アシェラッドがクヌート王子に執着する本当の理由が明らかに!シーズン2、第17話「仕えし者」のあらすじ感想考察を紹介します。2019年7月~放送の「ヴィンランド・サガ」は、1000年前の北欧を舞台にヴァイキングの生き様を描いた骨太な物語



第17話/「オレはもう年でな。満足に働ける時間は残り少ねぇ。さすがにもう、待てなくなったのさ。まことの王がアヴァロンからお戻りになられるのをな」

▲在りし日のアシェラッドの母・リディア 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

#17

仕えし者

Servant

 

雪に覆われた遠い丘に何かがチラチラ光るのが見えた。トルケル軍がすぐ側まで迫っている。「歩いて渡れるような浅い川の橋を落としたところで、トルケル軍に追いつかれるのは必至だ。そうなれば命はない。それならクヌート王子を手土産にトルケル軍の仲間になろう」──と、考えたトルグリム以下ほとんどの兵団員は武器を手に、アシェラッドと王子の乗るソリを取り囲む。

 

アシェラッド「色気出すんじゃねぇよ、チンピラども。抜けたいヤツぁ、黙ってそこの川でケツ洗ってトルケルの前に並べりゃいい。それで済む話だろうが」

 

トルグリム「は。トルケルのご所望は王子のケツだ。なぁアシェラッド。長い付き合いだ、ころしたくない。王子を置いて消えてくれ」

 

話すトルグリムの背中越し、ぞろぞろと丘を下ってくるトルケル軍がアシェラッドには見えている。その足音すら響いてくる。

 

今回のテーマは「アシェラッドが囚われているもの」。でもじつは最大のテーマは「混戦・混乱。修羅場の連続!」でしょう! ハラハラドキドキ笑いもあって、超絶面白い回です!

前回は、ラグナルの死に直面したクヌート王子がへたり込み、トルケル軍が追撃してくるのを知ったアシェラド隊が夜にも関わらず慌てて逃げ出すという話でした。さらにトルグリム主導でアシェラッド隊が仲間割れから崩壊に向かうという、おまけつき。それを受けた今回は、アシェラッドにとって厳しい現実が待っています。

 

第8話「海の果ての果て」の回でアシェラッドが言った「人間は、皆なにかの奴隷だ」という言葉。この言葉の意味をさらに分かりやすく印象づけてくれたのが今回のエピソードです。これまで観てきたように、アシェラッドは古ブリタニアの軍神アルトリウスの直系の子孫です。その血故に、いつかブリタニアを復興したいと願うウェールズのために尽くしたいと考えています。

 

これがアシェラッドが囚われているもの。アシェラッドが強くそう願うに至った経緯が今回、明らかになります。ついでに、トルフィンが囚われているものも強く印象づけてくれます。トルフィンは父・トールズの復讐に囚われていますね。これがもう見事に! ものすごく分かりやすいエピソードとして見せてくれます。それはもう笑えるほど分かりやすい!

 

──と、一応今回のタイトル「仕えし者」にリンクした「テーマ」らしきものはあるものの、その実、今回の最大のテーマは「ぐっちゃぐっちゃに混戦した面白さ!」ですよね! アシェラッドの知恵の絞り方、トルグリムの小者っぷり、ビョルンの男気、トルケルの戦闘狂っぷり、そしてトルフィンのおバカっぷりも・・・それぞれのキャラがそれぞれの考えに則って動いた結果、見事に面白いシナリオになってます。

 

難しいこと考えず、ただただワクワクしながら視聴するのが正しいかと!

 

 

西日射す馬小屋のなか。藁に横たわる女性の口に、少年がスプーンでスープを運んでいる。少年はまだ10歳前後の、あどけなさを宿したかつてのアシェラッドだった。

 

アシェラッド「アヴァロン? それって土地の名前?」

 

リディア「そう、楽園の名です。偉大なる祖アルトリウス公は、かの地におられます」

 

アシェラッド「でも母さん。アルトリウス公って、大昔の将軍なんでしょう? 今も生きてるの?」

 

リディア「アヴァロンは、西の大海の遥か彼方。妖精たちの住む、常春の島です。そこは現世の死や老いとは無縁の世界。あの方はそこで、戦の傷を癒しておられるのです。傷が癒えれば、アルトリウス公は、わたしたちの元へ戻って来てくださいます。わたしたちを苦しみから救うために

 

母親のリディアは食べるよりもアシェラッドに話す方が大切な様子。アシェラッドがスープの椀を脇に置くと、すかさずネズミが食べに寄ってきた。

 

リディアそのときがきたら、そなたは公にお仕えしなさい。あのお方こそ、まことの王にして戦士。あのお方の知恵となり、剣となりて、いつの日か──

感想&考察1、アシェラッドが囚われているものの正体はこれか!

