レイフとトルフィンが11年ぶりに再会する!」シーズン2、第21話再会」のあらすじと感想・考察を紹介します。2019年7月~放送の「ヴィンランド・サガ」は、1000年前の北欧を舞台にヴァイキングの生き様を描いた骨太な物語。



第21話/ビョルンのアシェラッドへの気持ち。そしてアシェラッドのビョルンへの気持ち。

▲ヨークに入港するクヌート王子 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」公式

 

#21

再会

Reunion

 

 

西暦1014年 ヨーク

 

1014年現在、イングランド北部の街ヨークは、スヴェン王率いるデンマークヴァイキングの支配下にあった。この地を起点に多くの奴隷がヨーロッパ全土に供給されていて、ヴァイキングたちは奴隷商人としての役割を担っていた。

 

6歳のトルフィンを見失ってから11年。レイフはこの街で、今日も奴隷になったトルフィンの姿を探している。

 

レイフ「あのとき、トールズがいなければ、ワシらは無事では済まなかった。恩には報いねばならん」

 

当時、船に同乗していた船員が「あれから11年だ。もう潮時なんじゃないか」と、そろそろ諦めたらどうだと切り出すのに対し、レイフはこう答えている。義理堅い男だ。二人は川岸の桟橋に船を接岸させて話していたのだが、急にあたりが騒々しくなった。「その船をどけろ」とうるさく言ってくる男もいる。

 

「はよどけーい! この桟橋には、貴い方々の船がずらっと並ぶんじゃ」

 

川を遡上してきたのは、クヌート王子率いる船団だ。

 

クヌート王子「ここがヨークか。大きな街だな」

 

アシェラッド「えぇ。ローマの時代から栄えている、古い街です。北欧、イングランド、双方の人と物がここに集まります。王陛下はここに、新王朝の拠点を構えるおつもりなのでしょう。良い選択です。わたしでもそうします」

 

船のへさきに立つクヌートと、その後ろに控えるアシェラッド。その前後には幾艘もの船が並んでいる。その船団を観ていたレイフは、しばし口もきけないほど驚いていた。アシェラッドに気づいたのだ。

 

レイフあの男。そうだ、間違いない。あの顔を忘れるものか! アシェラッド。トールズをころしたあの海賊だ!

 

レイフはアシェラッドの顔も、さらに名前もはっきり記憶していた。

 

今回のテーマは3つ。どれも重要です。まず「レイフとの再会」。次に「アシェラッドの謀略」。そして「ビョルンの最期」です。

▲トルフィンの成長ぶりがレイフにはきつい 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

今回の舞台はヨーク。ヨークはヴァイキングたちが仕切る奴隷貿易の一大拠点になっています。トルフィンを見失ってから11年。ずっとトルフィンを探しているレイフは、この街に来ています。

 

一方、この街を新王朝の拠点にしようと考えているスヴェン王は、ここヨークで宴席を設け、そこでクヌートに褒美を与えると約束しています。つまりスヴェン王はもちろん、クヌート王子もアシェラッドもトルケル軍もヨークに来ています。もちろんトルフィンもです。

 

ここヨークで、レイフはトルフィンと再会します。11年ぶりの再会です。二人の再会がどんなものになるのか、まずはしっかり見ていきましょう。これはトルフィンがこれから歩んでいく長い人生の、未来につながる出会いです。

 

次の「アシェラッドの謀略」は、現在進行形の話しです。スヴェン王から王位を奪うクヌート王子の目論見を達成するため、アシェラッドはこれまで以上に知略を巡らします。アシェラッドの鮮やかな手際を楽しみましょう^^

 

そしてもう一つ。「ビョルンの最期」は、事実上アシェラッド団の幕引きです。トルフィンはアシェラッド団に同行していたとはいえ、その目的はあくまで「父の仇を討つ」ことで、略奪が目的ではありませんよね。だから、本当の意味でいえばビョルンが最後の一人なわけです。長い年月をアシェラッド団の副将として過ごしてきたビョルン。今回は、今まであまり語られてこなかった、彼の心の内がのぞける心揺さぶられるエピソードです。

 

クヌート王子、狙撃される!

 

川を遡上する船のへさきに立つ王子がアシェラッドにたずねる。

 

クヌート王子「で、どうする? 王は明日の宴席で仕掛けてくるぞ」

 

アシェラッド「さぁて、それなんですがねぇ。明日の御前会議、われわれが後手に回るのは明白でしょう。たとえば殿下とトルケルどのに、それぞれ別の領地を与え孤立させる。それは褒美であり、命令でもある。逆らえばクヌート王子に反意ありとなります。煮るも焼くも陛下次第なんですよ

 

クヌート王子「トルケルを奪われるのは困るな」

 

アシェラッド「ね? 困っちゃいますね」

 

クヌート王子「では、座して待つだけか」

 

王子はいつも着ている豪華な赤いマントではなく薄手の緑のマントを羽織り、髪をひとまとめにして赤茶色の頭巾を巻いている。あまり王子らしい装いとはいえない。王子の後ろに立つアシェラッドは続ける。

 

アシェラッド「ふ。いかがでしょう、このあたりで、世間さまになにもかもバラしてみるというのは?」

 

クヌート王子「ばらす?」

 

アシェラッドクヌート殿下、今あなたがここで、しぬってことですよ

 

その瞬間、王子の胸にクロスボウが放たれた。アシェラッドはすぅ、と息を吸い大声を張り上げる。

 

アシェラッド撃たれたぞー! 王子殿下が撃たれたー!

