トルフィンの少年時代、鮮烈な幕引き!」シーズン2、第24話End of the Prologue」のあらすじと感想・考察を紹介します。2019年7月~放送の「ヴィンランド・サガ」は、1000年前の北欧を舞台にヴァイキングの生き様を描いた骨太な物語。


第24話、第1期最終回/アシェラッド、一世一代の大博打!

▲「下郎、それが王に対する口のきき方か」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

#24

End of the Prologue

序章の終幕

 

族長たちにイングランド攻略の功をねぎらう御前会議の席上。アシェラッドが褒美を授かる番となった。アシェラッドには「王子殿下救出の功績により、銀50ポンド」が授けられた。

 

スヴェン王「クヌートのために、そなたが奮戦したこと聞き及んでおる。礼を受け取れ」

 

気味の悪い笑顔を浮かべたスヴェン王が言う。「は。ご褒美、頂戴いたします」と、頭を下げたアシェラッドだが、銀50ポンドなどどうでもいい。今のアシェラッドの問題は、来春から開始されるウェールズへの侵攻を、なんとか止めることだ。

 

スヴェン王「ウェールズ討伐戦でも、活躍を期待しておるぞ」

 

アシェラッド(ちっ。やっぱり気づいてやがるのか、タヌキジジイめ)

 

スヴェン王がアシェラッドとウェールズの関係をどこまで知っているのか、それともただの偶然かと考えていたアシェラッドは、スヴェン王の嫌らしい声音で確信した。スヴェン王は、自分とウェールズの関係を知って言っていると。ここで、アシェラッドが反撃を開始する。

 

アシェラッド「王陛下、おそれながら申し上げます。この度のウェールズ討伐、果たして最良の選択と申せましょうか? 来春のウェールズ討伐、我が軍にとって益の薄い戦かと存じます。どうか、ご再考を」

 

突然のアシェラッドの提言は、クヌート王子にも予想外だった。(アシェラッド、当面は摩擦を起こさぬと言ったはずだ)。そう王子が思っていることは、アシェラッドもじゅうじゅう承知。チラリとクヌートに視線を走らせ、心の内に思う。(すみませんな殿下。ウェールズばかりは、ちょいと譲れねぇ)。

 

スヴェン王「考えを述べてみよ」

 

アシェラッド「ありがとうございます。まず、我々は10年にわたり、イングランド軍と戦ってまいりました。今は国土も人も損耗の回復に努めるべきかと。もうひとつは、ウェールズの地の険しさと、それゆえの貧しさでございます。たかがウサギを追わんがために、疲れた馬を鞭打ち、懸崖に踏み込むがごとき行いです。一口に申し上げて、ウェールズ攻略は、割に合いません」

 

フローキ「攻略ではない。不遜な者どもを放置せぬことが肝要なのだ。勘違いするな」

 

アシェラッド「さようなことがご懸念であるならば、わたしめを使者にお遣わしください。必ずや、ウェールズの者どもを説き伏せてごらんに入れましょう」

 

スヴェン王「この王に向かって、3度の礼を尽くせと申すか。そなたの言う、ウサギを相手に」

 

アシェラッド「3度なればこそ。彼らにも、王陛下の寛大なるお心が伝わりましょう。なにとぞ、お聞き入れを」

最終回のテーマは「トルフィンの送り出し」です。が、ここは「英雄死す」を真のテーマとして推したいですね!

▲英雄死す── TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

ついに最終回。今回のタイトルは「End of the Prologue」(序章の終幕)です。要は、これまでの24話分まるまる序章だったってことです!

 

今までさんざん言ってきたように、「ヴィンランド・サガ」の主人公はトルフィンですが、こと「ブリタニア編」に関しては、主役はどうみてもアシェラッドです。トルフィンは、父の死を目の当たりに心に大きな傷を負ったという部分はあるものの、それ以外はただ短剣を振り回すDQN。魅力的とは言い難い。

 

対してアシェラッドのなんと魅力的なことか!

 

複雑な出自、幼少期の育ちかた、わずか13歳で憎い父から豪族の遺産を引き継いだその手腕。海賊の首領をやりながらも、いつか故郷ウェールズを守るために身を捧げることを誓っている。剣の腕に優れ、しかも知略を得意とする。年齢が高い分だけ、深みもある。ぺらっぺらのトルフィンでは太刀打ちできない、圧倒的な主役感です!