▲「そのときが来たら、公にお仕えしなさい」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

アシェラッドは並外れた知恵と強さを併せ持つ人物です。それもそのはず。アシェラッドはかつてケルト人を指揮しサクソン人の侵入を打ち破った英雄アルトリウス公の子孫なのだから。アシェラッドは、いつか母の故郷ウェールズのために働きたいと考えています。それがアシェラッドが囚われているもの。

 

だから「アシェラッドは自らの血脈の奴隷」と、これまで考えてきましたが、じつはもっと分かりやすい切っ掛けがあったんですね。それは、愛する母が残した呪縛のような言葉でした。

 

リディアそのときがきたら、そなたは公にお仕えしなさい。あのお方こそ、まことの王にして戦士。あのお方の知恵となり、剣となりて、いつの日か──

 

だから、アシェラッドは「まことの王」、「まことの戦士」を探し、自らが頂いた主に仕えることをずっと望んでいるのです。自分は海賊の首領止まりと考えていて、自分がそれ以上の大物になろうとしないのですね。

 

かつて見出したまことの戦士=トールズには死に逃げられてしまい今ようやく見出したまことの王になれるかも知れないクヌート王子に執着するのは、そういう理由だったわけです。

 

アシェラッドの行動の理由が深いところで理解できました。なるほどこれなら「血の奴隷」なんて目に見えないものに縛られるよりも、ずっと説得力があります。アシェラッドは「母の言葉の、願いの奴隷」だったわけです。

 

しかしリディアさま──おいたわしい・・・。その痛々しい姿が、よけいにアシェラッドの気持ちを強くさせたのでしょう!

 

アシェラッドがトルグリムがビョルンがトルフィンが──もう、ぐっちゃぐちゃ!

 

裏切り者の手下たちに取り囲まれたアシェラッドは、ふとかつての母親の言葉を思いだしていた。それからやおら、ふぅ~、と、長い息を吐き落し、「お別れに、話してもいいかなぁ」と前置いた。

 

アシェラッド「おまえらとは今日まで、本当に長い付き合いだった。ともに笑い、ともに呑み、ともに多くの修羅場をくぐりぬけてきた。今まで話したことはなかったがなぁ、オレぁ、おまえらと過ごしてきたこの10数年間、おまえらのことが心底嫌いだった

 

神妙な顔で聞き入っていたトルグリムもアトリも、思わず「えっ?」と驚きの声を上げる。アシェラッドはとうとうと続ける。

 

アシェラッド豚にも劣る暗愚なデーン人どもよ

 

言うや、アシェラッドは前に立つ男の首を勢いよくはねた。

 

トルグリム「くそっ、王子を抑えろ!」

 

号令に数人の男が動いた。「トルフィン!」アシェラッドの声に呼応してトルフィンが投げナイフを投げつける。「ガキどもつかまってろ~、飛ばすぜ!」大声で叫んでビョルンは2頭の馬にむちをくれた。

 

トルグリム「くそっ。読んでやがった! 追え、逃がすなー!」

 

トルグリムの声に応じて10人ほどが馬にまたがり王子のソリを追う。アシェラッドは手近な斧を死体から引き抜くと、馬で走り去る者たちに投げつけた。一人が斧を受け絶命する。しかし他の者たちは「構うな、行け、行け~!」と、止まる気配はない。

 

アシェラッド「チッ。さすがオレの手下、状況判断が的確だぜ──さてと。参ったねこりゃぁ。日頃の信心が足りなかったようだな」

 

王子が乗るソリと追手たちを見送ったアシェラッドはマントを脱ぎ棄てた。目の前には裏切り者の手下が50人ばかり。遠くには丘を下ってくるトルケル軍が見えている。

 

▲「オレさま抜きで喧嘩を始めるとはけしからん!」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

トルケルの方でもアシェラッドたちを目で捉えている。そしてその様子に異変を感じた。

 

トルケル「んん~? 遠くてよく見えねぇけど、なんか揉めてんな、あいつら!」

 

アスゲート「仲間割れだろう。こういうときにはよくある話さ」

 

トルケル「ぬぅ~じつにけしからん! オレさま抜きで喧嘩を始めるとは!

