ついにアシェラッドの計画の全貌が明らかに!シーズン2、第13話英雄の子」のあらすじ感想考察を紹介します。2019年7月~放送の「ヴィンランド・サガ」は、1000年前の北欧を舞台にヴァイキングの生き様を描いた骨太な物語



第13話/「直系のリディアさまのお子だ。このアシェラッドには、我らローマンケルトの偉大なる指導者の血が受け継がれている」

▲14歳のアシェラッド 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

#13

英雄の子

Child of a Hero

 

ヴァイキングのロングシップから小さなボートでやってきた金髪の若者は、母親をおぶって兵の居並ぶどこかの浜辺についた。背中の母親はか細く、力なくおぶわれている。

 

若者「母、もうすぐ死ぬ。故郷帰りたい、言った。連れてきた」

 

青い目を見開いて、若者はたどたどしくそう言った。

 

今回のテーマは「アシェラッドの過去」。サブテーマを「クヌートvsトルフィン」としました。

 

前回は、トルケル軍に追いつかれそうになったアシェラッドが、セヴァーン川の向こうの国「モルガンクーグ王国」に救援を要請し、それに応じたモルガンクーグ王国の船で川を渡って助かったというお話しでした。手紙ひとつで救援船を送ってもらえるアシェラッドとはいったい何者なのか? 普通のヴァイキングとは違う雰囲気のアシェラッドの出自に迫る回でした。

 

どうやらモルガンクーグ王国はアシェラッドの故郷らしいこと、しかもかなり力のある血筋らしいことが分かりました。今回は、さらに詳しくアシェラッドの過去が語られます。過去だけでなく、アシェラッドがこれからどうするつもりかについても語られています。これが今回のテーマです。

 

サブテーマに、クヌート王子とトルフィン、まったく異なる生き方をしてきた二人の17歳がやりあうところを取り上げました。「やりあう」と言っても、もちろん剣で戦うわけではなくて、シャイな王子が初めてトルフィン相手に口喧嘩したということ。これまでの王子からは、考えられない進歩です!

 

▲今回の主な舞台はウェールズ・モルガンクーグ王国 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

西暦1013年 11月 イングランド南部ウェセックス デンマーク軍とイングランド軍が激しく衝突している。

 

フローキ「我が軍主力は、ウェセックスにて抵抗勢力を撃破。同地の制圧も時間の問題かと思われます。早ければ、冬前には決着がつくでしょう」

 

フローキがデンマーク軍の侵攻状況をスヴェン王に報告している。デンマーク軍が本陣を置くゲインズバラだ。

 

スヴェン王「ロンドンのその後は? クヌートだ。あれは今どこに?」

 

フローキ「クヌート殿下率いる包囲軍は、トルケルの一団に撃破された後、消息が途絶えております。マールバラで交戦との情報も入っており、現地兵と合流した可能性もありますが、その安否に尽きましては、今のところ・・・」

 

スヴェン王余の大事な息子だ。状況が分かり次第、すぐに伝えよ

 

「はっ!」と答えると、フローキは王の間を辞した。

 

一方、クヌート王子を伴ったアシェラッド隊は、救援要請に応じてくれたモルガンクーグ王国からブリテン島中東部にあるゲインズバラを目指して徒歩で北上している。隣国ブリケイニオグ王国との国境にさしかかると、使いの者は兵を引き連れて来ていた。モルガンクーグ王国のグラティアヌス将軍とアシェラッドは、その意図を測りかねている。

 

アシェラッド隊の面々は、高台から弓で狙われている状況に戦々恐々としていて、今にも反撃から全面戦争に突入する勢いだ。

 

アシェラッド「落ち着け野郎ども。いいか、放射するんじゃねぇぞ。ぜったいに手を出すな。──ブリケイニオグのご子弟よ、貴国の歓迎はちと手荒いな」

 