 

今回、ブリタニア編の最終回を迎え、主役アシェラッドが本物の英雄になります。一世一代の見事な策略を、アシェラッドらしい最期を見届けましょう!

 

また今回は、たった一つの望み「父の仇を打つ」ことだけを目標に過ごしてきたトルフィンの11年間が、音を立てて崩れていく回でもあります。トルフィンの怒涛の心の揺れにも注目です!

 

「ウェールズかクヌートか選べ」

 

「なにとぞ、お聞き入れを」と、頭を下げたアシェラッドにスヴェン王が歩み寄る。「おほっ、斬るのか?」。トルケルが面白そうに身を乗り出す。その予想に反し、スヴェン王は顔に笑みを張り付けた。

 

スヴェン王「これぞ忠臣の姿よ。王に取って諌言にまさる宝はない。かように、我が軍には中庸なる者がそろうておる。これからも、力を貸してくれ」

 

かつてアシェラッドが言ったように、王は人気商売。このように衆人環視の場では、寛大な王でいたいのだろう。スヴェン王はアシェラッドに手を差し伸べ立ち上がらせ、抱きとめた。そして、ごく至近距離で本音をさらした。

 

スヴェン王ウェールズかクヌートか選べ。本心、予はウェールズなどどうでも良いのだ。クヌートの首を土産に、我が元へ来い。さればウェールズは見逃してやろう。そなたのことは少し調べた。やはり母親は奴隷だそうだな。ウェールズに固執する理由も察しがつく。かの地の産物といえば、奴隷ぐらいのものだからな

 

「奴隷」。おそらくアシェラッドがもっとも嫌う言葉だろう。愛する母を「奴隷」といい、しかもウェールズには奴隷ぐらいしか「産物」がないと、スヴェン王はウェールズと母を二重に侮辱した。さらに、クヌート王子を裏切り自分の元につけという。そのていどの人間と侮っていることを考えれば、三重の侮辱だ。

 

アシェラッドの表情が激変した。

 

一方、牢から解放されたトルフィンを迎え、レイフは上機嫌だ。

 

レイフ「どうじゃ、まだ現役バリバリだぞぉ。おまえがずーっと乗りたがってた船だ。ようやく乗せてやれるな」

 

11年前アイスランドの村でトルフィンが乗せてとせがんだあの船を、まだレイフは使っているようだった。すっかり毒気の抜けた顔でトルフィンはレイフの船に足を踏み入れる。レイフは、仲間が戻るのを待って出航するようだ。

 

杭の先にいる白い鳥に目が留まる。鳥はしばらく羽づくろいをして、ふわりと空に飛びあがった。

 

「腹もペコペコだろう。上等の干し肉があるんだ」と、レイフが振り返ったとき、そこにはもうトルフィンの姿はなかった。

 

感想&考察1、スヴェン王の笑顔がキモイ!

▲陛下・・・キモイです TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

ブリタニア編最終回の最初の感想がこれってどうよ? という気がしなくもないんですが──。スヴェン王の笑顔がとってもキモイです!

 

スヴェン王って、皮膚はたるんでいるし、顔じゅうにイボが散っているし、ぜったい肝臓やられてるでしょってくらいどす黒い顔色してるし、前歯上下合わせてかなりの数抜けているし・・・。もともとキモイ顔してるんですが、それがわざとらしい笑顔作ると、えも言われぬキモサです。

 

スヴェン王「クヌートの首を土産に、我が元へ来い。さればウェールズは見逃してやろう」

 

と言うときの「ホラ、悪い話しじゃないだろうー?」と言わんばかりのこびた笑顔がまた──ほぼ妖怪レベルのキモサ。きっと口臭もひどいに違いありません!(断言!)

 

侮辱に満ちた発言しているにも関わらず、それに気がついていないあたりも、見た目以上に中身の醜さがすけて見えます。

 

おそらく、スヴェン王のこの容貌は、視聴者に嫌悪感を抱かせるためにつくられたものなんでしょうが、そういう意味では制作陣、大成功しています。ここのスヴェン王は、マジで背筋が寒くなるほどのキモさでしたから・・・。

 

こりゃ斬られても仕方がないかなって思っちゃいました。

 

「予こそが、このブリタニアの地を統べるべき正当の王である」

▲「予こそが・・・」 TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

肩にかけられたスヴェン王の手を、アシェラッドは払いのけた。驚くスヴェン王とは対照的に、アシェラッドの目は完全に座っている。

 