 

北岸から王子を撃った黒マントの男は、(ちょろい仕事だぜ)と、薄笑いをしながら静かに立ち去ろうとする。男の前に飛び出してきたのがトルフィンだ。

 

「あ、あんた。レイフのおっちゃん・・・」。ついにトルフィンとレイフが再開!

 

一方レイフは船をおり、桟橋を走り出した。アシェラッドを追うつもりなのだ。そのレイフの目の前に、例の黒マントの男が落ちてきた。続けて金髪の少年も落ちてきて、その勢いのまま黒マントの男に短剣を突き立てた。男は絶命した。

 

突然の出来事に、すっかり腰を抜かしているレイフを、トルフィンが振り返る。

 

あたりには人だかりができ騒然としている。一人の男がトルフィンを指さし叫ぶ。「さてはきさまら、狙撃の犯人だな?」と。「きさまら」とは、トルフィンとレイフを差しているようだ。トルフィンは全力で否定するが、すっかり犯人扱いされてしまう。

 

「いーや、目を観りゃわかる。もう、なーんちゅう淀んだ目だ。どっからどう見ても悪党のツラだ!」

 

訊く耳もたず侮辱してくる男にトルフィンが切れる。反射的に左の拳を固めると、思い切り男の顔を殴り飛ばす。男が奪っていたトルフィンの2本の短剣が落ちて桟橋に突き立った。

 

そこで側にいた男が気づく。「ナイフ使いで、チビで、若くて・・・あの、もしかしてあんた、トルフィン・カルルセフニ!?」と指さす。まわりにいたヴァイキングたちが騒然としだす。「バカ、知らないのか。のっぽのトルケルにナイフ2本で挑んで勝った男だよ!」。「えぇ~うそぉ!」。ヴァイキングたちのトルフィンを観る目がすっかり変わった。「だったら、やばくねぇ? こいつ殿下の家来だぜ」と。どうやらトルフィンはちょっとした有名人になっていて、そのおかげで王子狙撃の嫌疑は晴れたようだ。

 

ヴァイキングたちが「トルフィン」と言うのを聞いたレイフは驚きが隠せない。「ちょっとすいません」と、人垣をかき分け進み出ると、トルフィンにたずねた。

 

レイフ君──もしかして、出身はアイスランドじゃないかね? 名は、トールズの子トルフィン

 

トルフィン「あ、あんた。レイフのおっちゃん・・・」

 

いぶかし気に観ていた禿げ頭の男に、かつてのレイフが重なり、ようやくトルフィンも気がついた。思わずレイフは走り寄り、トルフィンを抱きしめ涙する。「生きとったー、良かったぁ!」。

 

レイフ「そうか、やっぱり仇討ちを・・・」

 

トルフィン「あぁ。ヤロウは必ずオレがころす。この父上の短剣でな」

 

右腕を包帯でぐるぐる巻きにしたトルフィンの姿は、レイフには哀れに見えていた。

 

レイフ(ボロボロじゃないか。幼い子どもが戦場を生き延びて。地獄を見てきたに違いない。──いや、ダメだ。この子を救うには、これまでの11年間を否定しなければ・・・)

 

レイフが感慨にふけっていると、トルフィンの方から質問してきた。

 

トルフィンレイフさん。ヴィンランドは今、どうなってる? 父上が行きたがっていた・・・オレもときどき夢に見るんだ。もう村のひとつも作ったかい?

 

レイフ「なぜ、残してきた母と姉のことを訊かんのだ。おまえがいなくなってから、ヘルガの具合は一層悪くなった。顔を見せてやれ、トルフィン。ヘルガには、それが薬だ」

 

トルフィン「オレは! ヴィンランドのことを訊いてんだよ。訊いてもねぇことをベラベラと!」

 

桟橋に腰かけていたトルフィンは立ち上がり、レイフの方を観ようともせず歩き出す。「どこへ行く」とレイフが追いかける。

 

レイフ「国へ帰ろう、トルフィン。もう十分だろう! 一緒に帰ろう!」

 

ピタリとトルフィンの足が止まる。

 

トルフィン十分? あんたにナニが分かる。あの日から今日までの、オレのなにを知ってるっていうんだ。あ? アシェラッドが、ヤロウがメシを食いクソたれてる間は十分じゃねぇ。十分じゃねぇ!