 

両手に戦斧を携え「混ぜろ―混ぜろー!」と、トルケルはぴょんぴょん跳ねながら先を急ぐ。「あ、そういうこと?」と、アスゲートは拍子抜けしたのか感心したのか──。

 

▲「そう言われて止まるバカだと思うのかよ!? このオレが!」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

一方、王子を乗せたソリの御者をつとめるビョルンは──。

 

ビョルン「なにしてんだ。やれ、トルフィン。ナイフ投げろー!」

 

トルフィン「うるせぇ、投げナイフは売り切れだ! くそっ、アシェラッドが来ねぇ。なにやってんだあのハゲ!」

 

馬に乗り追ってきている者にはアトリもいる。

 

アトリ「止まれビョルン、話を訊け!」

 

ビョルン「そう言われて止まるバカだと思うのかよ!? このオレが!」

 

アトリ「よく考えろビョルン。王子の使い方にオレら全員の生き死にがかかってるんだぞ」

 

追手「無駄だアトリ。ビョルンはアシェラッドの1の子分だ。説得はできねぇ。やるしかねぇんだ!」

 

ニヤリと笑ってビョルンは答える。

 

ビョルン「おうよ、よく分かってんじゃねぇか。アシェラッドはオレを信じて王子を預けた。そのオレから王子を奪うなら、しぬ気で来い、腰抜けども! ──あーあー、だから! 直接オレに来いっつってんの。馬やめろ馬は! こけるぞぉ!」

 

追手の一人がビョルンが駆る馬の頭に斧を入れた。そのとたん、ソリは横転して積み荷も王子も神父も、ビョルンもトルフィンも、ともに宙に投げ出された。と同時にトルフィンはアトリを蹴落として馬を奪い、猛然と引き返していった。

 

 

雪に埋もれながらもなんとか王子が生きていたのを確認すると、追手たちは「よぉし引き返すぜー」と、声をかけた。そこに横転したソリの下から現れたのがビョルンだ。

 

ビョルン「やってくれるじゃねぇか、このドサンピンども!」

 

追手「ちっ。てめぇも生きてたかビョルン」

 

ビョルン「まとめて来いよ、団体でヴァルハラまで案内するぜ!」

 

ビョルンは毒々しい色をした戦士のキノコを口に入れた。

 

アシェラッド、渾身の時間稼ぎ

 

アシェラッドは多勢を相手に一人で踏ん張っている。周りにはまだかなりの人数が残っている。

 

アシェラッド「やれやれ、年は取りたかねぇもんだ。このアシェラッドさまが、たかが50人の包囲を抜けられんとはな」

 

アシェラッドの脳裏にまた母リディアとの約束が蘇る。それを糧に、アシェラッドはもうひと踏ん張りと剣を振るう。

 

アシェラッド(待つんだ、脱出の好機を。──もうすぐトルケル軍が来て、大混乱になる)

 

接近戦では不利とみた裏切り者たちは、弓でアシェラッドに狙いをつける。まだ死ぬわけにいかないアシェラッドはトルグリムに話しかける。

 

アシェラッド「トルグリム、仕切ってんのおめぇか?」

 

トルグリム「だったら何だ、しにぞこない!」

 

アシェラッド「いいのか? さすがのオレもしんじゃうぞ?」

 

トルグリム「知ったことか!?」

 

アシェラッド「ビョルンとトルフィンは手練れだ。追手を返り討ちにするかもよ? そうなったら、王子確保のためにオレが必要だろ。オレを人質にしておけばビョルンのヤツぁ、オレと王子を交換するために必ず戻ってくる。オレが生きていればの話だがな

 

悩んだ末、トルグリムは射手に足を狙わせた。矢が放たれる瞬間、盾に飛びついたものの、結局アシェラッドは足と腕に矢を受けた。雪に転がるアシェラッドにトルグリムが歩み寄る。

 

トルグリム「らしくないぜ、アシェラッド。あんた、そんな必死な男じゃなかったろう。いつもなら、勝ちの薄い戦からはさっさと手を引くだろうが。なんであんな腰抜け王子のために命をかけるんだ。褒美と一緒に墓穴に入るつもりかよ」

 

痛みに耐え、大きくあえぎならもアシェラッドは身体を起こし、剣を杖に立ち上がる。

 

アシェラッドオレはもう年でな。満足に働ける時間は残り少ねぇ。さすがにもう、待てなくなったのさ。まことの王がアヴァロンからお戻りになられるのをな

 

トルグリム「わけの分からんことを。もういい、ふん縛れ」

 

しかしトルグリムの隣にいた者たちは動かない。「おい、どうしたんだ──」と、トルグリムが隣の者に視線をやると、3人がそろって背中に矢を受け倒れた。トルケルが到着したのだ。

 

感想&考察2、いやいやいや! もう面白すぎでしょう!