アッサー「ほう、我らの言葉を話すか蛮人よ。キサマらデーン人は、言葉の通じぬケダモノだと聞いていたがな」

 

グラティアヌス将軍「兵を引け、アッサー! デーン人相手に事を構えても我らウェールズに息はない」

 

アッサー「グラティアヌス! わたしは、ウェールズ全体の小王国の行く末をおもんぱかる貴方を尊敬している。だが、我々はあなたとは少し考え方が違うのだ。デーンの王子とどんな約束を交わすというのだ。しょせんは蛮族、道理は通じぬ

 

アシェラッドたちはウェールズ語で話しているので、ビョルンたちデーン人には彼らが何をもめているのか分からない。「やるのかやらねぇのか、はっきりしろや!」とトルグリムはカリカリしているが、ビョルンは「こりゃ戦にはならねぇよ」と踏んだ。その理由が「その気なら最初の矢で死人が出てたはずだぜ」と。

 

ビョルンま。ハッタリ効かせて話し合いを有利に進めようって腹じゃねぇの?

 

その間、アッサーの言葉は続いている。彼にはデーン人に対する強い不信感があるようだった。

 

アッサー「きさまらのイングランドとの戦は、つぶさに見てきたぞ。この10年で3度、かの国と休戦協定を結び、それらをことごとく破ってきた。我らはイングランドのような愚はおかさぬ。王子を捕え、我らが盾とする。悪鬼どもの王といえど、世継ぎはかわいかろう!」

 

グラティアヌス将軍「すまんな、アシェラッド」

 

アシェラッド「いーえ、どうせ茶番です。ごねてみせて、出方を見ているんでしょう。山羊も狼の皮をかぶらねば草も食めぬ時代です。彼らに同情しますよ」

 

グラティアヌス将軍「教えるのか? おまえの計画を」

 

アシェラッド「それもいいですが、茶番がやりたいなら少しつき合ってやるのも一興かと」

 

そう言ってアシェラッドはクヌート王子をアシェラッド隊の一番前に立たせた。そこで王子に不快感をあらわにさせようと画策する。

 

アシェラッド「ものども控えよ! こちらにおわすお方こそ、デンマーク国王スヴェン陛下のご子息クヌート殿下である。これより殿下がそのほうらにお言葉を下さる。かしこまって訊くがよい!」

 

クヌートはすっかり面食らっている。「さ、殿下。一発けいきのいい啖呵を!」とアシェラッドが言っても、そんなことしたこともないのだろう。ただオロオロするばかりだ。ついにクヌートは何も言えず、側近のラグナルの背中に隠れてしまった。思い通りにいかず、チッと舌打ちするアシェラッド。

 

感想&考察1、ブリケイニオグ王国の裏切りは、ただの茶番!

▲ブリケイニオグ王国のアッサーと部下の兵士たち 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

トルケルから逃げるため、ウェールズの小国モルガンクーグ王国に救援要請したアシェラッド。モルガンクーグ王国はアシェラッドの故郷らしく、信用されているので救援要請を聞き入れてもらえたのですが、隣国ではそうも行きませんでした。

 

ブリケイニオグ王国の使者アッサーの言うことには、デーン人とイングランドはこれまで3度の不戦協定を締結しているにも関わらず、デーン人はそれをことごとく破ってきたのだから信用できないと。

 

前回わたしは、もしかしたらスヴェン王が王子を切り捨てるつもりでブリケイニオグに圧力をかけたのか? とも邪推しましたが、そうではなかったようです。スヴェン王は「余の大事な息子だ」と言っていますしね。さすがに考えすぎでした。

 

ここはビョルンの言う通り、ブリケイニオグ王国独断のハッタリのようです。たしかに戦をする気なら、アシェラッドの馬を射るのではなく、アシェラッド本人に矢を射るでしょう。

 

アシェラッド「山羊も狼の皮をかぶらねば草も食めぬ時代です。彼らに同情しますよ」

 