 

目をむき口を歪め、激昂する目の前のトルフィンを、悲しそうな表情でレイフは眺めている。

 

レイフ(なんということか。あの陽気だった幼子が・・・)「おまえの気が変わるまで、ワシはこの街にいるぞ。トルフィーン、国へ帰ろうー!」

 

チッと舌打ちを残してトルフィンは去っていき、その背中にレイフは呼びかけた。

 

感想&考察1、「レイフさん。ヴィンランドは今、どうなってる?」。じつは意外と描かれていない、トルフィンの心の内。

 

やっとレイフはトルフィンに再会できましたね。トールズが亡くなってから11年、必ず見つけ出すとヘルガに誓ったトルフィンに会えて、感慨もひとしおのレイフです。トルフィンを探し出せたのだから、後は家族のもとに、アイスランドに連れ戻るのがレイフの役目。それが、レイフができるトールズの恩に報いる方法です。

 

でも、あまりのトルフィンの変わりように、レイフは驚きが隠せませんね。だいたい再会の最初のシーンが、トルフィンが男を刺しころす現場というのもショッキングです。あのコロコロ笑っていたトルフィンの顔をここまで歪めてしまったこれまでの11年間、さぞや壮絶だったろうとは思うけれど、レイフはトルフィンの11年間を否定することでトルフィンを救おうと考えてしまいました。

 

自分の生き方を否定されたら──そりゃ、怒りますよね。夢に出てくるトールズの幻影ですら、トルフィンに仇討ちをやめさせられないのだから、レイフがどうこうできるとは思えない。

 

レイフとの会話で、トルフィンはこう言っています。

 

トルフィンレイフさん。ヴィンランドは今、どうなってる? 父上が行きたがっていた・・・オレもときどき夢に見るんだ。もう村のひとつも作ったかい?

 

へぇ? って思いましたね。第10話「ラグラロク」で、トルフィンはヴィンランドの夢を見ます。一面に花咲く野、冬至ですら温かい気候、身体の弱い母も体調が良くなり、姉のユルヴァも楽しそうに暮らしている。父のトールズも一緒だ。こんな夢を、どうやらトルフィンはときどき見ているようです。

 

トルフィンは主人公だけれど、意外と何を考えているのか描かれていません。表面上は、剣の腕ばかりが上達して、上手く他者と付き合うことができない立派なDQNです。

 

でも、最初はただアシェラッドへの復讐心ばかりだったトルフィンも、このところの一連の出来事で思うところはあるはずです。アシェラッド団崩壊と、いくら復讐を果たすためとはいえ、命をかけてアシェラッドを救うためトルケルと決闘をするハメになった自分の行動を、どう考えているんだろう? つい数か月前までナヨナヨしていた同い年のクヌート王子の覚醒を、どう思って見ているんだろう?

 

トルフィンがヴィンランドの夢を見るということは、おそらくもう自分でも仇討ちだけの人生を終わらせたいと思っているのかも。過去に囚われず、自分の人生を自分で生きたいと考えているのかも知れません。クヌート王子のように、目標を定めて前に歩き出したいと考えているのかも──。

 

だから、最初に出た言葉が「ヴィンランドはどうなっている?」だったんでしょう。もちろんアイスランドの家族は気になるけれど、それを言ってしまえば心が折れそうになるから──そう思えました。

 

レイフはただ再会が嬉しくて、トルフィンの細かい心の揺れなんて、気が付いてあげられません。仕方がないことですが・・・。

 

感想&考察2、カルルセフニって?

▲フィラデルフィアにある「ソルフィン・カルルセフニ」の像 出展/wiki

 

ヨーク在住のヴァイキングたちは、トルフィンに向かい「ナイフ使いで、チビで、若くて・・・あの、もしかしてあんた、トルフィン・カルルセフニ!?」と言いました。

 

カルルセフニ(Karlsefni)は、カルル=男 セフニ=素材 の意味で、「男の資質」「本当の男」と訳されます。

 

じつはトルフィンは実在の人物をモデルにしていて、実在のトルフィンのあだ名が「カルルセフニ」でした。このため実在のトルフィンは、古代ノルド語表記で「Þorfinnr Karlsefni Þórðarson」、英語表記で「Thorfinn Karlsefni Thordarson」と記されます。どちらも真ん中が「カルルセフニ」になっていますね。

 

どうやら、あの恐ろしいトルケルに決闘で勝ったという噂が広がり、そこからついたあだ名のようです。分かりやすく言うと「男の中の男」という感じの、最大の尊称ですね!

 

この噂をトルフィン自身も知らなかったようで「カルルセフニ?」ってオウム返しに驚いていましたね。このエピソードは、ヨークの住人が噂好きだという描写でもあります。このことは、次の「アシェラッドの謀略」で生きてきます。

 

しかし・・・。

 

たしかにトルケルは決闘でトルフィンに負けを認めましたが、トルフィンとしてはどうしてもアシェラッドをころさせないために何でもやるという状態だったわけで。アシェラッドが剣の刃で太陽光を跳ね返してトルケルに隙を作ったからこそ辛くも勝ちを拾えただけです。本来ならこれは決闘の流儀に反していて、その時点でトルフィンは負け確定なんですよね。もちろん、そんなこと今更言えませんけどね。

 

だから「カルルセフニ」なんて言われても──きっとトルフィンは嬉しくもなんともない! 決闘でズルしたことを思いだして、逆に不機嫌になる可能性すらあります。

 

でもさ、意外と「英雄」ってそんなもんかもね。頭からつま先まで、ぜーんぶ真っ白に「英雄」の人なんていないわけで、「ヨームのトロル」と呼ばれたトールズですら、しんだと偽ってヨーム戦士団を逃げ出したわけだし──。なんて、つらつら思いました。

 

アシェラッドの謀略第1段階、クヌート王子、撃たれる!

