人間は、みんな何かの奴隷だ──アシェラッドの名言炸裂!シーズン1、第8話海の果ての果て」のあらすじ感想考察を紹介します。2019年7月~放送の「ヴィンランド・サガ」は、1000年前の北欧を舞台にヴァイキングの生き様を描いた骨太な物語



第8話/「逃げて、どこまでも逃げて、海の彼方まで逃げ切ったら、そこにはなにがあるのかしら?」──そこには、約束の地「ヴィンランド」が!

▲奴隷の少女「ホルザランド」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

#8

海の果ての果て

End of the sea

 

西暦1012年11月。ユトランド半島地方領主ゴルムの村。領主のゴルムはアシェラッドの伯父。冬の間、アシェラッド団はこの村で過ごすことにしている。

 

アシェラッド「ふぇ~、やっと村かぁ」

 

ビョルン「やれやれ、今年も生き延びたぜ」

 

これからしばらく一休みできるので、海賊たちも和らいだ表情をしている。そんななか、トルフィンだけは父の形見の短剣の手入れに余念がない。

 

村人たちは羊を飼い暮らしている。子どもたちが無邪気に走り回るのどかな村だ。アシェラッドたちが積み荷のお宝を船からおろしている間、村人たちは「すごいお宝だな」「さすがアシェラッドさんだ」と、楽しそうに見学している。

 

どうやらこの村ではアシェラッドは英雄扱いだ。何人か死人が出たという噂をききつけた男たちは、団員追加の募集が出ないかと首を長くしている。女たちにもアシェラッドは大人気だ。村の若い女たちが声をそろえて「アシェラッドさまーお帰りなさーい!」と黄色い声を飛ばす。

 

アシェラッドの伯父、領主のゴルムはお金に細かい。

 

ゴルム「よいか、おまえの手下の1日の食い物代が銀貨1枚と4分の1だ。手下は97人だから、全部で121枚と・・・」

 

アシェラッドまた金勘定かよ

 

ゴルム「今年は豚が値上がりした。毎日、豚を食うのならさらに~。ビールは別料金で、それに宿代と薪代を加えて~」

 

アシェラッド「伯父貴、心配するな。今年の稼ぎもじょうじょうだ。手下どもには酒もエサも、十分にやってくれ。金は払うよ」

 

天秤ばかりを前に金勘定していたゴルムは、アシェラッドの言葉に相好を崩した。「金は払う」ときき、安心したようだ。ゴルムは、隣に立つ青い服を着た金髪の女奴隷にワインを持ってくるよう命じた。女の名は”ホルザランド”という。

 

アシェラッド「変な名だな、あの奴隷女。”ホルザランド”。ノルウェーの土地の名だ」

 

ゴルム「あぁ、最近買ったんだ。領主の血筋らしいが、戦に負けてお家が滅んだとか。別嬪だし、高かったんじゃがなぁ。仕事の覚えは悪いし、まったく、お嬢様育ちは気位ばかり高くて役に立たん」

 

窓辺に腰かけていたアシェラッドは、トルフィンの姿を認めたらしく、立ち上がってゴルムに決闘の立ち合い人を依頼した。それから、ついでのようにこう言った。

 

アシェラッド「それとな、役に立たないのは奴隷のせいじゃないぜ。あんたの使い方が下手なんだよ。どんなヤツにでも、上手に使うコツってのがあるもんさ」

 

こうして村の広場で決闘が始まった──。

 

今回のテーマは「約束の地・ヴィンランド」。サブテーマは「みんな何かの奴隷」と、しました。3つめのテーマに「海賊の日常part2」も!

 

前回は、冬を迎える前にどこかで一稼ぎしようとフランス南部にやってきたアシェラッド団が、アシェラッドの奇襲とトルフィンの肝の座った交渉&戦闘力で、みごとにお宝をゲットしたお話しでした。第1話の、冒険に出たくて目をキラキラさせていた頃とすっかり別人のように暗く成長したトルフィンの姿が、仕方がないとはいえ痛々しく感じた回でした。

 

今回は、冬の休息をとるためにホームグラウンドにしているらしいアシェラッドの伯父が領主をつとめる村に戻ってきてからのエピソードです。ここでトルフィンは、かつてアイスランドの村でレイフから訊いた「ヴィンランド」を思いだします。それが今回のテーマです。