という言葉は言いえて妙ですね。おとなしく人の言うなりにしていては、国が立ちいかぬほど厳しい状況なのだと、よく分かります。

 

「出過ぎたことを申しました。殿下もどうかご容赦くださいませ」

▲クヌート王子に何か言わせようとするアシェラッド 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

スヴェン王の威光をかさにきたクヌート王子が不快感を表出することでブリケイニオグ側は縮み上がり、この場が収まると踏んだアシェラッドだったが、クヌート王子がアシェラッドの思惑通りに動くことはなかった。一言も話さず、ついにラグナルの背中に隠れてしまった。

 

ラグナル「殿下は人前で話されるのがお嫌いなのだ。ここはワシが!」

 

アシェラッドなりませんラグナルどの。たとえお若くとも一国の王子。果たすべき責任がございます。今この場にいるすべての者が、王子殿下の御為に動いているのですよ

 

たしかにアシェラッドの主張は間違っていない。しかし、ラグナルはあくまで王子をかばう。

 

ラグナル「お優しい方なのだ。無用の争いを好まれぬ」

 

アシェラッド「だからー! 無用の喧嘩にならねぇように、場を収めてくれって言ってんでしょうが! 貝みたいに押し黙ってて、スヴェン王の跡目が務まるとお思いですか

 

ラグナル「黙れい! きさまらに殿下の何が分かる。王宮は、親子兄弟が相食らうキツネの巣だ。病がちだった殿下が、その中を生き延びるのに、どれほど苦労なさったか。お心をころし、息をころし、目立たぬようにして、今日までやってこられたのだ。それでも次々きさまらのようなヤツばらが、殿下を利用せんとすり寄ってくる。──分をわきまえよ。殿下がどのように振る舞われようとも、きさまごときが口を出すことは許されぬ!」

 

クヌート王子の前に立ちはだかり、一歩も引かぬ構えのラグナルを見て、アシェラッドはクヌートに茶番の片棒を担がせるのを諦めた。

 

アシェラッド「グラティアヌスどの。彼らに計画を伝えます」

 

グラティアヌス将軍「うん、良かろう。わたしも行こう」

 

将軍はひらりと馬を降りた。

 

アシェラッド「野郎ども、その場で待て。ヤツらの大将と話つけてくっからよ!」

 

アシェラッド隊員たちは「うーっす」とそろって返事する。それからアシェラッドは語調を変えてラグナルに言った。

 

アシェラッドラグナルどの。お言葉ごもっともです。殿下の御身を案ずるあまりに、つい出過ぎたことを申しました。殿下もどうかご容赦くださいませ

 

軽く頭を下げてから、アシェラッドは話し合いに向かうため、その場を歩み去った。

 

アシェラッドがこれ以上無理強いするのをやめたのを見て、クヌート王子はラグナルの背に隠れたまま安堵の息をついた。一連の様子を側で見ていたトルフィンが「はっ! だっせぇ」と呟く。

 

トルフィンおまえ、本当にオレとタメか?

 

王子はやや悔しそうに、トルフィンから視線を外した。

 

感想&考察2、王子と手下は違うと思い知るアシェラッド

▲王子が思い通りに動かず思わず舌打ち 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

海賊の首領アシェラッドは、なかなか頭のいい男です。普段つかっているデーン人の言葉(古ノルド語)、イングランド語、さらにウェールズ語の3カ国語を話し、人を見抜く力をもち、信頼を勝ち得て人を統率する能力にもたけています。交渉も上手い。

 

海賊の手下には「野郎ども、その場で待て。ヤツらの大将と話つけてくっからよ!」と彼らに理解しやすい言葉で話し、王子やその側近に対する礼節をわきまえた言葉遣いもきちんとできる。こういったところがアシェラッドの非凡なところですよね。

 