▲クヌート王子が輩にクロスボウで! 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

胸に深々と刺さったクロスボウの矢は、王子の緑色のマントを赤く染めている。船から岸に運ばれた王子をクヌートの従者たちが心配そうに取り囲む。騒ぎをききつけたフローキも後ろから驚きの表情で見守っている。

 

患部を確認するため服を切り裂いてみると、なんとクヌート王子の胸は大きく盛り上がっていて・・・。羽飾りのついた兜を取ると、その顔はあきらかに女性だ。口の端から血を滴らせ、苦しそうにあえいでいる。「そうじゃないかなーとは思ってたけど・・・やっぱ殿下は女だったんだー!」と大騒ぎが起こる。

 

クヌート王子「バカ者。わたしはここだ」

 

別の船から降りてきたクヌート王子がアシェラッドを従えて現れた。アシェラッドが女の奴隷を、王子の替え玉にしていたようだ。クヌートが粗末な頭巾をかぶっていたのも、遠くから身元が判別できないように、というわけだ。

 

心臓の近くを射られていて、替え玉の女は助からないという。クヌートは女の手を取り「すまぬことをした」と謝り「その者をいたわってつかわせ。できる限りのことを施すのだぞ」と、部下に命じた。そこでアシェラッドが聞こえよがしに言う。訊かせたい相手は、群衆全員だ。

 

アシェラッド「しかしまぁ、日ごろの用心が奏功しましたなぁ殿下。どうやらこのヨークには、あなたさまに仇なさんとする者が潜みおるようですぞ

 

フローキが憎々し気にアシェラッドを睨んでいる。

 

事の顛末を報告すると、スヴェン王はすぐにアシェラッドの謀略を察知した。

 

スヴェン王「出し抜かれたな、フローキよ」

 

フローキ「はっ。申し訳ございません」

 

スヴェン王「ふん。アシェラッドか、やりおるな。この街に、呪いをかけおったわ

 

夜になり、人々が夕食の席で話題にするのが、昼に起きたクヌート王子の替え玉襲撃事件だった。「人の口に戸は立てられぬ」とは、よく言ったもので。「王子さまがころされたって?」「違うよ、影武者だったんだ」。と、男も女も寄ればこの話題でもちきりだ。

 

「解せねぇのはさ、暗殺者がなんで王子さまを狙ったのかってことだよ」

 

「そりゃ、偉い人なんだし、命ぐらい狙われるだろうよ」

 

「でもよぉ、この街にゃスヴェン陛下がいるんだぜ、的にかけんなら、そっちだろう──で、お世継ぎは二人おられる」

 

「で、わざわざ次男の方を狙うってこたぁ・・・」

 

「あんたら、それについちゃぁ、ちょっと面白い話しがあるんだぜぇ。ま、あくまで噂ていどの話しなんだがね──」

 

こんな調子で、瞬く間に王子暗殺未遂についてさまざまな噂が飛び交った。

 

アシェラッドの謀略第2段階、間者グンナルを泳がせることで、作戦完成!

▲相変わらずオーバーリアクションのグンナル 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

その夜、とある建物にクヌート王子陣営の面々が集まった。そこでアシェラッドが得意げに自らの手腕を披歴する。

 

アシェラッド「噂ていどの話し──そのくらいがちょうどいいのです。確たる証拠はつきつけず、王陛下側に余裕を残してやる方がいい」

 

トルケル「暗殺者を雇ったのはおめぇか。自作自演じゃねぇか」

 

アシェラッド「なかなかの演出だったろう? ただ、噂を流すだけじゃぁダメだ。あの演出があって初めて、噂は真実味をもって広がる。デンマーク王家の跡目争いは皆知ってる。そこへこの暗殺未遂と噂。さて諸君、明日の会議に、これがどう影響するかな?

 

クヌート王子なるほど。このわたしが不利になるような命令は下せなくなる

 

室内には大きなテーブルが並ぶ。おそらくどこかの食堂なのだろう。クヌート王子、トルケル、ラグナルの弟グンナル、そしてアスゲートが座って耳を傾けている。アシェラッドは一人、テーブルの間を歩き回りながら話している。

 

アシェラッド「その通りです。トルケルどのを殿下から奪ったり、激戦地に送りこんだりすれば噂の後押しになります。王というのは人気商売です。君民の己に対する悪評は、捨ておけんでしょう。子殺しなんてのは、特にね

 

トルケル「悪知恵回るなぁ、そういうのどこで教わるわけ?」

 

アシェラッド「力押しだけが戦じゃねぇってことだよ。勉強になったろう」

 

喋り疲れたのか、イスに座り盃に酒をついで飲み干してからアシェラッドが言うと、トルケルはフフンと鼻を鳴らした。

 