アシェラッド「嫌なツラだな。こんなツラの上に、王冠が載っているなんてのは、やっぱり許せんな」

 

スヴェン王「そなた、今なんと・・・」

 

アシェラッド耳も遠いのか、このジジイは? ぶっさいくが光りモン載っけてんじゃねぇっつってんだよ! 王者のツラじゃねぇぜ

 

事ここに及び、周りの衛兵が剣を抜いた。

 

アシェラッド「動くな衛兵ども。王はオレの間合いの中だ」

 

アシェラッドは落ち着いて剣を抜き、チラリとクヌート王子に視線を走らせる。成り行きを見守っていたクヌート王子は、アシェラッドの本気を悟った。

 

アシェラッドの剣がスヴェン王の顔に突き付けられる。

 

スヴェン王「剣を収めよ。されば、この非礼は許そう」

 

アシェラッド「許す? 頭に乗るな蛮族めが! 我が一族と我が民への愚弄、万死に値する」

 

スヴェン王「最後の忠告だ。剣を収めよ、アシェラッド」

 

アシェラッド「そりゃ、あだ名だ。我が母より授かりし、真の名を教えてやろう。ルキウス・アルトリウス・カストゥース。予こそが、このブリタニアの地を統べるべき正当の王である

 

ズバリと振ったアシェラッドの剣は、スヴェン王の首を一気にはねた。王冠がはじけ飛ぶ。

 

アシェラッド「へっ。スカッとしたぜ!」

 

剣の血を払い肩にかついだアシェラッドは、残忍な笑みを浮かべて王を見おろす。「さぁて」と、アシェラッドはクヌート王子を観る。一言も発せないでいる王子は我にかえった。

 

クヌート王子であえ者ども! こやつは、王殺しの大罪人だ! 斬り捨てよ!

 

王子の声を合図に衛兵がアシェラッドに斬りかかる。

 

レイフの船を離れ、ちょうど御前会議の館にやってきたトルフィンは、窓から中を覗き込む。そこでは、アシェラッドが衛兵相手に大立ち回りの最中だ。

 

トルフィン「なにをやってんだ、アイツは? なんなんだよコレ。何やってんだ、あのバカは~!」

 

慣れ親しんだ短剣を抜きトルフィンは、アシェラッドのいる部屋めがけて走り出した。

 

「飼い犬の始末は飼い主がつけてやれよ」

▲「オレぁ知らね!」とトドメを拒否するトルケル TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

襲い来る衛兵をつぎつぎころし、悪党の顔でアシェラッドは笑う。

 

アシェラッド「はっはっは。どうした、次にしにたい者、前へ出よ! ブリタニア王が自ら斬ってしんぜようぞ」

 

クヌート王子「ひるむな、人数で押し切れ!」

 

何人かかっても衛兵がアシェラッドを仕留めることはできず、族長たちはぞくぞくと館から逃げ始めている。族長たちをかき分け、トルフィンは室内に入ろうともがく。

 

トルケルは腕を組み、うずうずした顔でクヌート王子の隣にいる。トルケルは自分がスヴェン王暗殺の任を負うと思っていたらしく、それをアシェラッドに横取りされやや拗ねている。

 

クヌート王子「こらえろトルケル。そなたの出番は、まだだ」

 

トルケル「どうでもいいよ、もうよ。血迷いやがって。オレは獲物を横取りされんのが、いっちばん嫌ぇなんだ」

 

クヌート王子あやつは血迷ってなどいない。あれは芝居だ。わたしとウェールズ、両者を救う選択を取ったにすぎぬ。乱心のフリは、王殺しの罪を一人でかぶるためだ。今少し、暴れさせてやれ。トドメはそなたに任せる」

 

王子の言葉で、ようやくトルケルもアシェラッドの魂胆を理解した。唇を噛んでアシェラッドを見やると、ふいと王子の側を離れテーブル席に座ってしまった。

 

トルケル「オレぁ知らね! アイツはおまえの手下だろうが。飼い犬の始末は飼い主がつけてやれよ

 

はっとクヌート王子が目を見開いた。

 

「ふっ。上出来だ」

▲血を吐き倒れるアシェラッド TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

肩にかけたトーガを真っ赤に染め、アシェラッドは豪胆に笑っている。

 

アシェラッド「わっはっは。どうした、デーン人ども!」

 

「アシェラッドー!」。叫びながらフローキが襲い掛かる。

 

