2019年1月~放送のアニメ「どろろ」。第6話「守り子唄の巻・下」の詳細なあらすじと見どころを紹介します。あわせて感想もどうぞ!【注意】完全ネタバレです!



第6話/生身の身体を奪われるのは痛い。大切な人を奪われるのは心が痛い。

 

守り子唄の巻/下

morikouta no maki/ge

 

前回に続いて「守り子唄の巻」下の巻です。前回のラストで、ミオの仕事を知ってしまったどろろ。やるせない表情で夜道を歩いています。まだ幼いどろろですが、それがどんな仕事か理解しているのです。

 

道すがら、右足を食いちぎられ呻く百鬼丸をかついでヨロヨロ歩く琵琶丸に出会います。なんとか荒れ寺まで連れ帰り、脚の止血を施して寝かせますが、百鬼丸は気を失ってしまったようです。

 

そこにミオが仕事から帰ってきました。かいがいしく百鬼丸の世話をするミオの腕や足には、いくつもあざができていて──いたたまれなくなったどろろは、その場を走り去ります。不審に思い追いかけてきたタケに、どろろは尋ねます。

 

どろろ「タケ。おまえ、ねぇちゃんが働いてるとこ見たことあるのか?」

 

タケ「オレは、いつも留守番だ。チビたちだけ残しとけないからな」

 

どろろ「そうか」

 

タケ「しょうがねぇよ。今はミオねぇの稼ぎがなきゃ、みんな飢え死にするしかねぇんだ」

 

どろろ「別に、責めちゃいねぇよ」

 

タケ「オレたちさ、約束してんだよ。オレたちの田んぼを持つって」

 

どろろ「田んぼ?」

 

タケ「あぁ。夏は一面だーっと青くて、秋には黄金色になる田んぼだ。黄金色だぞ! それで米が食い切れねぇほど穫れるんだ。オレたちは戦でまる焼けか、日照りでカラカラの田んぼしか見たことねぇけど、ミオねぇが子どもの頃はそうだったって。もう少しすりゃぁ、オレも働きに行けるし、そしたらミオねぇに楽させてやるよ」

 

どろろは、以前ミオが言った言葉を思いだします。

 

ミオ「大丈夫。戦でたくさん無くした分、戦から取り戻すだけ

 

どろろの表情が一段と大人っぽくなりました。

 

今回のテーマは「喪失の痛み」です

 

決意を口にするとき、ミオはいつも緑色の小さな布袋を手にしています。それはミオを辛い仕事に立ち向かわせるお守りのように見えました。

 

声を取り戻した百鬼丸ですが、自分の発する声すらうるさいらしく少しも話そうとしません。そこでミオは、百鬼丸が少しでも声に慣れるようにと歌います。

 

ミオ「赤い花摘んで~♪ わたしね、泣きそうになったら歌うの。泣くかわりに、ね」

 

琵琶丸は、百鬼丸の魂の炎が鎮まっていくのを見ます。もともと百鬼丸の魂の炎には、ところどころ赤い炎が混じっているのですが、ミオの唄を聴いている間は赤い色がなくなっていくのです。百鬼丸に宿る赤い炎を琵琶丸は「鬼神に身体を奪われたときの残り火のようなものかもしれない」と表現しています。

 

琵琶丸「穴倉から出てきたモンが、鬼だったってことにならねぇようにしなよ。じゃぁな!」

 

そう言い残して琵琶丸はまたどこかに去っていきました。

 

じっと耳を傾ける百鬼丸の前で歌っていたミオは、ふと歌うのを止め、着物の合わせを直します。

 

ミオ「そんなに見られると──百鬼丸って人の魂が見えるんでしょう? 魂の色が。わたしのは──あんまり見ないで。きっと、すごく汚れてる、すごく」

 

ミオの魂の色は真っ白なのですが、百鬼丸はうまく言葉にできません。その代り百鬼丸は両手でミオの頬を包みます。第2話の万代の巻のラストでもありましたね。百鬼丸の親愛の情を示す行動です。急に頬を触られビクリとしたミオですが、やがて「不思議、この手は嫌じゃない」と呟きます。美しいシーンですね!

 

「おっかちゃんは偉いけど、生きてるねぇちゃんも、同じくらい偉ぇよ!」どろろの心の成長が垣間見られる名場面です!

