考えをまとめたのが、縫の方の言葉、それを受けたどろろの言葉です。

 

縫の方「何者かに頼って築く平安はもろい。それが骨身に染みて分かりました。この十数年続いた我が国の繁栄、それは百鬼丸ただ一人の犠牲でもたらされたもの。わたくしたちは、親にエサをもらうひな鳥のようなもの。ただ口を開け、食らっていただけにすぎませぬ。自らの手で掴まなかった物は守ることもまたできぬ。わたくしにはもう、我が子を止めることさえできませぬ」

 

これは、縫の方がこれまで何もせずにきた自分を恥じて言った言葉でした。自分の二人の息子が戦いあっているのに、それを母親である縫の方には止められない。二人ときちんとした関係を結んでこなかったから、問題から目を背けてばかりきたから、だから二人を止めることも守ることもできないという後悔の念です。

 

この言葉を受けてどろろは主張します。

 

どろろ「自分の手で・・・か。おいらたちはいつも、武士や戦にいろんなもん持ってかれちまってた。でも、それで戦や侍に文句言ってたって、ダメなんだ。結局、武士になんとかしてもらうしかねぇってことだもんな。守りたいもんがあるなら、欲しいもんがあるなら、アニキみたいに自分の手で、地べた這いつくばったって掴まなきゃいけねぇんだ。そのためには強くなんなきゃ。力をつけるんだ、自分が」

 

欲しいものがあるなら自分の手で掴み取れ!」ってことですよね。たしかに百鬼丸はそうしてきました。それは厳しい戦いの連続だけれど、歯を食いしばって挑み続けてきました。そうして、一つ、また一つ獲得してきたのです。でも、それは腕が立つ百鬼丸ならでは、できたこと。力のない農民たちは、ただ侍たちに翻弄されるだけ。だから「力をつけるんだ、自分が」と、どろろは言います。

 

ここで琵琶丸から待ったがかかります。

 

琵琶丸「なるほどねぇ。だがお気をおつけよ。さっきの戦いを見たろう。力を求めて行きつく先は、修羅、鬼神かも知れないよ。と言って、力を持たず、争わず、仏の道、情けの道を行けば、どちらに振り切れても人じゃなくなっちまうのさ」

 

力を持てば鬼神になってしまうかもしれない。琵琶丸がずっと言ってきたことですね。あの「守り子唄の巻」で、琵琶丸に言われた言葉「穴倉から出てきたモンが、鬼だったってことにならねぇようにしなよ」どろろはこの言葉に怯えてきました。力を持っている百鬼丸だからこそ、鬼になればもう手がつけられなくなる──そう思うから、必死で百鬼丸を止めてきました。

 

かといって、力を放棄して仏門に下れば、普通の人間の暮らしは望めない。

 

じゃ、どうするか? ここで導き出したのがどろろの次の言葉です。

 

どろろ「力をつけたからって人でなくなるわけじゃねぇ。おいら、アニキとさんざん見て来たから分かる。力じゃねぇ、心持ちさ。そいつがしっかりしてりゃぁ、鬼になんかならねぇ

 

どろろの言葉に、琵琶丸と道秀はニコリとします。

 

それはもしや、火袋の志と同じでは・・・!

▲幼いどろろと火袋 出展/TVアニメ「どろろ」公式

 

自分たちの暮らしが良くならないのは、領主のせいだとか、侍のせいだとか、戦のせいだとか。農民はいつもそう嘆いてばかりきました。でも、自分たちの暮らしを良くしたいなら、自分たち自身が行動しなければいけない! そのためには力をつける必要がある。力を持っても、初心を忘れずしっかりした気持ちを保っていれば、人を食い物にする鬼神のようにならない。

 

これって──。

 

これって、どろろのおとうちゃん・火袋が志していたことと同じじゃないですか!?