でも、このシーンでアシェラッドは王子を上手く使えませんでした。ブリケイニオグ側がハッタリをぶつけてくるなら、こちらもハッタリで返そうと、王子に茶番を演じるよう言ったのですが、結局、王子は何も言わずラグナルの背に隠れてしまいました。それをラグナルはクヌート王子の優しさのためだと言い、さらになぜクヌート王子がこんな性格になったのか、幼少期からの苦労を話しました。

 

この場を収めることしか考えていなかったアシェラッドの配慮不足でしたね。王族に対する言葉遣いはできても、まだ相手のことをよく知らない今の段階で自分の思い通りに王子を動かすのは、海賊の手下たちと同じように動かせると考えるのは無理がありました。

 

すぐにそこに気がついて「出過ぎたことを申しました。殿下もどうかご容赦くださいませ」と謝れるところはさすがですが。

 

一方、トルフィンにはそんな芸当はできないし、する気もなさそうです! いかにもトルフィンらしくて、笑ってしまいます。キャラクターの動かし方が自然でいいですね。

 

アシェラッドの計画

 

ノルド語で交わされていたアシェラッドとクヌート王子、ラグナルの様子を、グラティアヌス将軍も近くで観ていた。もちろんノルド語の分からない将軍に会話の内容は理解できなかったが、だいたいの察しはついていた。

 

グラティアヌス将軍「──あの男、ラグナルと言ったか。ヒナ鳥もいつかは巣立つということを知らんな。あれでは却ってヒナに良くない。計画のために、おまえのやるべきことは多いようだな。まずはヒナを巣立たせることか

 

アシェラッド「はぁ。心得ております」

 

ブリケイニオグ側の代表アッサー(グラティアヌス将軍が敬称をつけずに呼んでいることから、アッサーもまた将軍と思われる)、モルガンクーグ王国のグラティアヌス将軍、アシェラッドの3人は、人払いをして周りが見渡せる小高い場所で会談を始めた。

 

アッサー「書簡で突然、領内の通行許可と兵糧を求められてもねぇ、二つ返事はできないんだよ。弱小といえど対面てものがあるからね、我が王家にも。貴殿らに便宜を図ることで、どういう見返りがあるのか、対等な立場の取引だと確認しとかんことにはね。下の者たちに王が100人ていどのデーン人にびびっていると思われかねん

 

アシェラッドたしかにな。我々の要求するまま応えていては、あなた方も恰好がつかん。配慮に欠けたことをお詫びしよう

 

グラティアヌス将軍「貴国への書簡を書いたのは、このわたしだ。見返りについて詳述しないのは、機密保持のためと記したはずだが」

 

アッサー「えぇ、読みました。それでは伺いましょうか、その機密について」

 

アシェラッド「ひとついいかな。オレの提示する見返りの内容によっちゃぁ、戦闘になることもあり得るかね? アッサーどの」

 

アッサー「あっはは。そういじめんでくれよ。デンマーク王を怒らせようものなら、こんな小国などひとたまりもないのは、よく分かってる

 

お互いがそれぞれの立場をわきまえていること、そして決してバカではないことを確認した。ここで、グラティアヌス将軍がアッサーに、アシェラッドの出自を話した。

 

グラティアヌス将軍直系のリディアさまのお子だ。このアシェラッドには、我らローマンケルトの偉大なる指導者の血が受け継がれている

 

アッサー「すると貴殿は、デーン人ではないのか?」

 

アシェラッドウェールズとデーンの混血だ。父ウォラフはかつて、ウェールズ沿岸を略奪し、その際リディアを愛妾としてさらった。生まれたのがオレだ」

 

アッサー古ブリタニアの軍神の血脈は、絶えたと聞いていた──貴殿が、アルトリウス公の子孫だと

 

アッサーは「にわかには信じられない」と驚愕の表情を浮かべた。

 