 

さらにもうひとつ、今回はアシェラッドの魅力がぐぐぐっと増してきた回だと思います。アシェラッドの言動に注目してみていきたいと思います。

 

▲今回の舞台は主にデンマーク ユトランド半島 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

広場を取り囲む村人たちの中央にはアシェラッドとトルフィン。今や二人の決闘が始まろうとしていた。2本の短剣を両手にもち眼前のアシェラッドを見据えるトルフィンと、右手にもった長剣を肩にかついでよそ見をしているアシェラッド。「オーディンの名において~」と立会人のゴルムの口上が終わり、合図とともに決闘が始まった。

 

「トルフィンも懲りねぇなぁ」と、仲間の海賊は言い、ビョルンは黙って二人の決闘を見守っている。右の短剣を前に、腰を落として構えるトルフィンをまじまじ見てアシェラッドが言う。

 

アシェラッド「おまえ、背ぇ伸びたな。年なんぼになった? ──あんとき、おまえまだこんくらいの・・・」

 

6歳だったトルフィンの身長を左手で示すアシェラッドはどこか懐かしそうだ。それに構わずトルフィンはじりじりと間合いをつめ、一気に飛び掛かって斬りつける。のけぞって剣をかわしたアシェラッドの懐に入り、猛然と短剣を振るうトルフィン。アシェラッドは素早いトルフィンの動きに合わせて長剣で防戦する。

 

アシェラッド「年寄りの世間話ぐらい、付き合えよ!」

 

隙をついてアシェラッドが大きく剣を振るうと、トルフィンは素早く跳びすさる。観衆の目には、アシェラッドの剣でトルフィンが吹き飛ばされたように見えているが、そうではない。腕を組み決闘を見ていたビョルンが「強くなったなぁ」と感心する。

 

すぅと息を吸ったトルフィンが再度仕掛けてきた。右の短剣でアシェラッドの剣を捕えると、続いて左の短剣でアシェラッドの剣を持つ手に斬りつける。アシェラッドはトルフィンの攻撃から手を守るため、とっさに剣を離した。その手でトルフィンの短剣を奪おうとするアシェラッドの動きを察知して、トルフィンは再度、跳び退った。

 

悠々と自分の長剣を拾い上げたアシェラッドは急にトルフィンに話しかける。

 

アシェラッドなぁトルフィン。おまえの親父、あれ──なんつったかなぁ。えっと、ト、ト、トー・・・

 

トルフィンは、露骨に嫌な顔をする。

 

トルフィン「トールズだ!」

 

アシェラッド「トールズ! そうそう! いかんなぁ、年取るとモノ忘れがなぁ。いやぁ、でもさぁ、実際こうやって仇討ち~なんてやってる最中に申し訳ないけどホラ、オレいっぱいころしてるからさぁ。思いだせないんだよぉ、君の父上のこと。オレ、ほんとにころしたかなぁ? トリルさんを。なぁ、オレどうやってころしたっけぇ? ひょっとして、おまえの勘違いってことはないかねぇ?

 

尊敬する父親の名前も、ころしたことすらも忘れているアシェラッドに、トルフィンは怒りが爆発しそうだ。

 

トルフィン「きさまぁ。正々堂々戦えば、父上はキサマなんかに負けなかった。キサマはあのとき、オレを・・・オレを人質に!」

 

アシェラッドあーあー思いだした! ガキの命と引き換えに剣を捨てたあのバカか!

 

もう我慢がならなかった。トルフィンは後先考えずに突っ走り、アシェラッドに手を取られて地面に転がされた。

 

アシェラッド熱くなっちゃダメぇ。修行が足りないぜ、ボウヤ

 

ボキリと音がして、「くっそぉ」と毒づくトルフィンは力なく地面に伸びた。肩の関節を外されたのだ。

 

アシェラッド「ビョルン、肩入れといて」

 

ビョルン「あいよ」

感想&考察1、実力は既に拮抗、ただし経験はまだまだ!