▲脚に矢を受け、よろよろ立ち上がるアシェラッド 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

母との約束を果たすため、アシェラッドはこんなところで死ぬわけにはいきません。なんとかこの大ピンチを凌ごうと知略を巡らします。

 

アシェラッドのやるべきことは、まず王子を逃がすこと。そのため「おまえらのことが心底嫌いだった」「豚にも劣る暗愚なデーン人どもよ」と、焚きつけしっかり自分に注目を固定させています。それからやおら馬ゾリが発車。10人ほどが追いましたが、ビョルンとトルフィンがいれば王子が捕まることはないでしょう。

 

次にやるべきことは、50人余りの元手下の包囲網をやり過ごしアシェラッド自身が生き延びること。全員を一人で斬り倒すにはムリがあるし、こんな平原の真ん中では隠れる場所もない。頼みの綱は、造反者たちの背後から迫るトルケル軍です。トルケル軍が追いつけば、大混乱になること必至です。アシェラッドはそこに賭けました。

 

弓で狙われたアシェラッドが持ち出したのが渾身の懐柔策。トルグリム相手に、いかに自分の命に使い道があるか話して訊かせます。

 

アシェラッド「ビョルンとトルフィンは手練れだ。追手を返り討ちにするかもよ? そうなったら、王子確保のためにオレが必要だろ。オレを人質にしておけばビョルンのヤツぁ、オレと王子を交換するために必ず戻ってくる。オレが生きていればの話だがな

 

これを聞き、それまでアシェラッドをころすつもりだったトルグリムは、射手に足を狙うよう指示します。でもね~、これトルグリム騙されてますよね。だって、王子の護衛はビョルンとトルフィンのたった二人。50人いればなんとかなりません? しかも背後から迫るトルケル軍500人がついていれば、アシェラッドとの交換なんて持ち出さなくても何の問題もありません。

 

でも、なんとか自力で王子を奪還したいトルグリムは目の前しか見えていません。頭の中からトルケル軍の存在が抜け落ちています! そのおかげで、アシェラッドは命拾いしましたね。まぁ、5~6本、矢を受けちゃいましたけど。

 

──で、アシェラッドの時間稼ぎが功を奏して、ついにトルケル軍の到着です!

 

「アシェラッドに手を出すなー!」必死の形相のトルフィン参上!

 

2本の指を欠いた右手を振りやってきたトルケルは、ひどく機嫌良さそうに言った。

 

トルケル「よぉ、楽しんでるかい、お兄さんたち。首領のアシェラッドっちゅうのはどいつだい? ぜひお目にかかりたいんだが」

 

トルケルの出現に、トルグリムたち造反者は武器を投げ捨て両手を挙げた。

 

トルグリム「オレはトルグリムってんだ。抵抗はしねぇ。話しを訊いてくれ。オレたちはあんたに王子を引き渡そうと思ってたんだが、こいつ、首領のアシェラッドが王子を逃がしちまって。だが、安心してくれ。手練れを10人、追手に出した。とにかく王子のことは、オレらに任せてくれ。オーディンの名にかけて──」

 

最初はトルグリムの話を訊いていたトルケルだが、途中から興味を失ったらしく、鼻をほじり始めた。あっち行けと言わんばかりに手でトルグリムを払うと、トルケルはアシェラッドの前にしゃがんだ。

 

トルケル「あんたがアシェラッドか。なかなかの知恵者のようだな。──ところで、トルフィンが見当たらねぇんだけどさ。あんたが斬っちまったのか?」

 

アシェラッド「斬っちゃいねぇよ。あいつは王子の護衛につけた。この反乱には加わってねぇ」

 

「そうかい、それを訊いて安心したぜ」と、トルケルはニタリと笑う。それからやおら立ち上がり、大声で部下に告げた。

 

トルケル「よぉし。待たせたな、チンピラども。アシェラッド以外は、やってよーし!」

 

トルケル軍の部下たちは、造反者たちに武器を拾うように言う。いわく「おめぇらのために言ってんだぜ。丸腰でしんじゃ、ヴァルハラに行けねぇだろうがよ」と。

 

トルグリム待て、待てトルケル。オレたちをころしたら、王子は手に入らねぇぞ

 

トルケルうん、大丈夫。自力で捕まえるから──ほい、おまえの斧。かかって来いよー。戦士ならスカッと気持ちよくしんでみろ。諦めろ、トルグリムよ。おまえはもうしぬんだよ。絶対にしぬんだよ。だったらカッコよく戦ってしのうや。なぁ!? 手伝ってやるからさ!」

 

トルケルのあまりの迫力に、トルグリムは立ったまま気絶してしまったようだ。

 

▲馬に乗ったトルフィンがアシェラッド救出に参上! 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

そこに、1頭の馬が乱入してきた。トルフィンだ!