アルトリウスは、5世紀~6世紀にかけて活躍した、イギリス先住ケルト人国家ブリタニアの軍団総指揮官である。516年、侵攻著しいサクソン人、のちのイングランド人の軍勢をベイロンヒルの戦いにおいて打ち破り、ブリタニアに平和をもたらした。後世に語り継がれ、アーサー王伝説の原型になったとされる人物である。詳しくは、前回・第12話の感想&考察をご覧ください。

 

アッサー「貴殿の話、信ずるに値する証はあるか」

 

グラティアヌス将軍「わたしだ。この男は14歳のとき、リディアさまとともにウェールズを訪れ、初めてわたしと会った」

 

将軍は、母親を背におぶい海岸に降り立った14歳の若きアシェラッドの姿を思い描いた。

 

アシェラッド「──ツキのない人だったよ。長いこと親父の寝室で飼われ、病を得てからは馬小屋で飼われていた」

 

アッサー「おいたわしい・・・それにしても、偉大なる血統さいごのひとりが、デーン人との混血とは」

 

悔しそうに顔を歪めるアッサーに対して、アシェラッドは言った。

 

アシェラッド「そこだよアッサーどの。混血だからこそだ。オレはデーン人に溶け込んでいる。つまりウェールズは、デンマーク軍内にオレという工作員をもつことになる。あのボンボンを次のデンマーク王に仕立て上げれば、オレも国政の要職につける。そうすりゃウェールズへの不可侵条約すら結ばせることができる。ヤツらには、この地に一歩も踏み入れさせん

 

そこまで訊いてアッサーは、愉快そうに声を上げて笑った。

 

アッサー「あっははは。恐れ入った。なんと大胆な! よくもそんな大風呂敷を! ──ひとつ、懸念がある。デーン人のなかで生まれ育った貴殿だ。デーンの血よりアルトリウス公の血が常に勝ると言い切れるかね?」

 

アシェラッド「うーん。その辺は信じてもらうしかないな。ま、血の問題は別にしても、オレはデーン人が嫌いだ

感想&考察3、アシェラッドはウェールズの英雄の子孫!

▲14歳のアシェラッド。確かに面影が・・・ 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

なるほどぉ~! アシェラッドはヴァイキング(デーン人)の父親・ウォラフとウェールズ人の母親・リディアの間に生まれた子どもだったわけですね。そして母親のリディアは、かつてウェールズで軍神とあがめられたアルトリウスを祖にもつ女性。アルトリウス公は、ウェールズ人の英雄です。

 

デーン人の中で生まれ育ち、14歳で初めて母とともにウェールズを訪れたアシェラッドは、そこでグラティアヌス将軍と出会います。つまり、今回の冒頭のシーンは、アシェラッドが初めてウェールズに降り立ったシーンだったのです。見返してみれば、たしかに金髪に青い瞳の若者には現在のアシェラッドの面影があります。たどたどしく話すのも、まだウェールズ語ができなかったからなんですね。陸で迎える軍勢の中には、若き日のグラティアヌスの姿もあります。

 

アシェラッドの存在は、今なおアルトリウス公を尊敬するウェールズの人々にとり驚くべきことでした。そんな境遇のアシェラッドだからこそできることがある。

 

これからアシェラッドはクヌート王子を救出した功績を引っさげてスヴェン王の元に帰ります。今はナヨナヨしている王子を次代のイングランド王に据えればアシェラッドも要職につくことができる。それなら、ウェールズとの不可侵条約を締結させることもできる・・・と、これがアシェラッドの計画です。

 

わたしはもっと簡単に考えていたので、まさかこんな遠大な計画だとは思ってもみませんでした。王子をトルケルから逃れさせてやったから不可侵条約、領地を横切らせてもらうから不可侵条約、っていうくらい簡単に考えていました。よく考えてみればそんな重要な条約を、そうやすやす結ぶことなんてできませんよね! しかもクヌート王子が次代のイングランド王になれれば──という不確実要素もあります。その不確実要素を排除し、「不可侵条約」までこぎつけるために、今後アシェラッドはデンマークの中枢に入り込むつもりのようです。

 

やはりアシェラッド、只者ではありませんでしたね。アシェラッドの存在が、この物語のカギといえそうです! これからさらに面白くなりそうですね!