クヌート王子「これで当分の間は、王も手を出して来ぬかも知れん。時間稼ぎには良い策だ。だが、今後二度とわたしの身代わりを立てることは許さん」

 

アシェラッド「はぁ、申し訳ございません」

 

アシェラッドが素直に謝ったところで、グンナルが立ち上がる。

 

グンナルいやぁ~感服しましたぞ、アシェラッドどの。万の軍勢を味方につけたようなものだ

 

グンナルのどこか調子外れなほめことばに、アシェラッドは「そりゃどうも」と、素っ気ない。それを機にグンナルは「ちょっと用足しへ」と、外に出ていった。グンナルの奇妙な笑い声と、扉を閉める音が響くやそうそうにアシェラッドは口を開く。

 

アシェラッド殿下、グンナルどのを信用してはなりません。おそらくスヴェン王に通じています

 

クヌート王子「なぜそう思う。根拠を言え」

 

アシェラッド「勘です。が──間違いないでしょう」

 

トルケル「だとしたら、やばくねぇ? 今の話しも知られるぜ」

 

もっともなトルケルの疑問に「構わん」と、アシェラッドは即座に答えた。「知られてもいことしか話してねぇ」と。

 

アシェラッドグンナルが黒なら、今の話を今夜じゅうに伝えるでしょう。確認のため、トルフィンに尾行させています

 

クヌート王子「グンナルが間者であるならどうする? ころすか?」

 

アシェラッド泳がせましょう。彼を通じてこちらが短期決戦を望んでないことを、王陛下側に知ってもらいましょう。患者からの情報なら信用し、安心する。当面の争いを避けるには、お互いの了解が必要です。これで、わたしの作戦は完成!」

 

残っているトルケルとアスゲートが、はぁ~と、嘆息する。「フン、まったくそなたという男は」と、クヌート王子もアシェラッドに脱帽の様子。

 

アシェラッド「明日の王陛下の反応が楽しみですなぁ」

 

広げた両腕をそのまま頭の後ろで組み、アシェラッドは不敵な笑みを浮かべた。

 

外でグンナルを待っていたトルフィンはその後をつける。グンナルが接触した黒マントの男は、スヴェン王の家に入っていった。

 

トルフィン「王の家か、決まりだな。どいつも騙し合いに夢中か。それが戦士のやることか。オレのやることは、ひとつだ」

 

トルフィンは左手に父の短剣を握り締めた。

 

感想&考察3、2段構えのアシェラッドの謀略からの、最終話までのフローチャート

▲アシェラッド悪い顔~! 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

知将アシェラッドの腕の見せ所。謀略ならおまかせあれ! 謀略の第1段階は、クヌート王子の替え玉を民衆の目前で狙撃させること。これによりヨークの民衆は、第2王子のクヌートが何者かに命を狙われていることを知ります。

 

「何者か」は、第1王子のハラルド勢力か、まさかスヴェン国王勢力なのか? さまざまな憶測が飛び交う状況をつくりだしました。これにより、スヴェン王はクヌートに手出しができなくなってしまった。なぜなら、王は人気商売なのだから、スヴェン王が王子暗殺を企んでいるなどと民衆に知られてはまずいから。

 

うまいですね~! なるほど。

 

これで、明日の御前会議でスヴェン王がクヌートに不利になるような命令をすることができなくなったわけです。

 

報告を受けたスヴェン王が「この街に、呪いをかけおったわ」と言ったのも、さすが。アシェラッドの目論見をしっかり看破しています。賢い人ですね。

 

しかし、アシェラッドはさらに上を行く。

 

グンナルをスヴェン王側の間者とみて、自分たちの内情をリークさせています。クヌート王子側は、短期決戦は望んでいないと知らせてもらうわけです。ここに、スヴェン王の隙ができます。

 

前回のスヴェン王謁見の直前に自分で話していたように、じつはアシェラッドは短期決戦で王を暗殺することを考えています。全24話なので、残りなんと3話。ここ、ヨークでかたをつけるつもりなのかも知れません。

 

次回は御前会議があるだろうし~その次で暗殺かな? 史実からして、クヌート王子側が勝つのは間違いない。でも、スヴェン王もただやられっぱなしなわけはないので、どんなドラマが待っているのか、楽しみです。

 

で、最終話。

 

このシナリオってすごく優秀だから、ていねいに見て行けば、けっこう先が読める。前回第20話のラストでスケープゴートについて考察したけれど、このままいけば最終話は間違いなくウツ展開。はぁ。予想、あんまり当たってほしくないなぁ。(一応、予想の内容は伏せておきます。でも──分かるよね・・・)。

 

そして、第2期確定でしょう。ここで終わったら主人公アシェラッドです。トルフィンなんていらないじゃん!