 

南フランスの砦戦で、大将首を取った褒美の決闘が行われました。トルフィンにとってはこれが自分の生きる意味で、アシェラッド団にいる理由でもあります。これまで何度も挑戦してきたのでしょうが、当然、一度も勝てたことはありません。今度こそは、と、集中しています。

 

対するアシェラッドは、かなり面倒くさそうです。できればやりたくない様子がありありですね。背が伸びただの、昔はこんな小さくて──だのと無駄話をしているのも、決闘よりもトルフィンの人間としての成長に興味があるからですね。

 

ときどき行われる決闘をずっと観てきたビョルンにとっても、今回はトルフィンの成長を観るいい機会です。ただし、こちらは剣の腕がどれだけ成長したかを、腕を組み余裕しゃくしゃくで観戦しています。しかし途中からマジになりましたね。マジになったのは、アシェラッドも同じです。剣を手放すはめに陥ったアシェラッドは、急にトルフィンの父親・トールズの名前が思い出せないフリをし始めます。トルフィンの感情を逆撫でして、冷静さを失わせたところで、ようやく仕留めました。

 

トルフィンの剣の実力はもはやアシェラッドに拮抗しているようです。それを一番知っているのは、毎回、決闘に付き合ってきたアシェラッド自身でしょう。まさか負けるわけにいかないから、だから決闘したくないというところもあるのかも知れません。でもトルフィン、頭脳戦ではまだまだでしたね。トルフィンを感情的にして、今回の決闘もなんとか凌ぎ、首領としての面目を保ったアシェラッドです。

 

この決闘の様子を見ても、アシェラッドは育ての父、ビョルンは兄代わりですね。戦うことで生計を立てている海賊にとり、剣の腕を上げることは生き残るための大事な手段です。トルフィンは、鍛えがいのある可愛い息子であり、弟なのでしょう。

 

ところで「アシェラッドさまぁ~♥」と、黄色い声を飛ばす村の女の子たちの左端に、やたら大柄な子がいます。よく聞くと、歓声の中にも、妙に低いカマっぽい声が混じっていて・・・。特別な意味はなさそうですが、どうやらこの子、原作漫画にも登場しているらしいですね。それがアニメでも忠実に再現されているようです。

 

感想&考察2、海賊も、故郷に帰れば英雄!

 

前回の第7話のテーマは「アシェラッド団の日常」でした。今は傭兵活動が多いアシェラッド団ですが、基本は海賊です。他の土地で村を襲い、男をころし女を奴隷として売り飛ばし、金品を略奪することを生業としています。それが彼らの仕事です。とんでもなく迷惑な連中ですが、「世の中、弱肉強食なんだから当たり前」という自分勝手がまかり通る時代でした。ここまでが、前回描かれた「アシェラッド団の日常」でした。

 

今回も同じく「アシェラッド団の日常」が描かれていますが、前回とはかなり趣向が異なります。冬の間、仕事を休んでのんびり暮らすユトランド半島のとある村での日常です。村人たちは、今年も無事に帰ってきたアシェラッド団一行を大歓迎でむかえます。

 

毎年ごっそり金品を持ち帰るアシェラッド団は、村の英雄です。若者はアシェラッド団に入りたいと憧れを隠さないし、少女たちはお宝のおこぼれにあずかろうと、こぞってアシェラッドに黄色い声を浴びせます。まるで、遠洋漁業から帰ってきたマグロ漁船を迎えるみたいな騒ぎじゃないですか!

 

自分たちの領主がアシェラッドの親族だから、この村はアシェラッド団に襲われない。それが重要で、他の村がどうなろうと興味がないのが、この人の良さそうな村人たちの考えです。もちろん、それが嫌なら安全なこの村を去るしかないわけで、移住した先でアシェラッド団に襲われても何も言えないしできることもない。力のない者がこの世界で命をつないでいくためには、強者の庇護に頼るのは仕方のないことだったでしょう。

 

現代から見れば、力ない者や心優しい人には住みにくい嫌な世界ですが、それが常識でした。まぁ、現代でも程度の差こそあれ、弱者が住みやすいとは言えない世の中ですけどね。

 

「人間は、皆なにかの奴隷だ」

▲アシェラッド団員 アトリ(左)とトルグリム(右)

 

村での夕食の席。アシェラッドが伯父のゴルムに言ったとおり、たっぷりの食事と酒が振る舞われている。今年も生き延び、村に帰ってのんびりできると、海賊たちは羽目を外し気味に騒いでいる。そこに外から海賊の一人アトリが「うぅ~寒っ!」と背を丸めて入ってきた。「あれ?船の見張りは?」とたずねるのは別の海賊トルグリムだ。