フローキ「きさまー。なにをしたのか分かっておるのか。王をころしたのだぞ」

 

アシェラッド「なにを申すか。予はここに健在であろう」

 

フローキ「黙れ、奴隷の子めが!」

 

アシェラッド「下郎、それが王に対する口のきき方かー! ひざまづけー! きさまには予の靴に口づけする栄誉を与えてやろう。そしてしねー!」

 

両手を柄にかけ、渾身の力をこめフローキの剣を押すアシェラッド。そこに、ようやくトルフィンがたどり着いた。

 

トルフィン「アシェラッドー!」

 

アシェラッド「来るなトルフィン!」

 

その瞬間、トルフィンの動きが止まった。

 

アシェラッド「人を刺したのは初めてか? 王子」

 

クヌート王子の剣がアシェラッドの左胸に刺さっている。それまでの激しさを引っ込め、アシェラッドがクヌートに問うた。クヌートは一言も発せないまま、肩で息をついている。

 

アシェラッド「ふっ。上出来だ」

 

クヌートの剣を引き抜き、アシェラッドは静かに言うと、血を吐いて倒れた。その身体をトルフィンが両手で受け止める。

 

トルフィン「おい、アシェラッド!」

 

騒ぎが収まったのに気づいた族長たちは、部屋の中を振り返る。「やったのか?」「殿下だ!」「殿下が!」。口々にどよめきと歓声がわき起こる。見届けたトルケルは静かに立ち上がると、ふらつく王子を背中から支えた。

 

トルケル「しゃんと立ってろ。ここが肝心だろうが。おまえのための舞台だ。無駄にするなよ」

「ずっと先へ、トールズの行った世界のその先へ、トールズの子のおまえが行け」

 

静かに横たわるアシェラッドの隣では、トルフィンがギャーギャー喚いている。

 

トルフィン「おぉいハゲ! なに悠長に寝てやがんだテメェ。くそ。あぁ、くそったれ! 面倒なとこ刺されやがって、バカやろうが!」

 

アシェラッド「たくぅ。うるせぇなぁ。ちったぁ休ませろや」

 

トルフィン「てめぇ、さっさと立て。こっから逃げっぞ!」

 

右腕を抱えて引っ張るトルフィンの手を払い、アシェラッドは「バカ」と笑う。

 

アシェラッドとっととやってくれよ。待たせて悪かったな。くれてやるよ、オレの命

 

何を言い出したのか分からなかったトルフィンは、「くれてやるよ、オレの命」と言われてようやく気付いた。「仇討ち」を促しているのだ

 

アシェラッド「やれよ。オレとおまえは敵同士だろうが」

 

トルフィン「しぬのか? おまえが」

 

アシェラッド「早くしろ。時間がねぇぞ」

 

トルフィン「なめてんのか、てめぇ」

 

アシェラッドの胸倉をつかんで引き上げ、トルフィンはわめきたてる。

 

トルフィン「こんなんじゃねぇだろー! オレとてめぇの決着は! こんなんじゃねぇ! 許さねぇぞ。勝手にしぬんじゃねぇ。立て、今すぐオレと決闘しろ! てめぇを倒すのはオレだーーー!」

 

掴んだ胸倉を揺さぶるたび、身体の下の血だまりが広がってゆく。目の前で必死に叫ぶトルフィンの顔がぼやけてくる。アシェラッドは「たくぅ。ガキはこれだから参るぜ」と呟く。

 

アシェラッド「おまえ、どう生きるつもりだ。これから先、オレがしんでからこの先、どう生きるつもりだ、トルフィン。へへ・・・なにも考えてなかったんだろう? いいかげん先へ進めよ。いつまでもこんな、クソくだらねぇとこに引っかかってねぇで、ずっと先へ、トールズの行った世界のその先へ。トールズの子のおまえが行け。それがおまえの、本当の戦いだ本当の戦士になれ、トールズの子

 

ガクリとアシェラッドの首から力が抜けた。

 

これまでの11年が、父の短剣とともに床に落ちる

 

剣を握り締めていた指をもう片方の手で1本、1本広げ、クヌート王子は剣を床に落とした。一度大きく息を吸いこんでからトルフィンに声をかける。

 

クヌート王子「トルフィン、許せとは言わぬぞ。この成敗は、そやつが突如乱心し、王陛下殺害という大罪を犯したためだ。だが、こうなってはもはや、わたしの下で働く気などあるまい。望むところへ去るがいい」