 

夕方ひぐらしの鳴きしきる中、仕事に出かけるミオは、寺の長い石段を下りる途中でどろろに会います。ミオは、どろろが自分を避けているのを察しました。

 

どろろ「──仕事かい?」

 

ミオ「そっか。あんた、わたしの仕事──」

 

どろろ「おいら、わざと覗いたわけじゃ・・・」

 

ミオ「いいの。わたしは恥ずかしいとは思ってないから。生きていくためだもの。でも、あんたが近寄りたくないのも分かる。汚れ仕事だものね。それにしても、あんたくらいの年で、よくわたしの仕事が分かったね」

 

どろろ「おいら、おっかちゃんとずっと旅してて。いろいろ・・・。そんとき、どんなに腹が減っても、おっかちゃんが絶対やらなかった仕事だから」

 

ミオ「そう。偉いおっかちゃんね」

 

どろろ「だけどそうやって、おっかちゃんは死んじまった。おっかちゃんは偉いけど、生きてるねぇちゃんも、同じくらい偉ぇよ。えれぇ! 戦で無くしたモン、戦から取り返してやるんだろ? どんどん分捕ってやれ! 田んぼも畑もぜーんぶ!」

 

ミオ「うん、ありがとね」

 

どんなにお腹が空いてもどろろの母親はしなかった商売。母親を尊敬しているどろろは、その一方でミオの商売を嫌なものだと認識してきました。でも結局どろろの母親は餓死し、それからどろろは一人で生きてきました。けれどミオは、8人もの孤児たちを養うために身体をはって嫌な仕事をしています。ミオがいなければ、子どもたちは生きてこれなかったでしょう。

 

そう考えて出したどろろの答えは「ねぇちゃんも偉い」でした。

 

現代では安易にお金を稼ぐ商売として、人権を蹂躙する行為として忌み嫌われているミオの仕事ですが、そうしなければ生きられない時代、生きるか死ぬかの選択肢を迫られたとき、ミオの行動が軽蔑すべきことなのかどうか改めて自問させられるエピソードですね

 

もちろん人に自慢できる仕事でないことはミオも分かっています。きっと魂は汚れているだろうと思っています。汚れた魂を見られるのは恥ずかしいけれど、自分を犠牲にしても守りたいものがあるから、つかみたい未来があるから、だからミオは自分の行動を恥じていません

 

ミオの仕事は、戦で無くした当たり前の生活を取り戻すための、彼女なりの戦いです。辛さを唄で紛らわせながらも、絶対に負けないという反撃の手段なのです。

 

どろろの母親の選択も、ミオの選択も、どちらも尊い。どろろの出した答えに思わずうるっと来ます。どろろの言葉を借りて言えば「ミオにそう言えるどろろも偉ぇよ!」。このとき見せたミオの笑顔がほんとうに嬉しそうでした! どろろと目線を合わせるため、ミオが石段にしゃがんで話すのも好感が持てます^^

 

冒頭でどろろとタケが話していたとき、ここでどろろとミオが話すとき、場所はどちらもねぐらにしている荒れ寺に登る長い石段の途中なのですが。タケやミオの肩越しに見えるのは、醍醐の陣です。百鬼丸が身に着けているお守りと同じ紋が、陣幕に染められているので醍醐の陣だと分かります。これが後の展開の大きなポイントになります。

 

大切なものを無くすのは辛くて悲しいこと。

 

木を削って右の義足をつくった百鬼丸は、その夜、ミオが仕事に出た後に寺を抜けだします。ミオやどろろに察しられると止められるので、一人で鬼神退治に向かったのです。

 

鬼神はまたしても前回同様に右足を食いちぎりにきました。百鬼丸の食われた右の義足から刀が現れ、ようやく鬼神を倒すことができました。百鬼丸は自分の義手のように、中に刀を仕込んだ義足をつくっていたのです。ミオの唄のおかげもあって、百鬼丸は音を克服できたようです。しかも足を奪った鬼神を倒すことで、百鬼丸に右足がもどってきました。これでミオたちも安全な場所に引っ越すことができます。

 

追いかけてきたどろろと一緒に、百鬼丸は荒れ寺に引き返します。ところが寺は炎に包まれ、数人の侍が逃げ惑う子どもたちを斬っているところでした・・・。

 

どろろ「なんだよこれ・・・どういうことだよ?」

 

侍「なんだおまえ、こいつらの仲間か? この女は先般、わが陣にいかがわしい商売をしにきたが、ゆうべ酒井の陣に入るのが目撃された。密偵の疑いアリとして、早急に処分されたのじゃ」

 

ミオが両方の陣で仕事をしていたので、スパイと疑われたのです。しかも醍醐陣営がよく見える高台に建つこの寺は、きっとスパイの巣窟に違いないとでも思われたのでしょう。それで子どもたちまでも手にかけて──。

 

どろろは虫の息のミオに駆け寄ります。「赤・い・花・摘・ん・で・・・」きれぎれに歌うミオ。泣きたいとき、泣く代わりにミオはこの歌を歌うのでしたね。続いてあがるどろろの絶叫を聴いて、百鬼丸はミオを失ったことを察知します。

 

ドクン。百鬼丸の心臓がこれまでになく大きく跳ねあがります。

 

突然、獣のような唸り声をあげ、取り囲む侍を切り刻む百鬼丸。湧き上がる怒りに我を忘れ、血しぶきに顔を真っ赤に染めながら荒れ狂います。さながら鬼神の形相の百鬼丸の姿に、どろろは琵琶丸が言った言葉を思いだしました。「穴倉から出てきたモンが、鬼だったってことにならねぇようにしなよ」。