 

アトリ「もうけたぜ。トルフィンが代わりたくねぇとさ」

 

トルグリム「あぁ、負けるといじける例のヤツか」

 

アトリ「あぁいうところは、昔っから変わらねぇな」

 

ビョルン「あそこが落ちつくんだろ。もともとはあいつの親父の船だからな。ほっときゃいいさ」

 

もちろんアシェラッドも食事をしている。アシェラッドらしく行儀悪くテーブルに足を投げ出し、手づかみで肉を頬張っている。そこに、アシェラッドに憧れる村の若者が酒を手に近づいてきた。若者は、自分より年若いトルフィンがアシェラッド団にいるのが気に食わない。

 

村の若者「だけど大将、あんなガキ船に乗せてやばくないですか? 寝込みを襲われでもしたら~」

 

アシェラッド「平気、平気。あれにゃ、んなことはできねぇよ」

 

村の若者「どういうことです?」

 

アシェラッドヤツは一応戦士だからね。正々堂々、一騎討ちで勝たないと嫌なのさ。過去とプライドがヤツを縛ってるわけだ

 

村の若者「よくわかりませんけど、プライドもなく生きるくらいなら自殺しますけどね、オレは」

 

若者の言葉を聞いたアシェラッドは、ふと笑う。部屋の真ん中では、食べ物を床に落としてしまった女奴隷ホルザランドが、領主のゴルムにムチで打たれている。ムチ打ちながら「いい加減に奴隷の自覚を持たんか!」とゴルムはわめいている。

 

アシェラッド「観てみろ、ひでぇザマだぜありゃぁ。金の奴隷が鞭持って、金で買った奴隷に主人ヅラしてやがんの。自覚がないだけなのさ。人間は、皆なにかの奴隷だ

「自分の力で気づくしかないのかもなぁ」。父の幻影がため息をつく。

 

雪降る夜。毛布にくるまり船の上でじっとうつむくトルフィンに、聞き覚えのある笑い声が響いた。

 

トールズ「はっはっは。いじけてるな」

 

トルフィン「ちっ、父上!」

 

目を見張るトルフィン。トールズは小さく息を吐くとそっと手を差し出しトルフィンの頭に載せる。いつしかトルフィンは6歳の子どもの姿になっていた。思わず涙があふれ出る。

 

トールズ「やぁい、泣き虫毛虫! ──悔しいか、チビ助。仕返ししたいか?」

 

うん、うんと頷く6歳のトルフィン。「うーん」と唸って考え込んだトールズは、トルフィンの頭をなでながら言う。

 

トールズ「オレの子だからなぁ。仕返しすんなって言ってもムダだろうし。困ったなぁ、どう言えばいいのか。自分の力で気づくしかないのかもなぁ。言っただろう? おまえには敵などいない。誰にも敵などいないんだ。本当の戦士には剣など──

 

突然トルフィンは短剣を抜いた。父の幻影はかき消え、奴隷のホルザランドが驚いた顔で尻もちをついている。彼女の傍らにバスケットと食べ物が転がった。

 

ホルザランド「あ、あの。ゴルムさまがあなたに、食事をもってけって──」

 

トルフィンがパンをかじっている様子を見ながらホルザランドが訊ねる。雪の舞うなか、半袖のホルザランドは寒そうに腕をさすり上げている。

 

ホルザランド「ねぇ、君も奴隷なの?」

 

トルフィン「あぁ?」

 

ホルザランド「だって、そんなとこで食べてるし」

 

トルフィンオレは戦士だ。あんたと違って、メシを食う場所を自由に選べる

 

ホルザランド「そうなの? でもなんだか君、わたしと同じって感じがするから」

 

トルフィン「チッ! 奴隷の気持ちなんざ知るか。オレがあんただったら、ゴルムをころして逃げる。追手も全員ころす!」

 

ホルザランド「そんな・・・ころすなんて」

 

トルフィン「なら一生、奴隷でいればいい。あんたの勝手だ」

 

船にあぐらをかき、酒瓶から直接酒を飲むトルフィン。ホルザランドはトルフィンに背を向け、はるか海の彼方を見やる。

 