 

焦点の定まらぬ目で振り返ったトルフィンは、いきなりクヌートに飛び掛かり剣を振るった。一瞬早くトルフィンの気配に気づいたトルケルが取り押さえる。「ころせー、こいつは逆賊だー」と、衛兵や族長たちが走り寄り剣や槍を向ける。

 

クヌート王子「やめろー! そやつはころすな! 下がれ。そやつの処分はわたしが決める──トルケル、もうよい。斬られるくらい、安い代償だ」

 

フローキ「殿下、奥の間にておケガの手当てを。この場はわたくしにお任せください。お連れしろ!」

 

クヌート王子「フローキ、先王亡き今、イングランド方面軍の総大将は誰と心得ておる。どうした、申してみよ」

 

クヌートは、床に転がるデンマーク王の冠を拾い上げ、自らの頭に載せた。

 

クヌート王子者ども、訊くがよい。先王スヴェン陛下はお隠れになった。ただいまより、全軍の指揮およびイングランド統治は、このクヌートが代行する

 

壇上に駆け上がったクヌート王子は、高らかに宣言した。トルフィンに斬られた左頬から血が滴っている。トルフィンを囲んでいた者たちは、武器を床に置き、そろってかしづいた。

 

クヌート王子ウェールズ討伐は取りやめだ。先王の死により、イングランド軍残党の蜂起が予想される。まずはそれに備えねばならぬ。報奨授与の続きなどは、追って沙汰する。以上、解散せよ」

 

必要事項を伝達したクヌートは退室し、トルケルもため息を残して退室した。部屋の真ん中に横たわるアシェラッドが諦められず、父の短剣を握り締めたまま呻くトルフィンは、大勢に取り押さえられ外に引っ張り出されている。

 

ふと、父の短剣が手を離れる。

 

ヘルガ、トールズ、若き日のレイフ。ロングシップ、アシェラッド、クヌート王子・・・トルフィンのこれまでの11年間が短剣の刃に宿り、床に落ちた。

 

 

連なる雪の峰、海岸に何かを描く少女の後ろ姿、嵐の海を行く帆船。帆船の甲板に立つ無精ひげの青年は、真っ直ぐ前を見据えている。

 

感想&考察2、アシェラッド、最後の博打に大勝利!

 

いやいやいやいや・・・。もう息もつかせぬ展開で、途中に感想入れるのも難しかったんですが。まず、アシェラッドは一世一代の大博打に勝ちましたね!

 

王様は人気商売のため、スヴェン王は大っぴらに子ごろしをすることができません。同様に、クヌート王子も親ごろしをすることができません。たとえ黒幕がクヌートでも、必ず他の者がスヴェン王殺害の汚名を着る必要がありました。その汚名を、なんとアシェラッドが自分から買って出ました!

 

これは意外でした!

 

前回の最終回予想でも書いたように、スヴェン王暗殺とそのスケープゴートがアシェラッドになることは予想していました。でも、あらかじめしっかり計画を練り、最終的な手違いがあってアシェラッドが罪をかぶるよりほかなくなってしまうような状況になるのかな~と、考えていたんですが。実際は、それより遥かに分かりやすくて面白い展開でした!

 

スヴェン王の侮辱に耐えかねたアシェラッドが、ここでカタつけようと、一気に王の首を落としたんですから!

 

しかし、クヌート王子が察しが良くて助かりました。ちゃんとアシェラッドの目論見を見抜き、自分の役割を演じ切りました。トルケルの「飼い犬の始末は飼い主がつけてやれよ」という指摘も良かった。トルケルにトドメを刺させるのではなく、クヌート自身がトドメを刺すことで次期国王はクヌートだという説得力と求心力の源になりますから。

 

ウェールズへの進軍を取りやめる口実は、簡単でした。

 

クヌート王子ウェールズ討伐は取りやめだ。先王の死により、イングランド軍残党の蜂起が予想される。まずはそれに備えねばならぬ

 

なるほど、たしかにそうです。説得力があります。

 

なにはともあれ、クヌート王子は最高の状態で次期イングランド王に即位できそうです。アシェラッドもまた、命を落とす結果になったけれど、ウェールズの地を守ることができました。心残りはないでしょう。

 

常に綱渡りの人生だったアシェラッドらしい最期でした。最後の最後、大博打に勝利して旅立ちました。きっと心の中では高笑いしていることでしょう。

 