 

火袋たちは侍に負けない力を持っていました。野伏せり(野盗)とはいえ、けっして農民などの弱者を食い物にするような真似はしませんでした。そうやって、少しずつ自分たちの力で集団を大きくしていったのです。ただし、イタチの裏切りで志は道半ばでついえましたけれど。

 

そして、この物語の舞台を思いだしてください。

 

戦国時代。一向一揆直前の北陸です。これは──! もう、道秀、弥彦、次平太を中心に侍の世をひっくり返すような一揆を起こしてしまいますか!? そのための資金なら、どろろにアテがあります──。そんなお金の使い方なら、火袋は喜んでくれることでしょう!

 

どろろそんなのは、これから考えりゃいい。とにかく始めるんだ!

 

ここなんて、「しらぬいの巻」でみせた火袋の片りんが、またしてもどろろから感じられます!

 

物語を単純化すると、まったく別の物語が見えてくる!

 

この物語、いろいろな要素が絡み合っているから、とても難解に見えてしまっているのだけれど。琵琶丸がすごく単純化して説明してくれました。

 

琵琶丸「むごたらしい陣取り合戦さね。百鬼丸と、その12体目の鬼神との」

 

百鬼丸の頭を食らうはずだった12体目の鬼神。これがそもそもの黒幕なんですよね! 「自分の身体を取り戻したい百鬼丸vs大勢の醍醐の民の平安」という図式に惑わされてきたけれど、じつは「百鬼丸vs12体目の鬼神」が正しかったんですね。敵の情報が不足しすぎでしたね、百鬼丸も、多宝丸も、たぶん景光も。そしてわたしたち視聴者全員が。鬼神ってなんだか、何がしたいのか、どういう存在なのか、まるで分からない。

 

百鬼丸と多宝丸の戦いの行方がどうなるか考えると、まず多宝丸が勝つことはないでしょう。百鬼丸が多宝丸を倒してしまって・・・もちろん、別の方法があればいいけれど・・・目を取り戻して終わりじゃないですよね。その先には必ず12体目のラスボスが現れるはず。それはたぶん、景光を使ってくる──。

 

最終的に、12体目の鬼神が乗り移った景光と百鬼丸の戦いに発展しそうな気がします・・・。

 

妄想エンディング

 

ここからはただの妄想です。

 

12体目の鬼神は景光を操り、鬼神の力を得た景光は朝倉を凌駕するも、自制を失い暴走。もはや景光を討つしか道をなくした百鬼丸も鬼神化。鬼神対鬼神の戦いになり、最終的に百鬼丸が勝つけれど、もはや人に戻ることができなくて地獄堂に封印される──。

 

領主をなくした醍醐の国は、火袋が残した財宝を使って自治に目覚めた若者(道秀、弥彦、次平太)を中心に新しい国をつくります。もちろん、どろろは中心人物の一人として活躍し、醍醐の国に留まります。どろろが新しい国づくりに奔走するというのは、原作の「どろろ」でも採用されている終わり方です。

 

どろろの今後

どろろは、ラスボスにより両腕を無くします。それを見た百鬼丸が激昂し、鬼神化してしまう切っ掛けとなります。無くした腕は、百鬼丸が使っていた仕込み刀を入れた義手を寿海につくってもらいどろろが装着することに。どろろはその腕を、アニキの形見のように大事にしています。

 

この推測は、エンディングの冒頭に出てくる成長したどろろの右腕が仕込み刀になっていることから考えました。次の左手のアップが義手だったので、両腕を失うと想像しました。第2期が始まった時からぼんやり映るこの人物が、成長したどろろにしか見えなかったんですが、やっぱりそうだと確信しました。赤いマフラーを巻いているのは、盛り上がった胸を強調させないためで、よく見ると髪型が百鬼丸じゃないですもんね。だいたい百鬼丸にしちゃ足がいろっぽすぎます。

 

寿海の今後

寿海は、今回のラストで懐に観音菩薩像をもっているように見えました。これが鬼神を封印するのに役立つように思えます。そして、どろろの腕に仕込み刀の義手をつくる役割もあると思います。きっとどろろの親代わりになり、醍醐の国で一緒に暮らすのではないでしょうか?