ホルザランド逃げて、どこまでも逃げて、海の彼方まで逃げ切ったら、そこにはなにがあるのかしら?──きっと、なにもないわね。どこまで行ってもここと同じ。戦と奴隷商人がいるだけ

 

トルフィンの脳裏に、かつてアイスランドの村でみた鎖に繋がれ逃げてきた奴隷の姿がよみがえった。そしてもう一つ思いだしたものがあった。父の友人レイフの言葉だった。

 

トルフィン「──はるか西。海の向こうに、ヴィンランドという名の土地がある。そこは暖かく、豊かで、奴隷商人も、戦の炎も届かない遠い地。そこなら誰も、追っては来れない」

 

ホルザランド「そんなところが、本当に──」

 

それには答えず、トルフィンは黙って海の向こうに視線をさまよわせた。

感想&考察3、アシェラッドの鋭い観察眼に興味津々!

 

アシェラッドはとても興味深い人物です。

 

戦いを前にして、船のへさきに陣取り仲間を鼓舞するときにはそれは生き生きと楽しそうにしていますが、それ以外のときには、基本「海賊の首領」という仮面をかぶっているように感じます。その仮面が今回、ところどころ外れているように思えました。

 

たとえば伯父のゴルムが金勘定にいそしんでいるところを見たときの嫌な顔だったり、ホルザランドをムチで打っているところを見たときも嫌悪感を隠そうともしませんでした。あげくに、

 

人間は、皆なにかの奴隷だ

 

なんて、達観したようなことすら言ってのけます。

 

たしかに皆なにかに囚われていて、すべてにおいて自由な人などいないと思います。少しの不自由さと折り合いをつけながら生きていると思うのです。でも、それが行き過ぎると辛いですね。

 

トルフィンは過去(父をころされた怒り)とプライド(自分は戦士だという自尊心)に縛られているので、アシェラッドへの敵討ちは決闘でのみ果たそうとしている。

 

ゴルムはお金に囚われているので、常にお金の損得ばかり考えている。

 

ホルザランドはゴルムに囚われているので、ゴルムの言う通りに働かなければならない。

 

ではアシェラッドは何に囚われているのでしょう?

 

前回第7話の考察で少しみてきたように、彼の複雑な出自に関係があるのかも知れません。いずれにせよ、アシェラッドは略奪を楽しんでいるわけでも、金品に執着しているわけでもないのは確かです。アシェラッドへの興味が強くなりました!

 

感想&考察4、トールズの心残り

▲優しくて暖かい父の幻影 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

いいところまで追いつめたのに、結局また決闘に負けてしまい、トルフィンはたった一人で膝を抱えていじけています。そこに現れたトールズの幻影に頭をなでられ、トルフィンはすっかり6歳の子どもに戻ってしまいました。悔し涙を流すトルフィンに、トールズは苦笑しながら言います。

 

トールズ「オレの子だからなぁ。仕返しすんなって言ってもムダだろうし。困ったなぁ、どう言えばいいのか。自分の力で気づくしかないのかもなぁ

 

結局トルフィンは、トールズと同じように傭兵として生活しています。それだけでなく、アシェラッドに仕返ししたいとも思っています。それが悪いと頭ごなしに言って理解できないのは、自分を顧みれば仕方ないことだとトールズ自身も思っています。

 

でも、親だもの。トールズはトルフィンに幸せになってほしいんですよね。命のやりとりの上に成り立つ生活はまやかしの幸せでしかないし、仕返しに何の意味もない。ただ災いを招きこむだけ。「自分の力で気づくしかないのかもなぁ」と言いつつ、もどかしい思いでいっぱいです。

 

トールズとしては、トルフィンの危なっかしい生き方は、ほんとうに心残りだろうと思いますね。この父の幻影のおかげでトルフィンは、かつてレイフが語った「ヴィンランド」の存在を思いだします。

 

トルフィン──はるか西。海の向こうに、ヴィンランドという名の土地がある。そこは暖かく、豊かで、奴隷商人も、戦の炎も届かない遠い地。そこなら誰も、追っては来れない

 

故郷を離れて10年にして、やっと思い出したのでしょう。奴隷すら平和に暮らすことができる場所があるなら、それはきっと「ヴィンランド」しかないのではないか、と。

 

トルフィンには「決闘でアシェラッドを倒す」という目的があるし、彼自身がヴィンランドを目指す理由はまだないけれど、きっといつかヴィンランドを目指す日が来るのでしょう。そのためには、もう少し現実の汚さを見、絶望にうちひしがれる辛い日々を経験する必要があるのかも知れません。

 

トールズの言うとおり「自分の力で気づくしかない」んでしょうね。

 

トルケル&クヌート王子登場!