感想&考察3、アシェラッドの行く先はアヴァロン

 

次に、最後の最後に明かされたアシェラッドの本名について。

 

アシェラッドの本名は「ルキウス・アルトリウス・カストゥース」。デーン人の父親は名を与えなかったけれど、母が名前をつけてくれていたんですね。しかも、伝説の「アルトリウス公」と同じ名前です。これはアシェラッド、重かったでしょうね・・・。

 

500年前の伝説の英雄と同じ名を与えられ、くり返しアルトリウス公がアヴァロンからお戻りになったらお仕えして、ウェールズに平和をと母親から言われ続けて育ったのだから。

 

海賊の首領をやっていても、常に母の願いに囚われ、本名から逃れることができず。祖先の英雄アルトリウスは彼の誇りであり、同時に英雄と同じ自分の名は彼を縛る。アシェラッドなら何者にもなれただろうに、結局、祖国のために命を捧げる道を歩んでしまった。ついには、デンマーク王の首をはねるという芝居まで演じる羽目に。

 

その結果、アシェラッド(アルトリウス)は祖国を守ることができました。またしても英雄アルトリウスはウェールズを救ったのです。

 

きっと、アシェラッドの行く先はアヴァロン。ヴァルハラではありません。ビョルンとは会えないのかもね・・・。

 

感想&考察4、アシェラッド最期の言葉

▲「本当の戦士になれ、トールズの子」 TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

命をかけて主君クヌート王子とウェールズの両方を救ったアシェラッドですが、もう一つ心残りがありました。それがトルフィン。

 

決闘をエサに6歳~17歳までの11年間、寝食を共にしてきたトルフィンは、アシェラッドにとり特別な存在だったと思います。

 

まず自分が主と頂いてもいいと思うほど惚れ込んだ男・トールズの息子です。アシェラッドがその剣の腕前以上に信頼しているのが、トルフィンの戦士としての誇り。そこに、人間としての信頼を置いています。明らかに他のデーン人たちとは一線を画していました。そういう意味ではビョルンも信頼していましたね。

 

トルフィンの実力に合わせた仕事を与え、少しずつ厳しくしていたあたり、口にはしないけれどアシェラッドは考えながらトルフィンを育てていましたね。きっとトルフィンは飲み込みのいい、可愛い子どもだったことでしょう。

 

自分の最期を悟り、アシェラッドは目の前のトルフィンの行く末を心配しています。

 

アシェラッドおまえ、どう生きるつもりだ。これから先、オレがしんでからこの先、どう生きるつもりだ、トルフィン。へへ・・・なにも考えてなかったんだろう? いいかげん先へ進めよ。いつまでもこんな、クソくだらねぇとこに引っかかってねぇで、ずっと先へ、トールズの行った世界のその先へ。トールズの子のおまえが行け。それがおまえの、本当の戦いだ。本当の戦士になれ、トールズの子

 

これが本当の本心でした。ということは、ビョルンを送った後の決闘でトルフィンを殴り倒したアシェラッドが言い放った言葉

 

「トルフィン、10年以上かけてオレ一人倒せないおまえは、ボンクラだって話しさ

 

茶番みてぇな決闘に付き合ってやるだけで、あのトルケルにまで、ホイホイ挑んでいくんだもんなぁ。便利なガキだよ、おまえは

 

これらは本音であって本音でない。要はもうこんな殺伐とした世界から足を洗えと言いたかったのでしょう。そう決心させるための挑発だったのです。

 

アシェラッドは分かっていたんですね。「本当の戦士」とはなにかが。剣で斬り合うニセモノの戦士の世界から、本物の戦士の世界へ。最後の最後に、心からの言葉でトルフィンを送りだしました。

 

このセリフ、なかなか泣けます。

 

感想&考察5、シンボリックな二つのシーン

▲形見の剣に映るトルフィンの過去 TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

最終回の後半には、とてもシンボリックな映像が2つありました。ひとつはしにゆくアシェラッドの胸倉をつかんでわめくトルフィンの姿。もうひとつは、剣を手放すシーンです。

 

アシェラッドの死を受け止められず取り乱すトルフィンは、かつてトールズの死を受け止められず泣きじゃくっていたトルフィンの姿と同じ、白背景で描かれていました。それほど、アシェラッドはトルフィンにとって大きな存在になっていたのですね。

 

かたきと毒づきながら11年。アシェラッドとは常に寝食をともにしてきました。アシェラッドは強く、何度挑戦しても決闘に勝てません。そんなアシェラッドを助けるために、トルフィンはあのトルケルとすら決闘を演じ、今また敵だらけの真ん中にいるアシェラッドに駆け寄りました。

 

思わず出た言葉が涙を誘います。

 

トルフィンおぉいハゲ! なに悠長に寝てやがんだテメェ。くそ。あぁ、くそったれ! 面倒なとこ刺されやがって、バカやろうが!