 

うぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 

大声で叫びながら必死の形相でやってくる。トルケルは「トルフィン!」と嬉しそうに言い、迫るトルフィンの馬の胸にアッパーパンチを入れる。馬はひっくり返り、宙に投げ出されたトルフィンはくるりと回って雪に着地した。

 

トルフィンアシェラッドに手を出すなー! そいつは、オレの獲物だ。指1本でもそいつに触れたらころすぞ。分かったかデカブツ! そいつに触れたらころーす!

 

アシェラッド「バ・・・バカだと思ってたが──」

 

あきれるアシェラッドの前に立つトルケルは、トルフィンの言葉に納得が行かない。

 

トルケル「ん? 獲物? おまえのボスだろ、こいつ?」

 

トルフィンボスじゃねぇ! アシェラッドをこっちに渡せ、渡さなきゃころす

 

トルケルまじ? じゃぁ、渡さねぇ~! 聞いたか! 今アシェラッドの身柄をかけて、オレとトルフィンの決闘が成立した。おまえたちが証人だ!

 

「ネズミがクマに喧嘩売ってる」「言うだけでも大したもんだ」とささやきあってきたトルケルの部下たちは、もうすっかりアシェラッド兵団の造反者を倒し切っている。そこに宣言されたアトラクションに、そろって歓声を上げる。

 

トルケル「トルフィン、おまえが勝ったら無事に逃がしてやろう。馬もおまけにくれてやる」

 

トルフィン「けっ。ロンドンのときみてぇに行くと思うなよ」

 

トルケル「おう、期待してるぜ。トールズの息子。戦士の一族の末よ!」

 

トルフィンはマントを脱ぎ去り、両手に短剣を構える。トルケルvsトルフィン、2度目の一騎打ちが始まる!

 

感想&考察3、ここ、笑うとこです!

▲「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

クヌート王子を手土産にトルケルに投降しようと目論んでいたトルグリムたち。その目論見は見事に外れました。理由は──トルグリムがトルケル及びトルケル軍を見誤ったことにあります。「クヌート王子を差し出せば、きっとオレたちは温かく迎え入れてもらえるはず!」この作戦がそもそも大誤算だったのです

 

トルケルの尋常じゃない強さ+クマみたいに強いトルケル軍500人です。4000人のラグナル隊を壊滅させクヌート王子を捕虜にした実績のあるメンツです。追いつきさえすれば自力で王子を奪還できるのは当然! だからここは、アシェラッドの言う通り「逃げ」の一手なんですよね。

 

ましてや、どうして自分たちが温かく迎え入れてもらえるなんて思ってしまったのか──裏切り者がそう簡単に信用してもらえると、どうして思い込んでしまったのか。ここいらが、トルグリムの浅はかなところですね。造反者のリーダーになれても、アシェラッドのように首領を張れるほどの力量はないってことです。

 

そしてトルフィン乱入!

 

トルフィンアシェラッドに手を出すなー! そいつは、オレの獲物だ。指1本でもそいつに触れたらころすぞ。分かったかデカブツ! そいつに触れたらころーす!

 

もの凄い形相で口汚く叫ぶトルフィン。アナタ本作の主人公ですが・・・まぁ形相が凄まじいのも言葉遣いが悪いのもホントいまさらですけど・・・。しかしここ、あっけに取られたり、吹き出しそうになった人いっぱいいるでしょうね!

 

トルフィンの真っ直ぐな必死さと、「バ・・・バカだと思ってたが──」とあきれ顔のアシェラッドと、「獲物?」と、きょとんとするトルケルと──。このあたりの三者三様のリアクションが面白くて面白くて! ここ、大笑いするとこですよね!

 

感想&考察4、この決闘の行方は?