 

西暦1013年8月。デンマーク イェリング周辺。

 

フローキ「デンマーク各地より、各部族の精鋭たち集結しつつあります。加えて我らヨーム戦士団4個大隊はせさんじております。この度の大攻勢にあたり、万事とどこおりなく」

 

スヴェン王「ようやくだ。イングランドの不遜な輩どもに、王の力を示さねばならぬ」

 

フローキ「はっ。戦士団一同、陛下のイングランド掌握のため、尽力する次第であります」

 

スヴェン王「してクヌートは? あヤツは来ておるな?」

 

フローキ「はっ。殿下も既にイェリングに入られ、ご出陣に向け英気を養われているとのこと」

 

緋のマントに身を包み、豪華な王冠をいただいたスヴェン王に、うやうやしく話すフローキ。フローキは10年の歳月を経て、かなり年老いた印象だ。そこに口を挟んだのがスヴェン王の臣下・ラグナルだ。ラグナルはまだ戦争経験の浅いクヌート王子の身を案じ、出陣に反対している。

 

スヴェン王「ラグナルよ、予とてクヌートの身は案じておる。だが、我らはヴァイキングの血を、武勇を示さねば民は従わぬ。明朝、出航する」

 

それだけ言うと王は歩き出し、その後ろにフローキとヨーム戦士団が付き従う。一人、ラグナルだけが置いていかれた。

 

いよいよ、デンマーク軍のイングランド進攻が始まった。

 

西暦1013年8月。スヴェン大王率いるデンマーク、ヴァイキング主力艦隊は、イングランド北部のハンバー川より進攻を開始。ゲインズバラにて、周辺の5大都市を降伏させると、その勢いはとどまることなく、主力軍はそのまま陸路を南下。各地を蹂躙しつつ、進軍を続けた。

 

だが、このまま続くと思われた快進撃も、ここにきて、一時停滞することとなる。商業都市ロンドンにて。

 

西暦1013年10月 イングランド・ロンドン

 

うぉぉぉぉ、そぉりゃぁ~!

 

額に赤い鉢巻きを巻いた男の投げた戦斧は、回転しながらはるか彼方にいる敵船の乗組員たちの手を切り落としてゆく。

 

トルケルどうしたぁー? もっと攻めてこいよー! 楽しい戦じゃねぇかー

 

戦が楽しくて仕方がない様子のこの男の名はトルケル。トルケルは幾多の戦船を嬉しそうに見おろしていた。

 

感想&考察5、場所はどんどん移り変わるし、登場人物も多くて、なかなか覚えるのが大変!

▲生粋の戦闘狂トルケル 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

さてさて。いよいよ物語が動き出しました。

 

冬の間は進攻をやめ兵を休ませたデンマークのスヴェン王は、翌1013年8月、いよいよイングランドへの大攻勢を開始しました。デンマーク各地から集結した精鋭部隊のデンマーク軍に、フローキ率いるヨーム戦士団。

 

イングランド北部からじょじょに南下し、ついにロンドンで大規模な衝突が勃発したようです。

 

戦斧を武器に、戦が楽しくて仕方ない様子なのはトルケルです。トルケルといえば第1話の冒頭で、トールズとともに戦っていたあの男です。どうやらトルケルはトルフィンの母親ヘルガの父(ヨーム戦士団の首領シグバルディ)の弟のようです。トルフィンからすれば大叔父にあたる親戚です。

 

第1話の冒頭をちょっと見返してきたのですが、トールズ強い強い! そのトールズとコンビのように戦うのっぽのトルケル。この二人かなり仲良さそうです。きっとどこかでトルフィンと絡んでくるのでしょうね。どんなふうに出会い、どんな関係性を築いていくのか、楽しみです!