 

どろろ「やめろアニキ、やめてくれ。ダメだ、鬼になっちゃダメだ。頼む、頼むよアニキ。アニキ、ねぇちゃんが持ってたんだ。種籾だ。ちゃんと侍から取り戻したんだよ。田んぼをつくるために。ねぇちゃんは負けてねぇ。アニキも負けないでくれよ。頼むよ」

 

ミオがいつも持っていた緑色の小さな袋には種籾が入っていたのです。どろろの必死の制止に百鬼丸はじょじょに我に返ります。

 

百鬼丸「ミ・・・オ・・・

 

初めて発した言葉でした。刀の両腕でミオを抱き、ややおぼつかない発音でその名を呼んだ百鬼丸。名前を呼んだ後の、歯を食いしばりながら漏らす嗚咽から、彼の深い悲しさや悔しさが伝わってきます。百鬼丸はとても難しい役だと思うのですが、鈴木拡樹さん、声にならない演技も含めてすごくいいですね! どろろ役の鈴木梨央さんもとても上手で、見ごたえ(聴きごたえ?)があります!

 

亡骸を土に埋めた百鬼丸とどろろは、寺を後にします。どろろは百鬼丸のお守り袋に、ミオが持っていた種籾の袋を入れます。いつか、侍に取られた青くて金色の田んぼを取り戻したい。ミオの願いは百鬼丸たちに受け継がれました。きっとこの袋は、百鬼丸が怒りに我を忘れて鬼神になりそうになったとき、人の心を取り戻してくれる大切なお守りになってくれるはずです。

 

生身の身体を奪われるのは痛いことを百鬼丸は知りました。

 

大切な人を奪われるのは心が痛いことも知りました

 

[char no=”1″ char=”あいびー”]ミオから大切なものを学んだ百鬼丸。人を大切に想う心と、無くしたときの怒り心に修羅を宿しながらも、うまく制御していかなければいけないことも学びました。12体の鬼神がどうしても取れなかったもの。菩薩が邪魔して百鬼丸から奪い損なったもの。最初、それは命だろうかと考えましたが、きっと「心」だったのではないでしょうか。いくら身体のあちこちを欠いていても百鬼丸が人なのは、「心」があるからです。百鬼丸は鬼神に奪われた身体を取り戻す旅をしていますが、それは同時に「心」を育てる旅でもあるのではないでしょうか。[/char]

第6話で気になったこと、その1。「あれ?鬼神を倒さなくても百鬼丸に声が戻ってきた?それで本当に倒したら、もう一度右足が戻ってきた???」

 

前回に続き、第6話でも気になることがあったので、取り上げてみたいと思います。これも、おそらく多くの方が戸惑ったところではないでしょうか? 鬼神を倒しきれていないのに声がもどってきたり、食いちぎられた右足が鬼神を倒したらうまい具合に戻ってきたり・・・鬼神と百鬼丸の身体の関係の法則性はどうなってるの? そう思いましたよね? その法則を自分なりにちょっと考えてみました。

 

地獄堂に集う12体の鬼神像は、それぞれが一つずつ赤ん坊の百鬼丸から何かを奪っています。(観音菩薩の邪魔が入り、1体だけは何も奪えませんでしたが)。第1話の泥鬼が奪ったのは「顔の皮」でした。第2話の万代が奪ったのは「神経」でした。第3話の鎌鼬(かまいたち)が奪ったのは「右足」でした。第4話の似蛭が奪ったのは「耳」でした。第5・6話の蟻地獄が奪ったのは「声」でした。

 

どうやら鬼神は、どこか1カ所しか奪えないようです。だっていくつも奪うことができるなら、鬼神は1体だっていいはずですからね! ここがミソです。

 

今回登場した蟻地獄は、もともと「声」を奪っていたのに、戦いのどさくさについ百鬼丸の右足を奪って(食べて)しまいました。新しく「右足」を奪ってしまったので、もともと持っていた「声」は、それと引き換えに百鬼丸に戻ったと考えられるのではないでしょうか。

 

推測の域を出ませんが、わたしはそう考えました。

 

第6話で気になったこと、その2 「百鬼丸は、これまでの戦い方を見直さなくてはいけない!」

第4話「似蛭」の巻で顕著なのですが、百鬼丸の戦い方って、義手や義足を利用していることが多いのです。義手や義足で刀を受けて攻撃を止め、あいている刀で斬るのですね。でも今後、手足に生身の身体がもどることを考えると、この戦い方を改めなければ!

 

今回、一旦失った右足をうまく取り戻すことができたけれど、それは鬼神が食べた場合に限るわけだから。しかも生身の身体を失えば、とんでもない痛みを伴い、しばらく戦えなくなります。大きな損傷なら命に関わりかねません。これからは身体を傷つけられないよう、気をつけながら戦う方法を身に着けなくてはいけませんね。

 

ミオの助けもあって音を克服したのだから、今後は音を味方につけて、新しい戦い方を獲得していってほしいです!

 

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