 

ビョルンの引き際

 

クヌート王子一行には、アトリに刺され腹に大ケガを負ったビョルンも含まれていた。ビョルンには、温かそうなベッドのあるこざっぱりとした部屋があてがわれている。グンナルを含めたクヌート王子たちと謀略の話し合いをする少し前、アシェラッドはビョルンの部屋を訪れていた。

 

アシェラッド「ほれ、酒だ」

 

ビョルン「あぁ、悪いな」

 

アシェラッド「いい部屋じゃねぇかビョルン、うらやましいぜ」

 

ビョルン「命がけの報酬にしちゃ狭い部屋だ」

 

酒をあおったビョルンの顔は、三つ編みにしたあごひげの他に、口の周りにもぼつぼつ無精ひげが伸びてきている。その様子をちょっと見ていたアシェラッドは、どこか楽し気にアトリの話題をもちだした。

 

アシェラッド「そういやぁ、アトリのヤツがなぁ、おまえにワビ入れたいって言ってたぜぇ」

 

ビョルン「へっ、戦場での斬った斬られたは、恨みっこなしだ。ぐじぐじ根に持つのはトルフィンだけだ

 

こんな話題はもうこの二人にしか通用しない。ビョルンの言葉に、アシェラッドはフフ・・・と、ちょっと笑ってみせる。ふと視線をそらしてビョルンが言う。

 

ビョルン「いいから行けよ、悪だくみの時間なんだろ」

 

「あぁ、またな」と、アシェラッドは背中を向け戸口に向かう。

 

▲「アシェラッド」。ビョルンが呼び止める 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

「アシェラッド」。ビョルンのどこか改まった声にアシェラッドは足を止める。振り向くと、ビョルンはベッドに真っ直ぐ腰かけている。

 

ビョルンおまえ、足の具合はどうだ

 

アシェラッドしこたま矢をくらったからなぁ。だがまぁ、ちっとくらい剣を使うのに、障りはねぇ

 

ビョルン「そうか」

 

それまでの張りつめた表情から、ビョルンの顔に安堵が広がった。低い声でビョルンは続ける。

 

ビョルンなら明日・・・

 

アシェラッド分かった──明日

 

真剣なまなざしで短く言うと、アシェラッドはビョルンの部屋を出ていった。

 

翌日、クヌート王子立ち合いのもと、性懲りもなくトルフィンがアシェラッドに決闘を挑むことになった。まばらに木の生えた、冠雪した人けのない丘の上。剣を杖に静かに立つアシェラッドと、少し離れて鬼の形相のトルフィン。両者の間にはクヌート王子、そしてその後ろには、見物にきたトルケルが腕を組みニヤニヤ楽しそうだ。(見物というより、泥沼になったとき二人を引きはがす役目かな?)

 

クヌート王子立会人はわたしが務める。わたしがやめろと言ったら決闘は終わりだ。双方よいな

 

アシェラッド「結構です。が・・・少々お待ちください殿下。じつは先約がありまして、じきここに」

 

苦しそうに息を吐きながら現れたのは、兜をかぶったビョルンだ。昨晩とうってかわり、今日は無精ひげをきれいに剃ってきている。

 

ビョルン「悪いなトルフィン、すぐ済む」

 

どういうことか、皆が一瞬に理解した。「承知した、始めよ」。クヌート王子も見守るようだ。

 

 

ビョルンとアシェラッドはともに剣を抜く。汗を浮かべ、激しく息を吐きながらも、ビョルンの目は澄んでいる。

 

ビョルンアシェラッド、あんたは強くて、賢い。あんたを尊敬してる。あんたが、オレを腹の底では嫌っていてもな。なぁ、アシェラッド。オレだけじゃねぇ、あんたはしんだ仲間たちも、自分自身でさえも。寂しくねぇのか? そんなに、なにもかも拒んで。オレぁさ、あんたと、あんたと、友達になりたかったんだよ

 

そう言うとビョルンは雪を蹴り、アシェラッドに斬りかかった。対峙するアシェラッドも大きく踏み込む。

 

ぐはぁっ!

 

アシェラッドの剣がビョルンの胸を突き、ビョルンはうめき声を上げた。

 

アシェラッド「はっ! すまん、急所を外しちまった。すぐ楽に──」

 

剣を構え直すアシェラッドの胸元に手をかけ、ビョルンが言葉を絞り出す。

 

ビョルンアシェ、ラッド・・・あんたと、友だちに──

 

アシェラッド──あぁ、ビョルン。おまえは、オレのたった一人の友だちだ

 

ビョルンの表情がゆるんだ。意識の底に浮かんだのは、大勢の仲間に囲まれ颯爽と歩くアシェラッドの後ろ姿。

 

ビョルン「送って、くれ」

 

それがビョルンの最期だった。

 

寝かせたビョルンの身体にマントをかけ、剣に残った血を払うと、アシェラッドは「さて」と切り出した。

 

アシェラッド「さて、待たせたな小僧。来い、遊んでやる」

感想&考察4、ビョルンはヴァイキングだから・・・。

 

もうね・・・。泣かせてくれます、ビョルン。やっぱりビョルン、いいヤツじゃないですかー!