 

ただ・・・。

 

わたしは今回のタイトルが「英雄の子」だと知って、てっきりトルフィンが活躍するのだとばっかり思いました。なにしろトールズはヨムスヴァイキングの英雄でしたからね。そうではなくて、「英雄の子」はアシェラッドをさすのだとすると──今回のタイトルは正しくは「英雄の子」じゃなくて「英雄の子孫」ですよね! ここで言う「英雄」は「アルトリウス公」なのだから。

 

口のきき方も知らないクソガキ・トルフィンと王子さまの口喧嘩

 

アッサーの顔を立てつつブリケイニオグ王国領を通行し兵糧までもらうため、アシェラッドたちはアッサーの捕虜になったフリをすることになった。アシェラッドの部下たちは声をかけあい粛々と武器を集めている。捕虜のフリをしている間、アッサーたちに預けておくためだ。そんな中、ラグナルはかたくなに剣を手放そうとしない。

 

ラグナル「断る。武器を手放すなどあり得ぬ」

 

アシェラッド「この国を通行する間、連中の捕虜になったフリをするだけです。国境で追放されるとき、武器は返されます。それで、彼らのメンツは保たれます」

 

王子の護衛のためラグナルと同じ馬車に乗っているトルフィンは腕を組み、やはり剣を出そうとしない。「おいトルフィン、おまえもだ」とアシェラッドが剣を催促すると、口汚い返事がかえってきた。

 

トルフィン「ざけんなハゲ!」

 

ラグナル「──信頼か──」

 

ついさっき、部下がすんなり武器を渡すのは信頼されているからだとラグナルに自慢していたというのに、トルフィンはアシェラッドの顔に思い切り泥を塗った格好だ。

 

アシェラッド「こいつは別です──クソガキめ」

 

トルフィン勘違いするなトンガリ。オレぁこのハゲの部下じゃねぇ。敵だ

 

ラグナル「敵?」

 

アシェラッド「あぁ、分かった分かった。あんたがたは結構。二人くらいは大目に見てくれるでしょう」

 

ついに面倒くさくなったアシェラッドが引いた。

 

進軍が再開されると、クヌート王子が隣に座るトルフィンに何か言いたそうにソワソワしだした。脚を組み、左手で頬杖をついているトルフィンは、ギロリと王子を睨む。

 

トルフィン観てんじゃねぇよお姫さま。言いてぇことはてめえの口で言えよ。舌がねぇのか、あ?

 

視線を外し口ごもりながらも、王子はようやく話し始める。

 

クヌート王子・・・ボクは。臆病で喋らないわけじゃ・・・ないんだ。し・・・慎重なんだ。慎重にしないと、いけないんだ。ボクは王子だ。そ、そなたたちとは違うのだ

 

口ごもりながらも自分の口で話し始めた王子に、ラグナルは目をぐりぐりさせ息を飲む。続いて周りを歩いている兵士たちが、やがて馬で先導しているアシェラッドも王子の異変に気が付いた。

 

クヌート王子政治的な意味が、生じるのだ。異国においてはなおさらだ。父王陛下のお許しもなく、不可侵条約だの、不快感の表明だの、できるわけがない!

 

最後は強い口調で言い切った。そして、進軍が止まり周りの者たちがポカンと自分に注目しているのに気がつくと、あたりを見回し小声で繰り返した。「ボクは慎重なのだ」。

 

トルフィンはっ! そこそこマシな言い訳言うじゃねぇか。オツムは足りてるようだな、お姫さま

 

またしても「お姫さま」とバカにされた王子は、顔を赤らめ思わず立ち上がる。

 

クヌート王子この無礼者! はっ、初めてだ。今までボクにこんな態度をとる者などいなかった!