▲怒涛の流れでトルケルとトルフィンが決闘することに! 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

なんかもの凄い流れで、トルケルvsトルフィンの決闘が成立してしまいました。前回のロンドンでの一騎打ちでは、トルフィン惨敗してましたよね。隙を見て逃げ出すしかできなかったくらい、トルケルは強かった。今度は足場の悪い雪上での決闘です。トルフィンには不利なように見えますが──。

 

トルフィンが勝てば、馬付きでアシェラッドを逃がしてもらえる。クヌート王子はさすがに取られちゃうかな? トルケルが勝てば、クヌート王子もろとも、トルフィン、アシェラッド、ビョルン、ついでにヴィリバルド神父もトルケルの捕虜になりそうです。

 

盟友トールズの息子だし、トルケルのお気に入りだし、トルフィンをころさないと思う・・・まぁ主人公だし。アシェラッドは使い道がありそうだから捕虜にしそう。アシェラッドおさえておけばトルフィンもくっついてくるしね。クヌート王子と神父の身柄は安全として、心配なのがビョルンです。なんとかビョルンもお願いします!

 

ここでトルフィンが勝って逃げたとしても、深手を負っているアシェラッドを連れて逃げ回るのは厳しいでしょう。トルフィンには面白くない展開でしょうが、負けて捕虜になる方が良さそうです。

 

でも当のトルフィンは、負ければクヌート王子と神父以外はころされると思っているだろうから──ここは全力でトルケルを倒しに行くの一択ですね! お互い、あまりひどい傷を負わずに決闘が終わるよう祈ってます!

 

感想&考察5、この流れなら、アシェラッドとトルケルの会話が成立するかも!

トルケルは、アシェラッドの頭の良さを知っています。よく話してみれば、どうやらアシェラッドの目的は、第15話でトルケルが言っていた「あの王子は腰抜けだけど、使い道はあったんだよなぁ。あれを担ぎ上げて新王朝を旗揚げとかよ。兵隊集めるだけでも効き目あるぜ」とほぼ同じだと気づくはずです。

 

そうすれば、めでたく二人は手を結べるはず! しかもアシェラッドには、盟友トールズの息子がくっついています。これがまた凄腕! お互いにとってwin-winの関係ですね! トルフィンにとっても、アシェラッドが自分以外の者から狙われるリスクが減るのは喜ばしいことです。3者全員が得します。

 

この流れでいけば、アシェラッドとトルケルが結託する方向に持っていけそうに思えるんですが──さて、どうなりますか?

 

感想&考察6、しかし原作者、天才でしょ!

 

うーん・・・すごい。ほんと良く練られていて違和感も無駄もない。

 

物語作品──小説でも漫画でも映画でもどれでもそうですが──読者や視聴者の興味を引くものが「ドン!」って出てくるのが、一番分かりやすい面白さです。そのためミステリー小説では「冒頭に死体を転がせ」なんて言われ方もします。

 

この分かりやすい面白さを突き詰めていくと「少年ジャンプ」に掲載されている作品のようになるわけですが・・・。「少年」には面白いんでしょうが、いい加減大人な人間は、こういう作品では物足りなくなってくる。いろいろ不整合が見えてくるからね。

 

でも「ヴィンランド・サガ」には、そういう不整合がほとんどない! 視聴者に大事なところを隠すような姑息な手段も使わないし、すべてが納得の行く展開なのに、すごく面白い! 小手先感がないんです。

 

原作者・幸村誠さんって天才でしょ! わたしは基本、漫画は読まないけれど、この方の名前はちゃんと覚えておきたいですね。絶対こだわり派の遅筆です! こんだけストーリー作れてなおかつ絵がきれいってすごい天賦の才ですよ!

 

こういう作りの作品は、内容を知っていても面白い。キャラの外見で勝負する必要もない。本当に上質な作品とは、こうあるべきですよね!

 

上記ツイッターから飛べる東京新聞の記事も、合わせてどうぞ!  あー! でも微妙にネタバレしちゃうかも! 一切ネタバレしたくない方にはおすすめしませーん!

 

おまけ1、リアル・トルフィン発見!

▲デクラーク選手──巨人の中の小人。まさにトルフィン!

 

ラグビーワールドカップ南アフリカチームでひときわ身長の小さいデクラーク選手。チビなのに、でっかい選手をタックルで倒したり、口角泡を飛ばして口論したり、ものすごい大活躍でしたね。金髪で俊敏なのもあって、もうトルフィンにしか見えませんでした。トルフィンの活躍もあり、南アフリカチーム優勝しましたねー! おめでとー!

 

おまけ2、トルケルの身長が確定!

 

想像を絶する2m30cm・・・。オソロシヤ・・・。

 

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