 

前回アトリが国に帰るとき、アシェラッドはビョルンは長くもたないと言ってましたね。ビョルンはヴァイキングです。ヴァイキングとして戦い、しななければいけません。なにしろベッドでしんでは、ヴァルハラに行けないから。だから、いつか自分がビョルンと戦い引導を渡さなければいけないと、とうにアシェラッドは覚悟していたのでしょう。

 

それはビョルンも同じ。自分の最期を託せるのはアシェラッドしかいないと思っている。それは暗黙の了解です。

 

だからこそのセリフだったわけですね。ビョルンがアシェラッドの足の心配を切り出したとき、すぐにアシェラッドにはビョルンの言いたいことが分かったのです。だから、こんな答え方をしました。

 

アシェラッド「しこたま矢をくらったからなぁ。だがまぁ、ちっとくらい剣を使うのに、障りはねぇ

 

これを聞いてビョルンがどこかホッとした表情をしたのは、「あぁ、アシェラッドはちゃんと分かってくれている」って表情なんでしょう。

 

ビョルンなら明日・・・

 

アシェラッド分かった──明日

 

これで十分でした。ビョルンが自分の最期の日を決め、アシェラッドはそれを了承したのです。

 

感想&考察5、ビョルンはアシェラッドの孤独に気づいていた

 

アシェラッドが最初に登場したのが第3話の冒頭。フローキがトールズ暗殺を依頼している場面です。ビョルンもここで登場しています。テーブルを挟んで値段交渉しているフローキとアシェラッドの間に槍を投げつけ、フローキに言い値を通させるきっかけをつくったのがビョルンでした。

 

アシェラッドとビョルンはいつも一緒でした。アシェラッドが悪だくみをし、ビョルンが兵団をまとめて実行する。二人はいつも機嫌よく笑っていました。やっていることは、非人道的なことばかりでしたが──。

 

今でいうところの、不良少年の仲間同士のような、そんな雰囲気が彼らにはありました。少なくとも、ビョルンはそう思っていたんでしょう。他人に蛮行を働くのは平気ですが、ビョルンがアシェラッドを裏切ることはけしてありませんでした。でも、第17話でアシェラッドが放った言葉は、少なからずビョルンにはショックだったようです。

 

アシェラッド「おまえらとは今日まで、本当に長い付き合いだった。ともに笑い、ともに呑み、ともに多くの修羅場をくぐりぬけてきた。今まで話したことはなかったがなぁ、オレぁ、おまえらと過ごしてきたこの10数年間、おまえらのことが心底嫌いだった。豚にも劣る暗愚なデーン人どもよ

 

「おまえら」にも「デーン人」にも、当然ビョルンは含まれます。しかも、当のアシェラッドですら「デーン人」なのです。だからビョルンは、こう言ったのでしょう。

 

ビョルン「アシェラッド、あんたは強くて、賢い。あんたを尊敬してる。あんたが、オレを腹の底では嫌っていてもな。なぁ、アシェラッド。オレだけじゃねぇ、あんたはしんだ仲間たちも、自分自身でさえも。寂しくねぇのか? そんなに、なにもかも拒んで

 

アシェラッドの出自の細かいことまでは知らないはずのビョルンですが、アシェラッドがなにもかも拒んで好んで孤独に落ちているのを見抜いていたんですね。それほど、ビョルンはアシェラッドをよく観ていたってことです。

 

ビョルンオレぁさ、あんたと、あんたと、友達になりたかったんだよ

 

今までどうしても言えなかったこの一言を、やっと言えたビョルンです。「子分」でも「副団長」でもなく「友達」に。この言葉は、けっこう衝撃でした。まるで価値観の違う、遠い世界に住んでいるビョルンから、「友達」なんて純な言葉が飛び出すとは思ってもみなかった。

 

たぶん、アシェラッドにとっても衝撃だったでしょう。アシェラッドはいつか仕えるべき人を見つけて、その人の役に立つのだと、そればかりに囚われていて、ビョルンの気持ちに気づいていなかったと思うのです。

 

言うだけ言うと、返事もきかずにビョルンはアシェラッドに斬りかかりました。きっと、返事を訊くのが怖かったんでしょう。返事を待たずに逝くつもりでした。

 

感想&考察6、アシェラッドの返事はリップサービスか?

▲アシェラッドの返事を訊き目が遠くなるビョルン 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

おそらくアシェラッドの足の怪我のせいでしょう、もしくは「友達」なんてビョルンの意外なセリフのせいか。アシェラッドはビョルンの急所を外してしまい、そのおかげでビョルンは返事を訊くことができました。

 

ビョルンアシェ、ラッド・・・あんたと、友だちに──

 

もしかしたら、前ばかり見て突っ走っていたアシェラッドに、これまでビョルンの存在を深く考える余裕はなかったかも知れません。でもこの瞬間、アシェラッドはちゃんと考えたと思うのです。ビョルンは自分の孤独を理解してくれていると気づいて、その上で自分にとってのビョルンの存在を考えた。

 

アシェラッド──あぁ、ビョルン。おまえは、オレのたった一人の友だちだ

 

そうして出たのがこのセリフだったと思うのです。リップサービスではなく、心からの言葉だったと。「たった一人の友だち」だと認識して、その直後にその友達を失ったのだから、しかも自分の手で送って──。いくら年齢を重ねているアシェラッドとはいえ、これはきつい。

 

この後のアシェラッドの迫力がすごいこと!