 

トルフィン「なら、いい経験じゃねぇか」

 

クヌート王子「発言を取り消せ。言い訳などではない。おまえなどに、王族の苦労のなにが分かる!」

 

拳を握り締め、トルフィンを指さし、語気を荒げるクヌート。ラグナル以外の者と話すことすらなかった王子のあまりの剣幕に、ラグナルすら言葉も忘れて呆然と見ている。

 

 

トルフィンは相変わらず、左手で頬杖をついたまま言う。

 

トルフィン「わめくんじゃねぇよ座ってろ」

 

クヌート王子「わめいてなどおらぬ。ボクは、自分の発言の正しさを主張しているだけだ」

 

トルフィン「はいはい、分かったって」

 

まだ続く王子とトルフィンのやりとりを観ながら、ラグナルは心底驚いていた。(殿下がワシ以外の者と話されるとは!)。

 

進軍は続き、ついに空から白いものが舞ってきた。雪だ。ウェールズの山の中で雪に振り込められてはたまらないと、アシェラッドの判断で進路を変更し、敵領地を横断してゲインズバラを目指すことになった。「兵糧はどうするのだ」と問うラグナルに「平気、平気。それもちゃんと考えてますって」と軽く応じるアシェラッド。

 

アシェラッド「野郎ども。方向転換だ、ぐずぐずするな!」

 

雪が降ってきているというのに、ここに来て方向転換ときき、兵士たちから不平が出る。そこをビョルンがびしっとまとめた。

 

ビョルン心配すんな。アシェラッドの判断に間違いはねぇ!

 

感想&考察4、トルフィンと王子のやり取りが最高に面白い!

 

同じ17歳のトルフィンとクヌート王子。これまでラグナルを通してしか自分の言葉を伝えることをしてこなかった王子が、はじめて自分の口で会話をし、感情を表現した重要なシーンだったわけですが、いや面白かったですね! 礼儀のレの字も知らないトルフィンと、かしずかれるのが当たり前のクヌート王子。

 

トルフィンはいつの間にかアシェラッドから学んだに違いない(^^; 挑発するようなモノ言いをしていますが、結構言っていることはまともです。「臆病なんじゃなくて慎重なんだ」という王子の主張も、「マシな言い訳」と評価しています。もちろん、ひどい言い方ですが・・・。それに対して、無礼な言われ方にすっかり頭にきている王子。感情的に声を荒げ手振り身振りで身体じゅうで怒りを表現しています。

 

王子をかばってばかりのラグナル相手では、口喧嘩なんて一生できません。トルフィンの言葉通り、ほんと「いい経験」でしたね。これをきっかけに、少しずつでも自立していってくれるといいのですが。

 

この二人、形は違えど生き抜くための武器を必死で磨いてきた結果、こういう対照的な性格になったのでしょう。トルフィンは剣の腕前を磨くことで生きながらえてきたし、クヌートは誰からも気に留められないほど目立たないことで生きながらえてきた。「剣の腕」も「目立たないこと」も、それぞれの境遇を生き抜くために身につけた武器であり知恵だったのだと思います。

 

感想&考察5、アシェラッドは自らの血脈の奴隷

▲ローマ風の鎧を常に身に着けているアシェラッド 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

第8話でアシェラッドは「みんな何かの奴隷」と言いました。誰もが何かに囚われていて、その範疇でしか考えることも行動することもできない──という意味だと思うのです。

 

たとえばトルフィンは「復讐の奴隷」で、しかも「戦士というプライドの奴隷」。だから復讐をやめることはできないし、戦士をやめることもできないし、戦士の行動から外れるようなやり方で復讐をとげることもできない。誰かにそうしろと強要されたわけでもないのに、いつの間にかそれに囚われ、それ以外の方法を考えることも行動することもできません。

 