 

縫の方の今後

おそらくですが。二人の息子を体を張って止めるのではないでしょうか? ずっとミドロの子馬を撫でていたし、子が母親にもつ思慕の情を信じて、行動に出るのでは──? と、思います。それで、命を落とすのかも知れません。

 

琵琶丸の今後

結局、琵琶丸が何者か分からずじまいかも知れません。最初から最後まで傍観者。百鬼丸の因果を見届ける役目をもたされただけの人物で、最後はまた漂泊の旅に出るような気がします。この物語を琵琶の音にのせて、各地で語り継いでいくのかも知れませんね。

 

【追記】百鬼丸に目がもどったら、琵琶丸は鬼神の炎が見える唯一の人物です。地獄堂に封印された百鬼丸の炎がじょじょに弱まり、やがて時間をかけて人にもどるとしたら。琵琶丸だけが、どれくらい色が薄くなってきているか分かります。琵琶丸は、たまに醍醐の国にもどってきて、百鬼丸の鬼神の色をどろろに教える役目を持っている。数年後に人に戻った百鬼丸が、年頃になったどろろと再会する──かも? って含みでエンディングとかどうでしょ?

 

もちろん、ぜんぶただの妄想です。少しくらい当たればいいな^^

 

ラストはハッピーエンドになる?

 

生まれたときから辛い思いをし続けてきた百鬼丸だから、物語の最後はハッピーエンドになってほしい。と、ずっと思ってきました。でも、前回の二本松の丘での暴走をみると──こりゃハッピーエンドは無理かなぁと・・・。いくらどろろがいなくて正気を無くしているとはいえ、ズバズバ侍たちを殺してたしね。

 

でも、できれば生きてほしい。100%のハッピーエンドじゃなくていいから、救いのある終わり方にしてほしい。それだけは祈ってます!

 

他作品のエンディング比較

「どろろ」には、原作漫画、1969年版TVアニメ、ゲーム版、実写映画版 と、これまで4作品があり、それぞれにエンディングが違っています。どんな終わり方をしたのか、簡単に紹介します。

 

原作漫画

原作漫画では、じつはどろろは「百鬼丸の奪われた身体のパーツを使ってつくられている」という設定があります。もし百鬼丸がすべての身体のパーツを取り戻したければ、どろろを殺さなければならない。悩む百鬼丸ですが、結局どろろを殺すことができず、すべての身体を取り戻すことを諦めて一人姿を消すというエンディングでした。

 

1969年版TVアニメ

すべての身体を取り戻すことができますが、実の父親を倒さなければならなかったり、母親の縫の方が百鬼丸をかばって死んだりと、心労が重なった百鬼丸は、もう誰とも会いたくないと一人行方をくらまします。

 

ゲーム

ゲームでは、どろろを倒さなければすべての身体が戻らないという原作の設定を取り入れています。このため百鬼丸は、どろろを殺さずに自分の身体を取り戻す方法を探しに一人流浪の旅にでます。数年後、年頃の娘になったどろろの前に百鬼丸が現れ、どろろの中の魔物を引きずり出し倒すことに成功。ハッピーエンドを迎えます。

 

実写映画

景光亡き後の城主に兄の百鬼丸を推す多宝丸に城主を譲り、どろろと百鬼丸はまた放浪の旅に出ます。じつは実写映画は3部作の予定でした。そのため、なんともふんわりとした終わり方になっています。

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]ついに次回が最終回。満面のハッピーエンドは望まないけれど、お願いだからどん底のエンディングだけは回避してほしい。もっと言うなら、百鬼丸殺さないでー! 次回タイトルは「どろろと百鬼丸」。ついにリメイク版アニメの最終回です![/char]

 

▼「どろろ」関連のすべてのページ一覧はこちらです

 

スポンサーリンク