 

あのアシェラッドがしぬわけがないと思っているんですね。刺されているのは左胸です。「面倒なとこ」です本当に。でも、必ず元通り元気になると信じているんですね。

 

「本当の戦士になれ」という言葉を残してアシェラッドが逝って、もうわけが分からなくなったトルフィンは父の形見の短剣を床に落とします。その短剣には、これまでの17年間が宿っています。楽しかった幼少期、トールズの仇討ちのためアシェラッド団に入り過ごした日々。それをトルフィンは手放しました。

 

ここは、トールズが海中に剣を捨てたときの映像にオーバーラップします。筋道は違うけれど、ようやくトルフィンはトールズと同じ剣をもたずに戦う「本当の戦士」を目指すことになる、シンボリックな演出ですね。

 

感想&考察6、怒涛の序章が終わり、ようやくトルフィンの物語が始まる

 

本当の父・トールズと育ての父・アシェラッド。強く、賢い二人の父から「本当の戦士になれ」と諭されたトルフィンは、ようやく自分自身の物語を紡ぐことになるようです。

 

なんと24話を費やしたここまでが、壮大な序章だったようですね! 序章とは信じられないほど面白い序章でした。この先、いつか成長したトルフィンが、王となったクヌートや、遠い親戚トルケルと会うことはあるんでしょうか?

 

一番最後に映された茶色の髪の無精ひげの青年が、たぶん成長したトルフィンなのでしょうね。第2期は確定だと思いますが、いったいいつになるのやら? WITスタジオは、進撃の巨人も制作していますから、最低でも進撃の巨人の後になると思いますが、なるべく早くまたトルフィンに出会いたいと思いますね^^

 

感想&考察7、なぜフローキは生き残ったのか?

▲アシェラッドvsフローキ 因縁の対決 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

ちょっとした疑問なんですが。アシェラッドとフローキがやりあったとき、もう少しでアシェラッドはフローキを捕えることができたのに、そこでクヌートはアシェラッドを刺しました。

 

トルフィンが来たのをみて、これじゃ自分がアシェラッドをころすことができなくなると焦ったのかも知れません。でも、もしかしたらフローキをしなせないためかも知れないと、ちょっと思いました。

 

なにしろトールズを罠にかけアシェラッドにころさせた張本人がフローキです。フローキとの決着を後に描くために、わざところさなかったような気もするのです。トルケルも「本当の戦士」とは何かを知りたいと思っていますが、それについても解決しないままです。

 

こりゃ・・・いずれまたクヌート王子やヨーム戦士団との絡みがありそうですね! 楽しみです。

 

おまけ/原作者からの総括・「あにまるらんど・さが」・監督からのコメント

原作者・雪村誠さんの総括動画

幸村誠先生が、アニメ「ヴィンランド・サガ」を振り返ってという内容の動画を投稿されています。

 

 

トルフィンの少年時代をアニメオリジナルとして描いたことについて、「この物語がトルフィンの成長譚だ」ということがはっきりしたし、「アシェラッドとの関係性がよりはっきりした」と話してられます。他にも音楽があって動きがあって、フルカラーで・・・と、アニメ版が「ヴィンランド・サガ」の完成版だと絶賛されてますよ^^

 

毎週水曜更新「あにまるらんど・さが」

 

これはホントどうでもいいことなんですが・・・。

 

レイフの船に乗り、このままアイスランドに行くのかと思われたトルフィンが、白い鳥が空に飛び立つのをみてアシェラッドの元に戻りますよね。あれって、どういう心境の変化だろう? って思ったんですよ。

 

で、思いだしたのがコレ・・・。あ、もしかして! 鳥見てアシェラッド思いだしたトカ? なんて(^^; 「あにまるらんど・さが」も楽しかったですねー^^

 

やぶた監督からのコメント

 

 

監督はじめスタッフの皆さま、素晴らしい作品に仕上げてくださりありがとうございました。2期を首を長くして待ってます!

 

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