それじゃアシェラッドは何に囚われているのだろう? と、思っていたのですが──。今回のエピソードから、アシェラッドは「自らの血脈の奴隷」なのだろうと。偉大な祖・アルトリウスの血脈の最後の一人なので、「いつか英雄アルトリウスが復活してブリタニアを復興する」という伝説を実現したい欲求から逃れられないのだろうと思うのです。たしかにそれを実現できるのは、この世でアシェラッドただ一人です。

 

クヌート王子という逸材を得て、いよいよ伝説の実現への道筋が見えてきました。これから先、アシェラッドは目標に向かい一直線に進んでいくのでしょう。

 

感想&考察6、ビョルンの視線

▲アシェラッド兵団の副団長ビョルン 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

アシェラッド兵団の最古参ビョルンは、アシェラッドとはもう10年以上の付き合いです。でも、ビョルンがアシェラッドについて知っていることは、アシェラッドがデーン人だということだけ。自分のことはビョルンにも話さなかったようで、「水臭いヤツだぜ」とビョルンは言っています。

 

それでも副団長としてアシェラッドを補佐し兵団をまとめあげ、10年以上にわたり村を襲撃し金品を強奪してきた仲間です。アシェラッドの頭の良さ、見極めの正確さ、腕の立つところ、つき合いやすさと信頼のおけるところなどなど。海賊の首領として認め尊敬しています。

 

でも、気づいてしまいました。クヌート王子の顔を見てからアシェラッドがどこか変貌してしまったことに。

 

ウェールズに渡ってからのアシェラッドは、ウェールズ語を操り、国の要職たちと対等に話し合いを重ねます。その姿は、およそヴァイキングらしくない。ヴァイキングなら、船3隻を奪えばいい。邪魔をするならころせばいい。そう思っても不思議じゃありませんよね。

 

今までおくびにも出さなかったけれど、きっと、そういうヴァイキングの考えをアシェラッドは嫌っているんでしょう。骨の髄からヴァイキングのビョルンは、アシェラッドの変貌をどう捉えるんでしょう。今後のビョルンの行動にも注目ですね!

 

そういえば、ラグナルが心配している「兵糧の調達」ですが。いつものように、どこかの村を襲撃するんでしょうね・・・。ラグナルや王子にとっては、きつい経験となりそうです(^^;

 

新OPにマンウィズ、新EDにmiletを起用! 最近のアニメは曲が贅沢だこと!

第2クールのオープニング曲はMAN WITH A MISSIONの「Dark Crow」。

▲ツインエンジン ver.

 

重いテーマ性を追求した第1期OPに比べ、第2期は軽快でノリのいいライトな仕上がり。アクが強くないのでどんな場面とも親和性がいいですね。意外と戦闘シーンにも似合って、かっこいいです。

 

エンディング曲はmiletの「Drown」

▲ツインエンジン ver.

 

優しくも温かい歌声の第1期EDのAimer。第2期EDは押し出しの強いやや乾いた声質のmilet。どちらも違った個性でいいですねぇ。淡々とした曲調と抑えた歌い方の奥に潜む深いものを感じさせて、エンディングにぴったりだと思います。気に入りました!

 

ここまでの個人的評価

脚本/9

CV/9

キャラクターデザイン/9

作画/9

アニメーション/9

美術背景/9

音楽/9

総合評価 90点

[char no=”1″ char=”あいびー”]ほぼパーフェクトと言っていいと思います! 個人的に10/10つけると進歩がない気がするので9止まりにしていますが、実質どの項目も10/10に近いです。ただ惜しむらくは、NHKの大河ドラマでの問題点と同じところがネックになってますね。登場人物が多いのと、土地勘がない人への説明が難しいところ。大河ドラマの後にちょっとした補足説明が入りますよね、あんな感じのものがあった方が視聴者に優しいかなぁ~って思います。でも、十分すばらしい作品になっているので、このままのテンションで走り切ってほしいです![/char]

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