 

しかし、気になるのはトルケルの立ち位置。トルケルは陸側から船に対して戦斧を投げつけています。船は船首に竜を飾ったヴァイキングの戦船です。──ってことは、トルケルもしかしてイングランド側についていませんか? ヨーム戦士団の首領の弟が敵側につくなんて・・・いったいどうなっているのか、気になりますね。

 

そしてもう一人、重要人物となりそうなクヌート王子も登場しました。クヌート王子はデンマークのスヴェン王の次男。金色の長い髪に女性のように整った美しい顔立ちの王子です。

 

次々と場所を変え、さらに登場人物が多いので、なかなかついていくのが骨ですね!

 

感想&考察6、果たしてトールズはトルフィンのせいでしんだのか?

▲仲間を助ける代わりに命を捧げたトールズ 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

最後に、決闘でアシェラッドが言っていたトールズがしんだ理由について考えてみたいと思います。どうやらトルフィンの理解は、ビョルンがトルフィンを人質に取ったから、トルフィンを助けるためにトールズは決闘に勝ったのに剣を捨ててころされた、と思っています。

 

決闘での様子からすると、アシェラッドもそういうことにしていますよね。でも、わたしはそうは思っていないんですよね。ちょっとアシェラッドとトールズの決闘を振り返ってみましょう。

 

アシェラッドの船に残る海賊は30人。対してこちらの戦力はトールズ一人。崖の上から弓で狙われている状況。トールズ一人で30人を相手にできるだろうけれど、船と船の間が狭いので、こちらの船に乗り移ってこられてはこちらの人員に被害がでる。そう踏んで、トールズはアシェラッドに決闘を申し込みました。

 

条件は、アシェラッドが勝てば好きにすればいい。しかしトールズが勝てば兵を引けというものでした。

 

結果、勝ったのはトールズでした。けれど、決闘のことを知らないビョルンがトルフィンを人質に取ってしまいます。それに乗じて、アシェラッドまで決闘の約束を守らないふうな口をきき始めます。

 

オレの狙いはあんたのタマだ」というアシェラッドの言葉をきき「分かっている」と答えてトールズは剣を海に投げ捨てました。これを見たアシェラッドは「承知した。この勝負あんたの勝ちだ」と言い、弓を射る合図を崖の上に送ります。そしてトールズは身体じゅうに矢を受け命を落としたのです。

 

決闘に負けたアシェラッドは、決闘の作法にのっとり兵を引かなければいけませんでした。いくらビョルンがトルフィンを人質に取ったとしても、首領命令でビョルンを引かせれば良かっただけです。でもそうしなかったのは、「海賊の首領」を演じる必要があったからかも知れません。決闘に負けたあげく目的の「トールズの命」を取らずに逃がしたとあっては首領の面目が立ちませんから。

 

それを察したから、トールズは取引したのでしょう。「目的の自分の命はやる、しかし決闘の作法にのっとり兵を引け」と。アシェラッドは取引に応じました。

 

細かく見ていくと、トルフィンが人質に取られたことがトールズの命を落とすことに直結したとは言えません。たとえビョルンが飛び出してこなくても、トールズたち全員が人質に取られているような状況です。アシェラッドが決闘の作法を無視すれば、こちらに被害が出るのは確実です。もちろん、それではトールズの命を取ることはできないかも知れませんが。

 

トルフィンは自分のせいでトールズが命を落としたと思っていますが、アシェラッドは決闘していた当人ですから、それは違うと分かっています。それでもトルフィンの誤解をそのままにしているあたり、しかもそれを決闘中にもちだすあたり、ずるいなぁ~と思ってしまいます。

 

あいびー

次回第9話のタイトルは「ロンドン橋の死闘」。どうやらトルケルが大暴れしそうですね! 今回のように内面を掘り下げる回もいいけれど、迫力ある戦闘シーンも楽しみですよね!

おまけ/「あにまるらんど・さが」「やぶた監督からのメッセージ」


えーと、ビョルンは黒クマだから、この団員はきっとトルグリムかな? トルフィン猫、愛されてますね~。でもあんまりワガママ言っちゃダメだよー!

 

 

監督からの一言でした。

 

ようやく話が転がり始めて、監督もホッとしていることでしょう。やや頭でっかちなプロローグでしたが、とても重要な導入でした。原作既読組も、じっくりとプロローグが見られて嬉しかったのではないでしょうか?

 

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