 

このシーンのビョルンとアシェラッドの演技がもう、素晴らしくて! ビョルンの口からでる白い息が、切れ切れのセリフと完全にタイミングが合っているところとか、ふとビョルンの目が遠くなるところとか、細かいアニメーションもすごく良くて! リアクション動画を公開している方で、ボロボロ男泣きしている方を見かけました。わたしも見直すたびに、こみ上げるものが増えていきます。

 

残忍なところはあるけれど、ビョルンはけして卑怯者ではないし、アシェラッドに忠実で、幼いトルフィンが森でお腹をすかせていたとき、食べられるキノコを残してあげる優しさもありました。だからなんでしょうね。わたしはビョルンがずっとお気に入りでした。

 

ビョルンは、いい最期でした。きちんとアシェラッドに気持ちを言えて、返事ももらえて、良かったと思います。ありがとうございます(泣)

 

EDのラストでヴァルキリーに召される戦士がビョルンに見えてしかたありません!

 

感想&考察7、そもそも、なぜアシェラッドはデーン人が嫌いなのか?

▲第20話。スヴェン王に発言するアシェラッド 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

アシェラッドはデーン人が嫌いだと言います。その理由は父親のせいでしょう。ウェールズの高貴な出身の母・リディアをさらったデーン人の父・ウォラフ。どうやらアシェラッドは父にちゃんとした名前を与えてもらえませんでした。「アシェラッド」は「灰まみれ」の意味のあだ名でした。(「シンデレラ」と同じですね)。

 

馬小屋で生活している母にスープを飲ませている頃のアシェラッド(たぶん8歳くらい?)は、粗末な身なりで、靴すら履いていませんでした。父は、アシェラッドに名を与えず奴隷のように扱っていたのでしょう。

 

アシェラッドが父親に強い敵意があり、自分の出自を呪っているのは、前回のスヴェン王との謁見で明らか。

 

スヴェン王妾の子か。いや、奴隷に産ませた子かのぉ

 

と言われたときの沸き立つ怒りのオーラは、隣にいるトルフィンにもはっきり分かるほどでした

 

アシェラッドは父・ウォラフが、父が属するデーン人が嫌いです。おそらく、すぐに暴力で解決しようとする、その野蛮なところも疎ましく思っているのでしょう。でもその実、自分に流れるデーン人の血も自覚していることでしょう。

 

冷静でいようとしても、ついカッとなってしまう瞬間だったり、暴力を振るったときに感じる爽快感だったり。そんな瞬間を自覚するごとに、自分を呪わしく思ったことでしょう。アシェラッドが抱える自己矛盾。「デーン人が嫌い」は、他者を否定するだけでなく自らも否定する言葉。そこを、ビョルンは的確に突いてきたわけです。

 

その後14歳でウェールズのモルガンクーグ王国に母を背負ってやってきたアシェラッドは、船団を引き連れ、きちんとした身なりをしていました。この間のことは語られていませんが、アシェラッドが厚遇されるようになる何かがあったのでしょう。

 

アシェラッドの父方の家は今どうなっているのか? そのあたりは何も語られていません。残り3話のどこかで、アシェラッドの過去がもう一度語られるのかも知れません。

 

【追記】書き終えてツイッター確認したら、次回予告が流れていました。次回第22話は「孤狼」。短い動画によると、アシェラッドの子どもの頃のエピソードがさっそく盛り込まれているようです!

 

感想&考察8、「さて、待たせたな小僧。来い、遊んでやる」

▲「待たせたな小僧。来い」 出展/TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

 

適当なところでクヌート王子の待ったが入る決闘など、茶番です。王子としては、どちらも貴重な戦力で、失うわけにいかないから、いくらトルフィンが望んでも、アシェラッドをころさせないでしょう。

 

そんな決闘では、「遊んでやる」と言われても仕方のないこと。

 

トールズとの決闘も、今あったばかりのビョルンとの決闘も、命をかけた純粋なもの。その直後に行うには、トルフィンとのお遊び決闘は、なんとも間の抜けた印象です。

 

これじゃ、決闘どころじゃないよね?

 

こんな時期に決闘を持ち出すほどDQNのトルフィンでも、そこは分かると思うのですが──。さすがにもう中止でしょ!?

 

【追記】──と思ったら。次回予告のショートムービーで、決闘シーンがありました。やるんですか・・・。やめなよぉ(^^;

 

おまけ

 

あぁ、アシェラッドを先頭に、耳とトルグリムと、アトリとトルフィンがビョルンを担いで矢から逃げている! みんな顔は必死だけど、ユーモラスな表情で。アシェラッドがクヌート王子に会いさえしなければ、ずっとこんな風に、みんなでワイワイ海賊やっていけたのかなぁ~なんて。ちょっとシンミリしちゃいます。

 

今から振り返れば、第7話「北人(ノルマンニ)」の回で、フランス・ロワール周辺の小さな砦戦を手助けした見返りに金銀財宝をごっそり奪っていた頃が懐かしい。あの頃は、たしかに戦争だから残虐なシーンもあったけれど、どこか「ルパンⅢ世」のような痛快さもあって、楽しかったですよね。

 

今は面白いけれど・・・重いな。

 

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